Seventh World 始まりの地の章
【帝国の逆襲編①】
ドドドドッ!ドッガーン!!
「!!」
ここは『帝都アレキサンドリア』の中央にそびえる宮殿。
『アレキサンドリア宮殿』
カール・D・アレキサンドリア皇帝の耳に飛び込んで来た爆発音は尋常ではない。
「何事だ!敵襲か!」
カールは急いで状況を確認する。
数分後に現れたのは『ラ・ムーア帝国特別魔導師団』団長ニャローム・ニャハルーザ。
ニャローム・ニャハルーザとはふざけた名前であるが、彼は『ラ・ムーア帝国』配下にある『惑星ニャハルーザ』の由緒正しき王族。
名前だけでなく猫のような耳『ネコ耳』もふざけた印象を与える。
「カール皇帝陛下……。実はにゃ………。」
ニャロームは、ゆっくりとその事実を報告する。
「フレアちゃん拘束の為に派遣した、我が『特別魔導師団』の魔導師達がにゃ………。」
全滅したにゃー!
「なに!?例の反乱軍に殺られたのか?」
「それは違うにゃ!突然現れた二人組の女の戦士。その一人が爆弾を持ち合せていたようだにゃ!」
「爆弾だと?あれほど巨大な爆発を起こす爆弾など、宇宙艦隊の主砲クラスではないか!そんなものをどうやって持ち込んだのだ!」
「分からんにゃあ……。更に都合が悪い事に……。」
「なんだ……?まだあるのか?」
「にゃあ。104地区にある最重要軍事施設『マジック・フィールド発生装置』のある施設が……。」
にゃんと!
襲撃を受けたにゃあ!!
「な!バカな!お前は何をしていたのだ!」
「すまぬにゃあ………。天気が良かったので、昼寝してたにゃあ………。」
「な………。『特別帝国魔導師団』の団長であるお前が、この一大事に……。」
「分かっているにゃあ。この責任を取って、私自ら行って来るにゃあ。」
ニャロームはすっと立ち上がり王宮の間を後にする。
「むぅ……。1000年の歴史を誇る『ラ・ムーア帝国』で、こんな事は初めてだな。」
苛立ちを隠せないカール皇帝。
すると、カールのいる王宮の間に一人の女性が姿を表す。
「どうやら動き出したようですね。」
「聞いていたのか…………アマテラス。」
「あなたらしくもない。何を焦っているのですか?」
このアマテラスと呼ばれた女性は、正確には女性でも男性でもない中性の生命体であるのだが、カール皇帝は一環してアマテラスを女性として扱っていた。
「うむ……。それを言うな。私には時間が無いのだよ。」
カールは、寂しげにアマテラスに返答する。
「時間が無い………?」
アマテラスはカールに質問をする。
「1000年の時を生きるあなたに時間が無いとは、おかしな事を言う。まさか……」
『不老不死』の魔法が解けるのですか?
