Seventh World 悠久の大地の章
【全能なる瞳後編①】
ここは
Seventh World(7つの世界)を創り出した
『神々』が住む世界
――――――― 天界
「むぅ……。いったい何が起きているのだ。」
「ゼウスよ、落ち着きなさい。」
「しかし!」
『天界の神々』の中でも最上位の神であるガイアとゼウス。
ゼウスは予想外の出来事に憤りを隠せない。
『神々』を封印している『天界の結界』
ゼウスの予想では『結界』を張ったのは『天帝アマテラス』。故に『神々』は、『聖なる加護の戦士達』に力を与え『アマテラス』を殺す事に全力を尽くした。
そのゼウスの目的は『時の旅人』の能力を得たシャルロットによって果たされる。
正確には、アマテラスを殺したのはシャルロットではなく『アルタミエル』であるが、この際それは小さな問題。
とにかく『アマテラス』が死ねば天界を封印している『結界』は解かれるのだから。
しかし
いつまで待っても『天界の結界』が解かれる様子は無い。これほどの『結界』を張れるなど上位の神である『アマテラス』以外に考えられない。
『アマテラス』でないとなると、他の『神』の仕業だろうか?
ガイアよ。お主の予想を聞かせてくれ。果たして『結界』を張った神は誰なのだ?」
「落ち着きなさいゼウス。これほどの巨大な『結界』を張れる神などそうはいない。」
「うむ。我々以外に考えられるのは、ゴッド・マリアか……。まさか………。」
ガサッ
「!?」
「誰だ!!」
そこに現れたのは真っ白い翼を背に生やした『天界』に住む種族『天使の一族』。
50人は越えるであろう『天使達』の先頭に立つ美しい顔立ちの男が二人の神に話し掛ける。
「これは失礼。ガイア様とゼウス様。何を詮索されているのでしょうか?」
その天使の名は『アズラエル』。
現代に残る『天使の一族』の中の最高位に位置する大天使。その力は『神々』にも匹敵すると言われている。
「『アズラエル』か………。なに、気にするな。こちらの話だ。」
「そうですか……。まぁ、よろしいでしょう。」
「…………む」
(何かアズラエルの様子がおかしい。)
ゼウスよりも早く口を開いたのは創造神『ガイア』。
「アズラエルよ。天使の戦士達を引き連れて何をしているのです?」
結界に封印されて3年以上が経過した。
当初は慌てふためいた神々であったが、内部からの『結界の解除』が不可能と分かってからは主だった動きはない。
『神々』は自らが選んだ7人の『聖なる加護』の戦士達に全てを託したのだ。
ゆえに、アズラエルが天使の戦士達を引き連れて来るなど異例中の異例。敵が存在しない今の『天界内』で戦士の団体行動など必要ないのだ。
「何をしている?と言われれば……そうですね。」
アズラエルは、その右手をスッと上げて後ろに待ち構える天使達に合図をする。
「殺ってしまいなさい。」
「!!」
「アズラエル!?」
ビカッ!!
ババババババッ!!
ドビュッ!!!
ビカビカビカッ!!!
有無を言わせぬ一斉攻撃。
50人以上からなる天使達の攻撃が二人の神『ガイア』と『ゼウス』に襲い掛かる!
「な!?」
「血迷ったかアズラエル!!」
ガイアは自らの『聖なる力』で光の防御壁を造り出し天使達の攻撃を跳ね返す。
バシュバシュ!!
バチバチバチッ!!
「!?」
しかし、ゼウスの造る防御壁は天使達の攻撃により、徐々に破壊されて行く。
(くっ………、これしきの攻撃を!)
