水野洋子―沈下橋

虎が雨降り出す七ツ申の刻

虎が雨遊女の骸洗い上ぐ

ごぜ五人虎が雨さけ人目避け

虎が雨呆けて渡る沈下橋

甲斐庄楠音越えて虎が雨

 

川島由紀子―山のカフェ

青梅雨の窓辺マティスの赤い部屋

捩花のふわりねじれて風に穴

ジューンドロップシフォンのシャツをさっと着て

山のカフェ夏茱萸三つ食べてから

水色の声であいさつ半夏生

 水野さんの作は一種の時代俳句なのだろうか。情景は江戸時代くらいか。対照的に川島さんは今の都市空間を詠んでいる。沈下橋の句とジューンドロップの句が好きだ。水野さんは京都市、川島さんは滋賀県大津市に住む。