■         今日のおすすめ

1.   『「世界と日本経済大予測2026-27」

          Economic risk to business and investment』

                         (渡邉哲也著 PHP研究所)

2.   『「日本をもう一度、世界のてっぺんへ」

          ―サナエノミクスが日本経済を救う!―

                         (渡邉哲也著 ビジネス社)

 

■         日本経済にインパクトを与える39の国内、国外のリスク(はじめに)

 紹介本1.は、2026-27年に予測される世界・日本の経済のリスクについて、論評しています。SNSで大人気の経済評論家である著者は、2020年にこの経済大予測シリーズを始めました。今年で7作目になります。2024年12月10日に刊行された「大予測2025-26」において予測した「株価5万円越え」は、2025年10月に実現しました。この様に2020年の予測本以来、「高い的中率(的中率9割)」が継続中です。最近のAmazon売れ筋ランキングでは、マクロ経済学ジャンル2位です。

 紹介本1.で、著者は、2026-27年のテーマは『ビジネスで勝つためには、メディア報道を疑い、ニュースの背景を読み解く力、即ち、自分の考えを信じる「自分軸」を確立せよ』とし、「サナエノミクスが、日本経済を救う」、「トランプを見れば、お金の流れがわかる」、「後退を続ける中国経済の未来」等の見逃せない「39のリスク」及び「サナエノミクス」について解き明かします。

 尚、「サナエノミクス」については、紹介本1.の執筆が自民党総裁選の最中であり、紹介本1.では十分に解説されていません。「サナエノミクス」については、著者が高市早苗とのインタビューを基に、高市首相就任確定後に緊急出版した、紹介本2.の『「日本をもう一度、世界のてっぺんへ」-サナエノミクスが日本経済を救う-(渡邉哲也著 ビジネス社 2025.11.10出版)』から引用させて頂きます。

 それでは、紹介本1.の「39のリスク」及び、紹介本2.の「サナエノミクス」から、注目する記事を、上記テーマの視点からご紹介します。

 

■  『ニュースの背景を読み解き「自分軸」を確立』の視点で注目記事を見る

【「サナエノミクス」のキーワードは“転換点”と“明るい日本を取り戻す”】

<サナエミクスの正体

-「国民の生命・財産の尊重と保護」「個人の幸福」を優先->

 著者は、高市政権の政策を理解する上で押さえておくべきポイントとして、「anti新自由主義」を挙げます。

 新自由主義とは、「小さな政府」「規制緩和と自由競争の促進」「民営化」「自己責任と個人主義の尊重」を核とする経済理論で、対極にはケインズ経済学の「大きな政府」が有ります。

 新自由主義は、「富裕層」「企業」を優遇し、この富裕層、企業が経済成長を牽引し、この成長の余波(トリクルダウン<滴り落ち>)により、雇用など経済全体が活性化すると考えます。しかし、トリクルダウンは常態的には発生しません。過去で発生したのは、レーガノミクスだけと言われています。

 また、新自由主義は新興国の安価な製品、安価な労働力を利用するグローバリズムと繋がります。更に言えば、中国は、新自由主義的な市場原理を「社会主義」という枠組みに「選択的」に導入・応用し、国家の強力な主導により巨大な経済圏を形成しました。

 この様な「経済合理性のみ」を追求する新自由主義ではなく、「国民の生命・財産の尊重と保護」「個人の幸福」を優先させることが「サナエノミクス」の正体です。

 因みに、最近の日本の新自由主義政権は、竹中平蔵をブレーンとした小泉政権、小泉政権と親和性の強い菅政権、成長と分配の好循環(新しい資本主義)を掲げた岸田政権、岸田政権を引き継いだ石破政権です。

 高市政権は、この様な思想的背景があってこそ、日本の新自由主義政権の下で放置されてきた、失われた30年を生んだ財政政策、不法・不正を放置してきた外国人政策、電気料金が上がり中国に儲けさせるだけの再エネ政策、等々、様々な負の遺産を次から次と驚くスピードで改めているのです。まさに日本政治の“転換点”“静かなる革命”を迎えているのです。

