Seventh World 悠久の大地の章
【聖戦編①】
創造神ガイアを初めとする『天界の神々』
神々には強大な力があり、敵対する者もいない。唯一『神々』に敵がいるとすれば、それは同じ『神々』である。
幾つかの戦争があった。
それは同族同士の戦争。
『神々』は自分の強さの証明の為に自分と同じ『神の一族』を殺して行く。
このままでは『天界』に平和は訪れない。
そう感じた『神々』は、天界に似せた『7つの世界』を創りあげる。
Seventh World(7つの世界)――――
「これでもう戦争は無くなるでしょう。」
創造神ガイアは安堵の表情を浮かべる。
ガイアは、これが大きな過ちであった事に気が付かない。自分達の縄張りが増える事は更なる争いが増える事を意味していた。
最初に行動を起こしたのは『天界の神々』の中でも最上位に位置する神『ルシファー』。
「これよりSeventh World(7つの世界)は我が支配下に置く。我に賛同する者は付いて来るが良い。」
ルシファーは狭い『天界』から抜け出しSeventh World(7つの世界)を自らの領土と主張したのだ。この時、多くの『神々』がルシファーに従い『天界』を去ったと言う。
そして、残された『神々』とルシファー率いる『神々』との間で大戦争が引き起こされる。
戦争は100年にも及び、なかなか決着が付かない。『ルシファー』の誤算は二人の神『ゴッドマリア』と『アマテラス』の存在であった。
「むぅ、マリアとアマテラス。あの二人がどうしても倒せない。このままでは『神々』は互いに疲弊し共倒れになる。」
劣勢を感じたルシファーは新たに『魔界』なる世界を創り配下の『神々』を引き連れてSeventh World(7つの世界)を後にした。
『天界の神々』は『ルシファー』とその配下の『神々』を『神の一族』から除名し、それ以来彼等は悪魔と呼ばれるようになる。
それから長い年月が流れた。
『天界の神々』は、ルシファーとの大戦争を反省し『神々』がSeventh World(7つの世界)に住む事を禁止する。
更に数千年の時が経ち『神々』はSeventh World(7つの世界)に干渉する事を許されなくなった。
それには幾つか理由がある。
ルシファーとの戦争で『神々』の数が絶対的に少なくなった事。
ルシファーが去った後もSeventh World(7つの世界)を巡る戦争が絶えなかった事などが考えられるが、真の理由は他にある。
人類の誕生である。
『神々』に似せて創られた人類は、予想以上に繁栄し強大な力を持ち始めた。
Seventh World(7つの世界)は『神々』の力を必要としなくても自力で発展する事が出来るよになった。『天界の神々』は『人類』にSeventh World(7つの世界)を託す事を決意する。
ガイアはこう考えていたのかもしれない。
『天界の神々』の後継者は『人類』しかいない。
実は『神々』は究極の問題を抱えていた。
ほぼ永遠の寿命を持つ『天界の神々』は生殖器が退化し子孫を造る事が出来なくなっていた。
だから『神々』は自らの後継者として人類を創ったと言う説もある。
更に長い年月が経ち
やがて『神々』はSeventh World(7つの世界)から姿を消して行った。
【聖戦編②】
「既に五つの世界が『化け物』どもに侵略されたにゃあ。」
奇妙な猫のような姿をした人物が男に話を切り出した。彼の名前はボムボム。結界により封印された『神々』に代わりSeventh World(7つの世界)を護る事がボムボムの役割である。
ボムボムは、『神々の聖戦(ゴッド・ジハード)』と呼ばれる組織を作り上げ『化け物』どもと戦う事を決意した。
ここは、その『神々の聖戦(ゴッド・ジハード)』の本部が置かれる小さな世界。『異世界管理事務局』と呼ばれる建物内部である。
「残る世界は2つにゃあ。この2つの世界を何としても護る必要があるにゃあ!」
ボムボムの話はこうだ。
突如として現れた『化け物』どもにより
フロントワールド
バックワールド
ユグドラシル
ヘスペリアス
アンダーワールド
五つの世界が侵略された。
それはあっと言う間の出来事であった。
何の予想も対策もしていなかった人類は、ほぼ無抵抗のまま『化け物』どもに駆逐されたと言う。
更に問題なのは『天界の神々』が封印されていると言う事実。何者かが造った『結界』により『天界』は隔離された。
ポムポムの話を聞いた二人の戦士が『異世界管理事務局』を後にする。
