MARIONETTE- シンドウ
【大会前夜①】
西暦2047年、ロシア軍が始めて機動兵器(パワードスーツ)を実戦投入してから13年が経過した。未来のテクノロジーである機動兵器(パワードスーツ)には従来の重火器を主体とした兵器は一切通用せず、戦争の形態を大きく変える事となる。つまりは、機動兵器を制する国が世界を制する事となった。
西暦2060年10月14日
機動兵器『マリオネット』の世界大会が開催される前日には、世界中の機動兵士達がイスラエルの地に集結していた。
日本国防衛軍の代表は20名。伊集院 翼(いじゅういん つばさ)第一統括隊長を筆頭に錚々たるメンバーが代表に選ばれている。
「大変な事になりましたね。」
そう告げるのは、防衛軍第二統括隊長の夢 香織(ゆめ かおり)である。
日本国の機動兵士は、他国の機動兵士との戦闘経験があまり無い。毎年アメリカで開催される『マリオネット』の世界大会にも出場せず、防衛軍内での戦闘訓練が専らの対人戦闘経験である。果たして防衛軍の実力が世界に通用するのか不安は尽きない。
「香織、それは他国とて同じことだ。」
「伊集院隊長………。」
「アメリカもヨーロッパも地域での大会は行われているが、とても世界大会と呼べる代物ではない。何より今回はロシア連邦共和国が参加している。」
ゴクリ
「ロシアの機動兵士を倒さなければ世界最強を名乗る資格は無い。それは世界三大英傑などと呼ばれている俺も同じだ。」
「そうだな。」
そこに神坂 義経第三統括隊長が補足する。
「事実上、今回の世界大会が始めての世界大会だ。世界最強を決める機動兵士同士の戦闘。胸が踊らないと言えば嘘になる。」
機動兵士だけではなくて、世界中の国が、国民がこの大会に注目をしている。
前評判では、やはりロシア軍のクレムリン親衛隊が優勝候補として挙げられているが、伊集院 翼も優勝候補の一角に名を連ねている。マリオネット大国であるアメリカとロシア、それに続くのが日本の防衛軍と予想する識者は多い。
「それにしても、今回の大会は予選がチーム戦、決勝トーナメントは個人戦です。チーム分けが難しいわね。」
各国から選ばれた機動兵士は、一カ国につき20名。参加する国は日本、アメリカ、ロシア、イギリス、ドイツ、フランス、中国の7カ国になる。総勢140名の機動兵士が決勝トーナメント進出を掛けて予選を戦う。
4つのブロックに分かれた予選は35名によるサバイバル戦で最後に生き残った上位4名が決勝へ進む事が出来る。一つのブロックに配属される機動兵士は一カ国につき5名であり、5人編成のチームで戦う事になる。
「他国がどのような編成にするのか予想は難しいな。」
一つのブロックに強者を集めれば、そのブロックでの勝ち残りの可能性は高くなるが、他のブロックを捨てる事になる。そして、万が一にも同じブロックに強豪が重なれば下手をすれば予選突破出来る兵士がゼロという事態も有り得る。
「日本は戦力を均等に分散するつもりだ。俺達3人に加えて七瀬第四統括隊長は別のブロックに分散させる。仮にクレムリン親衛隊と予選で当たっても全滅は避けられる。向こうも分散して来るかもしれないが、上位4人が予選を突破出来るなら無理に戦う必要もない。」
「とにかく予選を突破しないと始まらないものね。」
「決勝トーナメントへ進める機動兵士はわずかに16名。出来るだけ多くの日本人を決勝トーナメントへ進めたい。目標は一つのブロックにつき2名の合計8名だ。」
「ずいぶんと高い目標だな。」
「それくらいの実力はあると思っているさ。」
「チーム編成は決まったの?」
「情報漏洩を防ぎたいからな、発表は選手登録が終わった後だ。」
総勢140名の世界トップクラスの機動兵士が、ここイスラエルに集結した。予選会場はイスラエル郊外にある4つのバトルフィールドで、各フィールドでは35名の機動兵士が配置となりバトルロイヤル形式のサバイバル戦が展開される。
決勝トーナメントへ進める機動兵士は
────────16名である
機動兵士が待機する街にある食堂
ざわ!