<明るい日本を取り戻す

―アメリカとの連携と“オンリージャパン”で世界のてっぺんへ―>

 著者は、「新自由主義を土台にしたグローバリズムが、先進国の市民生活を脅かしていることに気が付いたのはアメリカだけではなく、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアにおいてでもあり、これらの国に於いては、既に、ロシアのウクライナ侵攻を機に東西対立(強権国家vs自由主義国家)を復活させていたが、それに加え、南北分断(反移民)に向かい始めた」と指摘します。

 著者はさらに加えて、「先進国の潮流は“東西南北”の“西”と“北”を選ぶ流れになっている。この度の自民党総裁選に於ける91万票の自民党員票を「世論の指標」とするならば、日本の有権者は西側の先進国と連携し、“西”と“北”を選ぶことを望んでいるということである」と指摘します。

 高市外交は、この様な世論、世界の潮流を踏まえ、まずは、関税政策により「中国からの脱却」を目指す、トランプ政権のアメリカと連携し、日本の「オンリージャパン」の技術を、活用・新規創出する「共同プロジェクト」をスタートさせようとしています。(経営コンサルタントの本棚2025.12.23【図表1】「5500億ドルの対米投資スキーム」を参照。)まさに、「世界のてっぺんへ」のスタートが始まると期待されます。

 また、高市政権のスタートにより、著者が言う、『経済発展をさせるために必要な「希望」と「諦めない心」により「明るい日本を取り戻す」時代』が見えてきたのではないでしょうか。

【「トランプを見れば、お金の流れがわかる」に関わる、注目リスク】

<パリ協定の凋落-再生可能エネルギー政策を転換できる企業にお金が集まる->

 トランプは大統領就任後直ちにパリ協定離脱を表明しました。この結果2026年1月27日には離脱が有効になります。2028年の大統領選挙で共和党政権が続けば、アメリカは7年間、パリ協定の枠外にあることになります。

 アメリカ国内では民主党の資金が止まったことで、CO2と地球温暖化の因果関係を前提にした論文は、今や、否定されはじめ、温暖化の要因を、CO2などの温室効果ガスではなく、太陽フレアや海洋変化の影響とする論文が目立っています。また、トランプの「グリーンパージ」政策の影響で、「グリーン利権」の構造が崩壊し始めており、企業も銀行も方向転換を始めています。

 パリ協定では、2050年までのカーボンニュートラルを掲げますが、大国の中国とインドは、途上国として枠外にあり、それぞれ2060年、2070年をカーボンニュートラル達成目標年としており、途上国の仮面をかぶった大国が、パリ協定を利用して先進国を抑え込もうとしていると言えなくもありません。

 著者はこのような流れを見て、再生エネルギー政策は衰退すると指摘し、企業もこの流れに目覚めるべきと忠告します。

<トランプ関税-15%の関税がかけられても、日本製品にはほとんど影響はない->

 著者は、2025年1月に始まり、現時点でほぼ全貌が見えてきたトランプ関税政策を鳥瞰し、次のように定義付けをしています。『アメリカの関税政策は、単なる税率操作ではなく、経済安全保障と国際秩序の再構築を目的とした「協商条約」的な枠組みである。更に言えば、中国依存からの脱却、アメリカファーストを関税により体現するトランプ流政策である』と。因みに、経済安全保障と国際秩序の再構築(アメリカとの関係性の序列)では、イギリスが最上位(10%)、第2グループはEUと日本(15%)と解説します。

 一方、日本の15%の関税については、著者は、「現実的には殆んど輸出に影響しない」と解説します。その根拠として「日本製品は殆どがオンリージャパン、つまり代替の利かないカスタム製品であり、日本から買うしかない。日本は、テレビや白物家電などは、海外向けBtoCは殆どやめている。唯一の汎用品の自動車については、日本車には優位性があるため影響はほとんどない」とします。

 トランプ関税で困るのは誰か、ここでトランプ関税の仕組みを見てみましょう。輸入品に国別の税率で関税を徴収する。それがアメリカ国内価格に転嫁されると同時に税収となる。この税収は、将来、別途給付金として、低所得者を中心にアメリカ国民に給付されます。この様にアメリカ国民は、長い目では、プラ・マイゼロ。日本もほとんど困らない。困るのは中国。トランプ関税の最終目標は「中国依存からの脱却」なのです。

