前回からの続きです。





『星神・カガセオ』の「カガ」は


「輝く」の意味で


宵と明けに輝く、『金星』を神格化した神との

説もあります。




『金星』

じつは、わずかながら満ち欠けします。


(画像は、以下とくに表記がない場合
すべて「wikipedia」より
引用させて頂いております。)




謎の多い、星神・カガセオの正体について

考えてみたいと思います。



 カガセオのまたの名は



 『天津甕星(あまつみかぼし)



といい


「天津(あまつ)」は

「天つ神(あまつかみ)」の意味でしょうか。



 カガセオは、高天原(たかまがはら)由来の

神さまということだと思います。




「甕星」の『甕(みか)』は

「かめ」、「もたい」、「みか」


酒や水を入れる『水の容器』を意味します。



 文字通りに解釈すると『甕星』とは

「酒や水を入れる容器の星」



 伝承では、カガセオの身体は

巨大化して、大きな岩となったとされますが

建葉槌命(たけはづちのみこと)

背後から蹴り砕かれて



「その破片が各地に飛び散った」



とされているので



「甕星」とは


「岩でできた酒や水を入れる容器の星」

とも解釈できるでしょうか。



 容器で岩で星?



 なかなか難解ですねゲロー



 この星神カガセオの謎の多さは

日本に、星に関する神話が極端に少ないと言われることと、関係あるのかもしれません。




 wikipedia」で、カガセオについての

記載を引用します。




 


星や月を神格化した神は世界各地に見られ

特に星神は主祭神とされていることもある。



 しかし、日本神話においては

星神は服従させるべき神

すなわち「まつろわぬ神」として描かれている。



これについては、星神を信仰していた部族があり


それが大和王権になかなか服従しなかったことを表しているとする説がある。



 




 ところで、星といえば



 『星屑(ほしくず)



 という言葉があります。



 以前に、『クズ人』と呼ばれる

ヤマト王権以前に、日本に暮らしていた

先住民について、書きました。



「クズ」は

「国栖」「国巣」「国樔」とも書かれます。


 




 「常陸国風土記」では


これらクズ人の別名として



 ・土蜘蛛(つちくも)


・八束脛(やつかはぎ)



もあげています。



 

「星屑の夜空」と聞けば

私たちは、星をちりばめた美しい夜空を

イメージしますが、なぜ屑という言葉を

使うのか、不思議でした。



古代に、「クズ」と呼ばれた人々

星屑という言葉は、彼らと関係するのでは

ないか?

縄文時代、星は信仰されていたのではないか?



 

先日、『ブラタモリ』をみていまして

そう思わせる、大きなヒントがありました。



 タイトルは



「諏訪~なぜ人々は諏訪を目指すのか?」



 です。



 余談ですが、井上陽水さんの

エンディングの曲が好きです😁

ゆったりとしたリズムに、癒されます酔っ払い


あ~ゆっくり歩いていいんだという。



 

さて


この番組の中で、なんと!

長野県の『縄文の鉱山』にふれていまして



この鉱山で採取された鉱物が

大きく、星と関わるのです。



個人的には、『星神の贈り物』

言っても良いと思っています。



 その鉱山についてですが


縄文時代に鉱山なんてあるの?

とふつうは思いますよね😅




ですが、驚くべきことに


彼らはその鉱物を採掘して、流通までさせていました。


この鉱石の採掘専門と思われる人々の萌芽もみられ



安中市の「ふるさと学習館」の方に

お聞きしたところ



縄文時代、あきらかに

この鉱石の流通のためと思われる

ベースキャンプ(集落)跡も発見されて

いると言われました。



 

採掘されていたのは



 『黒曜石(こくようせき)です。


 

なんだ石か~、と思わないで下さいね笑い泣き


立派な鉱物です。



そして金属が、大量生産される以前の

極めて貴重な鉱物です。




 

『黒曜石』







じつは

黒曜石(こくようせき)という言葉の響き…



けっこう好きですデレデレ



 

