Seventh World 李 羽花
アリス・クリオネの話では
『聖なる加護』の戦士達が現れたのは、『高天原(タガマガハラ)』の世界の中でも最も新しい大陸。
その大陸の中央部分。
ユイファの故郷である中華人民共和国の密林に良く似た地形。その密林に囲まれた人口200万人程度の中規模都市。
アリスは、他の『天帝の加護』の戦士達を出し抜いてユイファと二人で目的地へ向かう。
全ては計算通り。
万が一『聖なる加護』の戦士達を説得出来なかった場合は、二人で戦わなければならない。
アリスは、普通の人間相手では、その能力を完全には発揮出来ないと言う。
ならば
『聖なる加護』の七人の戦士と 李 羽花(リー・ユイファ)は、真っ向から戦う事になるであろう。
(私一人で………殺れるか………)
ユイファは思う。
『聖なる加護』の戦士達は、神々の力を授かった超人達。『白の世界(ホワイトワールド)』で見た敵の戦士達は、なかなか一筋縄では行かない強者揃いであった。
何よりユイファが気になるのは、神代 麗(かみしろ れい)
確かに、あの時
麗は『アルテミスの槍』で斬り裂いたはず。
それなのに、神代 麗は生きていると言う。
(なぜ………生きている。)
やはり
(やはり、麗さんは只者では無いようね。)
今度は、本気で殺す。
それが、神代 麗を救う方法なのだから。
それにしても、アマテラス様のやろうとしている事は、何と言う残酷な作戦なのであろうか。
『7つの大罪』に喰われた者は、文字通り全てを消失する。
そこから救う方法が
『7つの大罪』に喰われるよりも先に殺す事だなんて、とても正常な精神では要られない作戦。
しかし
それ以外に方法が無い。
ならば
ならば、私は鬼になろう。
李 羽花(リー・ユイファ)は、全ての感情を捨て去り、かつての仲間を、友を殺すのだ。
シュウ――――――
プリンセス・リーナ
エルフの一族の神話に残る伝説の英雄
プリンセス・リーナよ
私に力を貸して下さい。
シュウ――――――
ユイファの耳が
『エルフの一族』特有の細長い耳に変形して行く。
シュウ――――――
ただならぬオーラがユイファの身を包んで行く。
(思い出すのです。)
シュウ――――――
(魔族の王デーモン・シュバルツを倒した時の感覚を……。)
李 羽花(リー・ユイファ)は
かつてのエルフ族の英雄
プリンセス・リーナと
―――――――――シンクロする
ブワッ!
「!?」
異空間の道の前方を走っていたアリス・クリオネは、背後から感じるオーラに反応する。
思わず後ろを振り向くアリス。
「ユイファ………あなた………。」
鬼気迫るユイファの形相を見て、アリスはゴクリと息を飲み込んだ。
それからアリスは、ふっと表情を緩めてユイファに言う。
「やはり私の判断は間違って居なかったようね……。」
あなたなら
「『聖なる加護』の戦士達は勿論、チェリー・ブロッサムも殺せるかもしれないわ。」
「え?」
予想外の言葉にユイファは少し驚いた。
なぜ、ここで仲間であるチェリー・ブロッサムの名前が出て来るのか。
「そろそろ到着します。覚悟は出来て居るようね。」
アリスは異空間の細長い道の出口の方を見る。
ぼんやりとした薄暗い明かりは、徐々に大きくなり、やがて二人の人間が出られるくらいの大きさとなる。
もう戻る事は出来ない。
この先には『聖なる加護』の戦士達
神代 麗が
夢野 可憐が
ピクシー・ステラが
かつてのユイファの仲間が
ユイファと戦う為に待っているのだ。
ここからが正念場――――――
李 羽花(リー・ユイファ)は、エルフの一族の王族の威信を胸に
――――――――真の力を解放する
私は
プリンセス・リーナの生まれ変り
この戦い――――――
――――――負ける訳には行かない