庭中の松の葉におく白露の今か落ちんと見れども落ちず

 松葉と露の歌は、左千夫によって、近代の連作の歌の

始まり、と見なされた。連作の歌は俳句の1題10句を

先蹤とするが、各首がそれぞれに関わり合う連作は近代

短歌に特有のものだ、と左千夫は言う(「続新歌論」明

治34年)。短歌は俳句より長いが、実は1首は単純で

あり、俳句1句の方が複雑で総合的。だから、短歌は必

然的にいくつかの歌が連接する連作を要求する。これが

左千夫の連作論の要であった。だが、松葉と露の歌の子

規は松葉と露の取り合わせを遊んでいる。この歌では、

自分で想像した光景にはらはらしている。