年末年始は弘前でのんびり。


 

去年から母が「一度行ったらすごく良くて、もう1回、絶対一緒に行きたいと思ってるの」と言っていた

『奈良美智: The Beginning Place ここから』@青森県立美術館。

 


年明けすぐに美術館が開いているとわかったので、
1/2(火)の朝から早速行ってきました!!
前は兄嫁と2人で行ったそうで、
兄嫁と姪と食事をした時に

「行きたいんだよね」と話したら
「え!私ももう1回行きたいから一緒に行こうねって話してたの!じゃあ4人で行こう!」と言ってくれて、わいわいドライブ車(セダン)
ありがたいーバンザイ

話は飛ぶけど、弘前…おしゃれなピッツェリアが増えてて、ピッツァ好きピザにはありがたいーバンザイ

※こちらは駅前に新しくできたピッツェリアに母と行ったときのもの。

この日は雨の予報雨でしたが、着いた時は幸い曇り空程度くもり
帰りのドライブ中に雨は降ってきたけれど。。。

お正月で青森としては混んでる方とはいえ、私からしたら東京の美術館よりもずっと見やすくて嬉しいですが、、、どうやら2人が最初に行った時は会期の最初の方の平日だったから、本当に人がいなくて見やすかったとか。
いやいやいやいや、十分です!!

だってタイミング次第ではマジで周りに誰もいない時間がちゃんとあるし!!
そして、何と言ってもありがたいことに、館内撮影OKカメラOK!!
そんなこと…ある??
一部撮影OKはあっても、全部OK!!すごい!!
気に入った作品、バンバン撮っちゃう!!

実は私、もう長いこと奈良美智が好きで、
(最初は、会社員の頃に同僚がすごく好きで、デスク周りを奈良美智が描いた犬や女の子の切り抜きで飾っていました)
で、好きなんだよねーと、母に見せたら母が

「あんたにそっくり!あんたが文句言いたい!って時の顔を思い出す!!」と、一瞬で好きになってしまいまして、
今や画集を買い、雑誌の特集号を買い、、、と、しています。
母…もっと昔はいわさきちひろが描く少女を私に似てるって言ってたんよ。
「この、無垢なようですべてを見透かしてるような、この子の前で誤魔化しは通用しないと思わせる目が、子供の頃のあんたに似てる」と言ってたんよ。
そしてその後、私は腹にいろんなものを抱えて「むぅ…」という顔で親を睨むようになり、奈良美智が描く少女の顔になっていったようです。。。


中に入ってすぐ。
青森県立美術館のお正月飾りはねぷたで作られていました。素敵。


 

そしてロビー…

アレコホールにはシャガールの大作4枚がババーン!

 


え?ホンモノ!?…ホンモノに決まってるか…え?すごない??
と、入ってすぐ軽くパニック。

そうか…このロビー…『アレコ』があるからアレコホールなんだ!

アレコありきのホール!すごい!!


でもまずは奈良美智です!
最初のお部屋のテーマは「家」
彼が何度もモチーフとして描いてきた「家」に注目したコーナー。
まずは『カッチョのある風景』


20歳のときの作品。
捨てたと思っていたものが、拾われて今まで保存されて、

そして本展で初公開!だそうです。
もうね、これ見るだけでやられてしまう。。。
私は今まで、犬や女の子の絵ばかり見てきたと思うし、それこそ今回年表を見て気がついたけれどドイツに渡ってからの作品しか見てなかったんだと思います。
それも特によく知られているタッチのもの。
だから『カッチョのある風景』を見た時に
ピカソの若い頃の作品を見たような感慨を覚えました。
すごい人はやっぱりすごいんだよねぇ。
デフォルメしか描けないわけがないもの。。。
(何でもそうだけど、コピーライターもそうだけど、日本語は時代で変わってるとはいえ、正しい日本語、正しい文法を知ってこそのデフォルメだよなと思ったり)

