MARIONETTE- Елена
【彗星の剣①】
西暦2060年
正式名称『パワードスーツ』、通称『マリオネット』、ロシア名『マリオネチカ』。従来の兵器を無効化する未来兵器が初めて実戦投入されてから13年が経過し、遂に2つの大国が直接対決をする事となった。
ロシア連邦共和国とアメリカ合衆国
ロシア連邦に『パワードスーツ』を持ち込んだのは、2人の武術家である。シュリング・カナムを師と仰ぐ『アンドロメダ・マウラー』と『ベガ・シュツルコフ』の2人は、すぐさま『マリオネチカ』の研究と製造に着手した。未来から送られて来たと言われる機動兵器『マリオネチカ』と、その製造方法が記された『聖書(バイブル)』を元にロシア連邦は『マリオネチカ』の量産に成功する。
時を同じくしてアメリカ合衆国では、『シリウス・ベルガー』により『パワードスーツ』の開発が進められた。シリウスはアンドロメダやベガと同じくシュリング・カナムの弟子の一人である。ロシア連邦に比べて『マリオネット』の製造の着手が遅れたアメリカ合衆国は同盟国である、イギリス連邦、フランス共和国、ドイツ連邦共和国、日本国に『マリオネット』の製造技術を極秘に伝達した。これにより西側諸国では『マリオネット』の開発が進みロシア連邦包囲網が形成されて行く。
西側諸国と比べて資金力に劣るロシア連邦ではあったが、ロシア連邦には資金力に勝る大きな優位性があった。それは『エルサレム』の存在である。2047年の侵攻により『エルサレム』を手に入れたロシア連邦は、未来から送られて来る『聖書(バイブル)』を独占的に手に入れる権利を得た。
最初の『聖書(バイブル)』しか知らないシリウスと西側諸国では『パワードスーツ』に対する知識も技術もロシア連邦には敵わない。アメリカ合衆国にとって『エルサレム』の奪還は最重要目的となる。
サウジアラビアにある米軍基地『グリーン・モンスター』は、『エルサレム奪還作戦』の重要拠点であり、遂に『エルサレム奪還作戦』が実行されようとしていた矢先に事件が勃発する。ロシア軍による『グリーン・モンスター襲撃事件』である。
ロシア連邦は、この作戦に多くの精鋭部隊の投入を決めた。世界最強と言われる『デストロイ部隊』に影の実力者集団である『クレムリン親衛隊』、他にも主要な部隊を投入し『グリーン・モンスター襲撃作戦』はロシア軍の圧勝に終わった。一方のアメリカ合衆国は即座に大部隊を編成し『グリーン・モンスター奪還作戦』を決行する。作戦の指揮を務めるのは世界最強の機動兵士と言われるシリウス・ベルガー将軍である。
ここで、アメリカ合衆国は大きなミスを犯した。一つは『グリーン・モンスター』の奪還を焦り過ぎた事だろう。ロシア軍の情報収集を怠り新兵器てある『超電磁砲(レールガン)』の存在に気付け無かったこと。一つは同盟国への協力を怠った事である。仮に西側諸国が総力を結集して戦争に望めば、ここまでの大敗には至らなかった。
いや、それとてシリウスにとっては些細な問題であったのかもしれない。
『鉄壁のバルゴか……………。』
多くの仲間を失い一人で敵軍の本体へ斬り込むシリウスにとっては、味方の数など問題ではない。むしろ味方は居ない方が好都合。
ブン!
世界最強の機動兵士が天に構えるのは『マスター・ソード』と呼ばれる最強の剣。
『消えろ、お前では役不足だ。』
目の前に立ちはだかるのは『デストロイ部隊』の隊員であるバルゴ・ポドルスキだ。付いた異名は『鉄壁のバルゴ』、その強靭な身体には傷を付ける事が出来ない。機動兵器『パワードスーツ』の機能により防御力が大幅に上昇したバルゴは正に鉄壁である。
『この先には行かせないぞ。シリウス。』
シャキーン!