「お前、日本人か?先日は命拾いをしたな。」
「あ………?」
「停戦が無ければお前達、全滅してたぞ?」
「なんだと!?」
食堂にいるのは、日本国防衛軍の機動兵士、上杉 ケンシン(うえすぎ けんしん)と坂田 めい(さかた めい) および白峰 和真(しらみね かずま)の3名であり、対する中華人民共和国の機動兵士も3名、たまたま食堂でかち合った所で口論となる。
「ケンシン、相手にするな。」
上杉 ケンシンは、日本国防衛軍の中では最年少の機動兵士で入隊したばかりの機動兵士であるが、その能力が高く評価され大会メンバーに抜擢された。
「なんだ?日本の機動兵士は腰抜けばかりなのか?」
「なにぃ!?」
「止めとけケンシン。明日は予選だ。そこで決着を付ければ良い。」
ぐい!
ガタン!
「ちょっと!」
ケンシンを宥めるのは、防衛軍の中でもベテランの部類に入る第二歩兵部隊の副隊長を務める白峰 和真(しらみね かずま)である。すらっとした高身長に紳士的な雰囲気を醸し出す和真が、ケンシンの腕を掴み無理やり椅子に座らせた。
「ふん。腰抜けが!」
中華人民共和国の3人の機動兵士は、そのまま店を出て行き、この場は何事もなく終了した。
「白峰副隊長!あんな事を言われて平気なんですか!」
ケンシンの怒りは収まらない様子であるが和真は気にも止めない様子で紅茶をすすっている。
「はぁ、拍子抜けするぜ。」
「ケンシン…………。」
そこで声を掛けたのは第二歩兵部隊の隊長を務める坂田 めいである。
「周りの様子を見なさい。私達以外にも何人か機動兵士がいます。」
「え?」
ケンシンが店内を見渡すと、一般客に混じって西欧人の姿が何人か見える。アメリカかヨーロッパの機動兵士だろう。
「こんな所で戦えば手の内をバラすようなものよ。中国の機動兵士は若い兵士も多く機動兵士としては未熟です。彼等が予選を勝ち残るのは難しいわね。」
「う…………まぁ、な。」
(それにしても…………)
めいは店内にいる3人の女性を凝視した。金髪が美しい女性であるが、どの顔も同じに見える。
(桜坂 神楽に似ている。しかも3人ともが同じ雰囲気を醸し出している。嫌な予感しかしないわね。)
今回の世界大会が実現出来たのは、アメリカ合衆国がエルサレムの奪還に成功したからに他ならない。噂によるとアメリカ軍は、200名ものロシア軍の機動兵士を50名の機動兵士で圧倒したと言われている。
(主力がヨーロッパ戦線に出向いていたとは言え、世界最強と言われるロシア軍の機動兵士を圧倒するなど考えられないわ。)
何か秘密がある。
(アメリカ合衆国が今回の大会を開催したのも絶対の自信があってのこと。サウジアラビア紛争で惨敗した合衆国が、ここまで強気の行動が出来る理由。)
「どうされました?めい様。」
めいの様子に気づいた和真。
「和真…………、今回の大会、注意すべきはアメリカ合衆国です。予選では合衆国との戦闘は避けるべきでしょう。」
【大会前夜②】
イギリス連邦共和国、エレノア隊控室
イギリス連邦を代表する機動兵士5人は、先日のロシア軍との戦闘で唯一勝利をした戦場を任された機動兵士達でもある。ドイツやフランスの部隊がロシア軍の強襲により一方的に敗戦したのに対し、イギリス連邦は領土内のロシア兵を全て撤退に追い込んだ。
