Seventh World 7つの世界の章

【星空  ひかり編①】

「ひかりさん。生きていたのね。」

天空を覆う美しい『オーロラ』の光に包まれて、夢野  可憐(ゆめの  かれん)は、ほっと胸を撫で下ろす。


シャルロットは光の中から現れた星空  ひかり(ほしそら  ひかり)を凝視した。

(星空  ひかり。彼女がこの超常現象を…)

七色に輝く『オーロラ』。
しかし、これは只の『オーロラ』ではない。
強大な力がみなぎっている。

(これほどの力を、この短期間で身に付けたと言うのですか………。)


戦場は既に最終局面に達していた。

残された『加護の戦士達』は、満身創痍。
まともに戦える戦士は、夢野  可憐と李  羽花くらいであろう。


ひかりは、ぐるりと戦場を見回した。

天空に舞う夢野  可憐。
足を負傷しているシャルロット。
中でも、リュウギとアリスの消耗は大きい様に見える。

そして、星空  ひかりが最後に目を止めたのは、可憐でもシャルロットでもない。
ひかりが見るのは、『アルタミエル』を倒した『ユグドラシル』の英雄。

李  羽花(リー・ユイファ)

ひかりはそっとユイファに告げる。

「やはり、ユイファ。あなたこそが『私達』の脅威。どうやら、私が相手をしないとならない様です。」



「!?」


リュウギは一瞬、耳を疑った。

「ユイファ殿が、我々の脅威………?」


『アルタミエル』からリュウギとアリスを守ったのは李  羽花、そのユイファが我々の脅威と言うのは、いったい どう言う意味なのか。

その疑問に答えるのは、ひかりではなくアリス・クリオネ。

「リュウギ殿。その言葉のままですよ。」

「アリス殿………。」

「星空  ひかりにとっては『万物を操る能力』は脅威と言う事でしょう。」

「…………。」

アリスは話を続ける。

「ようやく合点が行きました。なぜ私達の行動が筒抜けだったのか。
アマテラス様がおっしゃっていた『天界の神々』の裏切者。それは『ひかり』!あなただったのですね!」

「何じゃと!?アリス殿、何を!?」


『オーロラ』の光に包まれた星空  ひかりは、何とも優しい笑みを浮かべた。

「私も、一時はどうなるかと思いました。」

ひかりは言う。

「転生して間もなく、私の力は人間達に封印されました。『五芒星』の封印が私の全ての計画を後退させた。」

「ひかり殿………。」

「加えて『天帝アマテラス』の存在。アマテラスは私の存在をいち早く察知し対策を考えた。『天帝の加護』の戦士達が私の計画の邪魔をし始めたのです。」

「力を封印された私には『天帝アマテラス』を倒す事は出来ない。そこで『天界の神々』の力を利用したのです。」


『天帝の加護』の戦士達と『聖なる加護』の戦士達を共倒れにさせる計画……。


ザザッ



星空 ひかり(ほしそら ひかり)の能力は、『聖なる加護』を持つ人間を引き寄せる力。

ステラがひかりと出会ったのは偶然では無い。ステラはひかりの持つ『聖なる加護』の力に引き寄せられたのだ。

ひかりの持つ『聖なる加護』『惹かれ合う魂』によって。



ザザッ



「初めてじゃないわ。あなた私と会ったじゃない。私は覚えているわ。」

そして、ひかりは銀河  昴の鼻にちょこんと指を充てて言う。

私達は運命で結ばれているの。



ザザッ



ええ、間違いありません。私の『聖なる加護』『惹かれ合う魂』が教えてくれました。」

私達の仲間になる五人目の戦士。

この世界の『聖なる加護』の保持者を助けに行きましょう!


ザザッ



それは、まさに魂の共鳴であった。

Seventh World(7つの世界)の一つ『ワールド』最強の騎士シャルロット・ガードナーと『ヘスペリアス』の世界最強の魔法使いエレナ・エリュティアの魂が、光の世界で交錯する。


ザザッ


ひかりが『聖なる加護』の戦士達を集めたのは、『天帝の加護』の戦士達と戦わせ、共倒れにさせる為。






【星空  ひかり編②】

『高天原(タガマガハラ)』の世界での激戦は熾烈を極めた。

リザ・チェスターとシリュウ・トキサダは戦死。星空  ひかりの計画は成功するかに見えた。


しかし


『万物を操る能力』


『全能なる瞳』


『時の旅人』



(やはり、簡単には行かないようね。)


ひかりの計画は失敗に終わった。

何より『天帝の加護』の戦士達と『聖なる加護』の戦士達を共闘させる事となったのは大きな誤算であった。



ザザッ


『天帝の加護』の戦士達と『聖なる加護』の戦士達が力を合わせれば必ず倒す事が出来る。

まだ五つの世界が崩壊する前。
一年前の『アルタミエル』を殺します。


ザザッ

「正直に言うとね、すばる。私はアリス・クリオネを信用していないの。」


ザザッ


これは、いったい…………。

アリス・クリオネは思う。

(何もかもが、完全に裏目に出ている。)

アリス・クリオネの作戦も……
『加護の戦士達』の行動も……

いや、もっと言えば『私達の能力』すら、完全に筒抜けなのだ。

(裏切り者が………、私達の中にいる!?)



ザザッ




そう。

星空  ひかりの新たな計画。

それは、魔法の使えない『北の果ての地』で『加護の戦士達』を皆殺しにする事。

その為に、全宇宙から『7つの大罪』の指導者達を集めた。

配下の天使である『大天使ノア』と『大天使エノク』まで呼び寄せた。


『未来予知』の能力者である、銀河  昴(ぎんが  すばる)を誘きだして殺したのも、ひかりの計画の一つ。未来を読まれたら、ひかりの計画が全て水の泡となってしまうから。


それでも


それでも『加護の戦士達』を、簡単に殺す事は出来なかった。


「エレメンタル・オールフリー。」


ブワッ!!


「!!」

「ひかりさん!?」

「ひかり殿!!」


輝く『オーロラ』の中に現れたのは、巨大な『大精霊達』。

イフリート

セイレーン

シルフィード

ウィンディーネ

ヘビモス

そして、最後に現れたのは


『精霊王  アンドロメダ』


全宇宙を支配する精霊の中の精霊。



「計画など、もう不要なの……。」

ひかりは言う。

『五芒星の封印』が解かれ、真の力を取り戻した星空  ひかり……、エレナ・エリュテイアには、小細工は不要。


なぜなら

彼女こそが全宇宙を創った神の一人。


『宇宙神ブラフマー』なのだから。