MARIONETTE- Елена

【新人類①】

西暦2047年

機動兵器『マリオネット』が世界で初めて実戦投入されたその年、ロシア軍の中では新たな研究が始まった。

それは、つまり

『人間と機動兵器の融合実験』

エルサレムの地を手に入れたロシア連邦は、未来から不定期に送られて来る書物、通称『聖書(バイブル)』に書かれている未来技術の研究に没頭していたのだ。

ロシア全土から集められた赤ん坊の数は実に数千人を越え、子供達は未来兵器『マリオネチカ』の能力を体内に組み込まれて行く。

これは『マリオネチカ』との『シンクロ適正』とは根本的に異なる思想であり、いわば『融合適正』と呼べば分かりやすい。適正の無い数千人の子供達は人体実験の最中で次々と命を落とし、残されたのは2人の少女であった。

「アンドロメダ様!大変です!」

『デストロイ部隊』の集まる室内に緊急の一報が届いたのは、その日の午後である。

「騒々しいな。どうしたのだ?」

「研究室でナターシャが暴走しました!」

「ナターシャが?」

「陸軍の機動兵士が駆け付けております!アンドロメダ様も至急、お願いします!」

ガタン!

「マーシャル!バルゴ!付いて来なさい!」

ダダッ!!

数分後には『デストロイ部隊』の3人が研究室へと足を踏み入れた。

『!』『!』『!』

(これは………………。)

『きゃははは♪』

不自然な少女の笑い声が研究室にこだまする。

──ナターシャ・エイブラハム──

それが少女の名前である。美しい白髪が映える幼い少女が、研究室の中央で満面の笑みを浮かべていた。

『これは…………。酷いな……………。』

シベリアの虎と恐れられるマーシャルが、思わず絶句するほどの惨状が研究室内部に広がっていた。ナターシャと同じ実験体として育てられた子供が12名、研究室の職員が16名、陸軍の機動兵士が10名、その遺体が血みどろになって転がっている。

シャキィーン!

アンドロメダは光学剣(ソード)を構えるとナターシャに質問する。

『ナターシャ、なぜ殺したのですか?』

『きゃはは!決まってるわ!』

ナターシャは答える。

『劣等な旧人類が生意気な事を言うからよ♪』

『…………マーシャル!バルゴ!』

『『は!』』

『ナターシャを連れて行け!』

『きゃはは♪おっかない顔をしてどうしたのかしら?』

『いいから来い!』

『デストロイ部隊』の2人がナターシャを連行し研究室の外へと連れて行くと、アンドロメダは遺体の確認を始める。

(凄い………。10人もの機動兵士が、殆ど何も出来ずに殺されている。まだ幼い少女だと言うのに、これが人体一体型『マリオネチカ』の実力か……………。)

カツン

カツン

カツン

ピタ

そして、アンドロメダはもう一人の少女の前で足を止めた。

──エレナ・クレシェフ──

この惨状の中でただ一人生き残った少女に、アンドロメダは声を掛ける。

『…………大丈夫か。』

すると、少女は表情を変えずに呟く。

『問題無い…………。』

シュウ────

エレナの薄っすらと輝く両腕を見てアンドロメダは、研究員の言葉を思い出す。

「融合に成功したのは2人だけです。」

Елена Кулешев(エレナ・クレシェフ)
Наташа Авраам(ナターシャ・エイブラハム)

「素晴らしい。これは偉大な成果です。」

「引き続き研究を続けます。2人の少女には『マリオネチカ』の性能を最大限に引き出せるよう新たなカリキュラムを組みました。おそらく2人は世界の未来を変える程の力を身に付けるでしょう。」

もはや、2人の少女は従来の人間とは違う人間。

──────新人類です



(新人類…………。)

