前回からの続きです。




日本には星の神話が少ないと言われます。
しかし、全国各地に隕石の降臨伝承があり

かつて日本には

『星の神話』
『星を信仰する人々』が存在した
と書きました。


引き続き

『常陸国(現在の茨城県)』に


かつて存在した『星信仰』の痕跡を

探したいと思います。





日本の歴史において、星神は服従させるべき神
「まつろわぬ神」とされているとも言われます。


平安期に北辰(北極星)夜祭りの禁止令が何度も出されおり、風紀上の理由とされるが、裏を返せばそれだけ庶民の間に浸透していたとも言えます。





さて

今回は「隕石」「流星」の比喩…




『速玉』『速い玉』がキーワードです。




茨城県日立市にある「泉神社」を

みてみましょう。





『泉神社』

(茨城県日立市水木町2-22-1)



祭神 『天速玉姫命』

   (あまのはやたまひめみこと)



 


今回は、水の女神とされる


『天速玉姫命』


についてです。


神名に『速玉』が見えますね!

星神の気配は、ありますでしょうか?



 泉神社は、『延喜式神名帳』

「天速玉姫命神社」に比定されており



境内には、きれいな湧水がわき




神域『泉が森』


( 以下、画像 日立市公式シティ
   プロモーションサイト「ひたち風」より引用 )



『常陸国風土記』には


「密筑の里の大井」と記述されています



この水の湧く、境内の泉ヶ森は

県の史跡に指定されています。



 祭神の『天速玉姫命』



清泉の美称を意味し、大井という湧泉が

神格化した神と考えられています。



美しい『水の女神』ということですね。



 ところで


縄文人は湧水を好み

湧水のわくところには、縄文遺跡が多く


『縄文神社』には

湧き水があるところが多いです。


ちなみに縄文神社』とは?




武藤郁子氏の著書 『縄文神社』

から、お借りした言葉です。


その著書の中で

「縄文神社」とは

「縄文遺跡と神社が重なっている場所」とし


数千年から一万年もの間

紆余曲折ありながらも、人々の「祈りの場所」で

あり続けているという、世界的に見ても珍しい場所ー


そんな神社を、私は敬意を込めて

「縄文神社」と呼ぶことにしました。




とあります。


きわめて、古い縄文時代から

数千年から一万年もの長きにわたり

祈りを捧げられてきた場所…

人類史でもみても、まさに驚異的な


『奇跡の祈りの場所』のことですね。



現代は蛇口をひねれば

すぐに水が飲めるので

実感しにくいですが滝汗


水は人類の基本ですよね!

(断水すると、とても困りますゲロー)



古代の人々は


とても美味しい湧水がわく場所を好み

『神のいる聖なる場所』と考えたのでは

ないでしょうか。



もっと言えば、水が湧くことそのものを

神の奇跡と考えたのではないでしょうか。


この泉神社の女神の由緒をみると

そう思えます。



以前に、『日本書紀』に記載された

常陸国(現在の茨城県)


『星神・カガセオ』の別名が



『天津甕星(あまつみかぼし)

(『甕』は、「水や酒を容れる容器」を意味)



『甕(かめ)』


 このように

星神カガセオの別名に

『水』『酒』を容れる容器の意味があり



 星に、水や酒?


…これだけでは

まったくの意味不明ですが



この泉神社の祭神

『天速玉姫命』


 この女神をながめてみることで

(私は『速玉』は隕石~星神の比喩だと思っているので)


『甕星(みかぼし)の謎ー


言い換えると、『星と水との関係』



古代の縄文の人々の原始信仰を解明する

何かしらの手がかりになるのでは

と考えています。




 


さて、この水の女神とされる


『天速玉姫命』についてながめてみましょう。


 

『天速玉姫命』について

 (「wikipedia」より)