このあと「旅」の部屋にあった飛生の少女たちの絵『ココネ』『コウ』『レノア』『シウ』『ユノア』も衝撃でした。


ああ、少女をこういう風にも描くんだ…と思ったし、本当に技術が半端なかったし、
ふと遠くから振り返った時、鑑賞するお客さんと彼女たちの姿が(サイズはアレとしても)自然に溶け込んでいて、彼女たちが本当にそこにいるみたいな感覚になってクラクラしました。




それから、
この展覧会では愛知県立芸術大学の卒業制作『Innocent Being』(大学が買い取ったとか!)も展示されていて、
そこにはちゃんと犬や子供や家が描かれていて、そして戦争反対のメッセージが詰まっていて、まさに原点!って感じ。


こういうベースが見られるのが、まさに今回のテーマ「ここから」なんだなぁ、そして故郷・青森ならではの展示だなぁと、しみじみ眺めました。

この美術館の展示室は順路がややわかりにくく…特に順路も示されていなかったので、「家」のあと、どこに進むべきか悩んだんですが(会場マップ見ろって感じですが)
勘で「積層の時空」の部屋へ(正解!)
こちらには『Silent Fever』とか『Midnight Tears』とか、新しい作品が並びます。
線ではなく色で形を浮かび上がらせるようになってきたというようなコメントが壁に書かれていて、ああ…なんかそれって先入観がなくてすごく本質的な感じがしていいなぁ…と思ったのでした。



ところで『Silent Fever』の眼帯…本当に貼られているんですね。こういうのを見て取れるのうれしい。



そしてこの部屋で圧巻だったのは、
コロナ禍のタイミングで台湾のホテルにいてしまって缶詰になった時に描いたというスケッチ群。

 

 


最初はスケッチブックに描いていたんでしょうけれど、だんだん描くものがなくなったようで、スケッチブックの表紙、封筒、チラシの…チラシの文字が書かれているその上にも絵を描いていて、ものすごく枯渇しているような、描かずには生きていけないようなエネルギーを感じました。
添えられた言葉も

「望んでここへここへ来たのさ」とか

「だめになりそう」

「勝ち目はない長いゲームだけど飼い慣らされるよりずっと自由さ」とか、、、
コロナ禍を思うとますます胸に来る。。。

 

この先の「No War」の部屋にもちぎった紙やタンバリンなど、いろいろなものに描かれた作品が並んでいて、そこも素敵でした。


奈良さんって「絵を描くのが好きです」とか「俺には絵しかない」とか言わないんだろうな。本当に普通の状態でそういう人だから。


一旦「家」に戻り、
通路にある『Fire』にウットリと立ち止まって「旅」の部屋へ。
いや、本当に『Fire』最高でした!


この燃える家をただただジッと眺める感覚…この他人事感みたいなもの…すごくわかるし、子供の無垢さが持つある種の残酷さも感じるし、しかも可愛いし。


「旅」の部屋へ行くと…
どどーん!と向き合う『Peace Head』『Ennui Head』が迫力満点。


 

さらに私が好きなテイストの『Mumps』『The Last Match』とか可愛くてずっと見ていられる。。。


 

『Peace Head』の後ろにあった『I Don't Care』なんて、
タイトルと「この世のすべてがバカみたい どうなったっていいよ」というメッセージに、世界を見透かすような目をした、上がってきた太陽のようにも見える女の子。


すべてが相まって最&高!です。


脇の通路にあった『旅する山子』も面白かった。
ぬいぐるみと旅する人みたいと言えばそうなんだけど、
ダンボールで手軽に作られながら結構なサイズの山子…静かに目を閉じる山子が景色の真ん中にいるだけで、そこが特別な場所になるって…なんかいいよね。

 


ぬいと旅するの、よくわかるわ。
(私は子供の頃、旅先である仙台は青葉城のお土産屋さんに大好きだった「くっつきおててのわんぱくモッシュ」を置き忘れて、次の日に連絡したけどもう見つからなくて…以来ぬいぐるみさんを連れて歩けていませんが…)


