遅ればせながら
明けましておめでとうございます。

新年早々から、いろいろなことが起こり
今年一年、波乱の始まりとなりましたね…

羽田空港の飛行機事故
北陸の地震の被害に遭われた方々に
慎んで心からお悔やみ申し上げます。



今年も『サイトウ』姓のルーツと
群馬県吉井町の『羊』の謎について
まとめていきたいと思います。
よろしくお願いします。

前回は、「境界」に現れる
『手形』『足跡(形)について書きました。



境界とは、青森県の恐山(おそれざん)のような
「現世」と「他界」…「この世」と「あの世」
との境目(さかいめ)のことで

水が湧く『磐座(いわくら)』
(岩と湧水「岩清水」についても以前書きました)



神が降臨し、神が籠(こ)もる
生まれ変わる、境界の聖域となります。
(磐座を「磐境(いわさか)」表現するのもその為でしょう)


(境界の聖域と巫女の関係について、以前書きました!)

洞窟も女性の胎内の比喩
境界の聖域と見立てられ

先史時代の洞窟にみられる
「手形」を残す行為…
『手形ステンシル』も「境界儀礼」と
いえるのではないでしょうか。

SantaCruz-CuevaManos-P2210651b.jpg 「wikipedia」より

私たちは、出会い分かれの際に
相手を理解し、あるいは理解してもらうために
握手を交わします。

手形ステンシルも、神と接触し
願いを聞いてもらいたいという
古代人の気持ちの表現だと考えています。

  「岩戸神話」活躍する剛腕『天手力雄神』


さて今回は、神名にまさに『手』のつく
『天手力雄神(アメノタヂカラオノカミ)
という神について、みてたいと思います。

「立山」山頂に鎮座する峰本社では
『アメノタヂカラオ』『不動明王』と同一視されています


じつはこの「タヂカラオ神」については
以前に書いたことがあります。
 



最近になって、新しい視点を得たので
もう一度挑戦したいと思います。
(新たにわかったことにけっこう驚きました!)

そもそもなぜ、この神を
調べようと思ったのかというと…

斎藤姓の方が非常に多く住まわれている
栃木県塩谷郡塩谷町船生(ふにゅう)
総鎮守「岩戸分神社」の祭神であるためで



『岩戸分神社(いわとわけじんじゃ)
 (栃木県塩谷郡塩谷町船生8171)
 祭神 天手力雄命(アメノタヂカラオノミコト)



アメノタヂカラオを調べることで
「サイトウ」姓のルーツを知るための手がかりを
得ることができる、と思ったからです。


 


・「アメノタヂカラオ」とは
 いったいどのような神なのでしょうか?

・「境界」と、どのような関わりが
 あるのでしょうか?


今回は、このようなことを

テーマに書いていきたいと思います。


彼は非常に手の力の強い神とされ
アマテラスが岩戸に隠れた『岩戸神話』
岩戸を引き抜き、彼女が岩戸から出る
直接的なきっかけをつくります。




その意味では、世界に光を取り戻した
大きな功労神といえましょう。

またそのときに、引き抜いた岩戸を
投げ飛ばしたと伝えられ

落ちた岩戸が長野県にある
『戸隠山(とがくしやま)になり
『戸隠神社』が誕生したといわれています。


(「戸隠山」自体は、数百年万年前の海底火山の火山岩が
長い時間をかけて地上に隆起し、削られて生成されました)



『戸隠神社(とがくしじんじゃ)
(長野県長野市戸隠3690)

祭神 
奥社 天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)
中社 天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)
宝光社 天表春命(あめのうわはるのみこと)
九頭龍社 九頭龍大神(くずりゅうのおおかみ)



戸隠山は古代からの山岳信仰の霊山で
アメノタヂカラオは、山岳信仰とも
深く関係します。

山岳修験のメッカ「立山(たてやま)」を
神体山とする「雄山神社(ゆうざんじんじゃ)」に
伊邪那岐神(イザナギ)とともに祀られています。

  『天手力雄命』『磐座(岩山)関係する!?


また、アメノタヂカラオを
奉祭する全国の神社を調べてみると
やはり「磐座」を神体とする社に
祀られるケースが多くあり



彼は「岩山」に、とても
ゆかりが深いことがわかります。



『石倉比古神社(いしくらひこじんじゃ)
 (石川県輪島市町野町西時国16-8乙)
 祭神 天手力男命、天石門別神
 「岩倉山」そのものを信仰する。



タヂカラオ神は、岩戸神話で活躍するので
この状況はある意味、当然といえば
当然なのですが…何か釈然としないものが
残ります。


というのも、そもそも神話の記述に
従えば、彼は「岩を破壊する」神とも
理解できるからです。


  『天手力雄命』『岩』意味について


岩戸神話は、アマテラスの籠もった岩戸(磐座)
タヂカラオ神が破壊することによって
彼女が岩戸から出る…その結果
大円団をむかえるストーリーです。



磐座はときに信仰の対象となる
無限の水を生む境界の聖域です。

群馬県中部の室田町(現、榛名町)発行
『室田町誌』によると、巨大な「御姿岩」を祀る
榛名神社には、かつて「奇稲田姫(クシナダヒメ)
一柱が祀られていたと記述されています。
岩に祀られたのが女性なのです。 



また、以前に『石(磐)長姫(イワナガヒメ)
磐座に坐す巫女ではないかと、書きました。

縄文の聖域…岩山に、それを破壊する
が祀られてきたという事実は
どのように解釈すれば良いのでしょうか?

二年前の「アメノタヂカラオ」について
書いた記事では、それは(個人的な考えとなりますが)


「鉱山開発」のためではないかと書きました。



ハードな岩山や奇岩は、火山活動によって
生成されることが多く、鉱物は火山性由来なので
貴重な金属や石(サヌカイトや黒曜石など)
埋蔵している可能性が高いからです。

ヤマト王権が拡大する過程で、全国の
莫大な利益を生む鉱山を求めたのは
自然なことで、東北の「蝦夷(エミシ)」討伐も
東北の黄金を求めてとの説があります。



そして当然、全国の各地の聖山(鉱山)には
土着のもともとからの、山々を信仰する
人びとがいたのではないでしょうか。

その聖山を開発する(削る)ための神話が
岩戸神話ではなかったかと考えています。

  『アマテラス』関係性をもつ『天手力雄命』


『古事記』によれば、アメノタヂカラオは
「佐那(さな)の地に鎮座する」と記され

三重県佐那の地には、天手力雄命を
主祭神とする『佐那神社』があります。



『佐那神社(さなじんじゃ)
(三重県多気郡多気町仁田156番地)
主祭神 天手力男命
    曙立王命(あけたつのおおきみのみこと)



『古事記』の記述に従えば、この佐那神社が
アメノタヂカラオを祀る本社といえそうです。

この佐那神社は、伊勢神宮の式年遷宮と
同時に造替に預かる神社で、神宮の古材の
払い下げを受け、その材を用いて社殿の
造り替えをおこなう、アマテラスを祀る
「伊勢神宮」と非常に関係の深い神社です。

また伊勢神宮・内宮の『皇大神宮(こうたいじんぐう)
においても、アマテラスの相殿神として
天手力雄命が祀られ、アマテラスとの関係性の
強さがここにも現れています。

次回はその理由について
検討したいと思います。


それには、アメノタヂカラオがもつ別目…


『多久豆魂命』
(おおくずたまのみこと、たくづたまのみこと)


これがヒントになります。



続きます。