『あのこは貴族』感想文 シスターフットムービー① | riririのブログ

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秋の夜長に映画を二本観ました、『あのこは貴族』と『鴛鴦歌合戦』です。

 

あのこは貴族[2021年製作]

ストーリー

都会に生まれ、結婚こそが幸せという価値観を抱く20代後半の榛原華子(門脇麦)は、結婚を意識していた恋人に振られてしまう。名門女子校時代の同級生たちの結婚や出産を知って焦る彼女は相手探しに奔走し、良家出身で容姿端麗な弁護士・青木との結婚が決まる。一方の時岡美紀(水原希子)は富山から上京して慶應大学に進むものの中退、働いていてもやりがいを感じられず、恋人もおらず、東京で暮らす理由を見いだせずにいた。全く異なる生き方をしていた2人の人生が、思わぬ形で交わっていく。

都会の異なる環境を生きる2人の女性が、恋愛や結婚だけではない人生を切り拓く姿を描くシスターフッドムービーの新境地とも言える作品。〈公式ホームページより〉

 

“シスターフッド”とは女性同士の連帯という意味らしいです。

 

この映画の伝えたいこと

多分この映画が伝えたいことはこの3つのことなのではと思いました。

『あのこは貴族』という題名のとおり東京は階級社会だということ。

どの階級に属していようが皆それぞれの悩みを抱えて生きていること。

女性同士がお互いを尊重し合って自分らしく生きていくことの素晴らしさ。

 

ラスト、華子は社会的地位のある夫と離婚し友人のバイオリニストのマネジャーとなります。美紀は仕事辞め、地元の友人とともに自分たちの会社を起業しようと決めます。

おそらくは2人が選んだのは前途多難な方の道。でも、自分で決めた道だから2人とも困難に立ち向かい前向きに生きていくのだろう。そう思える爽やかな結末でした。評価の高い映画だった理由がわかりました。

 

確かにそうだと実感したこと

同じ東京に暮らしていても階級の違う人間同士が交わることはない。

同じ東京で暮らしていても全く違う景色を見て生きている。

…確かにそうなのだろうと思いました。

 

私も東京出身なのですが、そもそも住んでいるところが違うんですよね。松濤だの白金だの田園調布だの、いわゆる“高級住宅街”は全くの別世界でした。

 

もし私が学年一の成績だったり、超絶美人だったりしたらね。

学費免除の特待生扱いで華子が通うような名門女子高校に入学したり、美紀のように大学から慶應を受験したり、あるいは“玉の輿婚”を成就!させて、上流階級の人たちと接触する機会があったかもしれません。

 

でもそんな特別な人間でもない限り、大多数の人たちは自分の属する階級以外の世界を知らず、そして自分たちの世界の中だけで生きている。確かにそうだと共感しました。

 

2つ台詞が足りない

女性が連携して協力していく、恋愛や結婚だけではない人生を切り拓く。

この映画を素直に感動するために、あと2つ台詞を足したいと思いました。

美紀の台詞、華子の台詞それぞれ1つずつです。

 

美紀の台詞

女子会の誘いだと思って出かけてみると、自分が長年付き合っていた男の婚約者が現れる。男は名門の家柄で最初から自分と結婚するつもりはないのは分かっている。なのに10年もズルズル付き合ってしまった。


結婚が決まった=別れる。美紀がその場で即決できたのは理解できます。でもね。一人の男性を巡って女性同士がいがみ合うのが本意で無いとすると、素朴な疑問としてその婚約者に聞きたくなると思うのです。

 

彼はきっとあなたと結婚しても私と今までどおり付き合えると思っている。そんな人と結婚して平気なの?

 

初めて会った時、華子は美紀に茶封筒に入れた雛祭り展のチケットを渡します。

通常の展開だったらね。ここは“母から預かりました”とか言って、白い封筒に入った手切れ金を渡すドロドロの場面だと思うのです。


でも華子はそんな人を見下したような行動をする人ではない。このためだけにここに来てもらって申し訳ないとの思いから、雛祭り展チケットを渡す。しかもその行為が、相手に“良家の子女”感を見せつけていることに気づかない。ある意味おめでたいお嬢様です。


だったらなおさら彼女のためにも、「余計なお世話だけど大丈夫?」と聞きたくなると思うのです。そして華子から「彼を信じたい」って結婚に前向きな返事が返って来て、初めて「もう会わないから安心して」と言えると思うのです。

 

華子の台詞

自分自身で納得して結婚したつもりだった。

でも頭で分かっていても気持ちが付いて行かなかった。

彼と一緒にいても一人でいるより寂しかった。

 

美紀と再会した時に言って欲しかった台詞です。離婚の決断がとても唐突に感じられたからです。 

 

何度目かのお見合いの席で職業を問われた時、華子は“家事手伝い”と答えます。

婚活の条件でも無職が敬遠される時代に、“家事手伝い”という言葉、もう死語だと思っていました。今の感覚だと“実家住まいのニート”ですよね。

でも華子は、“家事手伝いっていったい何してるの?”って聞かれても、“家のことをしたり母と出掛けたり”と悪びれずに答えます。むしろ堂々とさえしている。

 

それってきっと、“いずれ自分は然るべき家柄の人と結婚し家庭を守っていく、それが私の仕事”という確固たるものがあるからだと思ったのです。

 

若いといってももう27歳。お見合い。

一方的に婚約破棄されたあと、結婚に焦り闇雲に見合いを繰り返すが、相手との“階級”の格差に驚き失望するばかり。そんな中、義理兄の紹介で会った幸一郎は初めて自分と同じ世界に住む人と安心できる“物件”


いずれ幸一郎が伯父の地盤を継いで選挙に出ることも、9時5時土日休みの仕事ではないことも、“跡継ぎ”が必要なことも、ある程度予測できると思うのです。“家庭を守ることが自分の仕事”という覚悟があるなら、この環境のなかで自分が何を求められ何をすべきか、まずはそれを考えると思うのです。

 

ところが、政界入りを聞かされて“聞いてなかった、話して欲しかった”とショックを受け、幸一郎の忙しさを嘆き、義母の不妊治療の勧めを理不尽に思う。

そして、所在無げな様子に“君の夢はなんなの?”と夫に問われ、仕事の斡旋を姉の夫に頼み夫婦で良く話し合ってと諭される。なんだか中二病というか自分探しの迷走状態です。

 

このままでいくと女子校時代の同級生から、「相手の家柄が良すぎたのよ。身元を調べたと平気で相手に言う時点でこうるさい親戚がいる格式高い家って分かるじゃない。開業医くらいの“普通の家柄”にしておけば、華子ももっとお気楽に楽しく暮らせたのにね〜」と同情されて終了の“世間知らずのお嬢様”の失敗で終わってしまいます。

 

でもね。努力ができるのも頑張れるのも相手との信頼関係があってこそ。どんな世界でも新人さんには説明とフォローが必要だと思うのです。


幸一郎はけして悪い人ではないのでしょうが、妻なら当然とばかりに自分の仕事に没頭し、慣れない環境に戸惑う華子に寄りそうことをしなかった。それは寂しいし悩みますよね。

それが分かる台詞が一言あると、華子の選択をより理解できたのではと思いました。