バルゴが構えるのは巨大な光学剣(ソード)である。鉄壁の守りで攻撃を防ぎつつ、高威力の攻撃で相手の耐久値を削り取るのがバルゴの戦法だ。
『来い!貴様の剣が俺に当たった時が貴様の最期。カウンターの一撃を喰らわせてやる!』
バルゴは最初からシリウスの攻撃を避ける事は考えていない。スピードでは敵わない事は分かっており、狙いは相討ちによるシリウスの耐久値の消耗である。いかにシリウスであっても、バルゴの装甲を打ち破るには時間が掛かる。鉄壁の防御力には自信がある。
(耐久型か……………。)
シリウスは全神経を『マスター・ソード』に集中する。シリウスの師匠であるシュリング・カナムは、素手で巨大な岩をも破壊していた。硬さは問題ではない。
ゴゴゴゴゴゴォ
(…………なんだ?)
『マスター・ソード』から発するのは、シリウスの闘気だ。『マリオネット』により増幅されたシリウスの闘気が周りの空気に影響を与え大気が歪み始めた。
(あの攻撃を喰らったらダメだ…………。)
バルゴの本能が危険を知らせる。防御力に優れるバルゴであっても、相当なダメージを喰らう。そんな予感があった。
しかし
(身体が言う事を聞かない………………。)
全身から汗が流れ落ち、膝がガクガクと震えだした。
(馬鹿な……………。)
ロシア軍最強の精鋭部隊として恐れられる『デストロイ部隊』の正規メンバーであるバルゴが、戦う前からシリウスの気迫に押されている。
(信じられん……………。)
世界最強と言われるシリウス将軍との差がここまであるとは……………。
(これではまるで、蛇に睨まれた蛙………。)
ビュン!
バシュッ!!
バリィーン!!
『!?』
それは一瞬の出来事であった。バルゴの装甲を覆うシールドの耐久値がシリウスの一撃で砕け散る。
ズバッ!!
そして、二撃目の攻撃がバルゴの耐久値を一瞬で削り取った。
バチバチバチバチバチ!
(………………一撃?)
防御力に絶対の自信を持つバルゴ・ポドルスキの装甲は『マスター・ソード』の前では役に立たない。
ドッガーン!!
鉄壁のバルゴが何も出来ずに殺られた。
影から戦闘を見守っていたブラック・ローズは、思わず息を飲み込んだ。
(強過ぎる……………。あれが世界最強と言われる機動兵士の実力…………。)
マリオネット・マスター
──────シリウス・ベルガー
ザザッ!
『遅かったわね、シリウス。』
バルゴが倒れた100メートルほど先に、一人の女性兵士が『彗星の剣』を握り立っている。
─────彗星のアンドロメダ
『約束の時が来た。今日でお前の野望を打ち砕く。』
『そう……………。』
アンドロメダは少し眼を伏せて哀しそうに呟いた。
『シュリング師匠の意志は、世界の統一です。なぜ邪魔をするのですか。』
『………………。』
『貴方は最初の聖書(バイブル)しか知らない。近い未来、人類は滅亡します。』
『なに?』
『この時代に未来兵器を送り続けた『イスラエル』は滅亡しました。超電磁砲(レールガン)が私達に送られて来た最後の未来兵器。もはやエルサレムを奪還しても意味は有りません。』
『そんな事を信じろと?』
『人類を滅ぼしたのは誰だか分かりますか?』
『………………。』
『『パラサイト』、それが奴等の名前です。』
『パラサイト…………。』
『機動兵器の製造技術を拡散させた合衆国の罪は重い。『パラサイト』を産み出した日本は滅ぼさねばなりません。』
『ふん。気でも狂ったか。』
『……………。』
『これ以上、ロシアを野放しにする訳には行かない。この十数年の間にどれだけの国を占領し、どれだけの人間を殺して来たか知らぬ訳でもあるまい。ロシアによる世界統一など許されるものでは無い。』
『この戦争…………。』
『…………………。』
『今回の戦争で私達が勝てば、もはや私達を止める事の出来る機動兵士は居ないでしょう。』
『……………。』
『私達の最大の敵はシリウス。あなたと貴方が作り上げた『シリウス隊』の機動兵士達でした。』
『ロッドマン…………。』
『アッシュ・カルロス……………。』
『2人の機動兵士の死亡が確認されました。』
『……………。』
『そして、オリジナル・アリス。彼女もまた、私達の兵士の前に敗れ去るでしょう。』
『アンドロメダ、何が言いたい……………。』
『私達が戦う理由は有りません。降伏しなさい。』
『何を…………。』
『同じ人間を師と仰ぎ、共に修行を積んだ私達は兄妹みたいものです。貴方を殺したく有りません。』
『今更………。ならばロシアは戦場から手を引け。このサウジアラビアからもエルサレムからも撤退する事だ。話はそれからだ。』
『……………。』
シャキーン!
