Seventh World 7つの世界の章

【万物を操る能力編①】

ギギィ

ギギィ

シャー!

シャー!

「な!?何をするの!!」

バシッ!!

ギギャッ!!


ギギィ

ギギィ


(これは………。)

アルタミエルの四方一面を取り囲むのは、『アルタミエル』の同心とも言える『従属達』。

(なぜ、『従属達』がワタクシに攻撃を……。)

「ユイファ!貴様ぁ、何をした!」


アルタミエルが睨む先にいるのは、『ユグドラシル』の英雄、李  羽花(リー・ユイファ)。


『万物を操る能力』


エルフ族の王族に伝わる秘術を、ユイファは使いこなす。


ふと、声が聞こえて来る。


『ユイファ………。』

(?)

『ユイファ………。強くなったわね。』

(………リーナ?)

その声は、プリンセス・リーナ。

一度も会った事がない、遠い昔に存在していたユイファの分身。

『あなたなら、『ユグドラシルの世界』を救う事が出来るでしょう。あなたは私と違う。』

(違う………?)

『私は『アルテミス神』の力に坑がう事が出来ませんでした。私に無いものが、あなたにはある。』


それは『人族』の

英雄アロンの血統。


(アロン…………。)

ユイファは、その名前を知っている。

リーナとシンクロした時に、何度も現れたユイファの遠い祖先。プリンセス・リーナが愛した人間。

飛燕剣(ひえんけん)のアロン


『見えるわユイファ。あなたの中に彼の面影が。お願いですユイファ。『ユグドラシル』の世界を救って下さい!』


バシュバシュバシュッ!!

ギガガッ!!

グギャッ!!

「!!」


「もう、たかが『従属』の分際でワタクシに逆らうなんて。」

「アルタミエル!」


ゆらり

 真っ白い肌を光らせアルタミエルが微笑む。

「こんなので、ワタクシに勝ったつもりなのかしら?」

その細い右腕を、すっと差し出したアルタミエルは、ひとこと呟く。

「『破滅(はめつ)の右手』」


ブシュワッ!

「!」

その魔法は、触れたもの全てを塵と化す究極の魔法。

「ふふ。せっかく育てた『従属達』を殺すのは忍びないけれど、替えなら幾らでもいるわ。」

ギギィ

ギギィ

「それに、あなた達。アリス・クリオネが力を失っている状態で、どうやってワタクシの魔法を防ぐのかしら?」


「くっ………。アリス殿………。」

リュウギは、腕に抱えるアリスを見やるが、アリスは力なく首を振った。

まだ、回復にはほど遠い。

「ユイファ!逃げて下さい。貴女がいれば希望が残る。私達の事は構わずに!」

アリスの悲痛な叫びを聞き、ユイファは、アリスとリュウギを見つめる。

二人は死を覚悟している。そんな二人にユイファは笑顔を見せた。

「え……。」

「心配せずとも大丈夫です。」


ゴゴゴゴゴゴゴゴォ!

「!?」

ふと、アルタミエルが顔をしかめる。

『従属達』が滅びない?

『破滅(はめつ)の右手』が発動しないのか。

ゴゴゴゴゴゴゴゴォ!

いや、魔法は発動している。

しかし

その攻撃対象は『従属達』でも『加護の戦士達』でも無い。


魔法の攻撃対象は

アルタミエル自身。



「ぐわぁあぁぁぁ!!!」


ユイファは告げる。

「私の『万物を操る能力』は、アルタミエル。あなた自身にも影響する。」

「!!」

「自らの魔法で滅びなさい!」







【万物を操る能力編②】

ぶしゅう

「凄い…………。」

(これが、『万物を操る能力』………。)

リュウギ・アルタロスは身震いする。

今まで、幾多の強敵と出会って来た。神代  麗(かみしろ  れい)やシャルロット・ガードナーの『加護の戦士達』は勿論、『北の果ての地』の最深部にいた二人の『大天使』。『7つの大罪』の指導者達。

