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早春。
これから暖かくなって、わたしたちにとっては「春眠暁を覚えず」という季節がやってきますが、寝てはいけないのに「眠い」と困ったり、眠りたいのに「眠れない」と悩んだり。
朝起きられない子どもに「早く起きなさい!」、夜眠らない子に「早く寝なさい!」と、ついつい声を荒げたり。
我々人類にとって睡眠との付き合いは、ときになかなか難しいものですね。
今日は、眠りにまつわる絵本を紹介します。
「ねんころりん」
ジョン・バーニンガム さく 谷川俊太郎 やく
ほるぷ出版 2020年(新版)
表紙には、ボートにのって、眠そうに目をこする男の子の絵。
その表情と、美しい青と緑と白の調和に惹きつけられました。
ページをめくるたびに、ねこ、赤ちゃん、クマさん、魚、男、ガチョウ、カエルが順番に登場し、その誰もが眠くて仕方がないようです。
お話が進んで、真ん中までくると
「もうくたびれた
よこになりたい
もうすぐよるだよ ねるじかん
あさがきたら
もういちどおきる
あしたはまっさらあたらしい」
という場面があり、ここがお話の折り返し地点。
ここからまた、ページをめくるたびに、ねこ、赤ちゃん、クマさん、魚、男、ガチョウ、カエルが順番に登場し、それぞれが安らかに眠る場面が展開されていきます。
そこでは、それぞれがそれぞれの場所で心地よい眠りに落ちているようすが、明日への希望を感じさせながら描かれていて、読んでいくにつれあたたかな気持ちが満ちてきます。
最後は
「だれかさんもおふとんのなか
あしのさきまでほっかほか
かぜもあめもここまでこない
あたまをゆったりまくらにのせて
もうすぐねむりの
くにのなか
ねんころりん
ねんころりん
ころりん」
と結ばれます。
お話の構成がはっきりとしている安定感の上に、ページをめくるたびに違う動物や人物が登場するので、「次は誰かしら?」という変化の楽しがあり、それが心地よいリズムを作っています。
加えて、前半はどの場面も「ねんころりん」という言葉で結ばれいるので、読んでいくととても調子がよいのです。
そんなところがまるで子守唄のよう。
子供を寝かしつけるのにぴったりの絵本ですが、ジョン・バーニンガムの絵の、力の抜けて軽やかで的確な線としゃれた色使い、谷川俊太郎さん訳のユーモアを感じる文章は、大人が読んでも楽しめるものだと思います。
眠る前の静かな時間に読めば、安心して満ち足りた気持ちで目を閉じることができそうです。
「あたらしいあした」に向けて。
ぜひ手に取ってみてくださいね。
なお、この絵本の初版は2001年に出版されていますが、今回ご紹介したのは2020年に新たに出版された新版です。
ジョン・バーニンガムは1937年イギリス生まれの作家。数多くの絵本を世に送り出しています。
彼の作品を詩人ならではの感性で、楽しくリズムよい日本語に訳しているのが谷川俊太郎さん。
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