山鳩よみればまはりに雪がふる 窓秋

 高屋窓秋のこの句は昭和9年3月の「馬酔木」に載った。今、川名大の作成した「新興俳句作品年表」を開いてこの句を挙げたのだが、この句は主眼が山鳩、つまり季語ではない語に拠って発想している。窓秋の有名な「頭の中で白い夏野となつてゐる」は夏野という季語が主眼だが、季語でなく非季語で発想することによって窓秋は新しい句境を開いたのではないか。雪の中の山鳩が鮮烈だ。白い夏野の句は光景に魅力を感じないし、理屈っぽい感じがする。ちなみに川名の年表は『昭和俳句の展開』(昭和54年)の巻末に収められている。