Seventh World 高天原(タガマガハラ)の章
【絶望編①】
なぜ、アリス・クリオネが生きているの!?
確かにステラは、『空間断絶魔法』でアリスを宇宙の果てへと吹き飛ばした。
酸素の無い『宇宙空間』
その状態から生きて戻って来るなど有り得ない。
そしてアリスは、確かに言った。
『天帝の加護』と『聖なる加護』の戦士達が、共に『化け物』どもを向かえ討つと。
『化け物』ども??
この『高天原(タガマガハラ)』の世界に、『化け物』どもが向かっていると言うのだろうか?
「ステラ………。」
理解の追い付かないステラに可憐は言う。
「理由は分かりませんが、アリスは私達と同じ答えに辿り着いたようです。」
「同じ………答え。」
「私達は敵ではない。本当の敵が他にいる事を……。」
『天帝アマテラス』が、一度は諦めた『7つの大罪』の『化け物』どもとの全面戦争。
――――2つの選択肢の一つ。
Seventh World(7つの世界)の住人達を、偽りの世界(タガマガハラ)に閉じ込めるより
『化け物』どもを駆逐する戦い。
「私達は『天帝の加護』の戦士達と共闘出来ます!早くシャルロットさんに伝えなければ!」
『過去のアマテラス』を殺すのではなく、説得しなければならない。
「ダメよ可憐……。」
「………?」
「例えアリス・クリオネが味方になったとしても、ユイファには勝てない。」
「…………。」
「姿を見せたのはアリスの過ち。ユイファに存在を認識されてしまったわ。」
「!!」
「アリス・クリオネも操られる。状況は何も変わっていないの。ユイファの能力を破らない限り、強大な敵が増えたに過ぎない。」
『万物を操る能力』の前では
―――――――私達は無力に等しい。
【絶望編②】
(随分と待ったわ………。)
アリス・クリオネは思う。
そもそもアリスは
『化け物』どもと戦う為に造られた人工生命体。
人間の魂を守る為の行動など性に合わない。
アリス・クリオネは、そっと呟く。
――――――――能力解放
ピキィーン!
戦場に甲高い電子音が鳴り響いた。
アリス・クリオネの脳内に組み込まれた記憶(データ)が、長い年月を経て解放される。
それは、ラ・ムーア帝国皇帝
カール・D・アレキサンドリアの記憶。
ラ・ムーア帝国の魔法科学の粋を集めて造られた戦闘兵器の力が……
――――――――ようやく解放される。
「もう一度、言いますユイファ。アルテミス神の洗脳が解けないならば、私は貴女を殺さなければなりません。」
「ふふ……。」
李 羽花(リー・ユイファ)は答える。
「私の世界『ユグドラシル』。その世界を消滅させた張本人である貴女(アリス)が何を言っているのかしら?」
「…………。」
「私は私……。私は偉大なる『エルフの一族』の王女です。神聖なる『エルフの森』に侵入した者は『天帝の加護』の戦士も『聖なる加護』の戦士も関係ないの。」
全ての侵入者を抹殺します。
それがアルテミス神様より授かった
――――『エルフの一族』の使命。
ゴゴゴゴゴゴォ!
「どうやら……、手遅れの様ですね。」
ビビビッ!
ピキィーン!
またしても、甲高い電子音がアリスの身体から発せられる。
「一撃で仕留めましょう。貴女は私達の敵。カール皇帝の無念を晴らす為の戦い。『化け物』どもに組する貴女は、殺す必要が有ります。」
「ふふ……。」
またしてもユイファは笑う。
「アリス……。貴女には私を殺す事が出来ない。『万物を操る能力』がある限り、私は無敵なのです。」
『エルフの森』での戦闘に於いて、エルフの王族に勝てる者など存在しない。
「そうね……。」
「…………。」
「『7つの大罪』の『化け物』は、人間の体内に侵入し人間を喰らい尽くす。私は、その『化け物』と戦う為に造られた人工生命体。」
「…………。」
「私には、外部からの干渉を一切受け付けないプログラムが埋め込まれています。」
私には、貴女の能力。
『万物を操る能力』は通用しません。
「!!」
神代 麗
リュウギ・アルタロス
ピクシー・ステラ
誰でも構わない。
「アリス・クリオネを殺しなさい!!」
ビキビキビキビキッ!!
触れたもの、全てを分解する特殊魔法
――――――――『マシュラ』
アリスの持つ黒い傘の先端から激しい光が発っせられた。
先程のステラとの戦闘の時とは比べものにならない超エネルギー。
ビカッ!!
バチバチバチッ!!
「くっ………。」
アリス・クリオネの解放された力は
アルテミス神の力
――――――――神をも凌駕する
「さようならユイファ。あなたを倒すのは、あなたを『天帝の加護』の戦士に受け入れた私の責任です。」
『天界の裏切り者』に
―――――――――――死を
【絶望編③】
アリスの攻撃は、膨大なエネルギーとなり膨れ上がりユイファを包み込むように広がった。
逃げ道を失ったユイファを守るものは何も無い。
バチバチバチッ!
と、その時
ユイファの顔が、幼い少女の顔へと変化した。
(……………?)
気高い『エルフの一族』の王女
プリンセス・リーナの面影が消え失せた、ユイファが声を発する。
「可憐!!助けて下さい!!」
「ユイファ!」
「!?」
解放されたアリス・クリオネの強大な魔導の力を防ぐ事など出来ない。
それほど強大なエネルギー。
その強大な力に対抗出来る者。
この場で、アリスの力に匹敵する程の能力者は一人しかいない。
神をも上回ると言われた『聖なる力』を持つ古代の四大天使達。
ミカエル
ガブリエル
ラファエル
ウリエル
夢野 可憐(ゆめの かれん)の『聖なる力』は、古代の四大天使にも匹敵する。
バチバチバチッ!!
ボッカーンッ!!
「なんで…………。」
ピクシー・ステラは言う。
「可憐……なんで、ユイファを助けるのですか!」
可憐は答える。
「そんなの決まっています。」
――――――――ユイファは友達だから
ぐほっ!
「バカな………。」
アリスの身体を貫くのは
リュウギ・アルタロスの手刀。
「邪魔をされては困るのぉ。今、俺様は神代 麗(かみしろ れい)と戦っている最中じゃ。」
ドサリとその場に倒れ込むアリス。
「ふふ……。」
「………?」
ユイファは言う。
「ありがとう可憐。」
「………。」
「あなたなら、きっと助けてくれると思っていました。」
「……………ユイファ?」
「『アルテミスの槍』!!」
ブンッ!
ユイファの右手に真っ黒な巨大な槍が現れる。
「可憐……。いかに強大な力を持つ『天使』である貴女でも、私には逆らえない。」
「……ユイファ。あなた……。」
『万物を操る能力』の前では
あなたは私の言いなりなの。
「危ない!可憐!!」
ピクシー・ステラが叫び声を上げる。
あぁ
ステラは思う。
ユイファを助けた可憐。
可憐は自らの意思でユイファを助けたのか。
それとも
ユイファに操られていたのか。
グサッ!!
『アルテミスの槍』が
夢野 可憐(ゆめの かれん)の身体を貫いた。
もう
誰にも
李 羽花(リー・ユイファ)を止める事が出来る者はいない。
夢野 可憐
