新線や新駅を作るなら、なるべく既存の駅から離れた地域に

 

新たな鉄道駅を作るにあたり、既存の鉄道駅の近くに作ると、新旧の駅どうしで需要を食い合うこととなります。

 

新駅の設置には、

  • A:既存の路線の駅と駅との間に作る場合
  • B:路線の新設や延伸を行って、その区間に駅を作る場合

の2種類が考えられますが、特にBの場合、多額の建設費がかかることから、運賃も高くなりやすいのが実情です。

 

そのため、既存の路線や駅と競合する中で、新線や新駅の側が不利となるというケースが、しばしば起こります。

 

たとえ住勤鉄道需要が多い地域であっても、既存の駅のすぐ近くに新駅を作ってしまうと、競争に負けてほとんど利用されない……という事態もありえます(※)。

 

※…ただし、本来は、公共交通の建設費に対する公的な補助をもっと手厚くして、「多額の建設費が運賃に跳ね返る」ことを防ぎ、既存の路線と新線とが同じ土俵で競争できる環境を整備することが必要なはずです。

 

この意味で典型的な例と考えられるのが、千葉都市モノレール1号線の千葉駅~県庁前駅間(1.7km)です。

この区間は、1999年に開通しましたが、(乗換駅の千葉駅以外の)栄町駅・葭川公園駅・県庁前駅は、いずれも既存の駅(千葉駅・千葉中央駅・本千葉駅)から200~400mほどしかありません。その結果、千葉市の中心市街地の、住勤鉄道需要200トリップ/ha・日を超えるような地区を通るにも関わらず、各駅の乗降客数は、コロナ前で500~2000人/日にとどまるという状態となっています。

もとは、県庁前駅から先、市立青葉病院方面への延伸計画があり、その際には、より既存駅から離れた地域に駅ができることとなっていましたが、これも2019年に計画が廃止となってしまったようです。

(2024/1/9追記:計算過程に誤りが見つかったため、画像を差し替えました。)

 

図 千葉都市モノレール1号線と住勤人口需要

各メッシュ内の数字は、面積当たり住勤鉄道需要(トリップ/ha・日)を表す。

 

これでは、せっかく新線や新駅を作ったとしても、その意味がなくなってしまいます。このような事態は極力避ける必要があるでしょう。

 

少なくとも、同じくらいの鉄道需要がある地域どうしなら、「既存の駅から離れた地域」に新駅を作った方が、利便性が大幅に上がる地域ができることとなり、より有意義だと考えられます。

 

  「既存の駅から離れた地域」の鉄道需要を重視する形で「新駅必要度」を設定

 

ここでは、「同じくらいの鉄道需要がある地域どうしならば、既存の駅から離れた地域に新駅を作った方が有意義である」ことを前提として、これまで計算してきた住勤鉄道需要を、「駅から遠い地域の値を大きくする」形で補正し、「新駅を設ける必要性」を評価する値を計算してみたいと思います(そしてこの値を、「新駅必要度」と名付けることにします)。

 

 

この新駅必要度は、

  • 人口や従業者数の多さを反映した住勤鉄道需要の値に、
  • 「既存駅から離れるほど大きくなる補正率」を乗ずることで、

人口や従業者が多く駅から遠い地域」≒鉄道網の「スキマ」をあぶり出そう、という寸法です。

 

ここでは、「既存の駅から近い地域ほど人口や従業者数が多く、住勤鉄道需要も大きい」傾向がある一方で、それとは逆の「既存の駅から離れるほど値を大きくする」補正を行うような計算をすることとなります。

 

どのような補正をするか(たとえば、駅から3kmの補正率を1.0とした時に、駅から1kmの補正率を0.7とするのか、それとも0.3とするのか)によって、地域間の新駅必要度のバランス(≒地図の色合い)は、大きく変わることとなります。

 

それだけに、「既存駅から離れるほど大きくなる補正率」は、「新駅の意義や効果の大きさとは何か」をよくよく考えた上で、慎重に組み立てる必要がありそうです。