Seventh World 高天原(タガマガハラ)の章
【乱入者編①】
ビキィーン!!
「!!」
レイヴン・パルテノの巨大な黒鎌。
死神の鎌を彷彿させるその鎌は、瞬時に敵の背後に現れ首を切り落とす。
闇の聖霊『ゼノア』に気を取られていたジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世が、その鎌に反応出来るとは思えない。
パルテノはジェイスに悟られぬよう、一瞬にして攻撃を仕掛けた。
鎌に気が付いたと時は既に遅い。
それほど素早い攻撃。
ビキィーン!!
「!!」
しかし―――
パルテノの黒鎌は、ジェイスが持っていた真っ黒な剣に阻まれる。
「何だ!あの剣は!!」
思わず叫んだのはレイヴン・パルテノ。
剣はジェイスの意思とは関係なく動いたように見えた。
いや、間違いなく黒い剣は勝手に反応した。
なぜなら、ジェイスの右手には黒い剣は握られていない。
――――――暗黒剣『グラディウス』
それが、その剣の名前。
その剣は自ら意思を持つように、パルテノの鎌を防御すると、そのまま黒鎌をへし折った。
バキィーンッ!!
「ちっ!失敗か!ゼノア!一旦戻れ!」
天地を覆っていた闇の聖霊『ゼノア』が、レイヴン・パルテノを守るように立ち塞がる。
「ほぉ、なかなか良い判断だな。『グラディウス』の次の行動は、お前への攻撃。危なかったな。」
「くっ………!」
レイヴン・パルテノの攻撃は、『ゼノア』による腐食と黒鎌による切断。その両方を防がれるなど、かつて経験した事がない。
(だいたい、あの剣(グラディウス)は何なんだ?)
焦りと疑念を持つパルテノの心を見透かすように、ジェイスは『グラディウス』に話し掛ける。
「『グラディウス』よ。あの男、お前の事を知りたいらしい。」
「………!?」
「教えてやろう。『グラディウス』こそラ・ムーア帝国の戦士達の産まれ変わり。」
「産まれ変わり?何を言っている………。」
「我が『天帝の加護』の能力。『魂転生』により復活した真の戦士達なのだ。」
そう
『グラディウス』は
貴様の黒鎌などでは破壊出来ぬ。
―――――――――最強の剣
あの日
俺は絶望の淵にいた。
仲間達は全て『化け物』どもに殺された。
「アマテラス………、この俺を助けて何を望む。」
「そうですね……。」
女性とも男性とも見える美しい表情をしたアマテラスは、ジェイスの問いに答える。
「私は、あの『化け物』どもを倒さなければなりません。それが、あなたの祖父カール・D・アレキサンドリアとの約束。」
「なに?カール皇帝との約束?」
「えぇ………。」
アマテラスは更に言葉を続ける。
「これから私は『化け物』と戦わなければなりません。貴方には、その手伝いをして貰います。」
「ふっ……」
ジェイスは自嘲ぎみに笑う。
「俺の手伝いなど何の役にも立たない。事実 俺は『化け物』どもに負けたのだ。多くの仲間を失い故郷を失い、俺には何も残されていない。ラ・ムーア帝国は負けたのだよ。」
すると今度はアマテラスが微かに笑う。
「仲間なら生きています。」
「?……何だと?俺をからかうのか。」
確かに仲間達は死んだのだ。
共に『化け物』どもと戦ったジェイスが一番よく知っている。
圧倒的な軍勢の『化け物』どもに、一人また一人と仲間達は殺されていった。
仲間が生きているはずが無い。
「ジェイスよ……。」
「…………。」
「願うのです。仲間達の魂は、まだ消滅した訳では有りません。今ならまだ間に合います。」
「………願う?」
「あなたに力を与えました。それは神による加護。あなたが願えば仲間達は復活するでしょう。」
―――――――――それが貴方の能力
【乱入者編②】
(いない………。)
ピクシー・ステラは銀河 昴(ぎんが すばる)と李 羽花(リー・ユイファ)の姿を探す。
アリス・クリオネとの戦闘に少し時間を掛け過ぎたのか。その場にいたはずの二人の姿が見えない。
昴は大丈夫なのか?
