蝶墜ちて大音響の結氷期 赤黄男

 

 蝶が墜(お)ちて大音響がする、という表現が意表をつく。小さな蝶と大きな音のこの意外性は子規の「柿くへば鐘が鳴るなり」と近い。そして、その意外性、違和感を「結氷期」が受け止めて句が結ばれる。蝶の落ちる理由、大音響の内実が「結氷期」という語で示されるのだ。もちろん、この語は子規の句の「法隆寺」に相当する。チョウ、オンキョウ、ケッピョウの音のつながり(響き)もこの句の魅力だ。句集『天の狼』ではこの句の直前に「冬蝶のひそかにきいた雪崩の響」がある。この句の説明的、散文的要素を一挙に消したのが掲出句である。