そろそろ来るかな、とホトトギスを待っています。例年、数度、家の前の緑道にやってきてキョキョッと鳴いて去ってゆくのです。「時鳥きょっきょとばかり鳴きにけり」は正岡子規ですが、彼は300余りのホトトギスの句を残しています。それだけでなく、ホトトギスにかかわる詩歌、文章を収集した「八千八声」というノート(書き抜き)を残しています。これは改造社版子規全集の第20巻のほとんどを占めています。喀血にちなんで子規=ホトトギスと名乗った子規は、ホトトギスという言葉を身体化した、と言ってもいいと思います。ある言葉を身体の一部のようにすること、つまり自分の感覚の一部のようにしてしまうことが言葉の身体化です。

ちなみに、ホトトギスの「ス」はカラス、ウグイス、カケスなどの「ス」と同じく小鳥を表わす語です。