二人の戦士の名はジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世とリュウギ・アルタロス。何れも『神々』より特別は能力を与えられた『加護の戦士』。
「どう思う?」
口を開いたのはジェイス。黒いタキシードのような衣装に身を包んだ長身の戦士である。
「おかしいのぉ……。」
答えるのリュウギ・アルタロス。ジェイスよりも更に長身の巨漢の男は、驚く事に人間ではない。『妖狐の一族』と呼ばれる『亜人』の一種で、人間よりも優れた身体能力を持つ。
「俺様の故郷である『修羅の世界』を滅ぼしたのはお前達『天帝の加護』の戦士達。しかしポムポムはその事実を知らないようじゃ……。」
首を傾げるリュウギにジェイスは答える。
「知らないと言うより、そんな事実は無かったのではないのか?」
「何じゃと?」
リュウギがジェイスをギロリと睨み付ける。
「いや、落ち着けリュウギ。要するにこう言う事だ。」
ジェイスはゆっくりと自らの予想をリュウギに説明する。
1ヶ月前『聖なる加護』の戦士の一人であるシャルロット・ガードナーが『過去のアマテラス』を殺す為に旅立った。
『聖なる加護』の戦士達にすれば『寄生虫』を使ってSeventh World(7つの世界)を滅ぼしたアマテラスは憎むべき敵であろう。
そして、シャルロット・ガードナーは『過去のアマテラス』を殺す事に成功した。
「俺達の知っている歴史はこの世界には存在しない。ボムボムや他の人間達は『高天原(タガマガハラ)』の世界すら知らない。」
「ふむ。」
「そもそもアマテラスは、この世界には存在していないと言う事じゃな。」
「『天帝の加護』の戦士である俺が言うのも何だが、アマテラス様は遠い昔に既に死んでいる。俺の武器である『グラディウス』が突然消滅したのもそれが理由であろう。」
それでも解せない事が幾つかある。
リュウギ・アルタロスはその一つを口にする。
「アマテラスが居ないのであれば、なぜ『天界』の封印が解けないのじゃ。あの結界はお前達『天帝の加護』の戦士達と『アマテラス』の仕業じゃろう。」
アマテラスが存在しないのであれば、ジェイスの武器と同じく『天界』を封印している『結界』が解かれてもおかしくない。しかし現実には『天界』の封印はそのままであり未だに『結界』は解かれていない。
しかしジェイスはリュウギの予想とは違う返答をする。
「何を言っている?俺達は………、『アマテラス』様は『天界』を封印などしていない。」
「何じゃと?」
「『天界』を追放されたアマテラス様は『神々の一人』であるゴッドマリアと通じていた。何とかして『神々』を説得し共に『化け物』どもを倒す方法を模索していたのだ。」
「む………、それでは誰が『天界』を封印したのじゃ。」
「そうだな。」
ジェイスは少し考えてから話を続ける。
「おそらく、『アマテラス様』と『天界の神々』との共闘を邪魔している奴がいる。俺達『天帝の加護』の戦士達とお前達『聖なる加護』の戦士達を戦わせ共倒れになる事を狙っている奴が。」
そ奴こそ
『アマテラス様』が危惧していた男。
『天界の神々』の中に裏切り者がいると言う事だろう。
【聖戦編③】
「『破滅(はめつ)の右手』!!」
「『聖なる光』!!」
ビカビカビカッ!!
『アルタミエル』の魔法を真っ向から受け止めるのは夢野 可憐(ゆめの かれん)。
まだ幼い顔つきの少女『夢野 可憐(ゆめの かれん)』は、何を隠そう『天使の一族』の生き残りである。
『アルタミエル』を初めとする『化け物』どもは『聖なる光』の特殊なエネルギーに拒絶反応を示す。
(これは………あの時の光と同じ!?)
更に可憐は攻撃の手を緩めない。
「『大天使の剣』!!」
ビカッ!!
白く輝く『天界の剣』が可憐の右手に現れた。
アルタミエルは思い出す。
数百年前の戦闘でアルタミエルの上半身を消滅させた戦士の事を。
(あの男と同じ(聖なる)光に同じ剣!)
『聖なる光』によって創られた『大天使の剣』は、まさにアマテラスの『天帝の剣』と同じ性質を持つ。
「『静寂(せいじゃく)の左手』!!」
「!!」
バチバチバチッ!!
可憐の剣とアルタミエルの魔法が交錯し激しい火花が飛び散った。
ドッガーン!!
その爆風の隙を付いて攻撃を仕掛けるのは神代 麗(かみしろ れい)。
「『青龍』!!」
ゴゴゴゴォ!
神代 麗は、陰陽師の棟梁として五体の『霊獣』を操る巫女の戦士。『霊獣』の中でも最大の攻撃力を誇る『蒼き龍』が『アルタミエル』を攻撃する。
ギャオォーン!!
バシッュ!!