エレノア・ランスロット
エドガー・ブランザム
マーティン・ロイド
ジム・ベスタ
ホワイト・A・チェスター
ヨーロッパ最強を自負するイギリス連邦の中でもトップクラスの機動兵士を集めて造られた部隊がエレノア隊だ。
「エリー隊長、予選の組分けはどうなったんだ?」
隊の中では27歳と最年長のジムが、最年少のエレノアに質問をする。
「う〜ん。どうしよう!」
「おい!まだ登録してないのかよ!」
「もう時間が無いぞ!」
4人の隊員に突っ込まれるエリーは、へへへと頭をかくが笑っている場合ではない。
「ちっ!やはり隊長に任せるべきでは無かったか。」
「時間が無い!さっさと決めるぞ!」
隊を取り仕切るのは副隊長のエドガー・ブランザムだ。
「簡単に言えば戦略は2つしか無い。同じブロックに強い機動兵士を集中させるのか、分散させるのか、それだけだ。」
「どっちが良いかな?」
「考えて無かったのか!?」
エリーの発言に驚くブランザムであるが、今は時間が無い。
「イギリス連邦の実力は米露に次ぐ3番手………、いや日本にも劣るかもしれない。」
「妥当な評価だな。」
「戦力を分散させると予選突破が厳しくなる。危険な賭けではあるが、我が軍は戦力を集中させる。」
「そうだな。俺達は同じブロックにした方が連携も取れる。」
「エレノア隊の5人は全てAブロックに登録する。アーノルド隊はBブロック、Cブロックにレスター隊、Dがマッキンリーの部隊だ。それぞれ同じ部隊のメンバーにした方が戦いやすいだろう。」
「それで行こう!早く登録しないと不参加になるぞ!」
「決まりね!登録はエリーが行くわ!」
「ダメだ!信用出来ない。みんなで行こう!」
「えぇぇー!?」
15分後─────
「なんとか間に合ったな。」
「大会は明日からなのに、何でピンチを迎えてんだよ!」
「まぁ、でも…………。」
5人はエルサレムの大地を見つめる。
「これで決着を付けるぞ。」
未来から贈られて来た聖書(バイブル)によれば、最新型の機動兵器『シンドウ』の性能は従来の『バトルスーツ』の性能を遥かに凌駕するらしい。未来の世界を統一したシンドウが、それを実現出来たのも、その『バトルスーツ』の賜物だと言われている。
「どんな『マリオネット』だかは知らないが、未来最先端の機動兵器だ。想像を絶する性能なのは間違い無いだろう。」
そろそろ夕日が沈む。
「『マリオネット!』オン!」
ギュィーン!
「おい!エリー!?」
「なにシンクロしてるんだ?」
そこに現れたのは、ユニコーンをモデルにした真っ白い『マリオネット』である。
フワサッ!
白い羽を広げて空中を舞う『ユニコーン』は、イギリス連邦が編み出した独自の性能を有する『マリオネット』である。
『最強の機動兵器『シンドウ』。そんなのに興味は無いわ。』
「なに!?」
天翔けるユニコーンは告げる。
『世界屈指の機動兵士達と戦える事が幸せ。この大会では命を奪う事も禁止されている。これが機動兵器のあるべき姿だと、エリーは思う。』
バサッ!バサッ!
