2月9日(木)
雪組雪組公演『海辺のストルーエンセ』を見にKAAT神奈川芸術劇場へ。


15時半公演。
お席は2階の一番後ろ…ですが、どセンター!!
やったーバンザイバンザイバンザイ



波の音に誘われる開演前。
「ミュージカル・フォレルスケット」という冠がついてはいますが、まるでストレートプレイのようなシンプルなセット。
始まったら、くすんだ色みのお衣装のテイストがとても好みで、一気にテンションが上がりました。
そもそも北欧の話が大好きですし。うんうんうん 
しかもその後のセットは階段をメインモチーフに、背景の階段がどんどん組み替えられて違う絵柄が浮かび上がるような仕様。
階段を上るような下るような、行き止まりになってしまうような、落下してしまいそうな、、、斜めになったり、中途半端になったりと、
上に行きたいのに行けない…行けそうにない…といった不安定な感じがよく表現されていて最高でしたぐぅ~。

でも…
観劇直前にストルーエンセが実在の人物だと知り、気軽な気持ちでうっかりwikiを見てしまい…実は気が気じゃありませんでしたん~…
だって、wikiに書かれているストルーエンセってば、
しようとしていたことは、現代の価値観では正しいことばかりだけど、やり方が強烈はぁ~
野心的で不道徳かつ傲慢イヒヒ・・・
おそらく統合失調症だったといわれる王様をないがしろ・・・・・・・2
王妃と不倫・・・・・フッ

王妃の子供はおそらくストルーエンセの子供サーーッッ・・・
その王妃のことまで人前で侮辱ガクブル

言ってることが正しくても、端的に言ってクズ( ゚Д゚)・:、ゴルァ
最期は右手を切り落とした上で断頭、遺体は四つ裂きという形で処刑された。。。
ひぃっっムンク
この人…本当に朝美絢が演じて、カッコいい主人公として成立するのでしょうか。。。

成立してました!!

野心に満ちた若者というのは全然成立するし、その若者が夢に向かって、恋をして、そして堕ちていく…というのを美しいあーさが演じるわけですから、なんとも耽美なのでございましたはぁはぁ

デンマークにやってきたストルーエンセ先生とともに夢を追いかけるのは、あがちん(縣千)演じる王様。

統合失調症ではなく、しきたりに縛られていることに嫌気がさして、飲んで遊んで…になってしまっている王様。
だからこそ、王様なのに、王様だから全然自由に振る舞えなくて、モヤモヤしたものを抱えているクリスチャン7世が、自由を体現しているかのようなストルーエンセに憧れるのも、ストルーエンセが見せてくれる新しい景色に焦がれるのも納得うなずく☆

そして、横暴な王様に辟易して哲学書を読みふけっていた王女様、はばまいちゃん(音彩唯)演じるカロリーネが急速に惹かれていくのも納得うなずく☆
見た目はあーさとあがちんなので、どちらもイケメンで、あとは正直好みの世界…ですがニコ
飲んだくれて傲慢で愚かに見えるクリスチャンよりは、物腰が柔らかくて知的で前向きで実行力があるように見えるストルーエンセ…よね。
傲慢か柔らかいかは、実は逆なんだけれどもニコ
ストルーエンセの傲慢さといったら、それはそれはもう強烈で、クリスチャンの方がずーっと物腰柔らかでかわいいんだけどもニコ
クリスチャンはムチ打ちスパルタ教育を受けて、愛情不足で育ってきてしまった気の毒な…まだまだ10代の少年だから、今後いかようにもなれるんだけれども…
カロリーネもさらに若いからねぇ。。。
若い頃って、やんちゃで少々傲慢なくらい自信があって実行力のある人の方が、傷ついている優しい人や、思慮深い人よりも頼もしく見えちゃったりするよね、うんうんうなずく☆
しかも、きちんと話し合えばお互いに自由を求めているということがわかるのに。


ストルーエンセと出会って、きちんとした王様になろう、品のある人間になろうと努力するクリスチャンはとっても可愛かったですむふ
お紅茶をコーヒーしとやかに嗜んで、まるでジャイアンがキレイなジャイアンになろうと頑張っているみたいだけれど、突っ込まれるとすぐにオラオラなジャイアンが出てきちゃうニコ
あがちんだから余計にジャイアンみが強いようなあはは…


雪組『蒼穹の昴』でも、若く頼りない王様(皇帝)が周りに利用され、言いなりになってしまって国民を振り回す結果となり、でもこれからいい王様(皇帝)になろうと前を向く男を演じていたあがちん。
これからトップを目指そうというポジションにいるあがちんに、こういうお役が続けて与えられる意味を考えてしまったのですが、とりあえずとてもお似合いなお役です嬉しい
いかついけれど愛らしくて、一生懸命だけど未熟で、でも一直線に上を目指していく…
そんなあがちんのキャラクターに似合っているのかなぐぅ~。

『蒼穹の昴』であがちん王をエゴで振り回したにわさん(奏乃はると)が、今回は「悪いしこりを取るのは大切ですが、手元が狂うと体を傷つけますよ」と苦言を呈するお役なのが面白くて、

うっかり「お前が言うなー!!」と、ニマニマ笑ってしまいました苦笑い


さて。
ストルーエンセ、クリスチャン、カロリーネの3人にプラスしてすわっち(諏訪さき)演じるブラント。
輝かしい未来に目を輝かせる若者4人がとてもキラキラしていて美しいのですが、
男性3人ミッキーミッキーミッキーに女性1人ミニーちゃん
しかも美男美女カナヘイきらきら

…そんなの…

恋が始まっちゃうに

決まってるじゃーーん!!
案の定、1幕ラストの緞帳が下がるねー…という、まさにその時!
見つめ合うストルーエンセとカロリーネ。
そしてキスっっ口カナヘイびっくり
緞帳!

