ADAMS編②


【アダムス①】


世界最先端にして世界最高峰の人工知能を持つ『ADAMS(アダムス)』が日本の国家元首となったのは西暦2098年のことだ。少子高齢化による人口減少により、経済が低迷した日本にとって、それは起死回生の政策転換であり、世界にとっても画期的な出来事であった。アダムスは非常に優秀な国家元首であり、全てに計算された経済政策により日本は高度成長期以来の経済成長を遂げる。


それから100年、世界はナショナリズムが台頭し民族同士の紛争が多発する。22世紀も終わりに差し掛かろうとしてい2198年には、日本は日本帝国と名前を変え再熱した帝国主義のもと局地的な戦争を繰り返すに至る。


西暦2198年


日本帝国軍学校第三東京支部2学年、万丈 琢磨(ばんじょう たくま)は、模擬戦闘訓練の最中であった。最新式のバトルスーツを装着し、ホログラ厶で再現された、敵国兵士との白兵戦が本日の訓練メニューである。


この時代のメインウェポンは光学銃と呼ばれるレーザー兵器ではあるが、旧式の機関銃やライフルもまだまだ現役である。万丈 琢磨(ばんじょう たくま)は右手にサブマシンガン、左手にショットガンを持つ戦闘スタイルを好む。


ズダダダダダダン!!


バシュン!


ドッガーン!


ババッ!


実に精巧に再現された立体映像に、ショットガンを放った琢磨は、一気に敵兵との距離を詰める。バトルスーツの耐久性は遠距離からのマシンガンの被弾でも致命傷とはならないからだ。確実に殺すならバトルスーツの覆っていない顔を狙うか、近距離から銃弾をぶち込むしかない。


グン!


一気に加速した琢磨は、一直線に敵兵へと突き進む。次の瞬間、ビュンとレーザー光線が放たれるが、それを琢磨は最小限の動きでかわして見せた。光学銃は、攻撃の瞬間に光を放つため軌道を読みやすい。琢磨が光学銃を嫌う理由はそこにある。


ダダダッ!


走りながら放つサブマシンガンの銃弾が、敵兵を捉えるが、銃弾の威力がバトルスーツに吸収されて致命傷には至らない。人類は厄介な戦闘服を造ったものだとほとほと感心する。


それでも、敵兵は大きなダメージを受けてその場にうずくまった。貫通は出来なくても痛みは残る。その隙に更に距離を詰めた琢磨と敵兵との距離はおよそ20メートル。この至近距離であれば致命傷を与える事は可能だ。


バシュンと放たれたショットガンの銃弾が、敵兵の近くで花火のように炸裂した。


「Oh!」


飛び散った散弾が、敵兵の身体中を撃ち抜き、まるでゲームの世界のようにホログラ厶は消滅した。それは敵兵が亡くなった事を意味する。ふぅ、と一息ついた琢磨が時間を確認すると、訓練開始から27分が経過していた。


(5人倒すのに27分………。まずまずだな。)


教室へ戻った琢磨を出迎えたのは、既に訓練を終えた生徒達だ。


「流石だな琢磨、殲滅に成功したのはお前が初めてだ。」


クラスいちの巨漢である、近藤 真(こんどう しん)が笑顔で近付いて来て、琢磨の肩をぽんと叩く。孤高感のある琢磨に気軽に話し掛けてくるクラスメイトは、真と麗くらいしかいない。


「お前は?」


「3人止まりだ。4人以上倒した奴はお前以外に1人もいない。」


そう言って真は麗の顔を見る。

神代 麗(かみしろ れい)は、古代より陰陽師の血を受け継ぐ武術の達人だと言われているが、訓練では割と早く脱落する。なんでも銃での戦闘は苦手だとか。


残る生徒は5人、最後に訓練を受ける桐生 大和(きりゅう やまと)が、ゆっくりと席を立つ。


「琢磨、見てろ、最強は誰か教えてやる。」


琢磨は少し苦笑いをして、麗は少し眉を潜めた。これが、このクラスの日常の出来事なのだ。


射撃訓練、肉弾戦、銃撃戦、白兵戦、あらゆる訓練でハイアベレージを残す琢磨に対し、大和は僅差で好成績を残していた。実際、二人の実力は伯仲しており甲乙つけがたいのだが、大和が琢磨に対して敵対心を持つのは他に理由がある。


