9月8日(火)。
最近はリモートワークなので、朝はゆっくり9時半頃起きて、そんなに眠くもならないので夜は3時頃に眠る日々です
が、この日はいつもより結構早起き!
なぜなら日生劇場に、宙組公演『FLYING SAPA -フライング サパ-』を観に行くから!
しかも午前11時開演。
早い!最近の私にとってはかなり早い!!
そもそもは春に2回見に行く予定だった作品ですが、なんやかんやで劇場で1回。それと配信での観劇となりました。
とはいえ、何しろ見られてよかった
そして私は、おかげで日生劇場に初めて入れました!
いつも気になっていた、東京宝塚劇場のお隣、日生劇場。
スカイステージでも中を紹介していたことがあったし、先日は「新美の巨人たち」でガッツリ特集していたし、母は若い頃に行ったって言ってたんですが、私は機会ゼロで今までやってきました。
古い劇場であることは知っていたのですが、中に入ると趣たっぷり!
エントランスから重厚感がすごいです。
赤絨毯が敷かれた曲線が美しい階段が左右にあり、それを上ると広ーいロビー!(…ホワイエ)
今どき、こんなに広くロビー(…ホワイエ)を取った劇場ってあまりないのでは?
劇場空間は非現実であってほしい私には、たまらない空間でした。(お手洗いは少ないけど)
ありがたいことにロビーには椅子もたくさんあるので、ロビーでゆったりと過ごして客席へ。
客席は客席で、これまた本当に素敵!!
壁から天井までうねるような曲線を描き、キラキラと光るモザイクで飾られていて、海の中のような、宇宙のような…
私はジンベエザメに食べられたような感覚になりましたが、
そういうインナースペース感がある空間で、、、
結果として今回の演目にはピッタリの会場だったように思います。
それから、私は2階のサイド、バルコニー的なお席だったので、上手…ちょうど真風が寝る場所あたりが見切れちゃうかなと不安でした。が!ほぼ見切れませんでした!!!
それに驚いたのは、1階席がとても近いこと!
2階席がとても低い位置にあり、1階席も舞台もとても近く感じられるのが嬉しい!
最近できた劇場は縦型が多いせいか、舞台が遠く感じることもしばしば。
(これは土地の広さの都合上、仕方ないんでしょうけど。やっぱり日生劇場のようにはスペースを今から確保するのは難しいのでしょうね)
さらに、人を多く入れることだけを考えた結果なのか非常に見にくい&見切れる劇場が多い中、日生劇場は劇場での時間をとても大切にしているのが伝わってきます。
本当に素敵な劇場これからもご縁があるといいな
さて。サパです。
配信で先に見ていたので、すでにストーリーはわかっているのですが、考えたいことが多いし、気になることや胸に響くことも多いし、その上でみんな魅力的だし、衣装もセットもいい感じだし、音楽も素敵だし、、、
何回でも観て、そして本当は見終わった後に友達とカフェで時間を忘れておしゃべりしたい!!そんな作品
Twitterでノーランに撮って欲しい!ノーラン的作品だ!という呟きをいくつか見かけたのですが、私としては全然ノーランじゃなくて、
でもとても洋画的ではあるので、なんだろうなー…と考えて、頭に浮かんだのが『メッセージ』と『ブレードランナー』…なんだけど、私は『ブレードランナー2049』しか見ていないので、つまり完全にドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の世界でした。
『メッセージ』の透明感があり地に足がついていないような非現実感のある灰青の世界観と、
『ボーダーライン』の血生臭い生々しさを、
『ブレードランナー2049』でラッピングした感じ。
私としてはそれが一番イメージだなぁ…と思ったら、
上田久美子先生と作曲の三宅純さんがエンキ・ビラルの『モンスターの眠り』をイメージソースにしているらしいことがプログラムにあり、「わぁ!ブレードランナーにつながったー!」という気持ちになって嬉しかったのでした。
その上、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の次作『DUNE/デューン 砂の惑星』の予告を見たら、完全に今欲しいイメージで…絶対観に行くぞ!と拳を握り締めたのでした
始まってすぐに思ったのは、グレーの世界に光るグリーンの「へその緒」の美しさ
そしてベッドに寝たまま上から降りてくる、まどかちゃん(星風まどか)演じるミレナ。
それを下から見上げながら迎える、真風(真風涼帆)演じるオバク。
