詩人、エッセイストの高橋順子さんが編んだ『日本の現代詩101』(新書館)という本があって、大学の教員だったころ、授業の講読やゼミでこの本をしばしばテキストにしました。この度の書庫の整理にあたって、その本が何冊も出てきました。で、読んで欲しい知人に送りつけました。
書庫の整理はある古書店に委ねました。まだ3分の1が残っていて、明日すべて撤去します。書庫を覗くとついつい、「これ、欲しい」と思ってしまうので、覗かないようにしています。
東雲(しののめ) 尾形亀之助
(これからしののめの大きい瞳がはじけます)
しののめだ
太陽に燈がついた
遠くの方で
機関車の掃除が始まつてゐる
そして 石炭がしつとり湿ってゐるので何か火夫がぶつぶつ言ってゐるのが聞えるやうな気がする
そして
電柱や煙突はまだよくのびきつてはゐないだらう
高橋さんの本から引いた夜明けを蒸気機関車のイメージでとらえた詩ですが、今ではこれはやや問題ですね。石炭を炊くと二酸化炭素が多量に出ますから。でも、あの太陽光発電のパネルや風力発電の風車のイメージ(蒸気機関車にとってかわる現代のイメージ)はなんだか貧困というか蒸気機関車ほどのイメージの多義性を持たない気がします。ここに現代のエネルギー問題があるのでしょうね。
今日の写真は高橋さんから最近に貰ったものです。この本の俳句篇には芭蕉から金子兜太の句までが登場します。「おおかみに蛍が一つ付いていた」(兜太)について、「兜太は大小問わず力いっぱい生きる生きものを愛しました。いまや滅んでしまったかもしれないオオカミに小さな蛍の灯を一つ点じたのは、豪放で野太い声の作者のもつ繊細な愛でありましょう」と高橋さん。賛成です。 ※
今、夜明け前、4時半です。時鳥が鳴いています。