Seventh World 7つの世界の章
【最後の戦い後編①】
なぜ、私に敵対するのか。
貴女だけには、理解して貰えると
そう信じていた。
宇宙を創造したと言われる最初の『四人の神』
宇宙神ブラフマー
創造神ガイア
ゴッド・マリア
初代アマテラス
『四人の神』は、宇宙の創造を果たした後、安息の地を求め『天界』に身を寄せる。
意見の対立があった。
宇宙全域で産まれた生命体に関与せず、生命の進化、成り行きに任せる『ガイア』。
神として宇宙に君臨し、全宇宙を管轄すべきとの『ブラフマー』。
対立はいつまでも解消されず、結果的にSeventh World(7つの世界)を除く外宇宙は放置された。
多くの神々が、Seventh World(7つの世界)以外の宇宙に関心を持たなくなった頃、最初に異変に気が付いたのは二代目のアマテラスであった。
『ラ・ムーア帝国』の繁栄。
神々の予想に反しSeventh World(7つの世界)を上回る速度で進化した人類が超帝国を造りあげた。
「このまま『帝国』を放置すれば『天界』の脅威となりす。早急に『ラ・ムーア帝国』を、外宇宙の全てを消滅すべきでしょう。」
この頃には既に『天界』は、『ガイア』と『オリュンポス十二神』が支配していた。
ブラフマーの主張は受け入れられず、それどころか『ガイア』と『オリュンポス十二神』はSeventh World(7つの世界)にすら関心を示さなくなる。
『神々』は―――――
―――――完全に堕落している。
人類の中には、『神々』を超える能力者すら現れていると言うのに。
見るが良い。
あのおぞましい姿を。
あの歪んだ心を。
いつの日か、彼等は『天界の神々』に反逆するに違いない。『天界』を離れた『ルシファー』と『天使の一族』のように。
それは『神々』にとって、脅威以外の何者でもない。不完全な『生命体』は一度、消滅させなければならない。
「ガイアよ。ブラフマーの様子がおかしい。ブラフマーは我々『神々』に反乱するかも知れぬ。」
全能神ゼウスにより、ブラフマー討伐の命令が下された。
「何をするのですか!私は最初の『四人の神』の一人です!ガイアは何をしているのです!」
「これはガイアの命令です。もはや貴女は『天界の神』ではない。反逆者として死ぬが良い。」
こうして宇宙神ブラフマーは一度、命を落とす。
死ぬ間際にブラフマーは破壊神シヴァに告げる。
「私は一度、姿を眩まします。今のままでは、『ガイア』の勢力には勝てません。ゆえに仲間を集めなさい。」
「ブラフマー……、貴女はどうするのだ?」
「『オリュンポス十二神』の目を欺くのです。私は転生し再び『天界』に戻ります。それまで、シヴァ。貴方は私に組する勢力を増やして下さい。」
おそらく、勝利の鍵を握るのは『二代目アマテラス』と『ゴッド・マリア』。
「アマテラスはともかく、マリアはきっと分かってくれるでしょう。彼女は自らの創った世界を放置せず、愛している。人類は管理してこそ正しい進化を成し遂げる。」
進化に失敗した全ての世界を消滅させ、新たな世界を創造するのです。
それなのに
なぜ―――――
『ゴッド・マリア』の『加護』を受けたシャルロット・ガードナーが……。
「貴女が私に敵対するのですか!」
ブワッ!!
ボボボボボッ!!
無数の炎柱(えんちゅう)がシャルロットを囲むように出現した。
ひかりは『ヘスペリアスの世界』最高の魔法使い。五芒星の封印が解かれた今、ブラフマーの能力は以前の星空 ひかり(ほしそら ひかり)とは比べものにならないだろう。
ゆえに―――――
(これは、単なる威嚇……。)
グンッ!
シャルロット・ガードナーは加速する。
ビシュッ!
右足首の傷口から血が吹き出したが、そんな事はお構い無しに、シャルロットは炎の柱に身を投げ入れる。
シャルロットのスピードは炎による焼失を上回り、難なく炎柱を突破した。
ザザァ!
「!!」
炎を抜け出したシャルロットが、次に見たのは滝のような水流の柱。触れただけでも身体が砕けそうな勢いだ。
シャキィーン。
「高速剣!!」
バシュバシュバシュッ!!
レイピアによる音速の剣撃が巨大な水柱(すいちゅう)に風穴を開ける。
(ひかりは、本気じゃない。)
シャルロットはそう判断した。
魔法による妨害はしても、シャルロットへの直接攻撃をして来ない。
宇宙神の圧倒的な力による余裕の現れか。
それとも、私を殺さない理由があるのか。
(何れにしても、ひかりを倒す機会は、今しかない!)