 著者は、鉄鋼、造船で既に始まっているように、アメリカとの戦略的連携を進め、日本経済の成長を促進するチャンスと進言します。

【「後退を続ける中国経済の未来」に関わる、注目リスク】

<中国の意思決定システムが機能していないのか

-国家党首の急な体制変更に注視せよ->

 2025年10月20~23日に中国共産党の4中全会が開催されました。

 通常であれば昨秋にも実施されたはずの4中全会の開催時期は大きく後ずれし、例年のスケジュールに比べて1年ほど遅れて開催された。1年遅れの今回の4中全会では、本来5中全会で議論される第15次5ヵ年計画の基本方針や長期目標が中心の議題になった。また、会議後に公表されたコミュニケでは、現在の第14次5ヵ年計画期間中の中国経済について、『国内・外で困難な状況に直面したにもかかわらず、習氏を核心とする党中央が主導する形で、極めて異例、かつ特色ある経済発展を遂げ、経済、科学技術を含む総合的な国力は新たな段階に躍進して中国式現代化は新たな段階に入り、「新たな百年目標(建国100周年となる2049年までに社会主義現代化強国を建設すること)」に向けて良好なスタートを切った』と評価した(第一生命経済研究所 西濱徹氏2025.10.24記事より引用)。

 また、出席者は315人と昨年の三中全会に比べ、49名減少しており、その殆どは粛清、或いは不正による拘留者とみられています。

 このように、中国は、不動産不況、地方財政の破綻、18%を超える若者の失業状態等々の厳しい経済情勢の中で「極めて異例、かつ特色ある経済発展」と評価し、さらには、出席者の減少要因に見られる政治の不安定などに加え、習主席の糖尿病の悪化が囁かれるなど、厳しい政治状況にあります。

 著者は、このような政治状況を踏まえ、“中国の意思決定システムは機能していない、国家党首の急な体制変更に注視せよ”と指摘します。

<レアアースの過剰生産で自滅する-中国の過剰生産品に注意->

 米・欧・日の経済は、レアアースを中国に依存しています。これは、コスト面から中国にかなわず、他国が採掘と製造を止めたことによります。つまり、中国では環境保全を考慮する必要がなく、安価な露天掘りが容認されているものの、環境基準の厳しい、米・豪などでは、採掘コストが跳ね上がったことが要因です。

 中国リスクを回避する「レアアースの新たなサプライチェーン」構築のため、トランプ米大統領は2025年10月20日に、オーストラリアのアルバニージー首相とホワイトハウスで会談し、レアアースおよび重要鉱物に関する協定に署名しました。双方が発表した合意文書によると、両国は向こう6カ月でそれぞれ10億ドルを採掘・加工プロジェクトに投資するほか、採掘業者が長らく求めてきた重要鉱物の最低価格を設定するという内容です。この合意と、レアアースについての日米首脳合意(10月28日の「重要鉱物の供給確保への協力文書」)における、「今後6カ月以内に米国、日本および志を同じくする国々への最終製品供給を目的とした、特定のプロジェクトを、金融面で支える措置を取る」とが繋がっています。

 著者は、中国が2025年4月及び10月に発表したレアアースの輸出規制(許可制)を、10月30日の米中首脳会談の合意に基づき1年間停止(2026年11月10日まで)した現状を分析し、次のように指摘します。

 「中国のレアアース関連企業は、米・欧・日の中国産レアアース回避が進む中で、2010年当時(日本に対するレアアース規制により、レアアース関連企業の9割が倒産した)より、更に深刻な過剰生産に直面しており、これによる、供給リスク、武器化リスク、廉売リスク(デフレ輸出)を回避すべく、同志国による安定供給網の構築が重要である」と。

 この度の米・豪・日の合意は、レアアースの安定供給網構築を大きく前に進めます。特に、最低価格設定の合意は、このプロジェクトの実効性を高めています。

 かかる政府間合意に加えて、米・欧・日の企業・政府が、レアアース調達先多様化に向けた“仕組み作り”に取組み、レアアースの安定調達を確実にするチャンスでもあります。

 

■         予測されるリスク・ピンチをチャンスに(むすび)

 紹介本1.では、39のリスク予測の各々の括りとして、「リスク・ピンチをチャンスに切り替えるヒント」が書かれています。ヒントを参考に、ビジネス・チャンスを掴みましょう。

 また、紹介本1.の補完章として引用させて頂いた、紹介本2.の「日本をもう一度、世界のてっぺんへ」から、未来の日本への希望を読み取りましょう。

 

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

http://sakai-gm.jp/index.html