その後、ナターシャ・エイブラハムは正式に『デストロイ部隊』に配属となり、世界中で恐れられる存在となった。





【新人類②】

西暦2060年 サウジアラビア

『グリーン・モンスター』の敷地内に少女の笑い声が響く。

『きゃはは♪』

ナターシャ・エイブラハム・フォースツー

東側から進入した10人の米軍兵士が目にしたのは金髪の幼い少女であった。シリウス将軍に隊長を任された2人の機動兵士、タイラーとマスタングは顔を見合わせる。

『なぜ戦場に幼い少女が…………。』

『どう言う事だ?』

どこから見ても年齢は10代前半で、ロシア軍の兵士とは思えない。それでいて場違いな笑顔で米軍兵士を見て笑っている。とても、まともな精神状態とは思えない。

『きゃはは♪』

実に気味が悪い。

『放って置け!行くぞ!』

『あぁ…………。』

2人を先頭に米軍兵士10人が少女の横を通り過ぎようとした時、シュルシュルと風を切る音が聴こえて来た。

『!』

『危ない!避けろ!!』

『!』『!』『!』

バッ!ザザッ!!

タイラーの指示で他の米軍兵士がその場を飛び跳ねる。

バシュッ!

『!』『!』『!』

『髪だ!』

少女の金髪が光り輝き鋭い刃となって米軍兵士に襲い掛かったのだ。

グザグサグサッ!!

『ぐわっ!』

『マックス!!』

『敵だ!』『剣を抜け!!』

シャキィーン!!

ザザッ!!

3人の機動兵士がすぐに攻撃に転じた。各々の武器である光学剣(ソード)を少女に向けて振りかざす。そのスピードはタイラーから見ても賞賛に値する素早い反応である。

シュルシュルシュル!!

ガキガキガキィーン!!

『!』『!』『!』

その攻撃を少女は自らの金髪を束ねた壁で弾き返す。

『な!』『馬鹿な!』

それはまるで『糸の壁』のようだ。

ビビッ!

『この技には聞き覚えがある!』

マスタング隊長が隊員達に伝える。

『3年前の横浜紛争だ!その時に現れた『デストロイ部隊』の兵士が同じ技を使っていたと聞く!』

『デストロイ部隊!?』

『待てマスタング。その話なら俺も知っている。』

タイラーが話を続ける。

『しかし、その時の敵は戦死したと聞いている。』

『きゃはは♪』

シュルシュルシュル!

ブワッ!

『!』『!』『!』

今度は、無数の『光の糸』が米軍兵士に襲い掛かった。

グザグサグサッ!!

『ぐっ!』『うわっ!』『くそっ!』

ビビッ!

『損傷率24%』『損傷率33%』『損傷率26%』

自らの髪を『光の糸』に変えて自在に操る機動兵士。そんな『化物』は世界中を探しても一人しか居ないだろう。

『慌てるな!こっちは10人!』

『取り囲むぞ!』

ザザッ!!

兵士達は少女の周りをぐるりと包囲する。いかにナターシャが『化物』でも、10人同時攻撃に耐えられるとは思わない。

『きゃははは♪』

それでも奇妙な笑い声を上げるナターシャは、まともな人間とは思えない。

『行けっ!』

ザザザッ!

タイラーの号令で米軍兵士が一斉に動き出す。どの兵士も実力は並以上の兵士達であるが、ナターシャの髪の特性を知らな過ぎた。

シュルシュルシュルシュルシュル!!

全方位に向けられて伸びる『光の糸』には、一斉攻撃は意味を為さず、更にその『光の糸』の強度は光学剣(ソード)と同等である。

ガキガキガキィーン!!

『!』『くっ!』『こいつ!』

シュルシュルシュル!!

そして、『光の糸』の圧倒的な数量は10本の光学剣(ソード)で抑える事は出来ない。

『うわぁ!』

グザグサグサッ!!

ビビッ!

『損傷率78%』

ビビッ!

『損傷率88%』

バチバチバチバチバチバチ!

ドッガーン!ドッガーン!

『離れろ!!』

ババッ!!

