Seventh World 高天原(タガマガハラ)の章

【シヴァの思惑編①】

『五神開衢(ごしんかいえい)!!』

ビカビカビカッ!!

四体の陰陽師の守護神達が『白澤(ハクタク)』の宿る『緋炎剣(ひえんのつるぎ)』に力を与える。

神代一族(かみしろのいちぞく)に伝わる秘奥義の中でも秘伝中の秘伝の技。

「くっ!こんな技!悪魔と化した私に通じるとでも!」

リザ・チェスターは残りの魔力を振り絞り麗の技に対抗する。

バチバチバチッ!!

「なっ!?」

しかし

五体の霊獣の力を得た『緋炎剣(ひえんのつるぎ)』は、正に天地を割く程の勢いでリザ・チェスターの身体を真っ二つに引き裂いた。

「ギャアァアァァ!!!」

強大な魔力を誇る悪魔でさえ、あがなう事の出来ない必殺の剣。

「リザッ!!」

思わず叫び声をあげるのはジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世。

今は悪魔として敵対しているとは言え、リザ・チェスターは同じ『天帝の加護』を持つ仲間。

アリスを除けば、リザはジェイスに次いで『天帝の加護』の保持者となった長い付き合いである。

複雑な想いを胸にジェイスは『浄化の力』によって消え行くリザを眺めていた。

リザ・チェスター

そして、シリュウ・トキサダ

『天帝アマテラス』に加護の力を与えられた仲間達が次々と殺されて行く。

(『聖なる加護』の戦士達の力が、これほどとは………。)


アリス………

なぜアリスは『聖なる加護』の戦士達を『高天原(タガマガハラ)』の世界に招き入れたのか。

(くっ!どこにいるアリス!早く来い!)

ジェイスは思う。

『天帝の加護』の戦士達の中でも、最上位の力を持つのはアリス・クリオネとチェリー・ブロッサム。

その二人がいない状況では『聖なる加護』の戦士達に対抗するのは難しい。

いや

それより

ゴゴゴゴゴゴォ

ジェイスは『高天原(タガマガハラ)』の広大な空を見上げる。

『聖なる加護』の戦士達だけでは無い。

サタナキアによって破壊された『結界』。

もはや、この世界を守るものは無い。


悪魔の王族サタナキア

『聖なる加護』の戦士達

そして『7つの大罪』の『化け物』ども


状況は


最悪だな。





【シヴァの思惑編②】

「結界??それでサタナキアとやら……。どれほど強くなったのかのぉ……。」

この俺様が確かめようぞ!

ビュッ!!

身長2メートルを越すリュウギ・アルタロスの巨体が、疾風の如く戦場を駆け抜ける。

Seventh World(7つの世界)広しと言えど、これほどまでに戦闘能力に恵まれた戦士も珍しい。

サタナキアとの間合いを一瞬で詰めたリュウギ・アルタロスは力任せにサタナキアの頭部を凪ぎ払う。

ドバッ!!

「!?」

(むぅ………?)

グニャリ

サタナキアの頭半分が粘土細工の様にひしゃげ曲がる。

ドンッ!!

「ぐほっ!」

次の瞬間、サタナキアが放った魔力の弾丸がリュウギ・アルタロスの腹部を直撃した。



「………ほぉ。」

サタナキアはリュウギを見て少し驚いた。

「この至近距離からの魔弾を受けても死なぬとは、なかなかタフな奴だ。」

「ぐっ!」

ズサッ!

危険を感じたリュウギは、即座にサタナキアとの距離を取る。

(何と重たい一撃か………。俺様の『妖気の膜』が無かったら一溜りも無い。これは、俺様以外の戦士では荷が重いかのぉ。)

「リュウギ!」

すかさずリュウギの元に駆け寄る神代  麗(かみしろ  れい)。

「あの者(サタナキア)は只者では有りません。ここは私に任せて下さい!」

「ふむ……。」

あの悪魔(サタナキア)を前に全く臆する所が無い。

(この女子(おなご)も大したものだ。リザ・チェスターとの戦闘を終えたばかりだと言うのにサタナキアまで一人で倒すつもりかのぉ。)


すると今度は、右の方からジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世が二人の『聖なる加護』の戦士に声を掛ける。

「三人だ……。三人であいつ(サタナキア)を倒す。同時にやれば流石の悪魔(サタナキア)も防ぐ事は出来まい。」

「………。」

「分かりました。何より悪魔は私達の共通の敵。まずは私達三人で」


サタナキアを倒す


『聖なる加護』の戦士

神代  麗(かみしろ  れい)
リュウギ・アルタロス

加えて『天帝の加護』の戦士

ジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世


三人の戦士が悪魔の王族サタナキアに立ち向かう。


ゴゴゴゴゴゴォ!