す────
『世界から戦争を無くして見せます。それがエリーの願い。』
「ふん。」
ブランザムは言う。
「ならば、『シンドウ』を手に入れる事だ。最強の機動兵器を手に入れて世界を平和にして見せろ!」
『ふふ…………。』
アメリカ合衆国、ロシア連邦共和国、他にも未知の実力を持った機動兵士は沢山いる。
それでも、とエリーは思う。
七瀬 怜(ななせ れい)
(怜ちゃんを倒してこそ世界最強の機動兵士。怜ちゃんと戦うまでは、エリーは負ける訳には行かない。)
【大会前夜③】
「エルサレムか…………。中東の地には緑色の『マリオネット』がよく映える。」
「神坂隊長、何を意味不明の事を言ってるんすか?」
「大和か……………。」
日本国防衛軍特別歩兵部隊、第三統括隊長、神坂 義経(かみさか よしつね)の今日の『マリオネット』のカラーリングは緑色らしい。それどころか、髪の色まで緑色に染めている手の込みようで、神坂隊長の思考を理解するのは難しい。
「北条は残念だったな。」
「隊長…………。」
「隊長は止めろ。お前も俺と同じ統括隊長になったんだ。もう第十七歩兵部隊の隊員では無いだろう?」
「え、えぇ………、では何と呼べば?」
「そうだな。」
「……………。」
「神坂統括隊長?」
「舐めてるんですか?」
「まぁ、呼び方などどうでも良い。明日の作戦を練るぞ。」
「はぁ…………。」
神坂統括隊長は、大和 幸一(やまと こういち)の一期上にあたる先輩隊員である。派手好きで突拍子もない事を言い出す時はあるが、幸一にとっては尊敬出来る先輩だ。そして、何より機動兵士としての実力は折り紙付きで、防衛軍に入隊してからの個人戦の成績は負知らず。常勝無敗の戦績を誇る。
「神坂隊長が作戦を考えた事も指示した事も無いでしょう?似合いませんよ。」
「ちっ!生意気な奴だ。」
それに、今回の幸一と供に戦うメンバーが指示に従うような兵士達ではない。第一歩兵部隊の、鬼塚 弥勒(おにづか みろく)、御鏡 釈迦(みかがみ しゃか)、木下 阿弥陀丸(きのした あみだまる)と錚々たるメンバーで、幸一や神坂よりも歳上の先輩隊員ばかりだ。
「伊集院統括隊長は戦力を分散すると言っていたが、どうして俺達は恵まれているな。」
統括隊長2人に第一歩兵部隊の隊員が3名。第一歩兵部隊は誰が統括隊長になってもおかしくない実力者揃いで、4つのブロック編成の中では戦力が充実している。
「予選は俺達のAブロックが最初に開催される。最初に勝利を治め防衛軍の士気を高める狙いでもあるんだろう。」
「勝利………ですか。」
「決勝トーナメントに進める機動兵士は一つのブロックで4人までだ。全部取りに行くぞ。」
「はぁ………、相変わらずですね。」
「勝てると思わなければ勝てる試合も勝てない。俺はどんな時でも負ける想像などした事は無いぜ?」
この人は強いと、幸一は思う。
他の統括隊長達も実力は化物級ではあるが、神坂 義経には強さを裏付ける技術がある。並外れた動体視力と反射神経によって繰り出される剣技は他の追随を許さず、天才と言う言葉は神坂の為にあると言っても過言ではない。加えて、波動剣の鬼塚と睡蓮の釈迦の2人も、負けず劣らずの化物だ。
「全員で勝ち残りましょう。」
「そうだな。その時は決勝トーナメントはお前が辞退しろ。」
「いやいや、それは無いでしょ?これでも統括隊長ですよ!?」
「はは、その時にはジャンケンでもするさ。」
何1つ作戦を立てられ無いまま、2人の統括隊長の作戦会議は終わった。
世界初の機動兵士の大会を前日に控え、日本国防衛軍の機動兵士達は試合を観戦出来るモニターのある部屋に集合していた。
「おい望愛(のあ)!見てみろ。」
「どうしたの?」
大会に参加する機動兵士の1人、不知火 詩音(しらぬい しおん)が、隣に座る榊原 望愛(さかきばら のあ)に端末を差し向けた。
「なにこれ?」
「俺達、賭けの対象になっているみたいだ。アメリカの会社だな。」
「賭け?この数字はなに?」
「優勝候補のオッズだろう。ほんと、商売根性には感服する。」
望愛が端末に映し出された画像を覗き込むと、そこには10名の機動兵士の名前が表示されていた。
