こんにちは、さとです。

今日は少し経済のお話をします。

最近ネットニュースなどを見ているとビッグマック指数を引き合いに出した日本経済停滞論を見掛けます。また、失われた20年だとか30年だとか言う主張もずっと続いていますし、日本の労働生産性は低いだの、それはIT化が遅れているからとか、賃金が安いからとか色々と言われていますね。概要は以下の通りです。

➀日本のビッグマックの価格は390円である。アメリカは620、イギリスは520円、韓国は440円。日本のビッグマックは今や中国にも匹敵するほど低い。

②次に日本人の平均賃金を国際比較します。日本は平均年収400万円、アメリカは690万円、イギリスは490万円、韓国は440万円、日本人の年収は先進国の中では最も低い部類に入る。日本人は貧乏になった。

③それから要因分析やら政策批判を展開します。賃金が上がらないのが悪い。IT分野への切替、つまり効率化が悪い。OECD 諸国の中でも日本人の労働生産性は最下位レベルだ。

④そこからアベノミクス批判が始まります。ようは政策が悪いのだと。で、賃金が上がっていないだの、日本人の平均賃金はOECD 諸国の中でも最下位レベルだの。そして、もっと賃金を上げろとか、分配しろと言って批判します。

④はリベラル系の記事に多い展開です。まぁ、そこはアベノミクス批判、自民党の政策批判を是正としている人達ですから、仕方がないにしても、まともな記事でも要因分析に間違いが多いのに驚きます。(アベノミクス批判については、機会があれば別のブログで。)

そもそもビッグマック指数の意味合いを勘違いしている。そこから間違いです。ビッグマック指数が考えられた理由は、その国の本来の貨幣価値を計算で導き出す為です。一つ、まともな記事がありましたので、そこから引用します。

『最新の2021年7月の指数では、日本とアメリカのビッグマック指数は-37.2%となっています。2021年9月1日時点の為替レートは1ドル=110円程度ですので、110×(1-0.372)≒69となり、1ドル=69円くらいが妥当と考えられ、現在の円は非常に過小評価されていることになります。』

つまり、ビッグマック指数から計算すると日本円の現在の本当の価値(実力)は1ドル69円。日本人の年収は400万円ではなくて、ドル換算で逆算すると637万円が妥当となります。すると日本人の平均年収はアメリカ以外の殆どの国より高くなりますね。上記例から言うと➀から②に展開するのが如何に的外れな理論なのかが分かります。

まず大前提として、日本人の本来の給与水準は世界でもトップレベルに高いと言う事です。あたり前です。日本人の平均年収でビッグマックを幾つ買えるのか?で計算すると分かりやすい。沢山買える方が裕福な国なんです。日本人よりも沢山のビッグマックを買える国は主要国ではアメリカしか有りませんよ。もっと詳しく知りたい方はビッグマックマック指数の成り立ちや使い方を調べてみると良いでしょう。殆どのマスコミや自称専門家は、その使い方を間違えています。

次に理由を説明します。理由は簡単ですね。為替を操作しているからです。日本と言う国は原料を輸入して付加価値を付けて外国に輸出する製造業の割合が高い国です。つまり円安の方が有利です。最近悪い円安とか言われていますが、それもあり得ません。原油の値段が上がったのは円安よりも、そもそも原油の国際価格が上がったからです。それを円安のせいにして円高にすれば日本の製造業は大打撃を受けます。短絡的に原油の高騰=円安が悪いとは言い切れません。

まぁ、その話は別にして、今の円安の理由は日本が弱くなって、または衰退して円の価値が下がったからでは有りません。円は強すぎるのですよ。次に世界で流通している貨幣量を比較します。とある記事から引用します。

『BIS(国際決済銀行)は、3年ごとに為替市場における通貨別取引高をまとめている。2016年4月の月間1日あたりの取引高が最新データだ。それを見ると上位3通貨が圧倒的なシェアを持ち、米ドル43.8%、ユーロ15.6%、日本円10.8%とおよそ7割を占めている。以下、英ポンド6.4%、豪ドル3.5%、スイスフラン2.6%、カナダドル2.4%と続き、世界第2位の経済大国である中国元は、その他15%の中に埋もれている。』

経済学の基本として、通貨流通量が増えればその国の通貨の価値は相対的に下落します。記憶に新しいのはアベノミクスです。民主党政権の時の日本円の価値は最高値で1ドル76円の値を付けました。しかし、安倍政権となって大量に国債を刷って円の流通量を増やした事により円の価値は下がり1ドル115円になりましたね。日本円は世界ではアメリカに次いで流通量の多い通貨です。量が増えれば増えるほど円の価値は低く見積られているのです。