──────彗星の剣
蒼く美しい光学剣(ソード)をアンドロメダが構える。
『やはり、私達は戦う運命………………。』
『………………。』
『師の過ちは『マスター』の称号を四人の弟子に与えた事…………。』
シリウス・ベルガー
アンドロメダ・マウラー
ベガ・シュツルコフ
張 翔飛(チャン・ツァンフェイ)
『シュリング師匠の真の後継者は一人で十分です。』
ザッ!
『兄弟子の俺に勝てると思うか。』
シャキーンッ!
─────マスター・ソード
『シリウス、決着をつけましょう!』
この戦いが、世界の命運を決める。
【彗星の剣②】
ロシア連邦共和国
─────クレムリン
ザッ
ザッ
一人の男がクレムリン宮殿の前で足を止める。黒髪のアジア人で、無精髭を生やした男だ。
「おい!止まれ!」
「ここは立ち入り禁止だ!」
警備をしている警官が男を静止するも、男は何も言わず内部へと足を踏み入れる。
「貴様!止まれと言ったろう!」
ビシッ!
「うっ……………。」
バタリ
「おい!どうした!」
あまりの手刀の速さに警官は声をあげる事も出来ずに倒れ込む。
「な!こちら正面の警備隊だ!応答せよ!」
もう一人の警官が慌てて救援を呼ぶ。無線の先にいるのはクレムリン宮殿の護衛を任されている機動兵士達である。
その名も────
────クレムリン親衛隊────
それが、クレムリン宮殿の護衛部隊の名称だ。警官の知らせを受けた2人の機動兵士が無精髭の男の前に現れた。
『民間人が何の用だ!』
『怪しい男め、連行するぞ!』
その時、男は呟く。
「『傀儡人形』、……………。在!」
ギュイーン!
『!』
『…………マリオネチカ!?』
鮮やかな紅い装甲はロシア軍の『マリオネチカ』と似ているが、明らかな違いが一つある。それは右肩に描かれてる五つの黄色い星『五星紅旗』の国旗である。
『な!中国だと!?』
ロシア軍の兵士が驚くのも無理は無い。現在、機動兵器『マリオネチカ』の開発に成功した国は世界で6ヶ国しかない。ロシア、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本、それ以外の国で『マリオネチカ』を保有している国は存在しない。
『ベガはいるか…………。』
『なに!?』
『ベガに会いに来た。他の者に用は無い。』
クレムリン 陸軍本部中枢
「ベガ様!大変です!」
一人の兵士がベガのいる個室へと駆け込んで来た。
「どうした?何を慌てている。」
「敵襲です!機動兵士が襲って来ました!」
「!?」
(いったい何が…………。主力が居ない間を狙われたか!?)
ガキィーン!
ズバッ!
『ぐわっ!』
バチバチバチバチバチ!
ドッガーン!
『ヘンリーが殺られた!』
『取り囲め!!』
ベガが駆け付けた時にはロシア軍の機動兵士達が侵入者の周りを取り囲んでいた。敵の数は一人だけで、ロシア軍の兵士は10人以上だ。
(たった一人で…………。)
そして、ベガはその侵入者の顔を見る。
(!?)