「へその緒」の光がまるで飛行石みたいで、ラピュタ冒頭、シータが降りてくる場面を思い出しました
神秘的でキレイ
そして、小さなことから大きなことまで、とにかく悪いことをしたと裁かれるサパで暮らす人々。
頭の中に流れるのは
悪いことがしたい いい子でいたい
上田久美子先生の中に流れる「世の中でいいこととされることと悪いこととされること」に対する思いがこれだけで伝わってくるようです。
最初に開示された情報にあった通り、けだるそうに横になる真風。
コーヒーを飲みながらも、眠そうな真風
普段は突っ込みタイプだし結構チャキチャキしてると思うのに、なんでこんなにこのアンニュイな感じが似合うのかしら
そして何が起きても動じない感じもお似合い
実際はご挨拶で涙ボロボロ、めちゃめちゃ心動かされまくりなのに。かわいい
出会い、「SAPAのおへそ」に向かう二人、と、すっしーさん(寿つかさ)演じるタルコフ。
タルコフを見ていると、
サパに人類が来たのは本当に最近で(ミレナの成長を考えれば最近のことなんだけど、でも最初はよくわからなかったから…)、
地球の言葉や文化は禁止されているけれど、全員の記憶を漂白しているわけではないから当然文化は人の頭に息づいていて、、、
だから禁じられても恋しく思いながら…新しい言語でコミュニケーションを取りながら今の生活を送っているという不思議さを実感します。
新しい言語は何をもとに作られたのかしら。10年とかで覚えて会話するのは大変そう
サパ語では思いを上手く伝えられないがためにコミュニケーション不足でトラブル…とかありそう
名前もそもそもナンバリングだし…
タルコフは記憶を消されているわけではないのに、違う名前をつけているのよね。
もちろん憧れの名前を自分でつけるチャンスではあるのかもしれないけれど、、、私が今から「七海です」とか言うことも可能なんだろうけど、、、
でもなんか、やっぱり公務員タルコフを見ていると、ここにどんな気持ちでいるんだろう…生きるための選択として割り切っているんだろうけど、総統01の独裁に対して彼は別に大きな不満はないのだろうか…とても不思議な気持ちになります
だからこそ、最初「素数」が用いられている意味ってそこなのかな?と思いました。
この世界に割り切って生きている人と、どうしても割り切れないミレナとオバク。
そんな風に思っていました…でも、他にも素数の方がいるので、別にそういうわけではないのかな。
やっぱり人というものは謎が多く割り切れない…という感じなのかしら。
しどりゅー(紫藤りゅう)演じるスポークスパーソン101なんて、ある意味思いっきり割り切って生きてるタイプだものね。
何しろ「これは自動プログラムです」なんて、あんなに透き通るような美貌で淡々と語るもんだから、最初はペッパーくん的なAIとかホログラムかと思っていました。
ラストに、ミレナについていくか、あやちゃん(夢白あや)演じるイエレナについていくか「私はどうしたら」とワタワタしたのを見て、やっと「あ…人だった!」と思ってしまいました。
彼がもし割り切って生きてはいない人だったら…腹に何抱えてるの!?的な怖さあるわ…とも思ったのですが、
310さんにその話をしたら、やっぱりAIなんじゃないか、あるいはAI的にプログラミングされた人なんじゃないかという結論になりました。
「私はどうしたら」とワタワタしたのは、
自分で決定するということがプログラミングされていなかったから。
プログラミングまで言わなくても、結局ラストにつながる部分になりますが…まったく考える必要がなく、完全に思考が停止していたから。
だからやっぱり彼は、割り切ってここにいる人ではない…という結論に。
そう考えていくと、実は素数が与えられている人は、やっぱりみんな何か不自然な部分があるのかも。
それにしても、しどりゅーによく似合う、透明感があって美しいお役でした
そして、よく似合うといえば…まあ、みんな似合っていたんだけど、『不滅の棘』を思い出させる荒れ狂う留依蒔世
るいくん演じる日本人・タオカ。田岡…かな、やっぱりこれは。
私は比較的、自分が日本人ということに強いこだわりがない方だし、平和な国でのんびり生きられたらそれで十分なので、きっとすんなりポルンカ人になっちゃうと思うんですが、ナショナリズムが強い人には難しいことなんでしょう。難民船に乗っていた時間も別に20年30年とかじゃないし。
(その短時間でへその緒を作ったブコビッチ天才)
るいくんは、すっかりこの手のお役がハマるようになっちゃって…王子様るいくんも見たいんだけどなぁ。物静かなるいくん、気品あふれるるいくん…見てみたいなぁ。と思うけど、酔っ払ったように荒れ狂うと「キター!」っても思っちゃう
