私たちsakaguraは絵本専門士2人のユニットです。働く大人にも絵本を届けたいと願い、活動しています。

 

 

 

 

ステイホーム週間ということで、家にいる時間が長くなりますね。家にいる時間が長いと、いつもよりゆっくり、本を読んだり、料理をしたり、それから、自分のことを振り返ったりする時間も長くなります。そんなときにこの絵本を。

 

 

「なんにもできなかったとり」

刀根里衣 NHK出版 2015年

 

 

 

 

 

左にシンプルなテキスト、右にとーってもかわいらしく丁寧な絵。

 

生まれるときに殻を割るところから、何をやってもうまくできない鳥が主人公。一緒に生まれた兄弟たちと一緒に、きのみをとったり、泳いだり、歌ったり・・・何をやっても、一羽だけ上手く出来ないのです。

 

しまいには、上手く飛べなくて、風船で空に浮かんで、飛んでいく兄弟を追いかけますが、空気が抜けて仲間とはぐれてしまいます。

 

 

 

ああ、どうしてぼくだけ なんにも上手に できないの?

 

 

 

と夜の草はらに座り込む鳥。そこで出会った花に、花の子どもたちが安心して花を咲かせる場所がなくて困っていると聞いて、

 

 

 

ぼくの体なら どこへも飛ばされずに 花を咲かせられるよ。

 

 

 

という鳥。鳥は花の子どもたちを抱いて守り続けます。雨の日も風の日も雪の日も、花の子どもたちを守り続けて・・・花を育む鳥の愛の力で、最後の場面は美しい花が溢れます。

 

刀根里衣さんhは1984年福井県うまれの絵本作家。この本は、Questo posso farioというタイトルでイタリアで日本より先に出版されました。ボローニャ児童書ブックフェアに持ち込んだサンプル絵本がイタリア人編集者の目に留まり、出版が決まったということですが、この鳥は、当時、無力感を抱いていた作家自身であったということです(NHK出版ホームページより)。

 

結末は少し切ない気持ちになりますが、落ち込んでいる人への刀根里衣さんならではのエールの送り方なのだと思います。