ここまでは、良いかな?つまり、日本の円の実力は1ドル69円が妥当であり、日本人の本来の平均年収はドル換算で637万円。世界でもトップクラスの裕福な国です。直近の日本人の金融資産の残高は過去最高を記録しています。本当に貧しくなったなら金融資産は減少に転じるでしょう。そこから見ても20年も30年も停滞していると言うのは無理がありますね。日本人の資産から債務を差し引いた実質的な資産量は世界でもトップクラス。更に為替の操作を止めて国債の発行を減らし世界に流通する通貨量を他国と同じにすれば、つまり前提条件を同じにすれば日本ほど裕福で金持ちの国は有りません。

もう一度確認しますけれど、表面上の賃金の国国際比較など何の意味も有りません。それ為替で高くも低くもなる。そこに騙されてはいけません。ビッグマック指数はそれを調整する為に考えられた数値です。

そうは言っても、日本の労働生産性はOECD 諸国の中でも最下位レベル、労働生産性の伸び率、そして経済成長率も最下位レベル。日本はもっと効率化を進めて労働生産性を上げて経済成長しないといけないでしょ?と言う主張があります。

この主張にも大きな誤りがあります。一つ目の誤りは労働生産性はOECD諸国の中でも最下位レベル。これは前述した為替の影響です。為替をビッグマック指数により調整すれば日本の労働生産性は世界でもトップクラスになります。日本は本来の実力では生産性の高い国ですが、政策的に量的緩和を進める事により円安に誘導し、ドル換算で比べると労働生産性が低く見えるだけです。

2つ目の誤りは、効率が悪いと言う主張です。まるで日本人が怠けていて、働いていないみたいじゃないですか。逆ですよ。日本では効率化が進んで労働生産性が減少しているのです。

と言うと変だと思うでしょう?事実です。

まず、労働生産性の計算方法を理解しないと分かりません。

「物的労働生産性=生産量や販売金額÷労働投入量」

「付加価値労働生産性=付加価値額÷労働投入量」

これを国で考えるなら、GDPを労働人口あたりで割って1人あたりの労働生産性とか言って計算します。それで日本人の労働生産性は低い、からの効率が悪い論が展開されます。

問題は、この労働投入量です。これは2つに分解できます。つまり、時間あたりの生産性と1人の労働者が働く時間です。効率化と時間ですね。ここで総務省のホームページを引用します。

『労働生産性の伸び率は、就業者1人当たりの就業時間の伸び率と時間当たり労働生産性の伸び率の合計で表すことができる。我が国の労働生産性の伸び率は、2012年から2019年までで年率0.2%という結果になった。その内訳をみると、時間当たり労働生産性の伸び率は年率1.0%で、G7中フランスと並んでトップとなっている。他方、就業者1人当たりの就業時間の伸び率は年率-0.8%と、G7各国の中では最も短縮している』
(総務省ホームページより)

どう言う意味か?つまり、日本人の効率化は進んでいてG7の中でもトップクラスです。しかし働く時間が減少している。だから労働生産性が伸びない。今度は厚生労働省の統計を引用します。

『1970年代前半に180時間を上回る水準で推移していた労働者一人当たりの月間総労働時間は、1970年代半ばに170時間台となった後、1980年代末から1990年代初めにかけて水準を大きく切り下げ、1990年代前半には150時間台となった。これは、改正労働基準法の施行によって法定労働時間が週48時間から40時間へと段階的に引き下げられ、週休2日制が定着してきた影響が大きい。月間総労働時間はその後も減少を続け、2000年代後半以降は140時間台で推移してきたが、ここにきて減少ペースが加速し、2019年には139.1時間と140時間を割り込んだ。』

凄いでしょ?こんなに労働時間は減少しているのです。1人あたりの労働時間が減少している。分かりやすく説明します。

A株式会社


Aさん 1時間100生産 10時間勤務 1000

Bさん 1時間100生産   5時間勤務   500

Cさん     失業中


15時間あたり1500生産

1時間あたり100生産

1人あたりの勤務時間7.5時間

1人あたり750生産

※失業者は1人あたりにカウントされない



Aさん 1時間120生産   8時間勤務 960

Bさん 1時間120生産   5時間勤務  600

Cさん     1時間120生産   2時間勤務 240


15時間あたり1800生産

1時間あたり120生産

1人あたりの勤務時間5時間

1人あたり600生産


時間あたりの成長率プラス20%

1人あたりの勤務時間マイナス33%

1人あたりの労働生産性マイナス13%


これは極端な事例ですが、このA株式会社の効率化は停滞していますか?って話です。労働生産性はマイナス13%ですが、効率化はプラス20%では有りませんか?と言う話。

日本の場合は少子高齢化により、適齢労働人口が減少しています。更に改正労働基準法により、長時間労働が出来ない環境になりました。そして年金支給年齢が60歳から65歳に引き上げられました。それにより1人あたりの労働時間が急激に減少したのです。今まで10時間労働をしていた正社員が退職したけど人手不足で雇えない。その埋め合わせにリタイヤした高齢者や専業主婦をパートタイマーとして雇う。短時間労働者が増えたから、平均労働時間が減少し労働生産性が悪化しているのです。