黒曜石は矢の先、鏃(やじり)となり

肉などは、金属の刃より切れると言われ

現代でも実用に供されています。



海外では眼球/心臓/神経等の手術で

メスや剃刀として使われることがそうです。




 また、南米では


ヨーロッパ来訪まで鉄文化を、持たなかったのですが



 メキシコのアステカ文明などでは

黒曜石を使用し、マカナなどの武器を作り

人身御供で、生贄の身体に使う祭祀用ナイフもつくっていた。



一説にはアステカが強大な軍事力で

周辺部族を征服し帝国を作れたのは

この黒曜石の鉱脈を豊富に

掌握していたからだともいう。


(wikipedia」より)






やっぱり


古今東西、鉱山を掌握することは

歴史の主導権を得ることなんですね。



 つまり


黒曜石は、鉄が大量生産される以前

『歴史をも左右する奇跡の鉱物』

だったのです。



 ぱねぇよ…黒曜石滝汗


南米の歴史を変えた可能性があるって…




 『テスカポリトカ』



アステカの神

黒曜石の神性も持つと言われます。

日本では、黒曜石の神は見当たりません。






 さて、『ブラタモリ』に戻ります。


じつは



長野県の和田峠一帯に良質な黒曜石が

豊富に分布していて、それは知っていたのですが、「諏訪」の黒曜石は盲点でした。




 (ちなみに日本で最も硬度が高く、高品質とされる黒曜石は、伊豆諸島の神津島(こうづしま)産です。)



「ブラタモリ」で



諏訪産の黒曜石は、硬度が高く良質であり


しかも透明であったので

(光にかざすとガラスのように透明に見えます)



その美しさも相まって


縄文時代、すでにブランドして流通していた。



縄文の人々は、競って

『諏訪もの』を求めたと、言っています。



この諏訪ものの黒曜石は、驚くべきことに

北海道でも発見されています。



 諏訪湖一帯に

縄文遺跡が密集しているのですが


この理由の一つに

番組内では、この黒曜石をあげています。



この黒曜石を求めて、縄文の人々は諏訪を

目指したと。





『諏訪湖』


古代の諏訪湖は、現在よりも
大きかったようです。




恐るべし、諏訪の黒曜石…滝汗



 そして肝心の


「黒曜石」と「星」との関連ですが

この番組の中で、地元の



下諏訪町教育委員会 宮坂清氏と

タモさんが



黒曜石について

極めて重大なやり取りをしています。



 あまりにあっさりで

「かす」「鼻くそ」などという

単語が出てくるの、でふーんと

見落としてしまいそうですが…もぐもぐ



 番組内より、引用させて頂きますね。



 




宮坂氏


『このあたりでは、江戸時代の人たちが

黒曜石のことを…岩石という認識はない。


星のかけら、お天道様(おてんとさま)の鼻くそ

なんていう、天のかすみたいな…』




対してタモさんが


『天から落っこちてきたものだと思ってた?』




 宮坂氏


『そうです、そういう風に思っていた、ということで』



 




 

重要なのは、江戸時代の時点でも

この諏訪の人々が



 『黒曜石は、天から落ちてきたもの』



と、認識していたことです。



地元では、この黒曜石を



『星糞(ほしくそ)

と言い伝えてきました。



 

前回ものべましたが


長野県と山梨県の複数の自治体が申請していた



 『星降る中部高地の縄文世界』

(―数千年を遡る黒曜石鉱山と

         縄文人に出会う旅─)



 が、平成30


日本遺産(Japan Heritage)に認定されました。








「星降る中部高地の縄文世界」
公式ホームページより、画像引用
(「甲信縄文文化発信・活性化協議会」より)




長野県の黒曜石の産地として著名な


和田峠周辺には、「星糞(ほしくそ)峠」のほかにも、「星ヶ塔」「星ヶ台」など

星のつく地名が多くあります。



「星糞(ほしくそ)」という表現は

文字通りに解釈すれば



いわゆる星からの排泄物という意味で

長野県の人々は、下品だと言う方もいれば

愛嬌のある素朴な表現と見る向きと

様々なようです。



 ただ「星糞」という言葉は

黒曜石を採取し、加工した後の

削りかすを廃棄したことに

由来するとの説もあります。



実際に採掘跡付近に、探すまでもなく
縄文人が捨てたであろう、削りかすの
細かい黒曜石が散乱して、たくさん
落ちています。


 

