MARIONETTE- シンドウ
【Bブロック決着①】
エマ・スラングレーの記憶の中にも生きた人間がパラサイトに取り込まれた事例は殆ど無いが、全く無いという事でも無い。代表的な事例な『シンドウ』である。極東の島国で産まれたシンドウは、生きたまま自分の脳細胞の複製を『機動兵器』へと移した可能性が高い。
『ギギ…………コロス……………。』
他にも強制シンクロ装置を着用した機動兵士が、そのままパラサイトに取り込まれた事例は確認されている。
シュバッ!
ガキィーン!
今のレッドガーディアンは、完全に人間の意思を失った訳ではなく、脳細胞のエネルギーをパラサイトに吸い取られている最中である。つまり共存状態ではあるが、このままエネルギーを吸い取られると装着している人間は確実に死ぬ事になる。
(時間が無い…………。)
少しでも早くパラサイトを倒してシンクロを解除させないと、レッドガーディアンは死ぬ事になる。
バシュッ!
ガキィーン!
グンル!
ガキィーン!
『おい!いったいどうなってるんだ?』
レッドクロスは明日香とレッドガーディアンの戦闘を茫然と見つめていた。なぜレッドガーディアンはレッドオーシャンを殺した?全く理解が追いつかない。
シンクロレベルγ(ガンマ)…………。
(強制シンクロ装置に何か欠陥があったのか…………。)
シュバッ!
『はっ!』
バシュッ!
『ギギャッ!』
ズバッ!
ビビッ!
『損傷率88%』『損傷率23%』
(あと少し……………。)
狙いはレッドガーディアンの利き腕とは反対側の左方向。そこに高速の剣を打ち込めばレッドガーディアンは必ず反応する。
シュバッ!
『音速剣(ソニック・スラスト)!!』
グワン!
ガキィーン!
ボキボキ!
『ギギャ!』
明日香の攻撃を無理やり防いだ右腕が有り得ない方向へと曲がり、外れた関節がダラリとぶら下がるのが見えた。
ここがチャンス!!
シュバッ!!
『グギャアァァ!!』
ビビッ!
『損傷率!リミットオーバー!』
ドッガーン!
レッドガーディアンと羽生 明日香の戦闘を控室にいる多くの機動兵士達が目撃していた。
イギリス連邦共和国 控室
ざわざわ
「エリー、今のは何だ?分かるか?」
イギリス連邦共和国の機動兵士であるブランザムもその1人である。
「ロシア軍の新兵器…………デスか?」
「新兵器か…………、だとしたらイカれているな。奴は仲間の機動兵士を殺した。完全に失敗作だ。」
ブランザムの意見にはエレノアも同意するが、それにしてもレッドガーディアンの戦闘能力は異常なほど高い能力に見えた。
「強制シンクロ装置でしょう。」
「強制シンクロ装置?」
答えたのは、ジム・ベスタである。
「機動兵士のシンクロ率を強制的に引き上げる研究はどこの国でも行っている。しかし、装着している人間の脳への負担が大きく実用化には至っていない。」
「レッドガーディアンの数値は計測出来たか?」
ブランザムが質問をすると、同じくエレノア隊のマーティン・ロイドが答える。
「瞬間スピードはエレノア隊最速のエレノア隊長よりも速いな。隊長のスピードが1とするとレッドガーディアンのスピードはおよそ1.6倍の計算になる。」
「1.6倍!?」
「めちゃくちゃ速いデスねぇ………。」
「あの日本の機動兵士もよく勝てたものたな。」
「羽生 明日香………、初めて聞く名前だ。」
「明日香…………、サウジアラビア紛争以来デスね。」
「エリー、知っているのか?」
エレノア・ランスロットは昨年のサウジアラビア紛争時に明日香を助けた事を2人に話した。
「ダビデ王…………、意味が分からん。」
「羽生 明日香のスピードも計測してみたが、通常時はエレノア隊長とそれほど変わらないようだ。」
「通常時?」
「一度だけ異常値を計測している。レッドガーディアンにトドメを刺す前の一撃はエレノア隊長の最高速度よりも速い。およそ1.2倍だ。」
「1.2倍………、レッドガーディアンほどでは無いが強制シンクロ装置無しと考えれば驚異的だな。」
「う〜ん。凄いデスねぇ………。」
「もっとも隊長のモデル・ユニコーンは攻撃型のマリオネット、羽生 明日香はスピード型だろう。一概に比較は出来ない。」
「はぁ………。予選で対戦したエレナ・クレシェフも強かったデスが、この大会は本当にレベルが高い。困ったものデス。」
「本当だな、エリー見てみろ。」
「ん?」
「桜坂とレッドマジシャンの戦闘もいよいよ佳境のようだ。俺は羽生 明日香よりも上の2人の方が対戦をしたくない。桜坂の長い光学鞭(ウィップ)にレッドマジシャンの光学短剣(ナイフ)、あんなのどうやって対処すれば良いのか見当もつかないぜ。」
【Bブロック決着②】
──────サイコキネシス
レッドマジシャンの能力が『マリオネチカ』と融合し、その威力は数千倍へと増幅する。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ!