真の見立てでは、大和は麗に恋をしている。容姿の整った麗は軍学校の男子からは憧れの存在であり、大和が恋をしても不思議ではない。しかし、麗は琢磨と仲が良く誰から見てもお似合いのカップルだ。他のクラスメイトが麗に手を出す事はしないだろう。


ジャキィーン


大和は光学銃の安全レバーを外して、白兵戦闘を開始した。白兵戦とは、市街地等の戦場を自由に移動して仮想敵兵を仕留める事を目的とする訓練の事だ。今回のシュミレートでは敵兵の数は5人。1対5の戦闘は熾烈を極め、成功率は極めて低い。


ビュン!


「!」


戦闘間もなくの敵兵からの攻撃に反応した大和は、僅かに状態を起こしてレーザー光線の攻撃を回避。そのまま、光学銃を敵兵へと掃射する。距離にして200メートル、仮に当たっても致命傷にはならないが、顔面への攻撃は例外だ。狙ったのか偶然か、大和の攻撃が敵兵の顔面を直撃し、ホログラ厶の敵兵が音を立てて消滅した。


(次は…………。)


バキューン!


「痛っ!」


5階建ての建前の屋上からライフルの銃声が鳴り響き、大和の胸部に命中する。ホログラムの銃弾では実際には損傷は受けないのだが、コンピュータが測定したダメージが大和に蓄積され痛覚を刺激する。バトルスーツの上からの攻撃では致命傷には至らないものの激痛が大和を襲った。


「くそっ!」


そのまま大和は、転げるように近くにある茂みへと身を伏せ建物の上の敵兵へと発砲した。


バビューン!


僅かに逸れたレーザー光線の軌道は虚しく空へと消えて行く。


バッ!


直後、大和が投げたのは煙幕弾である。古くから使われている武器ではあるが、22世紀の終わりが近づく現代でも、その効力は有効に作用する。もくもくと広がる煙により、敵兵の視界が塞がると同時に大和は建物の屋上へと走り出す。高さにしておよそ20メートル、バトルスーツを着込んだ兵士であれば、建物の突起物を利用して外壁をよじ登る事は不可能ではない。屋上に飛び乗った大和は、即座に光学銃を敵兵へとぶっ放した。


ビュン!


シュバ!


この至近距離であれば一撃で敵兵を倒す事が可能であり、人の姿をしたホログラムは跡形もなく霧散する。


(二人目……………。残り3人。)




【アダムス②】


「琢磨…………、大和の戦闘はどうだ?」


教室の正面にあるモニターで、訓練の様子を見ていた真が質問を投げ掛けた。


「どうって………、判断力、運動神経、射撃の腕までも申し分ない。奴と一対一の戦闘になれば勝つのは至難の業だな。」


「ほぉ、意外だな。成績はお前の方が上だろう?」


「模擬訓練での成績など大した意味は無い。俺より強い生徒は他にもいる。」


「他にも?」


真は少し考えたが、琢磨よりも強い生徒は思い浮かばない。近藤 真も実力は相当に高いが、琢磨に勝てるのは武器を持たない肉弾戦くらいで、総合力では歯が立たない。


「それに俺達は、所詮は歩兵部隊だ。現代戦争に於いては、歩兵が活躍する戦場は少ない。」


この時代の主力兵器は、高性能ミサイルと無人戦闘兵器が大半である。帝国と呼ばれる国々では、生身の人間が前線に出る機会は少ない。一方で技術力と資金力に劣る非帝国の国々は今だに生身の人間が前線で戦う事となる。ここ十数年の戦争では帝国が非帝国の国々を次々と滅ぼし領土を拡大している所だ。


