私たちsakaguraは絵本専門士2人のユニットです。働く大人にも絵本を届けたいと願い、活動しています。
前回担当したブックレビューで「はなをくんくん」を紹介して、寝ぼけ眼のくまの絵を眺めていたら、次はこの本を紹介したいなぁと思いました。
「くまさん」
まど・みちお詩
ましませつこ絵
2017年2月25日 こぐま社
「ぞうさん」「ふしぎなポケット」などたくさんの童謡や詩で有名な、まど・みちおさんの詩「くまさん」に、わらべうた絵本などを多く手がけている、ましませつこさんが絵をつけました。短い詩なので引用します。
くまさん まど・みちお
はるがきて
めがさめて
くまさん ぼんやり かんがえた
さいているのは たんぽぽだが ええと ぼくは だれだっけ
だれだっけ
はるがきて
めがさめて
くまさん ぼんやり かわにきた
みずに うつった いいかお みて
そうだ ぼくは くまだった
よかったな
出所:まど・みちお詩 ましませつこ絵「くまさん」2017年2月25日 こぐま社
わかりやすい短い詩、やさしい絵のトーン。小さな絵本ですが、いろいろな工夫がつまっているなぁと思います。例えば・・・
2回繰り返される
はるがきて
めがさめて
では、比較的遠景から、山の中のくまさんの姿を描き、くまさんは山の巣穴から冬眠から覚めて、ゆっくり外に出て歩いているのだなとわかります。それ以外のところでは、自分がだれだかわからなくてとまどっているくまさん、自分がくまだとわかってほっとするくまさんを大きく描いています。カメラのレンズを引いたり、近づけたりするように、遠景と近景を描くことで、くまさんがおかれた状況とくまさんの中の気持ちの動きをいったりきたり、描いています。
また、1回目の「はるがきて めがさめて」は、「はるがきて」に見開き2ページ、「めがさめて」に見開き2ページを使った、ゆったりとした場面展開。寝起きでぼんやりしているくまさんのゆっくりしたペースが伝わってきます。
2回目の「はるがきて めがさめて」は、「はるがきて めがさめて」で見開き2ページ。くまさんの目が覚めて頭もはっきりしてきたのか、すこーし、スピードアップしています(笑)。
「ぼんやり」や「よかったな」の繰り返しリズムもここちいいですね
小さい子どもと読むのも楽しそうですが、大人が一人で読むのもよさそうです。春のほわっとした空気を感じさせる、ましまさんの絵を味わいながら、声に出して読んでみてください。
まだまだ寒くて縮こまっている体や、忙しい仕事で緊張しがちな頭。ましまさんの絵とまどさんの詩のリズムで、ふわっと緩んでくるのをが感じられると思います
そうだ ぼくは くまだった よかったな という最後の一節も、平和で幸せな読後感を残してくれるでしょう
銀座教文館の児童書売り場ナルニア国のギャラリーでは、この絵本の原画展が開かれる予定と聞きました。絵本をみて気に入った方は、足を運ばれてはいかがでしょうか。
ましませつこ『くまさん』(こぐま社)原画展
会期:2019年3月1日(金)~4月7日(日)
くわしくは、ナルニア国のホームページをご覧ください。こちらをクリックしてください。