効率が悪いとか、IT化が進んでいないとか、全く的外れの主張です。時間あたりの労働生産性の伸び率はG7の中でトップですよ?単に労働時間が短くなっただけです。それと為替の影響ですね。

最後に、そうは言ってもバブルの時と比べたら労働者の賃金は上がっていない。との主張があります。それは比べる対象が悪いです。なぜならバブルだからです。あれは日本の実力が高く評価され過ぎていた結果です。だからバブルなんです。今とは全く逆ですね。バブル当時、東京都の土地の値段でアメリカ全土を買えると言われていたそうです。そんなの有り得ないでしょ?

バブル当時の日本の労賃は、世界でもトップどころかダントツの1位ですよ。つまり異常です。他の先進国と比べても給料が異常に高かった。それと比べても仕方がないでしょう。バブルが崩壊して、日本の労賃はようやく正常なレベルに落ち着いたと言うのが正しい見解です。それでも最初に述べた通り世界でもアメリカに次いで高いのが現状です。

ビッグマック指数から読み取れるのは、日本人の給料が世界と比べて高いと言う事であって、決して低いと言う意味では有りません。それなのに真逆の主張を展開している記事や専門家が多いのに驚きます。

まとめると

表面上の数字に騙されてはいけません。現在の為替レートで諸外国の平均賃金と比べて日本は貧しくなったなど有り得ません。それは為替のマジックです。仮に日本が国債の発行を取り止めて円を刷るのを止めて諸外国と同じくらいの通貨流通量にすれば、円はあっという間に高くなります。そうなれば平均賃金は諸外国よりもあっという間に上がります。つまり、前提条件(通貨流通量)を同じにしないと比較出来ないのです。しかし通貨流通量を同じにするなんて現実的には出来ません。その為のビッグマック指数です。

日本人の時間あたりの労働生産性は先進国でもトップの伸び率。しかし1人あたりの労働時間が急激に減少しているので、全体としては労働生産性は低くなっている。主な要因は少子高齢化と残業をしなくなった事です。

それでも尚、日本人の給与水準は諸外国と比較するとかなり高くて、日本はアメリカに次いで裕福な国と言えます。

国が裕福になるとどうなるか?健康指向となり医療が発達して平均寿命が伸びます。日本人の平均寿命は世界1位です。裕福な先進国ほど平均寿命が高くなります。次に娯楽文化が栄えます。世界の娯楽産業を見ると、映画、音楽、アニメ、ゲーム、世界の娯楽産業を二分しているのはアメリカと日本ですよ。かつての国風文化や江戸文化、生活が豊かな時代、国でないと娯楽文化は発達しません。現在のアメリカと日本には娯楽を生み出し根付かせるほどの余裕があると言う事です。あとは食事が贅沢指向となる。ミシュランの三星レストランの店舗数は日本がNo1ですよ。日本人がいかに生活に余裕があり贅沢になったのか?と言う事の証明です。

日本の労働生産性が低くて諸外国と比べて日本は貧乏になった。と言う主張がいかに虚しい主張なのかわかりますね。もしもそれが本当なら日本の個人金融資産は過去最高を記録しないでしょうし、平均寿命は下がるでしょうし、娯楽産業は衰退するはずです。現実は真逆ですよ。

ちょっと話が逸れましたが、今回はビッグマック指数を元にした日本の本来の実力を計算してみました。

バブル期は異常として、未だに日本の実力は世界でもトップレベルと言えそうです。総務省のデータが正しければ、ここ7年間の時間あたりの労働生産性の伸び率も先進国ではトップレベルですから日本人はかなり頑張っていますね。あとは少子高齢化問題です。労働人口の減少だけは努力では解決出来ません。

政府はその解決策として、外国人労働者の実質的な永住を認めるようです。経済だけを見るとこれは正解でしょう。実は欧米の経済成長率が高いのは効率化が進んだからと言うよりも移民を受入したからです。日本も同じ事をすれば経済成長率は欧米並に上がる事は容易に想像出来ます。あとは治安ですね。その問題をどうやって解決するのかは政府からは何の施策も発表されていません。単純に実質的な移民を受入するなら、おそらく日本の治安は悪化するでしょう。

経済を優先するのか?治安を優先するのか?

そこが問題です。




今回は久し振りに、小説以外の投稿となりました。

異論はあると思いますが、まぁ7割くらいは合っていると思いますよ(笑)。

ちょっとね、日本人の給料は低いだの、効率が悪いだとか、事実である数字を見ないで適当な事を書いている記事が多過ぎるので、あえて日本はそこまで酷くない国だと言う事を書きたかったのです。日本人は頑張ってますよ。


それでは、小説の方も宜しくお願いしますね。


さとより