シンクロレベルγ(ガンマ)────────
『マジシャンズ・サイクロン!』
シュルルル!シュルルル!
シュバババババババババババババ!!
ザッ!
応戦する桜坂 神楽(さくらざか かぐら)の狙いはレッドマジシャン本体を倒す事にある。嵐のように吹き荒れる光学短剣(ナイフ)を、光学鞭(ウィップ)で叩き落とすと同時に神楽はマジシャンとの距離を詰める。
しかし、問題はここからだ。強制シンクロ装置によって身体能力を強化されたレッドマジシャンの移動速度は神楽をも上回る。
シュバッ!
バチ!
光学鞭(ウィップ)が叩きつけるのは乾いた大地のみで、レッドマジシャンには届かない。
『まだよ!』
シュッ!
『!』
バチン!
ビビッ!
『損傷率18%』
(かすめたか!予想以上に鞭(ウィップ)の射程が長い……。)
──────しかし
『マジシャンズ・ナイフ!』
『!』
シュバババババババババババ!
『うっ!』
バシュッバシュッバシュッバシュッバシュッ!!
ズバッ!
ビビッ!
『損傷率73%』
『アリス、そろそろ耐久値も限界だろう。どれほど優秀な機動兵士でも無限に襲い来る光学短剣(ナイフ)を捌けるものではない。』
『限界なのは、私の方かしら?』
『…………なに?』
ビュン!
『!』
バシュッ!
ビビッ!
『損傷率40%』
『貴様………………。』
『酷い汗よ、レッドマジシャン。強制シンクロを続ければ身体に負荷が掛かるわ。あなた、あと何分保つのからしらね。』
(ちっ!)
シンクロレベルγ(ガンマ)の持続時間は五分が限界であるが、既に10分を越えている。これ以上、強制シンクロを続けるのは非常に危険な状態だ。
『そこまでお見通しか。』
『そんな装置は使うものでは無いわ。寿命を縮めるだけよ。』
『ふん……………。』
普通の機動兵士なら1分も掛からずに倒す事が出来る。全方向からの光学短剣(ナイフ)の攻撃に対応出来るオリジナル・アリスが異常なだけだ。
『そろそろ決着を付けましょう。』
ジリ
ザッ!
『くっ!』
ガクン!
『!?』
(足が動かない!?)
レッドマジシャンはモニターに映る自らのシンクロ率を確認すると、その数値は18%を指し示す。
(18%……………、これでは、まともに歩く事も出来ない。)
シュバ!
(終わりか…………………。)
……………。
(?)
しかし、神楽は攻撃の手を止め後ろへと振り向いた。
ザッ
ザッ
『貴様…………、なぜ攻撃しない。』
『…………今回は引き分けよ。』
『なに?』
『決勝トーナメントで再戦したら、その時に決着を付けましょう。』
ザッ
ザッ
コングラチュレーション!