「お前達!止めろ!!」
『!』『!』『!』『!』『!』
「お前達が勝てる相手では無い。すぐに兵を引け!!」
『ベガ様!何を言っているのですか!?』
すると無精髭を生やした機動兵士が、満面の笑みを浮かべた。
『よぉ!ベガ!久し振りだな!』
『!』『!』『!』
「…………何をしに来た。張(チャン)。」
男の名前は張 翔飛(チャン・ツァンフェイ)、かつてシュリング・カナムにマスターの称号を与えられた四人の武闘家のうちの一人であり、未来兵器『マリオネチカ』を手に入れた最初の四人の一人である。
『なに、久し振りに語ろうと思ってな。』
「……………。ここは不味い。外へ行くぞ。」
クレムリン親衛隊、もと総帥であり、トップファイブの隊長であったベガは、既に総帥の座を引退している。それでも尚、ロシア軍の中では大きな影響力を保持していた。
「聞いたぞ、サウジアラビアの件だ。」
口を開いたのは張(チャン)である。
「米軍基地を襲ったのはアンドロメダだろう?そして、アメリカ軍も反撃に出た。その司令官はシリウスと言うじゃないか。お前達、何をやってるんだ?」
つまり、張(チャン)は、かつての旧友達が争うのを止めに来たのか。
「悪いが、俺は既に総帥の座を降りた身だ。ロシア軍の作戦には関与していない。」
「お前なぁ…………。」
それでも、張(チャン)は続ける。
「あの2人を止められるのはお前しか居ないだろう?」
「止められ無いさ。」
「なに?」
「アンドロメダとシリウスは、決着を付けたいのさ。シュリング師匠は『マスター』の称号を俺達四人に与えた。しかし、それは後継者に選ばれた訳ではない。」
「……………。」
「後継者候補の一人に選ばれたに過ぎない。師匠は真の後継者を選ぶ前に他界した。」
「はぁ……………。馬鹿な奴等だ…………。テメェらの個人的な決着に世界を巻き込みやがって。」
「それに、俺ではあの2人には勝てない。武術の実力はおろか機動兵士としての適正もアイツラの方が上だ。」
「はぁ………。最強の機動兵士か………。」
「今頃、アンドロメダとシリウスは戦闘を開始した頃だ。この勝負の行く末で世界は変わるだろう。」
「いや、何も変わらない。」
「張(チャン)…………。」
「どちらが勝っても世界大戦だ。ロシア軍と西側諸国による全面戦争になる。」
「……………。」
「時間を取らせて悪かった。俺も準備をするとしよう。」
「…………準備?」
「ん?決まってるだろう。」
そして、張(チャン)は告げる。
「世界大戦に備えるんだよ。」
「…………まさか。」
「機動兵士なんて言うのは適正で決まる。人口が多い国の方が適正の高い兵士は多い。単純な理屈だ。」
「お前…………。中国で機動兵器の開発を…………。」
「さぁな、………また会おう。」
【彗星の剣③】
サウジアラビア
『グリーン・モンスター』
ビビッ!
『米軍兵士の反応は2人。日本人の兵士は1人。そろそろ終わる頃か………。』
グリーン・モンスターに接近するのは『クレムリン親衛隊』の隊長であるレッドパンサーとエレナの2人だ。イギリス部隊との戦闘を終え、日本人の機動兵士を追って基地まで戻って来た。
『隊長……………、あれ。』
目視出来る位置には、2人の兵士が戦っているのが見えた。
『ナターシャ・エイブラハム…………。対戦相手の日本人兵士は……………。』
(ダビデ王では無い…………。)
『加勢する…………。』
『待てエレナ。』
『……………。』
『最優先する任務は別にある。』
『?』
『アンドロメダ総司令官と戦っているのはシリウス将軍だろう。エレナ、君の力が必要になるかもしれない。行くぞ。』
『…………問題無い。』
ザザッ!
「『マリオネチカ』、オン!」
ギュイーン!
(はぁ…………。)
予備の『パワードスーツ』を装着したレッドボーイは肩をすくめた。アッシュ・カルロスとの戦闘は敗北に終わり、レッドスコッチが居なければ殺されていただろう。
(まだまだ力が足りないなぁ…………。)
それでも、今回の戦闘には大きな収穫があった。アッシュの能力である『オッドアイ』を盗めた事は今後の戦闘に大いに役に立つ。一流の機動兵士の技を盗むのは大変な作業だ。
本来であれば、ロシア軍最強と名高いアンドロメダ総司令官の技を盗めれば良いのだが、アンドロメダと戦闘をして30分以上持ち堪えるのは至難の業であり、今のレッドボーイの実力では難しい。
ビッ!
