「最初の質問」詩・長田弘 絵・いせひでこ 講談社 2016年第10刷 1500円

 

雨続きだった10月とはうってかわって、今日の東京は青い秋の空が広がっています。紅葉もすすんで、深呼吸して透明な空気を吸い込みたくなります。

 

前回のブックレビュー「綱渡りの男」と、今日の青空から、この本を思い出しました。


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「今日、あなたは空を見上げましたか。


 

   空は遠かったですか、近かったですか。」



 

で始まる、「最初の質問」。


詩人の長田弘さんと画家・絵本作家のいせひでこさんのコラボから生まれた絵本です。

 

最終ページを除いて、どのページも、いせひでこさんの絵が見開きで広がっていて、絵の世界に吸い込まれそう。そこに詩の一節が添えられています。

 

詩の中ではいくつかの質問投げかけられます。


それは、忙しく仕事をしていると忘れているけれど、私たちの中で問われるのを待っている問い。私には、そんな風に思える質問です。

 

詩をアトリエの中に貼って、それにふさわしい絵を考え続けたという、いせさんの絵は、この世界の美しさを切り取っていて、場面の中で、


吹いている風


聞こえてくる音


空気の冷たさ


手触り・・・


そんなものまで含めた広がりと奥行きを感じさせます。

 

この本で問われる問いの中には、すぐには答えられないようなものも含まれています。


ただ、その答えをすぐに言語化することができなくても、画面に広がる絵をみながら、そんな問いかけを受けるだけで、自分の中になにかが生まれ、自分が刷新される。そんな気がします。

 

仕事に直接役立つものではないけれど、こういう質問を自分の中で転がしながら絵を眺める。


そういう時間を持つことも、幸せに働き、生きていくことに、どこかでつながっているように、私には思えます。