「琢磨、俺の考えは少し違う。」


「………?」


「非帝国との戦争は直に終わる。その後は帝国同士の戦争になり、消耗戦になる。そしてバトルスーツの開発により戦争の形態は大きく変わるだろう。」


「どういう事だ?」


「そうだな。無人戦闘兵器を操るのは人間だ。オペレーターは本国の都市のど真ん中。安全地帯から兵器を操縦している。オペレーターを攻撃するにも対空防御システムが発達した現代では簡単に防御網を突破出来ない。つまり空から侵入するより、地上から潜入した方が容易いと言う事だ。無人戦闘兵器は隠密行動には向いていない。」 


「隠密行動か…………。確かに機械が音を消して移動するのは難しいが、圧倒的火力の前では隠密行動など不要だと思うがな。」


「そうでも無いさ。そのためにアダムスは、俺達を育てている。アダムスのやる事に無駄は無い。そうだろう?」


全知全能の人工知能であるアダムスが、日本全国に歩兵部隊を養成する軍学校を設立してから三年が経過した。一期生である2つ歳上の卒業生は世界各地の戦場へ派遣されている。確かに全く役に立たないと言う事は無さそうだ。


ズダダダダダンッ!


ビュン!


モニターの向こう側では、桐生 大和(きりゅう やまと)の戦闘が続いている。戦闘が始まってもうすぐ25分、琢磨が27分で敵兵を殲滅した時間を基準とするなら残り2分の間に残り一体の敵兵を倒さなければならない。


大和はエアシューズの出力を最大限にまで高めて一気に加速した。


ブワッ!


「焦ったな、大和。何の策も無く突撃すれば、恰好の標的となるぞ。」


真の言う事はもっともで、敵兵との間には遮蔽物は見当たらない。更に悪い事に最後の敵兵の武器は光学銃ではなくマシンガンだ。


ダダダダダダダダダダダダ!


単発ならともかく、銃弾の嵐を避ける事は不可能に近く、バトルスーツを装着していても多数の銃弾を喰らえば致命傷になる。万事休すと思われた刹那、大和は空中へ大きく飛び跳ねた。


「無駄だ。空中なら更に逃げ場は無い。」


ダダダダダダダダダダダダダダダ!


ビュン!


大和は空中で光学銃を構えて即座に発射、しかし先に攻撃したのは敵兵の方であり無数の銃弾が大和の身体を直撃する。


「当然だ、避けられる訳が無い。これで終わりだな。」


と、真が言葉を発するのに重ねるように琢磨がそのコメントを否定する。


「いや、大和の勝ちだ。」


「…………琢磨?」


バシュ!


モニターに映し出された映像は、敵兵のホログラムが霧散する映像である。


「な!一撃で顔を直撃したのか?あの距離で空中からだぞ!」


敵兵との距離は100m以上はあり、バトルスーツの上からでは致命傷は与えられない。しかし顔面なら別だ。


一方の大和は、複数の銃弾を浴びたことにより、バトルスーツの上からでも致命傷と判定される。本物の戦場であれば相打ちと言う事になるが、僅かにホログラムが消滅した方が早かった。訓練は敵兵が殲滅した時点で終了する。


「26分47秒…………。俺の負けだな、大和。」


琢磨はそう言って、二人目の白兵戦、任務達成者である大和を称えた。




【アダムス③】


日本帝国軍学校第三東京支部2学年


万丈 琢磨(ばんじょう たくま)

桐生 大和(きりゅう やまと)


二人の生徒の実力は甲乙つけがたく、日本全国にある他の支部からも一目置かれる存在となっていた。


「ねぇ、麗。どうするの?」


神代 麗(かみしろ れい)に話し掛けるのは、クラスでも一番背の低い小柄な少女である。彼女の名前は霧島 茜(きりしま あかね)、軍学校に所属しているのが似合わない可愛らしい少女である。