『ムーア人』の寿命は平均して300年程度。
しかし、大魔導師カール・D・アレキサンドリアは1000年も昔に『禁断の魔法』を生成するのに成功した。
すなわち
――――――――『不老不死』の魔法
この魔法はカールにしか扱えない。
カールは『不老不死』の魔法の生成方法を誰にも教えた事がない。
「アマテラス。お前にだけは話して置こう。私の寿命は持って半年。いや、そこまで持つかどうか………。」
カール皇帝が夢見た楽園。
1000年の時を経て宇宙最強とまで言われるようになった『ラ・ムーア帝国』。
その帝国が建国以来、最大の危機を迎えている。
「私が死んだらこの帝国はどうなる?このままでは未知の『化け物』どもに喰い尽くされるであろう。」
「そうですか……。」
アマテラスは淋しげに
しかし、優しく話し掛ける。
「それで、あの少女をお造りになられた。人工生命体『アリス』は言わばあなたの分身。あなたが死んだ後に『ラ・ムーア帝国』を護る為の魔導兵器。」
アマテラスの見解にカールが答える。
「アリスもそうだが、お前に一つ頼みがある。『ラ・ムーア帝国』の人々を救えるのはアマテラス。お前しかいない。」
「頼み……でしょうか?」
「うむ。」
…………。
「!!」
……………。
「そのような事が実現可能なのですか。」
驚きを隠せないアマテラスにカールは告げる。
「お前に私の秘伝魔法『不老不死』の魔法を教えよう。その魔法を応用すれば実現可能だ。」
人類は
『魂』さえあれば――――――――
――――――――生き永らえる事が出来る
頼んだぞ、アマテラス。
『高天原(タガマガハラ)』の世界を創れるのはお前しかいない。
【帝国の逆襲編②】
「女………。何をしに来た?」
シェン・リーフェイが、天居を突き抜けて落ちて来たシャルロットとフレアに質問する。
「痛ったぁ。シャルロットさん無茶し過ぎ……。」
「何を言ってるの?空を飛んだのはフレア。あなたの魔法よ?」
シェンを無視して会話を続ける二人。
「ふん。まぁ良い。どのみち生かすつもりは無い。」
シャキィーン
鋭い光沢を帯びたそのサーベルは、真っ直ぐに二人の女性に向けられた。
細長い剣
古今東西、細身の剣を扱う戦士は強者が揃っている。
なぜなら、巨大で強力な剣の方が戦闘に於いては圧倒的に有利だから。
まともにカチ合えば、細身の剣では巨大な剣には歯が立たない。簡単にへし折られる。
だからこそ
細身の剣を扱う戦士は強い。
シャルロットは瞬時にそう判断し相手の戦士(シェン・リーフェイ)を警戒する。
「ちょっと!あなたこそ、ここで何をしているのよ!ここをどこだと思っているの!」
そう叫ぶのはフレア・セフィリア。
『ラ・ムーア帝国』を護る絶対防御魔法『マジック・フィールド発生装置』
軍の最高機密である、この施設に侵入するなどただ者ではない。
「あなたが反乱軍のボスなのね!」
そう叫ぶや否やフレアは魔法の詠唱を始める。
もう自分が『帝国特別魔導師団』に追われている事など頭から抜けている。
ここは、『惑星ムーア』を護る為の最重要施設。『治安部隊』の一員として、侵入者を見過ごす訳には行かない。
「フレイム・バスター!!」
ボボボボボッ!!!
先手必勝!
炎の魔法は得意中の得意!
フレアの『炎の魔法』がシェン・リーフェイに向かって飛んで行く。
それが
シャルロットとシェンの
戦闘の合図となった。
「高速剣!!」
フレアの炎の間からシャルロットのレイピアがシェンに向けて放たれた。
フレアの判断は正しい。
戦闘に於いては先手を取る事が重要である。
圧倒的に実力差があるのなら話は別である。
が、シャルロットは直感する。
この男(シェン・リーフェイ)からは、何か得体の知れない気配を感じる。
人間とは別の何か
例えるなら『ワールド』の世界で対峙した
――――――――『悪魔』
「炎龍の舞い……。」
「!!」
バシュッ!バシュッ!バシュッ!
ボワッ!!
