厚生労働相の不正統計問題にひとこと

最近話題になっている不正統計問題で気になる点が一つあるので、たまには真面目な話を……。

アベノミクスにより(実質)賃金が上がっていると言うのは嘘。本当は下がっていた?


と言って非難する
マスコミ

このロジック全くおかしい事にマスコミは気が付かない。

おそらく安部総理も知ってか知らないのか、仮にアベノミクスが始まって実質賃金が上がったと言うなら、これは一般的な統計上では嘘に決まっている。

なぜなら、経済学上では、景気が回復して失業率が減少すると

平均賃金は下がるからです。



これを誰も指摘しないから、おかしな事になる。


理由は簡単。
平均賃金には失業者は含まれていないから。


給料が無い完全に失業している人は賃金が無いから平均賃金にも実質賃金にも名目賃金にもカウントされない。



景気回復と賃金の関係を順を追って説明すると

①アベノミクスにより景気が回復する。(需要の増加)

②企業は生産量を増やすから人手不足。(供給不足)

③人手不足だからパートやアルバイトを増やす。(失業率の改善)(供給増加)

④パートやアルバイトに給料を払う。
※当然に正社員よりは給料が低い。

⑤給料の低いパートやアルバイトが増えたから平均賃金は下がる。(平均賃金の減少)←ここがポイント

⑥それでも人手不足(供給不足)で人材確保が必要。

⑦パートやアルバイトを正社員として採用。

⑧新しく正社員となった人の給料が上がるには何年も何十年も掛かる。(平均賃金の上昇)


と言う流れです。

ポイントは、所得ゼロの失業者は平均賃金にカウントされないけれど、パートやアルバイトは平均賃金にカウントされること。

雇用が産まれて失業率が減ると平均賃金が下がるのは当たり前。

しかし、労働者の賃金が下がっている訳ではない。


平均賃金と
一人ひとりの賃金が上がったか下がったか?

と言うのは
全くの別物なんです。

(まぁ実際は上がってないとおかしいんだけど。)



それを説明せず、アベノミクスにより実質賃金が上がったなどと言うからおかしくなる。
統計上は上がる訳がないんですよ。
景気が良くなってから平均賃金が上がるまでは長い年月が必要なの。



分かりやすく説明すると

五人の国民がいるとします。

年収は
①賃金1300万円
②賃金800万円
③賃金600万円
④賃金300万円
⑤失業中

この場合の平均賃金は(1300万円+800万円+600万円+300万円)÷四人=500万円

平均賃金500万円
失業率は20%

となります。


ここでアベノミクスにより景気が回復すると

年収は
①賃金1350万円
②賃金850万円
③賃金650万円
④賃金350万円
⑤賃金200万円(パート)

この場合の平均賃金は(1350万円+850万円+650万円+350万円+200万円)÷五人=480万円

平均賃金480万円
失業率ゼロ(完全雇用)

となります。


あら不思議
平均賃金は下がっているのに、①から⑤の国民全ての賃金が上がっています。←ここ重要

不思議ですよね?平均賃金が下がってるのに全員の賃金が上がっているなんて……??



要するに失業率の減少と平均賃金の減少は同時に進行するんです。

統計上の賃金が下がっている様に見えるのは、その計算方法にカラクリがあるからですね。


そして、完全雇用が実現してパートやアルバイトが正社員になり給料が上がりはじめて、初めて平均賃金が上昇する。

その年度によって平均賃金を算出する場合の分母が違うんだから統計としては不正確なのね。それを比べるからおかしくなる。

仮に正しく賃金の増減を知りたいなら、現在の平均賃金の算出方法ではなく、ある一定の時期の正社員の平均賃金を求めて、その同じ人の数年後の平均賃金で計算しないと正確には分かりませんよ。(新しく採用となったパートやアルバイトの所得を平均賃金に加えると下がるのは当然だから。)



そして、ついでに経済学の基本を言えば、少子高齢化により労働人口が減少しているのだから、企業は人材を確保する為に給料を上げるのは当たり前。

上の例で見てわかる通り、平均賃金は下がっても、一人ひとりの給料は間違いなく上がっていますよ。

これは断言しても良い。そうしないと企業は成り立たない。(人材確保出来ない。)

今は労働者の売り手市場であって、企業の買い手市場ではないんだから。疑問の余地すらない。



そもそも

統計上の

平均賃金とか
名目賃金とか
実質賃金とかは

一人ひとりの所得の増減を反映したものでは無い
それを理解しないと、マスコミも政治家もおかしな主張を言う事になる。



経済学上では

景気が回復し

失業率が減って

平均賃金が減少する事は

非常に喜ばしい事です。

少なくとも初期の段階ではね。


これは、アベノミクスにより景気が回復している証明なのに、批判する意味が分かりません。



もっとも、それをきちんと説明しない政府も、政府に忖度して(?)不正統計した厚生労働相も問題です。(もしかして、政府も理解していない?)



私に言わせれば

政府も厚生労働相も、野党もマスコミも、全く経済学の知識が無い的外れな事を言っている。


もう少し経済の勉強をして欲しいものです。


終わりに、ネットで見つけた雇用と経済の関係のグラフを添付します。

景気が回復し、失業率が減少したら賃金が一定の時期までは下がる事が分かりますね。

C地点までは(統計上の)賃金が下がり、更に需要過多になって初めて(統計上の)賃金が上昇する。

でも、その前に(実際の)一人ひとりの賃金が上がってるから、このグラフのようにる。

(実際の)一人ひとりの賃金が下がってたなら、下の図で言えば左に向かって行くはず。今は右に向かっているでしょう?

そう言う事です。