『2人殺られました!』

『くそっ!』

『きゃはは♪』

再度、ナターシャとの距離を置く米軍兵士達であるが、『光の糸』への対策が思い付かない。

シュルシュルシュル───

黄金の『光の糸』がナターシャの周りを旋回し、それはまるで獲物を狙う蛇のようにも見える。

(近付く事も出来ないなんて、こんなヤツどうやって倒せば良いんだ…………。)

ビビッ!

『タイラー』

『マスタング?』

『俺達の任務は陽動による時間稼ぎだ。シリウス将軍がアンドロメダを倒すまで敵を引き付けられればそれで良い。』

『……………。』

『倒す必要は無い。散るぞ!』

『!』

残った8人の兵士がバラバラに逃走し、ナターシャの攻撃時間を遅らせる作戦。ナターシャが追って来れば作戦成功である。

『…………わかった。』

逆に言えばナターシャに狙われた兵士の命は無い。1対1で、あんな化物に勝てるとは思えない。

ビビッ!

『各員に継ぐ!それぞれナターシャより逃走を図る。出来るだけ分散して散れ!!』

『『『ラジャ!』』』

シュババッ!!!

『きゃは…………は?』

ナターシャは大きな瞳を丸くして辺りを見回した。

『逃げるって…………。これだから旧人類は…………。』

(でも……………。無理なのよね。きゃは♪)

米軍兵士の更に外側には、ロシア軍の兵士が取り囲んでいる。兵力に勝るロシア軍にとっては、10人足らずのアメリカ軍の兵士など取るに足らない存在。ナターシャは自分が遊ぶ為に他の兵士を足止めしていたに過ぎない。

『逃げたわ♪殺っちゃってね♪』

ナターシャの合図でロシア軍の兵士達が次々とシンクロを開始する。

ギュイーン!ギュイーン!ギュイーン!ギュイーン!ギュイーン!ギュイーン!

モニターに映し出されたロシア兵士の数は40人以上だ。

ビビッ!

『タイラー隊長!!既に包囲されています!』

『!』

『バラバラに分散すれば個別撃破されます!』

しかし、既に手遅れだ。四方に散った米軍兵士が再度集結する時間など無いだろう。

ビビッ!

『ぐわぁ!』

『うぉ!』

『ぎゃあぁぁ!!』

マイクロエコーから聞こえて来る仲間達の悲鳴にタイラーは唇を噛み締めた。

ヒビッ!

更に前方2百メートル、既に目視で確認出来る位置に現れたのは3人の機動兵士である。真っ赤な装甲に身を包みタイラーに剣を向ける兵士達。

(くっ………。もはや、これまでか。)

タイラーが負けを意識したその時。

バチバチバチバチバチ!

(………!?)

ドッガーン!ドッガーン!ドッガーン!

3人の機動兵士が次々と爆破しシンクロが解除された。

(何だ……………!?)

タイラーは目を疑った。

その爆炎の向こうに立っているのは一人の女性の機動兵士である。この戦域には既に仲間の機動兵士は居ないはずだ。

ビッ!

タイラーがモニターを確認すると、そこには日本国『防衛軍』の識別反応が表示されている。

(日本?)

ザッ

ザッ

その女性兵士はタイラーに歩み寄り声を掛ける。

ビビッ!

『すみません。遅くなりました。』

『お前は…………。』

『私の名は桜坂 神楽、アメリカ軍機動兵士『シリウス隊』の隊員です。』

『シリウス隊…………、桜坂 神楽!?』

その名を知らない米軍兵士は居ない。10億人に一人の遺伝子を持つと言われる世界最強の機動兵士の一人。

『シリウス隊長はどこですか?』

神楽が質問するとタイラーは答える。

『シリウス隊長なら『グリーン・モンスター』の中枢部へ向かった。案内しよう。』





【新人類③】

ビビッ!

タイラーが面前のモニターを確認する。

この辺りの米軍兵士は既に居ない。バラバラに散った仲間達も健闘したが多勢に無勢では仕方がない。

ビビッ!