いずれにしろ


長野県の人々は昔から

このきらきらと光る石を愛し、生活の道具として、大切にしてきたのだと思います。



その採取開始時期は

旧石器時代とも言われ



 そして


きらきらと光る黒曜石の姿から

夜空に輝く

黒曜石は天から降ってくる



 『黒曜石は、天の星からの贈り物』

と、考えていたのだと思います。



 

現在の長野県の方が

そう言われているのですから。



歴史についてわからないこと

知りたいことは

地元の方に聞くのが一番です真顔

とても重要なことです。



 

そして、この『天の星からの贈り物』

という意味について、もう少し




じっさい黒曜石は、火山性由来の鉱物で
マグマが急激に冷えて生成されるのですが


 化学以前の世界に住む縄文の人々は


夜空に輝く星と

黒色ながら表面に光沢を持ち

きらきらと光る黒曜石とに

関係があると考え


黒曜石を、夜空の星神から授かる石と

理解したのではないでしょうか。

長野県の黒曜石の鉱山跡に

「星」がつく地名が多いのも

そのためと思われます。



個人的な話で恐縮ですが

その昔、北海道のサロベツ原野で

満天の星空をながめたことがあり





「サロベツ原野」


利尻富士を望む




そのあまりの、美しさに息をのみました。


星々のなかに

蒼や赤のたくさんの光がまたたき

巨大な流れとなって、あたかも大河となって輝いていたのです。



とても現実とは思えないような

光景でした。





間違いなく、古代の人は同じ光景を

見ていたはずで、この夜空を目の前にすれば

そこに神がいると理解するのは

わかる気がしました。



現代の夜空は明るく、見ることはまれですが


そんな満天の星空をながめていると

数分に一回程度の頻度で「流れ星」

見ることができました。


つい、私たちは現代の感覚でイメージして

しまうのですが



古代の人々は


夜空の光の大河と、数多の流れ星を

ながめながら、一生をおくったはずで



そんな真実に美しい世界の中で


黒曜石を天から落ちてくる(授かる)石と

理解したのではないでしょうか?




そして『夜空から落ちてくる石』といえば


個人的には、『隕石』以外に

ないのではないかと思っています。



『隕鉄(いんてつ)というものを

ご存知でしょうか?



文字通り、鉄でできた隕石ですが



 幕末の戊辰戦争で有名な

榎本武揚(えのもとたけあき)

隕鉄を利用して、刀を製造させています。


流星刀(りゅうせいとう)と名付けられました。


(実際は、隕鉄100%ではなく

砂鉄とブレンドしたようですが。)



福島の歴史にお詳しい方に、お話を聞くことが

あるのですが



「人類の最初の鉄利用は、隕鉄からではないか」


と言われます。


「石とは明らかに異なる切れ味」で

おそらく、古代の人は

すぐにその有用性に気づいたはずだと。






世界最大の隕鉄 『ホバ隕石』








「天鉄刀」の項があり


人類は製鉄技術が確立する前には

鉄を多く含む隕石を原料に鉄器を

作っていたと考えられており



 また



金属の製錬技術を持たなかった時代

あるいは地域の人々は


隕鉄を貴重な金属として、道具に使っていた。


天からもたらされた物質であることが知られると、宗教的な意味づけが加わり、珍重されることもあった。



現代では、もっぱら隕石としての博物学的な価値があるのみである。






つまり、あくまで私の想像となりますが


古代の縄文の人々は

黒曜石とは、天から落ちてくる「流れ星」
あるいは「彗星」によって

もたらされると考えていたのでは
ないでしょうか。


彗星の別名は、『箒星(ほうきぼし)』



ちなみに

『君の名は。』という有名な
アニメ映画があります。





じつは、この「小説版」の方で
星神「カガセオ」が祀られる
「大甕倭文神社」が出てくるようです。


そして作中
巨大な隕石が落ちる湖のモデルは
諏訪湖とも言われますね。


また、このアニメの中で
「口噛み酒(くちかみざけ)」が出てきます。

お酒は後々、絡みます。


覚えておいて下さいねウインク




次回



この『隕石』という観点から

星神について、考えてみたいと思います。



続きます。