ブワッ!
巨大な水柱をも突破したシャルロットに、ブラフマーは最後の呼び掛けをする。
「シャルロット……。いや、マリア。貴女は本当に私ではなく『オリュンポス十二神』に味方をするのですね。」
とても
――――――――――残念だわ。
「!!」
(なんだ!あの超エネルギー体は!?)
シャルロットが見たのは、ひかりの頭上に渦巻く小宇宙。宇宙神の力は、『ユグドラシルの世界』に宇宙までをも創造する。
「どんなに強い戦士でも。どんなに素早い戦士でも。世界の崩壊の前には為す術は有りません。」
「止めなさい!ひかり!!」
「抵抗する貴女達が悪いのです。人類だけではなく、罪の無い動植物までも、世界そのものを消滅させなければならない悲しみ。」
これは―――――
――――――――――人類の罪
星空 ひかりの物悲しげな声が、『ユグドラシルの世界』に別れを告げる。
「『ビッグ………。バン』。」
【最後の戦い後編②】
「『光速剣』!!」
ブチッ!
ギオスに切断された右足首のアキレス腱が、光速のスビードに耐えきれずブチ切れた。
しかし、もう走れなくても構わない。
星空 ひかり(ほしそら ひかり)は、既にシャルロットの剣技の射程圏内。
この攻撃で、ひかりを倒せば、後はどうなっても構わない。例え足が千切れようが問題ない。
バシュバシュバシュッ!!
光速の剣が、星空 ひかりに放たれる。
「!!」
しかし
(当たらない!?)
星空 ひかりを包む見えない壁が、シャルロットのレイピアの攻撃を跳ね退ける。
ゴゴゴゴォ!
「シャルロット……。もう遅いわ。」
ひかりはシャルロットに告げる。
「既に『ビッグ・バン』は発動しました。小宇宙の爆発には、この世界は耐えられない。あとは世界の消滅を待つのみです。」
ゴゴゴゴォ!
徐々に膨れあがる小宇宙。
(!!)
防御魔法?
いや
原因は分からない。
シャルロットの攻撃が、見えない壁に阻まれた。
(ならば!)とシャルロットは次なる技を試みる。
かつて、シャルロットと剣を交えた勇敢なる剣士。その剣士の技は、どんな壁をもすり抜ける必殺の剣。
「北辰夢幻一刀流奥義!」
――――――――――ゼロの太刀!!
ズバッ!!
「!!」
見えない壁をすり抜けた『レイピア』の剣先が、星空 ひかりの胸部に突き刺さった。
(まさか………。)
さすがのブラフマーも驚きを隠せない。
『人間の技』が『神の力』をも上回ると言うのか………。
「さすがね。シャルロット……。貴女は偉大なる戦士。神を超える人間がいるなら、それは貴女かもしれないわね。」
「………ひかり。」
「しかし、貴女らしくもない。傷口が浅いわ。もう一歩踏み込みが深ければ私を倒せたかもしれません。その傷が影響したのかしら……。」
シャルロットの右足首からは、ドクドクと血が流れ落ちる。
対するシャルロットも、星空 ひかり(ほしそら ひかり)にそっと告げる。
「踏み込みが甘い?違うわ、ひかり。」
「………?」
「私の目的は、ひかりに剣を突き刺すだけ。その後の仕事は私の仕事では有りません。」
「!!」
ブワッ!!
シャルロットの愛剣『レイピア』の先端から現れたのは、世界を創造した最初の『四人の神』の一人。
ゴッド・マリア―――――
「マリア!?」
「久し振りね ブラフマー。警戒心の強い貴女に近付くには、良い方法でしょう?」
「マリア!何をしに!?」
「決まっているでしょう。『天界の神々』の中でも、貴女に勝てる神は存在しない。最初の『四人の神』である私しか、貴女には対抗出来ない。だから……。」
ゴッド・マリアの身体がブラフマーの身体を包み込む。
「あなたと私の力は互角。ゆえに私は、私の全ての力を持って、あなたを封印します。」
もう人類は、『神の力』を必要としない。
「私達の力は強過ぎる。私も貴女も『人類の未来』には、不要な存在なのです。」
「!!」
ブワッ!
ドドドドッカーンッ!!!
『ユグドラシルの世界』を覆っていた『オーロラ』が消えるのと、小宇宙が爆発したのは……。
―――――殆ど同時であった。