「ふふ………。」
アズラエルはゼウスに言う。
「無駄ですよゼウス様。あなたの『聖なる力』はかなり弱まっている。『結界』には神々の『聖なる力』を吸収するカラクリが仕掛けられているのです。もちろん私達『天使の一族』の『聖なる力』は回復していますが。」
「カラクリ!?やはり、力が出ないのはその為か………。」
「アズラエル!なぜ貴方がそのカラクリを知っているのです!?まさかお前が!!」
「ふふ………。」
アズラエルは言葉を続ける。
「まさか……私にはそんな力は有りません。」
「くっ!『神々』と敵対して『天使』が生き残れるとでも思っているのか!!」
激しく怒りを見せるゼウス。
しかし、アズラエルは予想もしない事を言い出した。
「『神々』と敵対する?何か勘違いをしているようですなゼウス様は。」
「な………。どう言う事だ!」
「ふふ。仕方ない……。教えて差し上げましょう。」
バチバチバチッ!!
「我々『天使の一族』にあなた方の抹殺を命令したのは『神』の一人です。」
「な!何だと!?」
「そして、もはや『神々』の中に、あなた達に味方する『神』はいない。」
「!!」
「そんな……バカな…………。」
「我々の仕事は『聖なる加護』に力を与えた『神々』の抹殺。あなた達、最上位の『神々』は邪魔なんです。」
「信じられん………。誰だ!貴様達に命令をしている神は!!」
バチバチバチッ!!
「もう良いでしょう。そろそろゼウス様。あなたの防御壁も限界に来ている。」
死んで貰います。
ゼウス様……、そしてガイア様
【全能なる瞳後編②】
悠久の大地『ユグドラシル』の世界
『獣人族』領地
「はぁ、はぁ……。」
全力疾走をした昴は、近くにあった草原にゴロリと転がった。
(危なかった………。)
何者かは知らないが、昴が泊まっていた民宿が攻撃を受けたのが見えた。
ものすごい破壊力。
『全能なる瞳』の近未来予知能力が発動しなければ、昴は殺されていたに違いない。
(あいつ、何者だ……?)
その戦士は『巨人族』のような巨体であるが、雰囲気が異常である。
(まさか、『アルタミエル』の仲間?)
もし、そうなら想定外の敵となる。
アリス・クリオネの作戦では『北の果ての地』に於ける戦闘では魔法無しでの戦闘を想定している。
『アルタミエル』は魔法使い。
故に『加護の戦士達』は、魔法以外の戦闘を得意とする戦士達で攻め込む手はずとなっている。
(あいつは、どう見ても魔法よりは武力に長けた戦士………。)
とにかく『ひかり』と合流しよう!
そう判断した昴は、ひかりの行方を探し歩き回る。
この時、昴は重要なミスを犯した。
『ひかり』を探すのではなく、最優先で逃げたなら助かっていたのかもしれない。
「!!」
「銀河…………昴か…………。」
「誰だ!?」
「ラショウめ………。まんまと逃げられる所ではないか。」
昴の目の前に現れたのは、何とも得体の知れない男。しかも、その男の額には三つめの瞳が輝いている。
昴は男を睨み付けて言う。
「お前も………『アルタミエル』の仲間か?」
「銀河 昴………。悪いがお前の存在が邪魔なのだ。未来を予知出来るお前がいると、我々の計画が破綻する。死んで貰うぞ。」
「くっ!」
(計画………だと?)
何と言う事だ………。
『アルタミエル』には仲間がいる。
アリス・クリオネの作戦は最初から間違っている。
これは、罠―――――――
『北の果ての地』で待ち受けるのは準備万全で待ち構える敵でしかない。
(逃げるんだ、昴!皆に、この事を知らせなければ!)
「無駄だよ、昴くん。」
「!?」
「人間が神に敵うはずもない。」
「神!?お前………。お前が………『天界の神々』の裏切り者!!」
「我が能力は『破壊』。我が『聖なる力』は、全ての物質を破壊する。」
我は
―――――――破壊の神なり
グワワワワンッ!!
その『神の男』の額にある第三の瞳が強烈な光を放つ。
「うわっ!」
すると、光に照らされた銀河 昴の身体が、粘土細工のようにグニャグニャにひしゃげたかと思うと……。
「『破壊の導(しるべ)』!」
グシャッ!!