更にモニターの範囲を広げると、『グリーン・モンスター』敷地内の全ての状況が一望出来る。東側の戦況はタイラー1人が生存しており、そこに桜坂 神楽が加わった形で合計2人。

西側の戦況は更に悪く、既に反応のある兵士は一人も居ない。単独で行動をしているシリウス将軍とアッシュ隊員のシンクロ反応は未だ健在だ。これまでのところ、総勢400名いたアメリカ軍の機動兵士の大半は殲滅し、残された兵士は4名だけとなる。

(4名……………。)

一方のロシア軍は、モニターで確認出来る範囲内だけでも50〜60名程度が活動していおり、戦況は圧倒的不利なのは間違いない。

ビビッ!

『前方300メートル、ロシア軍の機動兵士を発見、敵の数は5人…………。』

そして、タイラーは、行く手を阻むロシア軍兵士の存在を確認する。この先を越えれば『グリーン・モンスター』の中枢部に辿り着く。そこでは、シリウス将軍が一人で敵の主力と戦っている。

『中央突破しましょう。急がないと囲まれるだけです。』

この状況にあっても、栗色の髪をした機動兵士は表情を変える事は無い。伝説とも言われる『オリジナル・アリス』本人がタイラーの隣で行動を共にしている。

(俺は幸運かもしれんな………。)

タイラーはそんな事を考えていた。世界最強とも言われる機動兵士の戦闘が間近で見られる。それも、模擬戦ではなく本物の戦場でだ。

『わかった。まず、俺が斬りこもう。』

ザッ!

最初に動いたのはタイラーだ。先程のナターシャとの戦闘で受けた損傷率は33%、まだ十分に戦える。

『行くぞぉ!!』

ババッ!

ガキィーン!!

ビリビリ!

光学剣(ソード)と光学剣(ソード)がぶつかり戦場に剣撃音が反響する。

ビュン!

その合間を塗って光学鞭(ウィップ)の風切り音が鳴り響いた。

シュババッ!

バシュッ!!

ビビッ!

『損傷率24%』『損傷率22%』

タイラーはその戦闘姿を見て眼を奪われた。

(強く…………、そして美しい。)

バシュッバシュッ!!

バチバチバチバチ!

ドッガーン!!

『今です!』

『任せろ!』

一人の兵士を瞬時に倒した神楽に呼応するようにタイラーが必殺の一撃を繰り出した。

『マグナム・スラッシュ!』

スババババッ!!

『ぐわっ!』

バチバチバチバチ!

ドッガーン!

これでもタイラーは米軍陸軍の中では上級の兵士である。一介のロシア兵に負ける訳には行かない。

『くっ!強いぞ!』『気を付けろ!』

ビュン!ザッ!

すかさず神楽とタイラーが同時に動いた。神楽は左側の兵士へ光学鞭(ウィップ)を飛ばし、タイラーは右側の兵士に光学剣(ソード)を突き出す。

バシュッ!ズバッ!

ビビッ!

『損傷率68%』『損傷率73%』

『たぁ!』『そりゃっ!』

バシュッバシュッバシュッ!!

バチバチバチバチバチ!

ドッガーン!ドッガーン!

『ひぃ!』

ザザッ!

瞬く間に4人のロシア兵士が倒され、残されたロシア兵士は一目散に逃走を試みる。

(あんな化物に勝てる訳が無い!!)

ザザッ!

ビッ!

『!』

(あれは………………。)

その先にいるのは味方の兵士だ。長い金髪の子供の兵士が奇妙な笑みを浮かべている。

『助けてくれ!』

『きゃはははは♫』

シュルシュルシュル!!

『敵前逃亡なんて、情けないわ♪』

シュルシュルシュルシュルシュル!!

『な!?』

無数の『光の糸』が地面を這うように広がった。

『何を!?』

『これだから旧人類は嫌なのよ。』

グザグサグサッ!!

『がっ!』

バチバチバチバチバチバチ!

ドッガーン!