荒くれも気品も見せてくるあやちゃんのイエレナ。
彼女を最初に認識したのは『神々の土地』の新公なので、気品あふれる姿を。
そして次に驚いたのは『WEST SIDE STORY』なので、こちらは荒くれ。
その両方が今回って感じで、毎回毎回感心させられます
私は戦士としての彼女の方が、個性が出てて面白さを感じます…し、そんな中で真風とシーツにくるまっちゃう大人の顔も似合うところにワクワクします
かわいい娘役もできるけど、かわいい娘役枠に収まらないでほしいので、雪組でどんなお役が当たるのかとても楽しみです
イエレナ…思えばとても複雑よね。
結婚まで考えて愛し合った人が記憶をなくしているのもショックだけど、寄りに寄って昔可愛がっていた「あの子」に、自分たちの結婚をお祝いしてくれていた「あの子」に彼を持っていかれようとは…。
しかも、記憶を取り戻してなお、「あの子」と結ばれようとは…。
絶対にその愛は、すぐに切り替えることはできないから、彼女と彼を前向きに送り出したけれども、これからもふと思い出して切なくなる日が来るんじゃないかと思う。
けれど、そこはどんなイエレナも愛してくれる宣言をしているノア先生が、そのたびに全部を受け入れて愛の言葉で包んでくれるんだろうなぁ…いいなあ。
私もノア先生に包んでほしいなぁ
ライブビューイングを見たうちの母は
「キキちゃん(芹香斗亜)ってば、あんなに渋いお顔ができるようになったのね!!」と興奮してました。
できるんですよ、渋いお顔。素敵でしょ~
ノア先生のいいところは、
ミレナの誘惑にまったく動じなかったところ
揺れるイエレナを知りながらも、決して追及することなくジッと待つところ
全力でイエレナを支えてくれるところ
難民船での彼らのことは全然知らない、ある意味部外者としての距離感を適度に保ちつつ、全員を丁寧にすくい上げるところ
精神科医らしいところはミレナをちょっと診たくらいで、ほかに特になかったし、密売のへその緒を娼婦が生んだ新生児に埋め込むくらい何でも屋さんだけれど、SF的にはやっぱり精神科医で正解かなって感じで好き
そして、私はキキちゃんの伏し目が好きなので、静かに思い悩み受け入れるキキちゃん好き
それから私は後ろに手を振りながら去る男性がめちゃめちゃ好きなので、キキちゃんのそんな姿を見られて満足満足
歌声も素敵だったし…
私もノア先生のさりげない歌声を子守唄に眠りたいなぁ
それと心に残ったのは、ゆいな(優希しおん)のズーピン。
ジャンプする姿も、人懐っこく寄ってくる姿もかわいいけど、そこからの裏切りは…『CAPTAIN NEMO』のシリルのようでもあるかしら。
ひとこ(永久輝せあ)も、可愛らしいところから腹黒く裏切ってきたから衝撃だったけど、ゆいなのズーピンも可愛さ全開からだから「ひえー」でした。
けれど、彼はすごく生きることに貪欲で素直で、楽しそうなこと、楽しく生きられそうな方に舵を取る正直さは、私には、あの世界ではある意味最も理解しやすい人でした
(ゆいなを見るたび、頭の中に「ゆいなと言ったらおだちん♪」が浮かんでもう消えないけど、ゆいな…立派よー!)
あと、とにかく立派だったのはほまちゃん(穂稀せり)。
ゆうちゃんさん(汝鳥伶)の若い頃…っていうのも凄いけど、ただ「若い頃」どころではない強烈な役回り
ゆうちゃんさん演じる総統01が今に至るすべてが詰まっている難民ブコビッチ。
ミレナを難民船に乗せる決意の声も胸を打ったし、難民船での固い表情も、あの場の空気に馴染まない違和感の塊で素晴らしかった。
今まであまり注目してこなかったけど、次はちゃんと見つけよう!と思いました。
あ、今までも注目してきたけど、次絶対大注目があられちゃん(愛海ひかる)。
ビックリした
今回、、、特にラストシーン。
背が高くて、妙に肉感的で、ホットパンツがチャーミングで色っぽい、とてつもなく魅力的な女性がいるではないの!!と思ったら、あられちゃんだし、しかも
直後に娘役転向を発表するし、
その上身長169cmだし…、ああ、ビックリ
でも、面白いお役が回ってきそうな予感
そしてそして、今回女役のまっぷぅ(松風輝)。
最高だった
もちろん、冒頭で少年をやった時のどこか病的なまっぷぅも良かったんだけど、
お母さん最高だった
車椅子の息子キプーを連れてサパのおへそへ向かうお母さんテウダ。
大変な事情を抱えているのに、誰にでも優しくて大きくて…ミレナのお世話をする姿は本当に温かかった。
そしてタンクトップ姿のミレナは妙にセクシーだった…