次の瞬間、粉々に弾け飛んだ。
「これで良し……。ラショウの奴には困ったものだ……。」
男は、そう言い残し、その場を後にする。
【全能なる瞳後編③】
『聖なる加護』の戦士の一人
銀河 昴(ぎんが すばる)
昴の『加護』の名前は『全能なる瞳』
全能神『ゼウス』によって与えられたその能力は戦闘には不向きかもしれない。
しかし、未来を見通す事の出来る能力。
そして
幻影を作り出す能力は、敵の目を欺き裏をかく事に関しては誰にも負けない。
『7つの大罪』の指導者『羅将(ラショウ)』の攻撃を『未来予知』の能力でかわした昴は、今度は『破壊の神』の攻撃を幻影で受け止める。
グニャグニャにひしゃげて破壊された銀河 昴(ぎんが すばる)は、『全能なる瞳』が造り出した昴の『幻影』。
神をも欺く昴の能力は、使い方によっては『聖なる加護』の戦士達の中でも最も厄介な能力。
だからこそ、敵は3日後の総攻撃の前に銀河 昴(ぎんが すばる)の抹殺を試みたのだ。
「はぁはぁ………。」
(危なかった………。)
2つの危機を乗り切った昴は、『獣人族』の領地から離れ『加護の戦士達』がいる『妖精族』の領地を目指す。
星空 ひかり(ほしそら ひかり)と離ればなれになるのは予定外だが、今は逃げる事が先決である。そして『加護の戦士達』に……、ステラや神代 麗に敵の事を伝えなければならない。
このままでは
『加護の戦士達』は全滅する。
敵は『アルタミエル』だけではない。
どれくらい歩いただろうか。
見知らぬ土地で、異世界の住人達が昴の事を変な目で見ているが、今はそれどころではない。
太陽は地平線に沈み、昴はようやく『妖精族』の領地に辿り着いた。
『妖精族』の領地は『北の果ての地』から一番近い場所にある。
計画では、明日の朝には『加護の戦士達』は『北の果ての地』へ向けて出発する。
(間に合った…………。)
まだ時間はある。
あとは『加護の戦士達』が泊まっている建物を探せば良いだけだ。
『妖精族』は温厚な種族で戦闘を好まない。
そして何よりピクシー・ステラの産まれ故郷。
ステラは『妖精族』の王女なのだから、おそらく『戦士達』は妖精族の王族に関係のある建物にいる。
(探すのは簡単だ………。)
そして、数分も歩いた頃
昴の前に一人の男が現れた。
「!!」
「銀河 昴………。まさか俺の第三の目をも欺くとは思わなかったぞ。」
「貴様!!なぜ、ここに!?」
―――――――破壊の神
昼間の戦闘で昴の『幻影』によって逃げ切ったはず。
(なぜ、ここに居る………。)
「『全能なる瞳』か……、確かに『加護の戦士』達の中で警戒すべきはお前のようだ。しかし、それも、もう通じない。」
(通じない………?)
「いや、『アマテラス』の例もある。油断は出来ぬか。」
「アマテラス?何を言っている……。」
「異変が分からぬか、銀河 昴。」
「異変……だと?」
昴には、この男が何を言っているのかは分からない。しかし、そんな事はどうでも良い。
『全能なる瞳』
モード『幻影(ミラージュ)』
(奴が僕の幻影と話している間に逃げるだけだ!)
昴は能力を発動させて、『破壊の神』と名乗る男の前から姿を消す。
「………?」
すると、その男は銀河 昴の前に立ち塞がる。
「な!?」
「言っただろう、昴くん。君の能力はもう通じない。いや、能力は発動出来ない。」
「何だって!!」
「まだ気付かぬか。お前に『加護の能力』を与えた神『ゼウス』。全能神『ゼウス』は死んだのだよ。」
「!!」
「終わりにしよう。もはやお前を殺す事は、虫ケラを踏み潰すよりも簡単だ。」
「くっ!」
「『破壊の導(しるべ)』」
ゴゴゴゴゴゴゴゴォ!
その頃、『獣人族』領地では………。
「すばる!?」
星空 ひかり(ほしそら ひかり)の胸中に嫌な予感が走り抜けた。
銀河 昴
