目が覚めると腰が痛い。あとで分かったが、これは別途の上半身を起こした状態で寝たのが原因だ(頭の重みが、首にもろにかかる)。
 
 朝は断食、水分も9:00までしか摂れない。

 手術まではずっと本を読んでいた。
 岸久『スター・バーへようこそ』読了。
 
 11:00になった。手術着に着替える。血栓防止とかの靴下もはく。手術は11:30からの予定だ。
 
 12:00。30分遅れで手術室に入る。
 点滴に麻酔が入っている。やがて意識がなくなった。
 
 朝の目覚めのようなけだるさとともに、覚醒した。
 過去の全身麻酔は死を思うほどの意識の断絶感があったのに比べると、あっけないにような気がした。
 
 14:00過ぎ、4人部屋に運ばれる。
 18:00まで酸素マスク、21:00まで点滴を続けなくてはならない。
 
 絶え間なく、血の混じったたんを吐き続ける。
 なんだか目が潤んでいると思ってこすると、それも血だ。鼻がふさがれているので、目からも血が出てくるのだ。
 
 酸素マスクが取れ、トイレに立ってもよいと言われたので、トイレに行った。手洗いの鏡で自分の顔を見る。
 
 鼻、口、目の周りに血の跡がつき、鼻は倍ぐらいにふくれあがり、すさまじい形相だ。
 このまま街を歩けば、一般人はわたしの周りから逃げ、警察官には取り調べを受けることは必定である。
 
 夜、点滴が終わる。
 
 向かいに変な患者がいる。ナースコールも鳴らさず、ことあるごとに大きな声で「おねーさーん」と、叫ぶ。
 点滴が始まると、30分だと言われているのに、「おねーさーん、もおええやろ」と2、3分ごとに叫ぶ。
 消灯になってからも、訳の分からない理由を見つけては「おねーさーん」と叫ぶ。
 
 しかし、この環境と痛みや血があるにもかかわらず、眠れたのは我ながら不思議である。何度か目は覚めはしたものの……。