抑えた声がカッコ良くて力強くて、ムッとした顔にはちょっと淋しさもにじんでいて…記憶を漂白されたのに、まるで自暴自棄のように男を次々誘うのは、やっぱり記憶はあくまで「消失」ではなく「漂白」であって、染みのようにじんわりと何かが残っているからなのかな。
ミレナが最後、ミンナとひとつになった時にあれだけ大きな心を持てたのは、すべてを理解したのと同時に、テウダのような大きな人の心も得たからかもしれないな。テウダのそばにいたのも大きかったかもしれない…なんて思いました。
まっぷぅテウダの話に戻って…穏やかで優しくて、芯が強くて、、、タルコフがそこに美しさを見出し、癒しを求めて愛してしまうのも納得
そして、全編見終わった時に、
この作品全体を象徴しているのがこの母子なんだと気が付いて、女役を演じるということに最初驚いたんですが、
なんてなんてなんて大きなお役を与えられたんだろうと、そのことにも感動しました
ずっと「へその緒」「サパのおへそ」と「へそ」がキーワードになっていることが気になっていたんですが、
テウダが、歩けるようになった息子を一人旅立たせることに決めたその時の言葉…
「あの子が歩けたのはそれが必要だったから。
今まで私もこの星もあの子を守り過ぎていました。
時には苦しみも訪れるものだけど、無謀な旅行に一人で行かせることにしたんです」
そして「ボンボヤージュ」と息子に笑顔で手を振るテウダ
ポルンカに来た人類を、総統01は大切に大切にしていたと思います。
へその緒でつないだままにして、争いの火種になりそうな「良くないこと」は徹底的に排除して、彼らのすべてを把握しようとして、、、
そして
守り過ぎた結果、
ポルンカの人たちは考えることをやめてしまった。
そんなことをしなくても生きていけるから。考えて、自分の足で歩く必要がないから。
それは上田先生から現代人への警鐘なんでしょうね、きっと。
何も考えなくても無事に生きていけるから、思考が停止していく…ことへの危惧。なんじゃないかな。
総統01がやろうとしていたこと、総統01の正義は、彼の視点に立てば悪気はないし、責め難いと感じたのは、つまり過保護な親の姿だったからかもしれない。
すべてを知っておくことは「親」にとってはすごく安心。
(そういう親って多いと思う。親じゃなくても、会社でも「全部把握したい病」の人ってかなりいるし。でもあれは、自分が安心する以外の何も生み出さない自己満足の産物だと私は思っているんだけれど…自分も20代の時はその病に完全に犯されていたから理解はできます)
けれど、オバクは相手の考えていることなんて「まったくわからない」
でも「わからない」まま、それはそれで構わないとして一緒にいようとする人。
すごく難しいけれど、それが親子の関係でも、人と人との関係でも理想なんでしょうね。
求めるべきは、自己満足な「安心」ではなく、相手への「信頼」ということだと思う。
テウダの息子がそうだったように、誰もが守り過ぎては自分で歩くことをしなくなるわけで、自分で選ぶことすら忘れてしまっていたポルンカの人たち=総統01の子供たちは、親の手を離れて、ついに自分で選択して、旅立ったり残ったりすることで…
時に困難が訪れるかもしれないけれど、「希望」につながっていくんだろうな。
可愛い子には旅をさせろとは、よく言ったものです
というわけで、この宝塚としては一見難しく思える物語全体を総括しているテウダとキプーの母子。
芯の強いテウダが、物語の芯を強く担っていることに、あとでじんわりと気が付いて、そして猛烈に感動してしまいました
やっぱりいい話だったなぁ。
そして、宙組にはいつも爽やかなエンディングをくれる上田久美子先生、ありがとう
宙組のカラーがそうさせているのかしら。
思えば宙組の色って不思議よね。
普通は…
みっちゃん(北翔海莉)・まさこ(十輝いりす)・かいちゃん(七海ひろき)が揃った星組がかつてそうだったように、上級生が組替えしたら、その組の色を変えていくと思うんですが、
星組生まれの上級生たちが集まったら、
なぜかみんな宙組っぽくなっちゃって…
もともとが寄り集まった組のせいかしら、
初代トップがあのずんこさん(姿月あさと)だからかしら、、
すっしーさんの人柄のせいかしら、、、
なんかこう…やっぱりあの自由度の高さにみんな「わほほーい」と羽根を伸ばしてしまうような感じで…
今回、しどりゅーが組替えして、真風、キキちゃん、しどりゅーが揃ったことで、ますます宙組カラーのあまりにもすべてを飲み込む濃さに気が付いてしまった気がします。
結局ですね、、、好き