 『日本三代実録』では「姫」の字がない

「天速玉神」について言及がありますが


『式内社調査報告』などでは

天速玉姫命と同神と見なしてよいとしている。





 さらに

茨城県に伝わる伝承…

「ひたちの民話」では





 この天速玉姫命に関わる伝説があり


はるか昔、この森に神社も泉もない時代

密筑の里では日照りが続き、雨乞いの祭をしたところ



天から人間の頭ほどの水晶玉が降ってきて

落ちた場所から泉が出た

と伝えられています。





境内に『水晶玉』を模したオブジェクトがあります。



『泉のはじまり』
天から美しい玉が落ちてきました。
すると玉の落ちた大地が裂け
水がこんこんと湧き出しました。





水晶玉が降ってきて、泉がわくというのは

とても不思議で面白い伝承ですね!



 実際に境内で、とてもきれいな泉があり

こんこんと水が湧いています。




 この湧水と古代の人々の信仰については

全国いたるところにその伝承があり


『龍神』はもちろんですが

『蛇』の伝承も、散見されます。




 


山形市の山辺町にある、子安神社には

竜神が飛来したという伝承があります。


境内に

「里の名水・やまがた百選」に選定された

『龍神水』が湧いています。




 


また、奈良県御所(ごせ)市に


『蛇穴』と書いて

「さらぎ」と読む地名があります。



この地には野口神社が鎮座し


「蛇穴の蛇曳(じゃひ)きの汁かけ祭」

というめずらしい祭りがあります。



藁で作った蛇綱を引いて

かつては見物人にみそ汁を

かけていたようですが


現在は出発時に汁かけ儀式を

行っているようです。




「御所市公式ホームページ」より


蛇穴村には古くから竜神信仰があり


神社の南西に年中絶えることのない

湧水が下流の村の灌漑用水として

大切に活用されてきました。


当社はこの湧水の守り神として

奉斎されたと伝えられています。





こちらのケースは


地名が『蛇穴』で、『竜神信仰』

古くからあったと記載されています。

(※蛇と竜は関係するのでしょう)






また大阪府にある

全国『住吉神社』の総本山


『住吉大社(すみよしたいしゃ)』

 (大阪府大阪市住吉区住吉2丁目9-89)



面白い謎の神社があります。

『おいとしぼし社』といいます。





 『おいとしぼし社』

(住吉大社末社『大歳社(おおとししゃ)

の境内にある祠のことです)


(画像「住吉大社」ホームページより)

「おいとしぼし」は

「お愛し星」とも言われ(「龍神」「金龍」とも)


由来も祭神も不明です。



社前には『おもかる石』といわれる

霊石があります。





『おもかる石』


『住吉大社』公式ホームページより
(画像、同ホームページより)
占い方はまずお参り二拝二拍手一拝
次に石を持ち上げ重さを確認次に石に手を添えて願掛けをして、もう一度石を持ち上げます
2回目に持ち上げた方が軽く感じれば
その願いは叶うといいます



太古、天から落下した隕石を神格化した

守護神とする伝承もあります。






たったこれだけの例で

理解することは、とてもできませんが…



龍神は一般的に、水を司る神とされますが

蛇にも水神としての神格がありそうです。



 

そして


『天速玉姫命』という神と

『天から降ってきた玉』…そして『湧水』



この泉神社の伝承も

とても面白いと思います。



 また、最後に沖縄県の宮古島の伝承を

書きたいです。


これも以前に書きましたが





 ロシアの東洋学者

ニコライ・ネフスキーの著書

『月と不死』に

宮古島の伝承があり





 

月・太陽が

アカリヤザガマという人間を使いに



・「変若水(シジミズ)

・「死水(シニミズ)



を運ばせ


彼が休んでいる隙に

蛇が現れて、変若水を浴び

彼は仕方なく、死水を浴びる。



 以来


・『蛇』は脱皮して生まれかわる

 不死の体を得て


・『人間』は短命のうちに

 死ななければならない運命を

 背負ったというものです。





 