決勝進出機動兵士
アメリカ代表
桜坂 神楽
ロシア代表
レッドマジシャン
中華人民共和国代表
李 王偉(リ・ワンウ)
日本代表
羽生 明日香
面前のモニターには、予選を突破した機動兵士の名前が表示されている。
(南側エリアの戦闘が終わったのか………。)
Bブロック予選は終わった。
明日香がレッドガーディアンを倒した事により、残り5名となったものの、ロシアの機動兵士であるレッドクロスが自らシンクロを解除して負けを認めた。
『お前、なぜシンクロの解除をした?』
「俺が決勝トーナメントへ進出しても勝ち進むのは難しいと判断した。」
『…………。』
「それならば、マジシャン隊長が勝ち残った方が良いとの判断だ。」
『そうか……………。』
ザッ
ザッ
『シュェリー、戻るぞ。』
「兄さん……………。」
そして、李 王偉(リ・ワンウ)は羽生 明日香の方へと振り向き頭を下げる。
『日本の機動兵士よ。助かった、ありがとう。』
『え?………いえ、私は何も。』
『お前、名前は何と言う?』
『…………明日香、羽生 明日香です。』
『明日香か…………、覚えておこう。』
ザッ
ザッ
ザッ
【Bブロック決着③】
フランス共和国 控室
結局、マリアの預言通り中華人民共和国の機動兵士である李 王偉(リ・ワンウ)が勝ち残り、優勝候補の一角であった伊集院 翼は敗退した。
「マリア、アラン、レオン、ミーシャ、少し良いか。」
「ポルフス様!」「隊長!」「まだ動いてはダメです!」
昨夜未明、昏睡状態であったサン・ルヴィエ・ポルフスの意識が回復し、なんとか大会には間に合う事になったが体調は十分に回復していない。
サン・ルヴィエ・ポルフス
マリア・ローラ
アラン・トルーパー
レオン・マックス
ミーシャ・ロザリア
予選Cブロックに参戦予定の機動兵士がこの5人だ。
「先のヨーロッパ戦線でフランス軍は大敗を喫して残る機動兵士も僅かしかいない。諸外国の戦力と比較して我々は非常に脆弱だと言わざるを得ない。」
「……………。」
「しかし、希望はある。それはお前達が生き残った事だ。」
「ポルフス様…………。」
「今回の大会では予選さえ突破出来ればあとは1対1の個人戦になる。まずは1人でも多くの機動兵士が予選を突破する事が重要だ。そこでマリア、今日から聖戦騎士団の団長はお前に任せようと思う。」
「なにを………おっしゃいますか。」
「『マリオネット』創世期に活躍した機動兵士達、シリウス・ベルガー、アンドロメダ・マウラーは既にこの世にはいない。俺と同じく三大英傑と呼ばれる伊集院 翼も敗退した。『マリオネット』の能力を最大限に引き出せるのは10代後半から20代前半と言われている。」
「それは………。そうですが。しかし…………。」
「ロシア軍のエレナ・クレシェフ、アメリカ軍の桜坂 神楽、そして日本の羽生 明日香。近年の機動兵士戦闘に於いては若い女性の機動兵士の活躍が目立つ。次の世代を担う機動兵士はお前だ、マリア。」
「………承知しました。」
「マリア!」
「そうしますと、明日の予選の指揮は私が取る事になるのでしょうか?」
「そうだな。お前が聖戦騎士団の団長だ。」
「…………、4つに分けられた予選ブロックに於いて私達が登録したCブロックが最も突破しやすいブロックだと神は告げています。」
「そうだったな。」
「それでも、私達フランス軍が劣勢なのは否めません。もしも予選を突破したいなら…………。」
「……………。」
「なるべく戦わない事です。」
「!?」
「マリア…………。それは?」
「フランス軍の作戦は逃げる事です。試合が始まると同時に各自がバラバラにフィールドへ散って下さい。そして、残り時間と生き残った兵士の数を見て戦う相手を私が指示します。」
予選AブロックとBブロックの戦闘が終わり勝ち残った機動兵士はいずれも一筋縄では行かない強者であり、世界には強い機動兵士が山ほどいる。
ポプルス様の体調が思わしく無い状態では、まともに戦っては予選突破は難しい。それほど今のフランス共和国の機動兵士は弱い。
現時点で予選を通過していない国は、フランスとドイツのみであり、ヨーロッパ戦線での大敗が尾を引いているのは明らかである。
ドイツが戦力を最終ブロックに固めて来る戦略なのは、既に分かっている。そして、Cブロックではアメリカ合衆国の影も薄い。Bブロックと同じく参戦する機動兵士が少ない可能性がある。
しかし、この預言だけでは苦しい。
どの国の機動兵士がバトルフィールドのどの場所に配置されるのか。そこまで読みきらないと、フランス軍は全滅する。
────神よ
「『マリオネット』、オン!」
ギュイーン!
