夕方が町に来てをり冷奴   太田うさぎ

 

 句集『また明日』(左右社)から。夕方と冷奴はやや陳腐な取り合わせだが、「町に来てをり」という表現で取り合わせたところがすごい。こういうことが出来る言葉のセンスがすごいのだ。もっといえば、こういうことが出来るから俳句を作る楽しみがある。「傍らのハンカチ白き読書かな」もうさぎさんの作。「傍らの」でハンカチと読書を取り合わせたところがちょっとすごい。

 最近、関東の比較的j若い人から届く句集には左右社版が増えている。俳句の新しい出版社だが、角川書店やふらんす堂という老舗に対して、新しい出版社が登場したのはとてもいいことだ。私などは四国・松山の創風社出版が好きで、地方での地味な出版活動を支持したい気分でいる。

 今日の句の作者は1963年生まれ、「豆の木」という雑誌などを中心に活躍している。今夕はうさぎさんの句にならって冷奴で浅酌する。