いや、ちょっと待って緞帳!

オープンアゲイン緞帳!
幕間休憩のソワソワ感といったら!!
2幕冒頭で考えていたことはただ一つ。
「あれからどのくらいの時が経ってます??」
二人の仲がどうなったのか気になって、気になって、、、
一気に進んでたらどうしようかと思いましたが、「あのキスのことだけど…」とモジモジしていたので少々ホッとしました顔文字


そして1幕は、正しいことをしっかりと伝え、新しい未来を夢見させてくれるキラキラストルーエンセキラキラだったのに…
2幕はどんどん闇落ちしていくという。。。
もともと野心に燃えた傲慢な人ではありましたが、そんな人に権力を与えるとこんなに酷いことになるんですね・・・・・・・影。

闇落ちして暴走するストルーエンセに振り回されて、病んでいくクリスチャン。
「休んでいいよ」なんて、一見優しそうに見せながら「後は一人でやるんで!」なんて暴走一直線のストルーエンセと、

暴走するには邪魔なので、役職を与えられたような雰囲気で追放されるブラント。
あああ、、、恨み買っちゃうよーーーはぁ~

カロリーネは「まあ!なんてグイグイ頼もしい恋の矢」とか思っちゃうかもしれませんが、
いくら正しいことでも…
実際「夜道に街灯つけましょう」とか「孤児院作りましょう!」とか「拷問や検閲はなくしましょう」とか「人間はみんな自由で平等である!」とか、

現代の価値観から見たら完全に正しいんですけどね。
しかも、そのための予算は貴族に贅沢をやめさせて、貴族から税金を取って捻出するとか、完全に正しいんですけどね。
でも、やり方が1日3つの法案を通すとか急すぎて&このあたりも『蒼穹の昴』と完全にかぶっていて、どちらも史実なわけですし、時代や地域は違えど古今東西人間のやることといったら…って感じです苦笑
そして頭によぎるのはロベスピエールだいもん(望海風斗)
あの方も激しく暴走されて激しく転んでいましたが、思い返せばロベスピエールだいもんに心酔していたのはサン=ジュストあーさ
あーさってば、、、まさかそんなところ(闇落ち)までだいもんについていこうとは汗

政治的暴走とカロリーネとの不倫の両方が、周囲から…貴族はもちろん、自分自身が守ろうとした国民からの不平不満まで買いまくり、
そして最後まで「ストルーエンセはいいヤツ」と自分に言い聞かせるように信じていたクリスチャンまで傷つけて、いよいよ海まで追われたストルーエンセ。

 

そんな時…
ストルーエンセを恨んで、ストルーエンセの罪を芝居という形でクリスチャンに見せつけて、そこまで追い込んだのに、

最後の最後にやっぱり自分が自分の利益のためにストルーエンセをここに連れてきたからこんなことになったんだ…と、

自分が悪かった!とかばうブラントの人間味にぐわっとやられました。
これまた『蒼穹の昴』同様、すわっちの人間味に胸打たれてしまって…何かと『蒼穹の昴』を思い出してしまう。。。

そして、カロリーネとの思い出の海にたどり着いたストルーエンセ。
でも夜で…しかもデンマークの長い長い夜の海で…「何も見えない」と絶望するストルーエンセorz
これは「灯火管制で凱旋門が見えない」という、雪組『凱旋門』の大好きなシーンを思い起こす場面でしたうるうるJH
カロリーネがストルーエンセに
「みんなと笑い合っていた時に戻りたい」と言うんですが、

もう決して戻れないというのも、何も見えない暗い海から伝わってきましたうるうるJH
そして、「何も見えない」とうずくまった途端に波の音が消える演出も素晴らしかったです。

追いかけてきたクリスチャンに自分自身を殺させるため、挑発するストルーエンセ。
出会いの時に中途半端になってしまった「決闘」を持ちかける時も「忘れたか」と煽る煽る。
おかげでクリスチャンも「そこまでバカではない」と応じて…でもストルーエンセは何もする気なく、、、きっちり殺されるつもりで挑んでいたように見えました。
二人で剣を手に間合いを図る間、