レッドボーイがモニターを確認すると、近くで2つの機動兵士の表示が点灯しているのが見えた。
(アンドロメダ総司令官とシリウス………。これは面白いですね。ちょっと見学に行きますか。)
ガキィーン!
グルン!
バシュッ!
バチバチ!
ブワッ!!
ガキィーン!!
『彗星の剣』と『マスター・ソード』が激しく火花を散らして激突する。2人の動きは他の機動兵士とは全く違うように見える。
(うわぁ…………。)
レッドボーイは目を丸くする。
(これが世界最高峰の戦闘ですか、凄いです。)
ビビッ!
『レッドボーイ。』
すると、後ろからレッドボーイを呼ぶ声が聞こえた。
『レッドスコッチさん。もう終わったんですか?』
『既に耐久値が削られていましたからな。余裕ですぞ。』
『さすがですね。』
そして、レッドスコッチはレッドボーイに並んで観戦を始める。
『どちらが勝っている。』
レッドスコッチも2人の戦闘が気になるらしい。
『う〜ん。僕も今来た所ですが、互角でしょうか。まだ2人とも損傷は受けていないようです。』
『うむ…………。』
実際、2人の反応速度は尋常ではない。互いが相手の攻撃を超反応で防いでいる。普通の兵士であれば数秒で殺られているだろう。
ビビッ!
『………!』
すると、レッドボーイとレッドスコッチの反対側に新たな機動兵士の反応が現れた。
『あ、隊長とエレナさん!』
レッドボーイは嬉しそうに声をあげた。別行動をしていた『クレムリン親衛隊』のレッドパンサーが戻って来たのだ。
ロシア軍の主力が一同に介しアンドロメダ総司令官の戦闘を見守っている。この戦闘に加勢するほど、野暮な兵士は居ない。
(ナターシャが居ませんぞ。まさか、負けたのか…………。)
ビビッ!
『レッドスコッチ。』
『レッドパンサー隊長……………。』
『レッドボーイ。』
『はい!』
『無事で何よりだ。2人ともそこで待機していろ。』
二人に指示を出したレッドパンサーは、隣に立つエレナの頭を撫でる。
『どうだ、エレナ。あの2人の戦闘…………。』
世界最強と言われる2人の機動兵士の戦いを見せてレッドパンサーは尋ねる。
『勝てそうか?』
『………………問題無い。』
『うむ。』
そうでなくては困る。エレナ・クレシェフこそ、世界最強の機動兵士。
(もっとも、この少女は『問題無い』が口癖だ。やってみなければ分からない…………か。)
ビビッ!
(敵の反応は四人…………。)
『よそ見をするな!シリウス!』
ガキィーン!!
ビリビリ!
『安心しなさい。私達の勝負に割って入れる機動兵士など居ないわ。』
『アンドロメダ………。』
『もはや私は自分の力を抑える事など出来ない。手の届く位置に邪魔が入れば全てを斬り裂くであろう。』
ブワッ!
『!』
『彗星剣!!』
ズバッ!!
ビビッ!
『損傷率37%』
(しまった!)
2人の戦闘で最初にダメージを受けたのはシリウス将軍である。アンドロメダは未だ無傷で損傷を受けて居ない。
(スピードはアンドロメダの方が上………、ベガよりも速いな。)
レッドパンサーは冷静に2人の戦闘を分析していた。2年前の戦闘でレッドパンサーはベガに勝利した経験がある。それにより『クレムリン親衛隊』の総帥の座を手に入れた。アンドロメダとシリウスは、同じ人物を師と仰ぎ、同じ武術を学んだ兵士であるが、実力はベガをも上回る。
キラン!
彗星の剣が光り輝く
『Off to see the world,There’s such a lot of world To see.』
『Moon River(ムーン・リバー)!!』
『!』
ズバッ!!
アンドロメダの彗星の剣が────
─────シリウスの装甲を斬り割いた