彼等も強敵には変わりない。
リュウギとて、一筋縄では勝てない相手ばかりだ。

しかし、この戦士『李  羽花(リー・ユイファ)』の力は次元が違う。

『万物を操る能力』を破る手立てが見当たらない。

銀河  昴(ぎんが  すばる)殿の『全能なる瞳』による幻影術が無ければ、我々も全滅していただろう。

長い間『加護の戦士達』の敵として立ち塞がった『アルタミエル』。

その強敵が、自らの魔法で消えて行く。



その様子をリュウギは感慨深く見つめていた。






ズサッ

「?」

そこに一人の少女が現れる。

「何じゃお主は?ここは子供が来る戦場では無いぞ。」

「ふふ……。」

少女は凶悪な笑みを浮かべる。

「リュウギ殿………、この子はミリリアン。」

アリスがリュウギに告げる。

「ミリリアン?」

「この『ユグドラシル』の世界、最強の戦士と言われる『ヴァンパイア族』の王。」

「『ヴァンパイア族』じゃと?そのような戦士がなぜ、ここに。」

「ふふ。あなた達が『加護の戦士』ね。」

「ぬ?」

「私が来た目的は、そうね。あなた達を殺す事かしら?」

「何じゃと!?」

「あの方の……、偉大なる総統の邪魔になる戦士は一人残らず殺す。それが、わたしの役目。」


「くっ!」

リュウギには残された妖力は無い。
右腕も失っている。
それでも、こんな子供に負ける訳には行かない。

「アリス殿、少し横になっていて下され。」

リュウギはそっとアリスを地面に寝かせると、ミリリアンを睨み付ける。

「相手が悪かったのぉ。俺様は妖力が無くても強い。ヴァンパイア族か何かは知らぬが返り討ちにしてくれるわ。」

「リュウギ殿!ミリリアンは強い。今のリュウギ殿では……。」

「安心せい。俺様は負けぬわ。」

「ふふ。バカな男……。」

心配するアリスをよそにリュウギは戦闘態勢に入る。







【万物を操る能力編③】

ビカビカビカビカッ!

信じられん!

ズバッ!!

「くっ!」

ギュオン!

可憐の攻撃をスレスレでかわしたシヴァは、空中で旋回し、『破壊の剣(つるぎ)』を振り下ろす。

ガキィーン!!

「くっ!」

しかし、可憐はシヴァの攻撃を難なく受け止めすぐさま反撃に転じる。

バシュッ!!

「ぐぉ!」

互角であったはずの戦闘が徐々に一方的な展開へと変貌する。

夢野  可憐(ゆめの  かれん)

シルフレア・サーシャス


二人の『大天使』の力がここまでとは……。


いや

この強さは普通では無い。

(何かカラクリがある。)

ビカッ!

シヴァは、第三の目を光らせる。


可憐に力を与えているのは、シルフレアだけではない。


(…………!)


シヴァの第三の瞳に映るのは……。


『堕天使』に堕ちた可憐に味方をするのは

「!!」

(ちっ!………、そう言う事か…………。)



「そろそろ終わりにしましょう。他の『加護の戦士達』も心配です。」


『大天使シルフレアの剣』を天空に掲げる可憐。


この一撃は、今までとは違う。


「くっ!」

シヴァも全ての力を『破壊の剣(つるぎ)』に集中する。

「『神』の!『破壊神』の力を侮るな!!」


おそらくこれが、双方、最後の攻撃。

どちらに軍配が上がるにせよ、何れかが死ぬ事となる。

天空に輝く二人の『聖なる力』は極限にまで達し、大空を明るく照らした。


ビカッ!






【】

ふと、シャルロットは空を見上げる。

右足を損傷したシャルロットでは、二人の『7つの大罪』の指導者を相手には勝てないであろう。それでも構わないと思う。

夢野  可憐(ゆめの  かれん)が、シャルロットに代わり人類を救うなら、結果としては同じ事。『加護の戦士達』の中で、一人でも生き残れば良い。

(そうね………。)

シャルロットがやるべき事は生き残る事ではない。残された『加護の戦士達』の為に、一人でも多くの敵を殺す事。

羅将(ラショウ)とギオス。

どちらが、強敵かと言えば、おそらく羅将。

(『無の境地』を破れる戦士は、私しか居ない。)

先ほどは、命を惜しみ羅将を殺し損ねたが今度は違う。

(同じ過ちはしない……………。)


決意を固めるシャルロット・ガードナーが、異変に気付いたのはその時だった。

(……。)


空が………。


夢野  可憐と破壊神シヴァが戦闘を繰り広げている空が、鮮やかな光に埋め尽くされた。

『…………!』

(この光は………。)



異変を察知したのは、可憐も同じ。

今まさに、最後の攻撃を繰り出そうとしていた可憐の手元が 七色の光に照らされる。

煌々と輝く光が、可憐の『聖なる光』を覆って行くのだ。

それは、あまりにも美しい光景であった。




「何じゃ………。この光は………。」

リュウギ・アルタロスは空を見上げた。
目の前の敵『ミリリアン』の存在を忘れさせる程の美しい光。
リュウギは、これほど美しい光景を見た事がない。

七色の光が『ユグドラシル』の世界を覆って行く。

そこで、リュウギは、李  羽花(リー・ユイファ)の声を聞いた。


これは

『オーロラ』だわ。



天空を覆う七色の光、ユイファはそれをオーロラと呼ぶ。しかし、ユイファの知っている『オーロラ』とはスケールが違う。



戦闘を繰り広げていた戦士達。

『加護の戦士達』も『7つの大罪』の指導者達も、神であるシヴァでさえも、その美しい光景に目を奪われた。


悠久の大地『ユグドラシル』の世界を覆い尽くす『オーロラ』。


そして、その光の中に現れたのは


「…………!」


アリス・クリオネは

その少女を見て呟いた。



星空   ひかり