「ちっ!」
(こ奴ら………、なかなかの威力の攻撃をして来る。)
アルタミエルの下半身に付属する『従属』の一体がアルタミエルに言う。
「ここは引き下がるのが良いであろう。予想以上に奴らは強い。もっと『従属達』を集める必要がある。」
「仕方が有りませんね………。」
そしてアルタミエルは周りに群がる『化け物』達に命令する。
「ここは一旦戻ります!お前達、付いて来なさい!!」
この場にいる『化け物』どもの数はおよそ5千体。エミリーと呼ばれる戦士の魔法(メテオーラ)により半数が死滅していた。
それでも『アルタミエル』は笑みを浮かべていた。
既に大宇宙の大半は支配している。
『アルタミエル』に逆らう者は、もうこの世界(Seventh World)にしか存在しない。
ゆっくりと、確実に、残る2つの世界を侵略すれば良い。
(久し振りに面白くなりそうね…………。)
『化け物』どもの大群を引き連れて引き返す『アルタミエル』。
(そう。これで良いのです。全ては計画通り。)
その光景を見ていたアリス・クリオネは心の中でそっと呟く。
『天帝の加護』の戦士のリーダーであるアリス・クリオネには一つの目的があった。
カール皇帝とアマテラスの意志と能力を引き継いだアリス・クリオネ。
彼女は特別な存在であった。
アリスはこうなる未来を知っていた。
五つの世界が滅びた後に『化け物』どもの指導者『7つの大罪』の『アルタミエル』が現れる。この時点で、ようやく『天帝の加護』の戦士達と『聖なる加護』の戦士達は仲間になる事が出来る。
この時を待っていた。
『アルタミエル』を倒すには『聖なる加護』の戦士達の力が必要なのだ。
そして
最後のピース。
ここからが重要だ。
「追わなくて結構です!『聖なる加護』の皆さん!聞いて下さい!」
「アリスさん………。」
夢野 可憐(ゆめの かれん)が、神代 麗(かみしろ れい)が、そして李 羽花(リー・ユイファ)達も『加護の戦士達』がアリスの周りに終結する。
「今はまだ『アルタミエル』を倒してはいけません。」
「!!」
「どう言う事だ?」
質問をするのは銀河 昴(ぎんが すばる)。
昴は学生服に身を包む大学生。ほんの一年前までは平和な日本で暮らす一人の学生であった。
たったの一年で、昴の産まれた世界は崩壊した。『寄生虫』にしろ『化け物』にしろ、日本が崩壊した事実に変わりはない。
昴にとっても『アルタミエル』は倒すべき敵である。
そしてアリスは戦士達の顔を一人一人見渡した。
夢野 可憐
神代 麗
エミリー・エヴァリーナ
李 羽花
銀河 昴
星空 ひかり
ピクシー・ステラ
ここには居ないが、ジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世とリュウギ・アルタロス。
更には過去から戻って来るであろうシャルロット・ガードナーとチェリー・ブロッサム。
全ての『加護の戦士』の力が必要なのだ。
「皆さん、よく聞いて下さい。」
アリスはゆっくりと話し始める。
「私はカール皇帝の魔法により未来を知っています。」
「………未来?」
「どう言う事ですか?」
アリスはゆっくりと自らが経験した77の過去と未来の話をする。
「それでは………。」
口を開いたのは夢野 可憐。
「まだ世界は……、崩壊した五つの世界は助かるのですか?」
そう
よく考えたら、その結論しかない。
アマテラスの死により世界は激変した。
『アマテラス』は既に亡くなっており『高天原(タガマガハラ)』の世界も消滅した。
不思議な事にその事実を知っているのは『加護の戦士達』のみであり、この世界の他の人間には初めから『アマテラス』も『寄生中』の存在すら知られていない。
歴史は変わったのだ。
ならば……。
「そうです。」
更にアリスは話を続ける。
「この世界が本格的に『化け物』どもに侵略されてからまだ一年。一年前までは五つの世界は存在していた。今『アルタミエル』を倒しても『五つの世界』は戻らない。」
「そう言う事か………。」
昴はようやくアリスの本心に気が付いた。
「シャルロットは、『過去のアマテラス』を殺す事に成功した。歴史を変える事に成功したんだ。」
「そうね。」
星空 ひかりも昴と同じくアリスの真意を確信する。
アリス・クリオネがやろうとしている事。
それはあまりにも非現実的は作戦。
しかし、歴史が変わった事を知っている『加護の戦士達』にとっては、決して受け入れる事が出来ない作戦ではない。
いや、もうその方法しかない。
「もう一度、歴史を変えます。」
アリスは『加護の戦士達』に告げる。
「この後、シャルロットとチェリーが現代に戻って来るでしょう。シャルロットの能力『時の旅人』は他の誰にも扱う事が出来ない特殊能力」
「………。」
「しかし、この能力の発動には制限があります。本来であれば一度きりの能力。77の過去の歴史の中で私と出会ったシャルロットが言っていました。さすがに数百年前に戻る事はもう出来ないそうです。」
「それじゃあ…。」
「しかし、一年くらい昔に遡る事は可能だと。」
まだ五つの世界が崩壊する前。
一年前の『アルタミエル』を殺します。
「私はこの未来が訪れるのを数百年、待ち続けて来たのです。」
『天帝の加護』の戦士達と『聖なる加護』の戦士達が力を合わせれば
必ず倒す事が出来る。
「宇宙最強と言われたカール皇帝率いる『ラ・ムーア帝国』も『天界の神々』最強と言われた『天帝アマテラス』も為し得なかった。『7つの大罪』の指導者『アルタミエル』を
滅殺するのです。」
『天帝アマテラス』様と『天界の神々』から『加護の力』を授かった私達の使命。
これは―――――
――――――――――聖戦なのです
加護の戦士達