波の音もなくシーンとしていて、客席も咳ひとつ許されないくらいの静けさ。

ものすごい緊張感に胃が縮こまりそうでした。

クリスチャンの剣に倒れるストルーエンセ。
息も絶え絶えのなかで海を見ると、朝日がさしてきて、美しい海を見ながら亡くなるストルーエンセ。
亡くなるとともに波の音が返ってきて、見ているこちらはふと息をつくとともに、切なさがザザーンと押し寄せてくるようでした。
星組『マノン』のラストも波の音が死の悲しみと、それでも続く時の流れを表していたように思いますが、こちらも同様。
ストルーエンセが亡くなることで、またこの国に違う時間が流れてきたように思いました。

今回のストルーエンセは八つ裂きではなかったけれど、
でもこの後、国民の納得を得るため、正しい王の姿を示すために、ストルーエンセのような体格の死刑囚をストルーエンセとして処刑したとか。
友情を感じていたし、確かに大好きだったし、確かに自分を変えてくれた人だったから処刑ができなかったというクリスチャンの人柄が伺えますうっ・・
この後、しっかりとした王様になっていくんだろうなと思わせてくれました。

ストルーエンセ亡き後、当然離婚をすることを選ぶクリスチャンとカロリーネハートブレイク
お互いに正しい王、正しい王妃ではなかった。でも、何者にもなれなくても良かったこともあったと微笑んで別れる二人。
この時にふと、ストルーエンセが何者かになろうと必死だったことを思い出しました。
何者か…ストルーエンセの場合はいわゆる「BIGになる」。
死を前にしたストルーエンセは、カロリーネに
「私は何者にもなれなかったし、なろうとすべきではなかった。でもこの国に来なければ誰かと海を見ることはなかった。今は何も見えない」と、海に目をやります。
何者かになろうとしたことが自分を追い詰めてしまったわけですが、
ストルーエンセもまた「何者にもなれなくても良かったこと…愛する女性と海を見ること」ができたと感じて最期を迎えられたのでしょう。

そして終演後、そう言えばやけに仮面舞踏会が多かったと思い出しました。
みな何者かになりたい、でも何者にもなれない。
だけど、自分自身を「何者か」であると信じて疑わない貴族たちは、仮面ロミオの仮面①をつけることで何者でもなくなり、一時の狂乱に身を委ねる…。
ストルーエンセは「BIG」になることを目指して、そして訴えたかったことは「人はみな平等である」ということ。そんな世界を作れるのは「自分自身だけ」と考えていたこと。
理性と傲慢さがないまぜになったストルーエンセが実は一番人間らしいと感じました。
そんなストルーエンセが

最期の最期にかぶったのが、悪者の仮面。
自分は若いカロリーネを騙し、若いクリスチャンを口車に乗せ、医者として学んだ術で人々の心と身体を操った、そんなことは簡単だったと笑い、悪者として処刑されることを選んだストルーエンセ。
でも、悪者としてストルーエンセが亡くなった後、若い人たちが彼の思想を受け継いで国を変えていこうとするのが、また胸を打たれました。


それにしても、観劇前に知ったストルーエンセ像からどうなることかと思ったら、
こんなに美しく切なくやるせなく胸が痛むけれど、なんだかスッと落ちる物語になっていようとはぱちぱちぱちぱちぱちぱち
人の心の隙間に入り込んで政治を動かすストルーエンセがラスプーチンにも見えて、それもとても興味深かったです。
ラスプーチンって、どうしても汚くて怖い印象が拭えないのですが、ラスプーチンを主役に描いたら、もしかしたらこんなストーリーになるかもしれないと思ったりもしました。
悪役だったロベスピエール、悪人であるアル・カポネ、およそカッコいいヒーローとは思えない吉村貫一郎、、、
そんなお役も主役として(全部だいもんだけど)成立させてきた雪組です。
もしかしたらラスプーチンを主役にしても成立するのかもしれない…
そして、美しいお顔で希望に満ちた姿と堕ちていく姿と、すべてを受け入れて投げ捨てた悪人としての姿のすべてを演じられるあーさならなくはない…というか、あーさはもしかして、だいもんの後を継いで黒い主人公を演じていったりするのかな…なーんて興味もムクムク湧いてきました。
それもそれでとても楽しみラブ


ところで、カロリーネを演じたはばまいちゃん。
音楽学校入学の時から、どこをどう見てもハーフな美しいお顔が気になり、
卒業の時には成績の良さで気になり、
そして独特の愛称でも気になりしてきましたが、、、
実はしっかりちゃんと舞台姿を見たのは初めてでした。
さすが!!
声はとてもしっかりしていて耳に心地良いしハート
無邪気に振る舞う姿は愛らしいしハート
お顔は小さくてスタイルがとてもいいしハート
とても透明感があって純粋無垢で夢見る王妃様でしたハート
声がとてもいいので、もっと強いお役でもステキなんだろうなと思います。
次回、雪組『Lilacの夢路』ではきちんと注目したいです。

そして去年花『冬霞の巴里』で「おおお!!!」と思わせてくれた指田珠子先生。
先生の作品をこれで2作劇場で拝見しましたが、私としてはどちらもとっても興味深いテーマの作品で、雰囲気作りもとっても好みで、少々重いけどたまにはいいですよねって感じで、大劇場デビューが楽しみな演出家さんとなりました。
どんな作品でデビューされるのかしら。
きっと…重いんだろうなぁニコ