Seventh World  ジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世

大宇宙に広がる無数の世界

その中でも、強大な勢力を誇る銀河帝国を創り上げた偉大なる皇帝。

カール・D・アレキサンドリア

高度な文明を持つ『ラ・ムーア帝国』は、実に30を越える世界を支配していた。

カール皇帝の魔力は、他のムーア人と比べても群を抜いており、敵国艦隊を一人で潰したとの記録もある。

カールには、37人の子供と100人を越える孫が居た。その一族にはカール同様に優秀な魔導師が多く存在していたと言う。

「流石だなジェイス。カール皇帝の孫だけあって魔力の質が違う。お前には敵わないな。」

そう言うのは同僚のケインズ。『ラ・ムーア帝国第十三宇宙軍』所属の兵士である。

「孫と言っても腐るほど居るからな。実際俺はカール皇帝と話した事など殆ど無い。」

答えるのは同じ宇宙軍所属のジェイス。

二人は今、帝国が34番目に支配した世界。
『惑星オリオン』へ向かっていた。

「それにしても……」

ケインズは神妙な顔で口を開く。

「オリオンが襲撃されたとは信じられんな。俺達『ラ・ムーア帝国』に逆らう者など、この空域にはもう居ないだろう。」

「なに、大した事は無い。俺達が向かえばすぐに鎮圧出来る。些細な事だ。」

二人の所属する第十三宇宙軍は、『惑星オリオン』が謎の異星人から襲撃を受けたとの報告を受けて、鎮圧に向かう途中なのだ。



それから一週間後

『惑星オリオン』に到着したジェイス達第十三宇宙軍は、信じられない光景を目の当たりにする。

『ラ・ムーア帝国』の前線基地が異星人の襲撃により崩壊していたのだ。

「な!どう言う事だ!?」

「敵はどこに居る。何者の仕業だ!?」

前線基地とは言え、この一帯の世界では無敵の快進撃を続ける『ラ・ムーア帝国』。
襲撃を受けたとしても、既に基地が崩壊しているとは思わなかった。

「ジェイス!こっちだ!生存者が居るぞ!」

ケインズの声がする方へ急いで駆け付けるジェイス。

「おい!大丈夫か!敵はどこだ!敵はどこの世界の人間だ!」

ケインズとジェイスを前にした生き残りの兵士は、怯えるような顔でガタガタと震えている。

「敵は…………」

ギギィ

「!!」

そして、ジェイスは見た。

その兵士の体内を喰い破り、産まれ出て来る『化け物』の姿を。

ブシュッ!

「ぐわっあぁぁ!」

「おい!ケインズ!!」

運悪く兵士の側にいたケインズが『化け物』に喰われるのは一瞬の出来事であった。

ギギィ

「な!何だこの『化け物』は!?」

突然現れた未知の『化け物』。

ジェイスは咄嗟に攻撃魔法を詠唱する。

「エグゾーダス(灼熱地獄)!!」

ボワッ!!

ジェイスの魔法の威力は帝国軍の兵士達の中でもトップレベルの高威力を誇る。

『化け物』はジェイスの放った灼熱の炎に覆われて行く。

バチバチ

ギギィ


しかし

その『化け物』の身体は、燃える先から次々と再生して行く。

(こいつ……俺の炎が効かないのか………。)



「おい!ジェイス!どうした!?」

「今の悲鳴は何だ!?」


駆け付けた第十三宇宙軍の兵士達。

「敵だ!この『化け物』にケインズが喰われた!気を付けろ!」

「一斉に攻撃するぞ!」

総勢20人を越える兵士達の攻撃により、何とか『化け物』を倒したジェイス達。

どうやら『化け物』の再生能力を上回る攻撃をすれば『化け物』は死に絶えるらしい。

「しかし、この『化け物』はいったい何なんだ……。」

兵士の誰かがそう呟いた時

「ぐわぁ!助けてくれ!」

少し離れた場所から、宇宙軍の兵士の悲鳴が聞こえて来た。

「ちっ!今度はあっちか!」

「急げ!救出するぞ!」

ジェイス達は悲鳴の聞こえた方へ向かう。

そして

ジェイス達が見たものは


ギギィ

ギギィ

ギギギギギギィ

ギギギギギギギギギギギギィ


大地を覆うほどの『化け物』の群れであった。

「バカな………。」

「不味い!逃げるぞ!」



この世界空域一帯を支配していた『ラ・ムーア帝国』第十三宇宙軍は、未知の『化け物』により敗走する。


しかし

これは始まりに過ぎなかった。

この後、7年に渡り『ラ・ムーア帝国』と『化け物』の壮絶な戦闘が繰り広げられたのだ。


ジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世は思う。

(栄華を誇った『ラ・ムーア帝国』は『化け物』の襲撃により崩壊した。

この広い大宇宙に無数に存在する世界の中でも、『ラ・ムーア帝国』に匹敵する程の力のある世界は無いであろう。)


その帝国が


『化け物』に負けたのだ


(奴等を倒す事は不可能。ならば俺達に出来る事は一つだけ。『天帝アマテラス様』のみが世界を『化け物』から救う事が出来る。)



この『高天原(タガマガハラ)』の世界こそ


人類の最後の希望なのだ