『きゃはははは♪』

味方のロシア兵士を瞬殺したナターシャが、桜坂 神楽に狙いを定めた。





西暦2057年

ロシア軍の研究施設に訃報が届いた。

ナターシャ・エイブラハム 戦死

日本国で起きた『横浜紛争』に参戦していたナターシャが『防衛軍』との戦闘により亡くなったとの報告は、多くの研究者達にとっては信じられない出来事であった。

機動兵器と人間との融合に成功した最初の個体であるナターシャは最強でなくてはならない。それが、『マリオネチカ』後進国の日本に負ける事などあってはならない出来事である。

「フォースワンは失敗した。」

「大統領には試作機だと報告しましょう!」

「所詮は試作段階、フォースワンの失敗はフォースツーに活かされる。何も問題は無い。」

「フォースツーの育成はどうなっている。」

「生体の年齢は3歳にまで到達しています。」

「3歳………、急がせろ!発育速度を倍にするのだ!」

カツーン

カツーン

「エレナ………。どうしたんだい?」

「…………。」

「大丈夫。君を悲しませる事はしない。」

『レッドパンサー』は優しく語り掛ける。

「ナターシャと君は違う。君は『デストロイ部隊』には行かせない。」

見上げる銀髪の少女の頭を優しく撫でるレッドパンサー。

(それにしても…………。)

未来から送られて来ると言う聖書(バイブル)に記載されている未来技術は、現代の科学では手に負えない代物だ。使い方を間違えればロシア自体が破滅するだろう。

『クレムリン親衛隊』の一兵士であるレッドパンサーには何の権力も無い。現在のロシア軍に於いて圧倒的な権力を持つのは2人の機動兵士、アンドロメダとベガである。最初の『パワードスーツ』を手に入れ、未来兵器をロシアにもたらしたアンドロメダとベガはロシア軍に於いては絶対的な存在だ。

(まずは『クレムリン親衛隊』を手に入れるか……………。)

そしてレッドパンサーは少女に優しく語り掛ける。

「エレナ、君の事は僕が迎えに行く。それまで我慢するんだ……………。」

「……………?」

それだけ言い残し、レッドパンサーは去って行った。




西暦2060年

サウジアラビア

『グリーン・モンスター』

『きゃはは♪』

ナターシャ・エイブラハム・フォースツーは笑っていた。

『きゃはははは♫』

ナターシャは物凄く興奮し感情を抑える事が出来ない。理由は一つ。目の前に、待望の敵が現れたのだから。

3年前の横浜紛争にて、初代のナターシャを殺した日本人兵士の一人が、のこのことサウジアラビアにまで現れたのだから、それは仕方がない事であろう。

ナターシャにとって、ロシア軍とアメリカ軍の戦争などどうでも良い問題である。『デストロイ部隊』の仲間の命も気にする事は無い。新人類であるナターシャから見れば旧人類の人間など、どれも同じだ。

許せないのは、新人類であるナターシャ・エイブラハム・フォースワンを倒したとされる機動兵士、『アリス』。

『アリス』はナターシャにとって、自分自身の仇でもある。



ビビッ!

『タイラー隊長』

『どうした。』

『ここまでで十分です。隊長は逃げて下さい。』

『なに!?』

『前方に見えるロシア兵の少女……。あれは普通では有りません。』

桜坂 神楽は知っている。

『光の糸』を操る機動兵士など、忘れられるものではない。3年前の横浜紛争で篠原 凛を殺した『デストロイ部隊』の機動兵士。髪の色こそ違うが、あの奇妙な笑い声は今でも頭にこびりついている。

(あの時、死んだはずでは…………。)

いや…………。

似ているが、若干の違いがある。

(姉妹か、それとも………………。)


──────クローン兵士



『きゃはははは♪』

ナターシャは笑う。

『始めましょう『アリス』♪』

『…………。』

『旧人類最強の兵士と新人類の戦い。果たしてどちらが強いのかしら♪きゃはははは♫』

米露による機動兵士同士の戦闘は最終局面を迎え、『シリウス隊』神楽と『デストロイ部隊』ナターシャによる、最強の機動兵士同士の戦闘が始まろうとしていた。