「グラディウス!!」

ズサッ!

バキッ!

「緋炎剣(ひえんのつるぎ)!」

ビュン!

ズパァッ!

「!!」

「危ない!!」

ドドドドドドッ!!

「ふん……。三対一でこの程度か。」

不敵に笑うサタナキア。

「ちっ!」

ドバババッ!

ビュッ!

「どりゃあぁぁぁ!!」

ドガッ!

バシュッ!


サタナキアと『加護の戦士達』との壮絶な戦闘を見ていたレイヴン・パルテノは、そっと夢野  可憐(ゆめの  かれん)に告げる。

「可憐さん……。巻き込まれないように下がっていた方が良い。もはや、あの戦いは人間の限界を越えている。」

「しかし……。」

心配そうな可憐にパルテノは話を続ける。

「見てください可憐さん。悪魔(サタナキア)との戦闘は我々の勝ちです。」

「………?」

パルテノが指を指した方向。

そこには、『天帝アマテラス』の分身(アバター)であるバロームがひっそりと立っていた。

「どうやら間に合った様ですね。」


ゴゴゴゴゴゴォ!

バロームはアマテラスの身体の一部から創られた神の分身(アバター)。

広大な『高天原(タガマガハラ)』の世界を監視する為に無限とも言える数に分散されたアバター達は、一体一体は何の力も発揮出来ない人形に過ぎない。

しかし

その分散されたアバター達が最初の一体に集約されると。

ゴゴゴゴゴゴォ!


「!!」

「!?」

「ほぉ……、これは凄いのぉ。」


これが『天界の神々』が怖れる『天帝アマテラス』の力。

神々の中でもトップクラスの能力を誇るアマテラスの身体から創られた分身(アバター)の、その圧倒的なエネルギーは


悪魔の王族


サタナキアをも上回る


ビカビカビカッ!!





【シヴァの思惑編③】

天界

天界より『高天原(タガマガハラ)』での戦闘を眺めていたゼウスは、隣にいるシヴァに告げる。

「アマテラスめ……。やはり只者では無い。みたかシヴァよ……。悪魔の中でも五本の指に入ると言われる大悪魔サタナキアが、アマテラスの分身に圧倒されておる。」

「うむ………。」

ゼウスの言葉を聞いたシヴァの口元がニヤリと笑う。場違いなその表情にゼウスは少し疑念を抱いた。

「………?どうしたシヴァ。何がおかしい。アマテラスは我々の敵であるぞ。」

『天帝アマテラス』は神々に逆らった反逆者。

『天界』の神々を結界の中に封印し、神々の行動すら奪ったアマテラスは、何としても倒さねばならない。

そのアマテラスの分身(アバター)であるバロームも倒すべき敵である事に違いは無い。

その分身(アバター)ですら脅威の力を秘めているのに、本体であるアマテラスはどれ程強いのか。

懸念するゼウスに創造と破壊の神『シヴァ』は答える。

「ゼウス殿。逆ですよ。」

「………逆?」

「そうです。分身(アバター)であるバロームが強ければ強いほど、本体であるアマテラスの力は弱まっている。」

「………む」

「自らの力を分身(アバター)に与えたのだから当然でしょうな。更にアマテラスは『加護の力』を七人の戦士に与えている。我々でさえ『加護の力』を与えたのは一人の神に付き一人の人間。」

「確かに………。『天界の神々』の中でも最上位の力を持つアマテラスの力が弱まっていると言う事か………。」

「ゼウス殿。全ては私の予想通り。今までアマテラスが戦場に現れず、『天帝の加護』の戦士達に任せていたのには理由がある。」


アマテラスの『聖なる力』は


既に枯渇している





「そして都合が良い事に見て下さい。」

「……?」

「サタナキアの奴が最後の悪足掻きをしています。」

「おぉ。」

「勝てないと見たサタナキアが自らの命を削ってアマテラスの分身(アバター)を道連れにしようとしている。我々にとっての脅威となる分身(アバター)も、ここで消滅する。」


この戦い


我々の勝ちですな




(『高天原(タガマガハラ)』の世界を覆うアマテラスの『結界』が破壊され、悪魔ともどもアマテラスの分身(アバター)が消滅する。何もかも私の思惑通り。後は最期の計画を実行に移すのみ……。)



そして、また

シヴァはニヤリと笑う。




リザ・チェスター(左)
神代  麗(右)