精神を崩壊した銀河 昴(ぎんが すばる)が、李 羽花(リー・ユイファ)に太刀打ち出来るとは思えない。
ユイファは、昴を殺して、あの白い建物に向かったと考えるのが妥当だろう。
(ひかりに続き昴まで殺されたなんて………。)
(ユイファ………。私達『聖なる加護』の戦士達にとって、あなたが最大の障害になるなんて………。)
かつての仲間を思い唇を噛み締めるステラ。
「急がなきゃ、他の仲間達も危ない!」
小さな妖精ステラは、ユイファの後を追って円形の白い建物『アダム』の元へと急ぐ。
しかし
この時、ステラは気が付かなかった。
その場には、李 羽花(リー・ユイファ)と銀河 昴(ぎんが すばる)だけではなく
星空 ひかり(ほしそら ひかり)の遺体も無くなっていた事を――――――
円形の巨大な建物『アダム』
その中では、『聖なる加護』の戦士達と『天帝の加護』の戦士達との死闘が続いていた。
最初に犠牲になったのはシリュウ・トキサダ。
シリュウは終生のライバル、リュウギ・アルタロスの前に力果てた。
シリュウを葬ったリュウギは、他の仲間達の戦況を確認する。
神代 麗(かみしろ れい)とリザ・チェスターとの戦闘は、終始 麗が優位を保っているように見える。
「たいした女子(おなご)じゃのぉ。」
そう呟いたリュウギは、もう1つの戦闘
レイヴン・パルテノとジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世の方を見る。
(うむ。あの男(パルテノ)の事は知らないが、どうやら味方の様じゃのぉ。)
押されているのはレイヴン・パルテノ。
夢野 可憐(ゆめの かれん)を守りながら戦うのは厳しい様子。
(どれ……、加勢するかの………。)
リュウギ・アルタロスが足を踏み出した時、後ろからリュウギを静止する声が聞こえる。
「そこの大きな兄ちゃん。ちょっと待った。」
「?」
後ろを振り返るリュウギの目に映ったのは、アマテラスの分身バローム。
リュウギは大きくため息を吐くとバロームに言う。
「何だお主か………。正体の割れたお主には用は無い。黙って見ておれ。」
うんざりするリュウギにバロームは言う。
「分からないかなぁ?今すぐ逃げないと兄ちやんも危ないっすよ?」
「………何じゃと?俺様があの男(ジェイス)に負けるとでも?」
眉を減し曲げてリュウギが言う。
「ん~。ちょっと違うっすね。確かにジェイスも強いっすけど、俺っちの言ってるのは別の男。」
「………?」
「まだ気付かないっすか?もの凄い勢いで、ここに向かって来る気配。」
「気配………じゃと?」
「まさか、奴等がこの戦いに参戦するとは俺っちも予想外。いや、アマテラス様も予想していなかったっすよ。」
「先程から何を言っておるのじゃ?」
そして、バロームは言う。
「もう遅いっすね。もう逃げるのも間に合わない。」
奴は魔界に君臨する悪魔の王族。
悪魔の一族でも5本の指に入る高位の悪魔。
――――――サタナキアっすね
ゴゴゴゴゴゴゴゴォ
「!!」
「なに!?」
「むっ!」
「あれは………。」
戦闘を繰り広げていた
神代 麗(かみしろ れい)が
リザ・チェスターが
ジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世が
レイヴン・パルテノが
そして
夢野 可憐(ゆめの かれん)が
突然現れた男の方を見る。
「ふん……。今にも死にそうとは……情けない。」
その男サタナキアが、霊獣『白澤(ハクタク)』の放った浄化の力を
「ふんっ!」
ブワッ!!
片腕のひと振りで吹き飛ばす。
もう少し遅ければ、リザ・チェスターは完全に浄化され死んでいたであろう。
「な!?『白澤(ハクタク)の攻撃を!」
神代 麗(かみしろ れい)が操る5体目の霊獣『白澤(ハクタク)』の能力は浄化の力。
その力は悪魔にとっての天敵。
その力を
悪魔であるサタナキアが粉砕するとは、とても信じられない。
バロームは言う。
「奴はその辺にいる下っ端の悪魔とは格が違うっすよ。」
「仕方ないっすね。」
「俺っちの役目は監視するだけなんすけど……」
どうやら本気を出さなきゃ行けないらしいっす。
ジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世