「どうって何がです?」


「とぼけないでよ。」


茜をはじめ、クラス全員の関心事は麗が二人のうちのどちらかを選ぶのかである。軍学校の中でも容姿端麗で一番人気の麗が琢磨と大和のどちらと付き合うのか。中には賭けをしている生徒もいるらしい。


1年の頃から琢磨と麗は仲が良く、誰もがお似合いのカップルだと思っていたが、2学年が終わろうとしているのに全く発展が無い。一方の大和は麗への想いを隠しきれず、最近ではあからさまに接近しているように見える。


「あ、そのこと?」


麗はなんだと言わんばかりの表情で、茜を見た。


「どちらとも付き合わないわ。いえ、付き合えないかな。」


「えぇ!なんで?」


麗は少し困った風な顔をしたが、諦めた様子で打ち明ける。


「私は陰陽師を統括する一族の1人娘なの。私には既に許嫁がいるもの。」


「ええぇえぇー!!」


「ナイショですよ。」


許嫁などと言う風習が、22世紀も終わろうかと言う世の中で存在するのかと、茜は驚きを隠せない様子だ。


「それに、私の夫になる人間は私よりも強い人間でないとダメなのよ。お祖父様が許さないもの。」


「…………え?」


琢磨も大和も軍学校の中での成績は抜群であり、強さという面では問題が無いだろう。麗の成績も確かに良いが、あの二人には敵わない。


「え?あぁ、銃撃戦なら勝てないですよ?お祖父様が求めているのは日本刀での戦闘よ。」


「日本刀って……………。いつの時代の人間なのよ?」


「つまり、そういう事よ。私はあの二人とは付き合えないってこと。授業が始まるわよ?」


「う〜ん…………。」


なにやら煙に巻かれた感じもするが、茜はしぶしぶ退散する。


そして、本日の訓練は、対人戦闘である。ホログラムを相手にする戦闘ではなく、生徒同士で戦う実践形式の戦闘だ。使用出来る武器は光学銃のみで、実弾の使用は禁止、光学銃の出力は訓練用に調整されておりゼロ距離から当たっても損傷には至らないが、判定上のダメージにより勝敗が決まる。


日本帝国軍学校第三東京支部に入学してから初めてのプログラム、『対人戦闘』。それは、琢磨と大和が一対一で実力を競う最初で最後の訓練となる。


(風が出て来たな……………。)


実弾での戦闘とは違い光学銃のレーザーの軌道は風の影響を受けない。特に射程距離が長い戦闘では光学銃に大きなメリットがある。スタート時点での大和との距離はおよそ1000mであり、スナイプ技術は琢磨よりも大和の方が上である。


(正面から戦えば負ける…………。)


琢磨は戦場の様子を見回した。

想定される戦場は市街戦であり、ヨーロッパ風の建造物が並んでいる。遮蔽物はかなりあり、身を隠しながら接近する事が容易なシチュエーション。


(無人戦闘戦闘兵器よりも、生身の人間の方が優れている点は隠密行動にある。)


琢磨は、以前、真が言っていた事を思い出す。


ブワッ!


エアシューズの出力を上げて、琢磨は建造物の裏手へと回った。訓練に指定されたエリアは1km四方の正方形の戦場であり、バトルスーツとエアシューズによって能力を底上げされた状態であれば、決して広い戦場ではない。大和に気付かれる前に接近し、近距離戦闘に持ち込めば勝算はあると、秒速20メートルの速さで建物の合間を走り抜ける。


一方の桐生 大和は、近くの建物の屋上へと駆け上った。三階建の建物はそう高くは無いが、地上にいるよりはマシだろう。その屋上でベタリと地面に寝そべり光学銃を構える。ライフルほどでは無いが、光学銃でもスナイプは可能であり、スナイプは大和が得意とする分野である。


大和は五感を最大限に高めて、琢磨の居所を探る。


(どこから来る、少しでも物影が動けば攻撃する。)


ドクン


ドクン


心臓の鼓動が高鳴り、大和は極度の緊張状態となっていた。


(麗……………、見てろ。最強が誰なのか証明してやる。)


