松の内狐になりきって踊る   池尾由美子

初明り一つ躰のある摂理   稲用飛燕

初茜住んでる街の遊園地  植田かつじ

去年今年一六タルトの渦の中  河野けいこ

一月の呼吸整う畳の目  北原 薫

初夢の寝言に受けて立つ姉は  工藤 惠

手を打てば空飛ぶ象や初笑い  里井貴美子

初釜の私の町の樹木希林  高田留美

読初の蜂蜜色の詩集かな  津田このみ

白鳥におそらく乗っていた今朝は  原 ゆき

苛立つなぽっぺんが割れるじゃないか  弘友於泥 

明けましておめでとうございます。

おだやかな元旦です。世界は気候変動、エネルギー問題、戦争などで揺れに揺れていますが、〈おだやか〉を基調にして日々を過ごすのはとってもぜいたくな、そして品位のある暮らし方かも、と思います。先の地球問題や戦争も〈おだやか〉から遠いわけで、つまり、〈おだやか〉は強い批評性を持っています。老人の私などには〈おだやか〉はことに貴重です。〈おだやか〉を持続するための工夫をこらしたいです。ちなみに、『新明解国語辞典』(三省堂)で〈おだやか〉を見ると、「心の平静や、それまで無事に過ごしてきた毎日の生活のリズムが乱されるような事が無い様子」とありました。無事な生活のリズムを保持するにはいろんな工夫がいりますね。そういう工夫の私たちの実践が俳句を作り言葉を考えることでありたいです。

正月早々理屈をいいました。みなさん、互いにおだやかな年にしましょ。