私に新たな預言を啓示して下さい。
ロシア連邦共和国 控室
(レッドマジシャンが勝ち残った。)
ニヤリ……………。
奴は数少ないアンドロメダ派の機動兵士。現在のロシア連邦共和国はクレムリン親衛隊出身の機動兵士が権力を握り、アンドロメダ派は窮地に追いやられている。
カツン
カツン
「マジシャン。」
「レッドデイヴィス…………。」
「オーシャンは残念だったな。」
「……………、私は今、虫の居所が悪い。消え失せなさい。」
「そう言うなマジシャン。今大会に参加している機動兵士の中でクレムリン親衛隊の傘下にない機動兵士はお前達と俺だけだ。仲良くしようぜ。」
「貴様と仲良く?無理な相談ですね。貴様のような何の大義も無い狂信者とは口も聞きたく無い。」
「狂信者ねぇ…………。そうかもしれないが……。」
しかしと、レッドデイヴィスは言葉を続ける。
「機動兵士にとっての正義は強い事だ。クレムリン親衛隊が俺より強いとは思ってねぇよ。」
ロシア軍に所属しながら、どの部隊にも加入せず実力で現在の地位を確立したデイヴィスらしい物の考え方だ。
「徒党を組む連中は1人では勝てないからだ。俺ならテレイサをも倒す事が出来る。決勝トーナメントでは同じロシア軍同士でもぶつかる可能性がある。その時に俺の実力を誰もが認める事になるだろう。」
「デイヴィス…………、お前の狙いは何だ?」
「狙い?……………ふん。俺には大義が無いと言ったのはお前だ。狙いなんて何もねぇよ。」
「……………。」
カツン
カツン
とは言え、予選Cブロックに参戦するトップファイブは、レッドスコッチ。クレムリン親衛隊の中では頭がキレる奴だ。他のメンバーも親衛隊傘下の機動兵士。
(どうしたものかね…………。)
ギィ……………。
「マジシャン…………。」
「テレイサ。」
「話があります。少し時間を…………。」
控室に戻ったレッドマジシャンを出迎えたのは、ロシア軍総司令官のテレイサ・トルスタヤである。
「貴女まで、私の事は放っておいて下さい。」
「あの化物は何ですか?」
「………………化物?」
「レッドガーディアンの事です。ガーディアンは正気を失い仲間であるレッドオーシャンを殺しました。そして、あの身体能力は常軌を逸しています。ガーディアンの実力は私も知っている。あれほどのスピードを出せる機動兵士では無いでしょう?」
「………………。」
「強制シンクロ装置ですか。」
マジシャンは無言でテレイサの顔を見る。
「マジシャン、貴方の能力も知っていますが、今の戦闘で見せた貴方の力も強制シンクロ装置によるもの。マジシャン部隊は禁止されている強制シンクロ装置を使っている。違いますか?」
「勘違いをするなテレイサ。私はアンドロメダ様の部下であってお前の部下ではない。お前に指し図を受ける覚えは無い。」
「…………私はロシア軍の総司令官です。」
「……………。」
「前総司令官のアンドロメダ、そして、クレムリン親衛隊の元総帥であるベガが進めていた研究は全て禁止にしたはずです。私に逆らえばロシア軍を敵に回す事になりますよ。」
「それは、今大会が終わるまでの話ですね。」
「な………に?」
「今大会の優勝者が手に入れる機動兵器『シンドウ』は、現存する全ての機動兵器を遥かに凌駕する機動兵器だと言う。私がそれを手に入れてロシア軍のトップになりましょう。」
「貴方にそれが出来るとでも?」