この宮古島の伝承から


月・太陽から

すなわち、『天』からもたらされる

『不死の水』の伝承に、蛇が絡んでいます。



以上


全国の興味深い伝承や神社を

ながめながら


常陸国(現在の茨城県)

『速日』『速玉』に関係する

神社をみてきました。



 これが

古代の「星信仰」に関係するのか

はっきりとは、しませんが



 どうも古代からの伝承に



天から降りてくる「隕石」や「蛇()」に

関するものが多くあり

そこに湧水がわくケースが多いようです。



 以前に書いた、日本最古級の神社


『大神神社(おおみわじんじゃ)』が

酒造業社に配るのは『杉玉』です。

酒にも『玉』が絡むのです。





軒先に吊るされる『杉玉』





大神神社がある三輪山周辺にはスギが多く自生し

三輪山のスギは聖なるものとされているため

スギを使った杉玉ができたとされている。



(画像・文章「wikipedia」より)





私の先祖が営んだのが

(現在の群馬県高崎市吉井町にかつてあった)

『大杦()神社』


主祭神は「海人族(あまぞく)」の航海神

とされる住吉の神…




『中筒男之命』

(なかつつおのこのみこと)



のみ!です。



『上野国神社明細帳簿』
「多胡郡・大杦神社」




 住吉の神は、住吉三神とも称される



『上筒男之命』

  (うわつつおのこのみこと)

『中筒男之命』

  (なかつつおのこのみこと)

『底筒男之命』

  (そこつつおのこのみこと)




三位一体の神として

三神まとめて

住吉神社に祀られるのが基本で


これが住吉の神の、基本的な祭祀形態です



それがなぜ、うちの先祖の神社では


『中筒男之命』だけ単独で

しかも『大杉神社』に祀られているのか?

(「大杉神社」も航海神の神社とされます。)


その謎を解きたいたというのが

先祖を調べたいと思う、きっかけとなりました。



『大杉神社』は本社が

茨城県稲敷市にあります。





 『大杉神社』

(茨城県稲敷市阿波958番地)


(画像「wikipedia」より)

主祭神

・「倭大物主櫛甕玉命」

  (やまとおおものぬしくしみかたまのみこと)


・「大己貴命(おおなむちのみこと)


・「少彦名命(すくなひこのみこと)





社内にはかつて三本杉がありました。

(太郎杉、二郎杉、三郎杉からなり

太郎杉が江戸時代に焼失)



 公式ホームページの縁起には



大神神社を出立した勝道上人が

日光山(二荒山)を開山に向かう途上


病苦に喘ぐ多くの人々を

救済するために一心に祈念


古来あんばさまの名で

信仰されてきた巨杉に


三輪明神が来臨しました。





このように


『大神神社の神がに来臨した』


と記されます。




あくまで、個人的な想像となりますが


うちの先祖が暮らし営んだ

(群馬県高崎市吉井町で)

『大杦(杉)神社』


そして、その神社の祭神

『中筒男之命』


この二つを考えると



『大杉神社』であることは


 茨城県稲敷市にある

 大杉神社本社の縁起に


 『大三輪の神が杉に降臨した』とあり


 これは『縄文』

 古層の信仰形態を意味する。



 住吉神社の祭神

 『中筒男之命』であることは


 住吉神は、航海神であり

 「海人族(あまぞく)」

 新たに来着した『弥生』の信仰を

 意味する。

 さらに神名にある『筒(つつ)』は

 『蛇』を意味します。

   (「古代海人の世界」谷川健一)

  「筒」は海人族の信仰する蛇の意味が

   強いようです。海にも蛇はいます。

   『海蛇』『水竜』です。



つまり

先祖の神社には


・縄文の土着の古い信仰

・弥生の海人族の新しい信仰


この二つが、投影されていると思います。



そして、この投影が


『サイトウ族』のルーツを解明する

手がかりになると考えています。



続きます。