刹那
シャルロットの目の前に巨大な『炎の龍』が現れる。
「!!」
「きゃあっ!!」
「フレア!掴まって!!」
危機一髪、フレアの手を引っ張り後方へ飛び退くシャルロット。
「ほぉ。よくかわしたな。見事なものだ。」
そう嘘ぶくシェン。
(………………。)
既に『炎の龍』の姿は無い。
(錯覚………?いや、幻覚か…………。)
ロンと同じく龍(ドラゴン)を召喚したにしては、あまりに不自然。
この狭い室内で巨大な龍を召喚出来るとも思えない。
「シャルロットさん………。今のは………魔法?」
フレアも似たような感覚なのであろう。
実体があったのか。
ただの幻覚か。
しかし、シャルロットが驚いたのは、そこではない。
先に放たれたシャルロットの『高速剣』。
シェン・リーフェイは
その全ての剣を弾き返した。
「フレア……。下がっていなさい。」
「…………!?」
「どうやら、あの男は本物のようです。」
そして
シャルロットの口元から笑みが溢れる。
「シャルロットさん………。なぜ………笑っているの?」
不思議に思ったフレアが尋ねると、シャルロットはおもむろに答える。
「そうね………。」
もしかしたら彼は
私の本気を引き出してくれるかもしれない。
本気で戦えない私は死んだも同然。
そんな、悪夢から解き放ってくれるなら
これほど
――――――――嬉しい事は有りません
フレアは思う。
(やっぱり、この人(シャルロット)は少しおかしい………。)
【帝国の逆襲編③】
『ラ・ムーア帝国特別魔導師団』団長。
ニャローム・ニャハルーザ。
見た目も皇帝陛下への態度もふざけた印象のニャロームであるが、彼が魔導師団の団長になったのには理由がある。
通称『千色(せんしょく)の魔導師』
彼の魔法の特徴は、その豊富な種類にある。
炎・水・風・光・闇・時間・空間
一般的には、魔導師には得意の魔法があり、一人で数種類の属性の魔法を扱う事は出来ない。
しかし、ニャロームは、およそ考えられる あらゆる種類の魔法を使いこなす。
それが
『ラ・ムーア帝国』の魔法科学の真髄。
その実力は、今やカール皇帝を凌ぐとまで言われている。
ピクンッ!
「にゃ?」
『マジック・フィールド発生装置』のある104地区に辿り着いたニャロームは、愛嬌のある『ネコ耳』をピクリと動かした。
「にゃにゃ?これは好都合だにゃ。」
ニャロームの当面の目的は、軍事施設に侵入した賊を倒し『マジック・フィールド発生装置』を守る事。
しかし、ニャロームは、そこでもう一人の重要人物を発見する。
(この気配は、フレアちゃんにゃあ!)
「にゃは!」
カール皇帝がお怒りになった2つの失態。
フレアちゃんの拘束失敗。
そして『マジック・フィールド発生装置』施設への賊の侵入。
帝国を預かる『帝国魔導師団』の団長としては、立場的に非常にマズイ状況なのだが、上手く行けば、どちらの任務も遂行する事が出来る。
「これはラッキーにゃあ!」
これより、帝国最強の魔導師『ニャローム』の逆襲が始まる!
しかし
「ふにゃ?」
問題は
この(軍事施設)の中から発せられる2つの気配。
(にゃんと!?いつからここは『化け物』の住み処(すみか)になったにゃあ?)
宇宙最強を誇る『ラ・ムーア帝国』には強力な戦士が星の数ほどいる。
その中でも、選りすぐりの魔導師を集めたのが『帝国特別魔導師団』。
日頃から強力な魔導師達と接しているニャロームは、大抵の事では驚かない。
しかし
この中から感じられる気配は尋常ではない。
しかも、それが2つあるのだから流石のニャロームも迂闊には踏み込めない。
「にゃるほど………、さては……」
先に派遣した『帝国特別魔導師団』の団員30名を皆殺しにしたのは、コイツらか………。
勝手に納得するニャローム。
(さて、どうするかにゃ?)
じっと中の様子を伺うニャローム。
どうやら中にいる二人の戦士は、お互いに敵同士。こうしている今も戦っている様子である。
(二人同時に相手をするより、勝ち残った方を倒す方が楽だにゃあ………。)
「ここは、待機にゃあ!」
その日は、ぽかぽか陽気のとても天気の良い日であった。
「ふにゃあぁ……。ねむ………。」
そしてニャロームは
この日
二度目の昼寝をする事にした。
「むにゃ、むにゃ…………。」
『ラ・ムーア帝国特別魔導師団』団長。
『惑星ニャハルーザ』の次期国王。
ニャローム・ニャハルーザ。
通称『千色(せんしょく)の魔導師』
人は彼を
――――――――『お気楽な猫』と呼ぶ。
ニャローム・ニャハルーザ