①テレイサ・トルスタヤ(露)4.2
②エレナ・クレシェフ(露)4.5
③アレクサンダー・ルーカス(米)6.3
④伊集院 翼(日)7.9
⑤マイケル・ゲイリー(米)13.8
⑥アンドロフ・ミゲイル(露)16.0
⑦サン・ルヴィエ・ポルフス(仏)20.1
⑧クリストファー・カレン(米)20.8
⑨エレノア・ランスロット(英)23.5
⑩セルゲイ・パトリック(露)26.8
⑪ほか 50.0
「ほか?………他ってなによ。」
「俺に言われても知らねぇよ。」
上位人気の機動兵士の殆どはロシアとアメリカの機動兵士であり、日本からは三大英傑の1人として数えられる伊集院第一統括隊長のみがランクインしている。
「これ、アメリカの兵士に甘く無い!?」
「だから知らねって。」
そもそもアメリカの一般国民が他国の機動兵士の名前を知っているだけでも珍しい。
「まぁ、上位のメンバーは有名どころしかいないな。」
ランクイン1位と2位はロシアのクレムリン親衛隊のメンバーで、アメリカの機動兵士よりもオッズの人気は高い。
「ポルフスって、あのポルフスよね?確か昏睡状態だと聞いたわ。」
「それで順位が低いんだろ?参戦する可能性は低い。」
「………そうね。」
同じ三大英傑の1人である伊集院統括隊長よりも、倍率はかなり高い。
「こうして見ると、殆どアメリカとロシアの機動兵士ばかりね。私達、本当に勝ち進めるのかしら?」
「正直なところ、この10人と予選で当たるのは勘弁して欲しいな。」
カツン
カツン
「全員揃ったか。」
部屋の前方に立つのは、日本国防衛軍特別歩兵部隊、第一統括隊長の伊集院 翼(いじゅういん つばさ)である。近年の機動兵士達はスピードを重視するスピード型の『マリオネット』を装着する兵士が多いが、伊集院は攻撃型の『マリオネット』を装着する剛の兵士だ。鍛え上げられた肉体が、大きな身体を更に大きく見せ、圧倒的なオーラを放っている。
「明日は、いよいよ機動兵士の世界大会が開催される。しかし、これは単なる大会ではない!」
伊集院は語気を強める。
「未来の機動兵器『シンドウ』、本物なのか、紛い物なのかは分からんが、我々は『シンドウ』を手に入れる必要がある!」
「本物です!」
ざわ!
「あの機動兵器は紛れもなく未来から贈られて来たものです。」
伊集院の言葉に反応したのは、羽生 明日香(はにゅう あすか)隊員である。
「ちょっと、明日香。」
「………話を続けてくれ。」
怜が明日香の言葉を静止しようとするが、伊集院が続きを促した。
「はい。あの機動兵器『シンドウ』は確かに最強の機動兵器です。しかし、あれを装着しては行けません!」
「どういう意味だ?」
「未来の世界は機動兵器『シンドウ』によって滅ぼされたのです。」
ざわ!
ざわざわ……………。
羽生 明日香は知っている。未来の機動兵士であるエマ・スタングレーの記憶を受け継いだ明日香には『シンドウ』の恐ろしさが実感として経験している。
しかし────
そんな話を簡単に信じる者はいない。
「ふむ………。とにかくだ。我々、防衛軍は何としても優勝をする!諸君の健闘を祈る!!」
わっ!
伊集院の演説が終わり、自室へと戻ろうとする明日香に声を掛けたのは怜だ。
「明日香!」
「七瀬統括隊長。」
「あの機動兵器はローマでシーザーが着用していた機動兵器なのですか?」
壊しても瞬時に再生する機動兵器(パワードスーツ)には、七瀬 怜も苦戦を強いられた。チート級の能力を持つ機動兵器であれば確かに最強の機動兵器と言えるだろう。だが、明日香の返答は予想を上回るものであった。
「そんな生易しい物では有りません。」
「え?」
「機動兵器『シンドウ』は、存在そのものが脅威なのです。彼は人間でなく『パラサイト』、しかも人間以上の知能を持ち、人間を『パラサイト』にさせる事が出来ます。」
「人間を…………『パラサイト』に?そんなまさか。」
「七瀬統括隊長!なんとしても『シンドウ』を手に入れる必要があります!他の国の機動兵士が『シンドウ』を装着すれば…………。」
────────人類が滅びる