私は上田久美子さんのファンです。
特に、月組の珠城りょうさん主演のショー『BADDY』
観終わった瞬間、
良いのか、悪いのかも分からない。だけどもう一度観たい!今すぐに観たい!
って、熱に浮かされるように思ったのです。
しかし、残念ながら、今回はその感動を味わうことが出来ませんでした。
予感は少しあったのです。
これまで私が観た上田久美子さん演出のお芝居は、雪組『星逢い一夜』花組『金色の砂漠』宙組『神々の土地』です。
いずれも予備知識なく観劇したのですが、一瞬でその世界に惹き込まれました。
そしてね。この3つの舞台には、三部作と言っても良いくらい共通点があると感じたのです。
星逢は農民の一揆、金色は復讐、神々は革命と、愛する二人を引き裂く背景がありました。
そして藩主、王族、皇族と立場は違えど、皆その流れの中心にいて逃げ出すことが出来ない運命にありました。
また、女性は、皆、既婚、もしくは未亡人で素直に愛に応えられない葛藤がありました。
それでも愛を貫こうとすれば二人に悲劇が待っている。
星逢は、愛する人の夫を殺め、農民一揆の責任を取って陸奥に改易となり、
金色は、愛する人を追って、砂漠を彷徨いともに死に、
神々は、革命によって愛する人を殺され、祖国を追われます。
ヒロインの衣装が、すべて美しいBlueであったのも象徴的です
観ていて苦しいし、だからこそ美しいし、終演後も想いが残りました。
それとともに思ったのです。
この物語は既に完成されている。
聡明な上田久美子さんが、このままこの場所に止まって満足するとは思えない。
さらなる高みを目指して別の次元に行ってしまうのではないか。
そして、私はそれについていけないのではないか。
この気持ちは…
学生時代、村上春樹が好きで良く読んでいた。しかし、ある時期(世界の終わりとハードボイルドワンダーランド)から、「もう私の能力では理解できない、ついていけない」と諦めた。その心境に似ています。
その後、村上春樹さんはベストセラーを連発し世界的な人気作家になった訳ですから、これが私の限界だったのでしょう。
どうも、私は登場人物、特に主人公に感情移入出来ないと、作品を受け入れられないみたいです。
『f f f-フォルティッシッシモ-』もそうでした。
望海風斗さん演じるベートーヴェンの行動が支離滅裂で、会話が観念的すぎて、例えば、ナポレオンとの会話はまるで禅問答のようで感情移入できず、つまり作品に魅力を感じることが出来ませんでした。
幼少期父に虐待され、青年期女性から全く相手にされず、聴力を失い、ベートーヴェンの一生は苦悩の連続だったけど、素晴らしい作曲の才能に恵まれ、絶望の底に歓喜を見出す。これがあらすじで良いのかしら。
謎の女は内なる声?
絶賛しているBlogもあるので、東京公演をもう一度観てみたいと思うのですが、自分の限界を再認識する観劇になるかもしれません。