「機動兵器の世界では勝った者が正義です。テレイサ、お前もアンドロメダ様を殺してその地位を手に入れたのだろう。」
「………………。」
「予選を勝ち抜く事だ。そうすれば決勝トーナメントで私と対戦する事もあるだろう。」
「マジシャン、待て!」
「私はオーシャンの亡骸を埋葬せねばならない。邪魔をするな。」
アメリカ合衆国
次々と予選を突破する機動兵士達を見てアレクサンダー・ルーカスは、感傷に浸っていた。
ロシア軍で開発された戦闘の申し子「エレナ・クレシェフ」、イギリス軍のエース「エレノア・ランスロット」、シュリング流武術を極めた「李 王偉」、10億人に1人の遺伝子を持つ「桜坂 神楽」、パワードスーツによって異能の力を開花した「レッドマジシャン」、そして、羽生 明日香。
いや……………。
───────エマ・スタングレー
(ふ……………。未来の世界、最強の機動兵士が予選ごときで負けるはずも無いか。)
これこそが、アレクサンダーが待ち望んでいた機動兵士の大会である。アメリカ人の多くはアメリカ歴代最強の機動兵士はシリウス・ベルガーだと思っている。アメリカだけではなく、世界中の人間がシリウスには一目置いている。
アレクサンダーが将軍になった後には、シリウスは機動兵士の大会には参加せず、自らの部隊を造る事に専念していた。そして、シリウスが亡くなった今となっては、アレクサンダーがシリウスの名声を上回る事は出来ない。シリウスと言う名前は、もはや伝説となっている。
しかし、世界初の機動兵士の世界大会で優勝すれば話は違って来る。機動兵器『シンドウ』だけではない。アレクサンダーが欲しているのは、世界最強であり歴代最強の称号。
「嬉しそうだな、アレクサンダー。」
「マイケルか………。機動兵士であれば強い敵と戦い相手を捻じ伏せる事に喜びを感じるはずだ。違うか?」
「機動兵器は所詮は戦争の道具だ。何とも思わないな。」
「ふん。つまらん奴だ。」
「Bブロック予選を見ただろう。勝ち残った機動兵士は、いずれも一筋縄では行かない強者ばかりだ。残りのブロックでも強い機動兵士が出て来る。とても楽しめる状況では無いな。」
「そうか………、まぁ健闘を祈っている。」
ザッ
ザッ
(やはりマイケル・ゲーリックでは無理だな。一流の機動兵士ではあるが、その上を目指してはいない。)
機動兵器には、装着した人間の能力を増幅する機能が備わっているが、それは身体能力だけではない。精神力であり、その人間の強い意志が機動兵士の能力を向上させる。自分は世界一の機動兵士であり、誰よりも強いと思う事が重要なのだ。あくまで、アレクサンダーの仮説ではあるが、おそらく間違ってはいない。
(多くの機動兵士は、この事実に気付いていない。)
「アレクサンダー。」
そこに、もう一人の将軍であるクリストファー・カレンが声を掛ける。
「私は部屋へ戻るわ。」
「あぁ、そうだな。明日はお前の出番だ、期待している。」
「………………、私の能力は知っているでしょう?私が負けるなんて有り得ないわ。」
(ふ……………。俺と同じく、自身が負ける事など全く想像していない機動兵士、クリストファー・カレン。)
カレンは予選を突破出来る選ばれた機動兵士だ。
こうして、大会予選の初日が幕を閉じた。大会初日、予選Bブロック終了し、決勝トーナメントへの進出が確定した機動兵士は8人。