それから奥のお部屋「No War」
これまた迫力の『台座としての「森の子」』


台座…頭の上には犬がいっぱい乗っかっているので台座なんですね。

そして壁に掲げられた、ファンが作ったぬいぐるみが詰められた『I Don't Mind, If You Forget Me.』
母が「いいメッセージ。私もそれだわ!」と、改めて感激していました。
森の子の傍らに飾られたのは、どう見てもヒトラーの顔を踏みつける少女『Peace Girl』や、踏みつけれたヒトラーと思しき男の頭部『Bad Head』

 

 


何度も何度も同じテーマを繰り返したのかな…というのを見られるのが、一人の画家を深掘りした展示の好きなところのひとつです。


それから、この部屋には奈良さんのアトリエをイメージしたお部屋も。
奈良さんがお部屋に飾っている本や小物たちをどどーんと集めて展示していました。


これ、すごく楽しい!
御本人の作品も混ざりつつ、よく見るキャラや「私も持ってる!」「うちにあった!」なんて小物もどっさり。

 

 

 

こちらは家に昔からあるコマ。

確かリンゴのコマが展示の中にもあった気がする。。。


似たような物に囲まれてきているから、親しみやすく響くものがあるのかな…なんて思ったり。
(雑誌の特集記事で本物のアトリエを見た時、ランプシェードとかに絵が描かれていて、いいなぁ…奈良美智だったら家を奈良美智まみれにできるんだ…とか思ったり)


アトリエ部分にちょっと隠れた壁には浮世絵に落書きした作品も。
葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」を縦にして描いた作品は、目からウロコ。
発想が面白すぎて、まじまじ眺めるとちゃんと作品名とかが印刷されていてニマニマしちゃいました。


昇亭北寿の東海道富士河真写之図とのマッシュアップ(マッシュアップ…といっていいのかな?コラボ??)も、プンスカする富士山が愛らしく親しみやすくて、でもしっかり怒っていて、江戸のきっと美しかったであろう景色を今、守れていないんだろうな…なんて思ったりしました。



もう一度「旅」に戻って、「ロック喫茶「33 1/3」と小さな共同体」へ向かう通路にあったのは『大きな栗の木の下で』


彼の脳内キーワードを集めたような図。
実はたくさんの小物の中に意外とムーミン系がないなと思っていた私は、この図の中に「スナフキン」を見つけてキュンとなったのでした。
だって絶対好きじゃん、スナフキン。
タイトルが特にあったわけじゃなかったと思うけど、ここに掲げられた色鉛筆画もいろんな物語が見えてきそうで印象的でした。

 



そしてロック喫茶「33 1/3」


ここは休日ってこともあって行列ができていたから中には入りませんでしたが、外から眺めて、周囲の展示を眺めました。
奈良さんのコレクションであるレコードのジャケットのその奥にあった、ダンボールに色鉛筆で描かれた『ミラーボール盆踊り』が最高でね!!

なにこれ、可愛すぎるでしょ!!
並ばずとも、逆にこれがゆっくり見られて良かったー!

なお、中の様子は模型や図で見られました。

 


 

この店名…どういう意味なんだろ。
仲間3人で作ってるから、3人で100だよ!ってことかななんて考えましたが、真意は特集記事などを見てもわからず。。。
それにしても、高校時代に作ったこの喫茶を実物大で再現するとか!
さすが青森!さすが巡回なし!って感じです。


その後、再びアレコホールに出て、もう一つの展示室へ。
こちらは…会場マップに書かれていなかったから常設展なのかな。
でも奈良美智であふれていたけれど。あと、少しだけ棟方志功。奈良美智と並べる感じで。
(普段は成田亨のウルトラ怪獣たちのデザイン画も展示されているのかな。それも見たい…)