時間にして僅か5分ではあったが、大和にとってはそれが永遠とも思える長い時間に思えた。


日本帝国が領土拡大政策に乗り出したのは、大和が産まれる前の話だ。アメリカ、ドイツ、イギリス、フランスの旧西側諸国とともに、世界最先端の技術と強大な軍事力を持つ5大帝国は、それまでの民主主義による平和外交を捨てて、非帝国と言われる国々を征服し支配下に置く方針へと切り替えた。圧倒的な技術力と軍事力を持つ帝国の前では、非帝国は為す術も無く次々と領土を侵略されて行く。


大和の父親は、日本帝国軍の中でも最上位にあたる陸軍大将に任命されたエリートであり、大和は別に軍人になりたかった訳ではないが、父親がそれを許さなかった。


最強こそが大和のアイデンティティであり存在証明。


地位も名誉も、強い者に与えられる特権であると、そう教わって来たのだから、大和は負ける訳には行かない。


(!)


その時、建物の合間に何やら黒い影が動くのが見えた。大和が反射的に引き金を引くと、光学銃の銃口からレーザー光線が照射される。その間、コンマ2秒。


バシュ!


しかし、それが人間では無い事にすぐに気付く。


(迷彩服……………!?)


バトルスーツの上に着込む迷彩服がレーザー光線によって撃ち抜かれる。


しまった!と大和は辺りを見回した。


(こちらの居場所がバレた…………。)


今回の訓練では光学銃以外の武器は禁止されており、手榴弾を投げ込まれる心配は無いが、明らかな失態である。そして、琢磨の機動力があれば、三階建ての建物に駆け上るなど容易い事だ。


スチャ!


(!?)


振り向くと、そこには

銃口を向ける琢磨が立っていた。


ジリ


この戦闘は完全に負けだと大和は両手を上に上げる。


「琢磨…………。質問がある。」


「……………なんだ?」


「なぜ軍学校に入った?」


不意の質問に琢磨は少し返答に困る。


「俺はな琢磨、他に道が無かった。軍学校でも一番の成績を取らないと親父に怒鳴られる。しかも俺は4人兄弟の末っ子だ。兄貴達はエリートコースの道を進み前線に立つ事は無いだろう。しかし親父は俺を歩兵にさせる気だ。この時代の歩兵に何の意味があるんだ?それを聞きたい。」


帝国では前線に投入される兵器は無人戦闘兵器が一般的であり、生身の人間が前線に立つ事は無い。しかし、例外として無人戦闘兵器には任せられない特殊任務の時は歩兵が前線に投入される。敵地の奥深くへの潜入作戦、防御の固い敵陣の向こう側にいる司令官の暗殺任務。


つまり、死の確率が高い非常に危険な任務である。


なぜ、そんな危険な任務を任される歩兵養成学校である軍学校に入学したのかと。要約すればそんな所だ。


「そうだな…………。」


そして、琢磨はハッキリと答えた。


「アダムスが望んだからだ。」


「!」


この時代の日本人にとって、アダムスは全知全能の神にも等しい。


「他の帝国に先駆けて、アダムスは歩兵の重要さを認識したのだろう。言うなれば日本帝国の未来のため。他に理由が必要か?」


「アダムス…………はは。」


実に単純明快な答えに大和は思わず笑ってしまった。


そうかと大和は思う。琢磨に限らず軍学校に入学した生徒はアダムスの奴隷なのだと気付いた。いや、生徒達だけではない。現代の日本人は自ら考える事を止めて全てアダムスの言いなりになっている。それは大和の父親とて例外ではない。


おかしいのは自分ではなく、大和以外の周りの全ての人間がおかしかったのだと。


「未来か……………。」


ならばと


(俺の目的はアダムスを…………。)


ビュン!


そこで放たれた琢磨のレーザー光線が大和の身体を直撃する。至近距離での一撃は致命傷の判定には十分であり、対人戦闘は万丈 琢磨(ばんじょう たくま)の勝利で幕を閉じた。