月組鳳月杏さん主演の『NINE』初日を観劇しました。ダメ元で申し込んだ文化村オンラインチケットに当選したのです。
フェリーニの世界
観劇しながら“フェリーニ”の世界だなぁと思いました。『NINE』の原作となったフェデリコ・フェリーニ監督の1963年製作の映画『8 1/2』。学生時代にリバイバル上映された映画を観たことを思い出しました。
大昔のことなので細かい内容は忘れてしまいましたが、おもちゃ箱のようなポップなセットのなかで主人公が夢か現実か定かではない数々の受難に巻き込まれ翻弄され右往左往する。そんなストーリーだった気がします。コメディタッチで寓話的な要素の多いストーリーなのに決してハッピーエンドではない。シュールというか掴みどころのない怖さを感じた映画でした。
すでに名作と評価が定まっていた映画でしたが、突き詰めると結局感想は「何だかサッパリ訳が分からん」だったです。
でね、その当時、サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」とか別役実とか不条理劇と言われるものが流行っていたので「きっと不条理ってことなのだろう。だから訳が分からないのだろう」と何となくウヤムヤに納得した記憶があります。
ちなみに今ネットで調べたところ不条理劇とは「人間の生や世界の不合理さ・無意味さを舞台上で体感させる演劇。筋の分かりやすさより、なぜ?という不安や違和感を重視する」ものだそうです。
月組の『NINE』は
スランプに陥った鳳月杏さん演じる映画監督のグイドが妻と療養に出かけるがそこに今までの人生で関わった女性たちが出現して‥という展開だったと思うのですが、“過去と現在”“夢と現実”が錯綜して、正直、フェリーニ同様「サッパリ分からん」状態でした。
突き詰めて考えるにも体力が要りますから、途中からストーリーを追うことや演者同士の関係性を理解することを諦め、男役が女性を演じていてビックリ、ポップでカラフルな舞台装置がステキ、照明が良い、衣装が斬新とその場面ごとの展開を楽しむようにしていました。
舞台上のどこかチグハグで噛み合わない会話もね。鳳月杏さんを中心とした演者の皆さんの熱演もあって「皆がそれぞれ自分の境遇や心情を披露し合っている訳ね。つまり“青年の主張”のミュージカル版みたいなものなのね」と思って観てました。
どなたかが『8 1/2』について、過去、現在、現実、妄想と起った出来事を仕分けして見ると分かりやすいと書かれていて“なるほど!”と思いました。フェリーニも「理解?この映画は理解するものじゃない。感じるものだ」と話していたそうです。
そして『8 1/2』同様、『NINE』もまたトニー賞10部門でノミネートされ5部門で最優秀賞を受賞し全世界で何度も上演され続けている人気のミュージカル作品なのですよね。つまり大勢の人に素晴らしいと評価されている演目ということ。
きっと演劇愛好家の方々は単純明快なストーリーより、観劇後にもやもやした気持ちが残りその気持ちを引きずって何度も逡巡を繰り返す‥そんな重めなストーリーに見応えと魅力を感じるのでしょう。
でもね。おそらく私は宝塚の公演でなければ『NINE』を観ることはなかったと思います。単純な人間なので主人公に感情移入できにくいストーリーは分からないし苦手だからです。
やっぱり私はトップスターによるお芝居とショーの華やかな宝塚公演が一番好き‥なのでこの秋の異文化体験の一つになりました。