こちらにも小屋が建っていて…『アオモリ・ヒュッテ1』の中には、一人だけ目を開けている子がいて、上には愛らしい『Three Sisters Billboad Aomori Version』
これのフィギュア…売ってはいるんよね、アマゾンとかで。欲しい。。。
結構なお値段はするけど欲しい。。。
可愛い。。。




『So Far Apart』も、これまた幼少期の自分を思い出すような気持ち。


なんか諦観のような表情でスキー履いてるじゃん(笑)
そして、七海ひろき好き、あざらし好きにはたまらない『幽霊アザラシ』も可愛い。


それからここには、ここに来たら見逃せない『あおもり犬』がいました。
ここにいたのか!!


なんか…お天気が良くなかったせいもあってか…お預けをくらって「クーンクーン…」って鳴いているように見えてしまった。
食べてもいいんだよ。。。

ここでちょっと残念だったのは『あおもり犬』を見て振り返った先にも展示室があったらしいこと。
順路の案内も館内マップもなかったので、この奥はお手洗いかな?とか勝手に思ってしまいました。

こんなところにも絵が飾られてる!までは気がついていたのに。
ああ、残念だぁぁ…ガクリ


4人で行ったもののバラバラで鑑賞したので、
「お母さん!私ともう1回行きたいって言ってたのに!」と思って、母とあおもり犬の前でようやく合流。
2人でもう一度展示室に戻って、一緒にアトリエを眺めたりしたのでした。
で、満喫してアレコホールに行くと、なんとちょうどホールでは

マルク・シャガールの『バレエ「アレコ」のための背景画』に合わせて、『アレコ』の朗読ショーがスタート!
ホールが暗くなって、音楽が流れ、物語に合わせて1枚1枚照明が灯り、お客さんは椅子に座ったままクルクル回って眺めるという、とても贅沢なひとときを楽しめました。
なお、11月にはこのアレコホールでバレエ『アレコ』が楽しめるとか!!
ここで??
どんな風にするんだろ。
きっと真ん中にお客さんを集めて、その周りで踊るんだろうな…とは思うけど。
見てみたいかも…。


帰りは、、、
ミュージアムショップやカフェは入店制限がかかって長蛇の列!
そのため残念ながら断念。
ま、母は以前来た時に『Eve of Destruction』のマグネットを買っていたし、その後私と本屋さんに行って『NARA 48 GIRLS』を買ったので大満足ということで…
私は…さすがに私一人のためにこの行列を並ぶのは憚られたので諦めました。



その代わり…
私が通りすがりに見た立て看板を頼りに「なんかこっちにも何かがあるらしい!」と階段を降りて…たどり着いたのはお外に鎮座する八角堂。
そして、今度は階段を上って上って…ようやく出会えました!
『森の子』!!!


スッととんがりながらも、お顔は穏やかで、雪が溶けていくような質感。
しかも積雪がいい感じに溶け残って、白い輪の中にいるのも素敵でした。
母も兄嫁も「こんなところがあるなんて知らなかった!」と喜んでくれて…見つけられて良かった!
てゆーか、
北海道もそういうところあるから人のこと言えないけど、何かとアピール下手だよね苦笑
東北・北海道はどうも慎ましやかが過ぎますよ!!


ああ、それにしても満喫できました!
当たり前に美術館の醍醐味なんだけど、
印刷では伝わらない作品の大きさ、綿布を貼ったりダンボールを使ったりしたキャンバスの質感、繊細に色彩が浮かび上がるニュアンス…そういうものが見て取れて、


今までは本当に表面しか見ていなかったと思ったし、
何ならイラストレーターのような感覚で見ていたけれど、
昔からずっと怒りが満ちていて、怒りから作品が作られていて、そして奈良さんの年齢とともに悲しみと受容が混ざってきているように感じて、
紛れもなく画家、芸術家、アーティストなんだなと思いました。

私が一番好きなのはやっぱり怒りを多分に含んだ30~40代くらいの作品だったけど。
発散されるエネルギー量が違うような気がする。
何となくね。