「ちいさなふたりのいえさがし」たかおゆうこ作 2020年 福音館書店 定価400円

 

絵本専門士2人のユニット、sakaguraです。

働く大人にもぜひ絵本を届けたいと願い、活動をしています。

 

先週のブックレビューは、書店で手にとりやすい福音館書店の「たくさんのふしぎ」を紹介しましたが、

続けて「こどものとも」(3月号)の「ちいさなふたりのいえさがし」を。

 

 

以前、ブックレビューでたかおゆうこさんの「くるみのなかには」を紹介しましたが、

くるみのなかには

あの中のくるみの家が、また1冊の絵本になっていますラブ

(余談ですが、図書館に「くるみのなかには」を借りに行った母は、

司書さんに「こんな素敵な絵本をどうやって見つけたんですか?」と聞かれたとか…)

 

主人公はちいさなちいさな「おじいさんとおばあさん」。

住んでいたくるみの家が壊れてしまい、最初はいちごの家、次はすいか、そしてりんご…

と季節にあわせて家を作り直していきます。

時の流れとともに、果物は朽ち果て、家も壊れてしまう。

けれど、2人は怒ったり悲しんだりもせず、新しい家での生活を楽しんでいくのです。

 

 

安野光雅さんを思い起こさせる、丁寧で繊細な絵。

「くるみのなかには」は、見開き1ページに美しく描かれた絵を、次は何だろうと想像しながら、

驚きとともにめくっていくというような絵本でしたが、

こちらの絵本はおじいさんとおばあさんの2人が、何度も新しい家を作りなおし、

そこでの生活を味わい楽しんでいくという物語性のある絵本となっていました。

 

決して壮大なストーリーではないのですが、読み終えると勇気が湧いてくるような気がします。

なぜだろうと考えたとき、いちごも、すいかも、りんごの家も、どれも本当に美味しそうで、

楽しそうに描かれていることに気づきました。

 

前向きに新しいアイデアを提案するおばあさんと、

「ほうそれはいい考えだ」と言いながら、すべてに従うおじいさん(笑)

この関係もいいのかもしれません。

 

予想もしなかった危機を迎え、ともすれば不安に陥りがちな日々。

家からあまり出られない今の生活の中に、楽しみを見つけたいと思わせてくれる素敵な絵本でした。