Seventh World  銀河  昴

無限に広がる大宇宙。
この宇宙には無数の世界が存在している。

その中でも高度に発達した人類が住む世界があった。

天界の神々が創った世界

Seventh World (7つの世界)


7つの世界が出来た当初は、人類が未成熟と言う事もあり、神々は様々な場面で人類に干渉して来た。

各々の世界で語り継がれる伝説や神話の多くは、天界の神々の干渉によるものが少なくない。

やがて人類は神々の手を離れ、自らの力で発展するようになり、それを見た創造神ガイアは、天界の神々に1つの提案をする。


Seventh World(7つの世界)への干渉の禁止。


これにより、天界の神々は天界に引きこもるようになり、人類は新たな時代に突入する。




それでは、神々はSeventh World(7つの世界)に全く関わらなかったかと言うとそうでは無い。

『異世界管理事務局』


神々はSeventh World(7つの世界)の管理を天界に済む住人から選出した者に任せる事にしたのだ。

管理人の一人『ボムボム』もその一人。

銀河  昴(ぎんが  すばる)から見たボムボムは、まさに猫そのもの。

二足歩行と言葉を話す以外は完璧な猫。

しかも、話し言葉の語尾に『にゃあ』とか付けるからには、もう狙っているとしか思えない。

「それで、昴くん。大切な用事とは何なのにゃあ?」

何やら深刻な表情でボムボムを訪れた銀河  昴(ぎんが  すばる)に猫のボムボムが尋ねる。

「それは……」

それは、 もちろんボムボムの正体だとか、なぜ語尾に『にゃあ』を付けるのかだとか、そんな話では無い。

昴の『聖なる加護』の能力。

『全能なる瞳』


ボムボムなら『全能なる瞳』の真の能力を知っているかもしれない。そんな期待を胸に昴はボムボムの元をを訪れた。

「う~ん……。『加護』の能力は人それぞれにゃあ。その人間の強い想いや隠れた才能。潜在能力を引き出すと言われているが、実際の所は分からないにゃあ。」

昴の期待とは裏腹に、全く参考にならないボムボムの答えを聞いて、昴はガックリと肩を落とす。

ボムボムの住む『管理塔』を後にした昴は、『聖なる加護』の戦士達が滞在する『居住区』へと向かっていた。

ここは、Seventh World(7つの世界)の合間にある異空間。主要な7つの世界とは別に、無数に存在する異空間の一つである。

本来、このような異空間には生物は住んでいない。あまりにも小さな世界の為に、生物が生きる為のあらゆる物が不足しているからだ。

それを天界の神々が改造して創ったのが『異世界管理事務局』。この小さな世界には200人程度の天界人が住んでいる。

(結局は無駄足だったな……。)

とぼとぼと歩く昴は、ものの10分もしないうちに『居住区』へと辿り着く。それほど小さな世界なのだ。

そこで

銀河  昴(ぎんが  すばる)は、妙な胸騒ぎを覚える。何と言うか第六感とでも言うべきか。


仲間達が

『聖なる加護』の戦士達が危ない!


急いで居住区にある『戦士達』が滞在する建物へ向かう昴。

全体が白く覆われている建物は、大きな5階建ての建物で、この小さな世界の中ではボムボムの住む管理塔の次に大きい。

(嫌な予感がする………。)

バタンッ!

戻るなりドアを開く昴。

そこで銀河  昴(ぎんが  すばる)が見た光景は

「!!」

仲間達の死体


鉄壁の防御を誇るリュウギ・アルタロスが……、天才陰陽師として脅威の戦闘能力を誇る神代  麗(かみしろ  れい)が……、シャルロット・ガードナーに夢野  可憐(ゆめの  かれん)まで…。

その全員が死んでいるのだ。

(バカな!)

この短時間に何が起きた!?


いや、そんな事より
星空  ひかりの姿が見えない。


「ひかり!!」


銀河  昴は夢中で ひかりの姿を探した。

この小さな世界、すぐに見つかるはずだ。

「ひかり!何処だ!返事をしてくれ!」

すると

昴の後ろから女性の声が聞こえて来た。

「ふふふ……」

(ひかり!?いや……違う。)

昴はゆっくりと後ろを振り向く。

「誰だ!」

昴の後ろの空間に浮かぶ女性。

驚く事にその女性には、全く存在感が無い。

今にも消え入りそうな女性は楽しそうに昴に話し掛ける。

「ふふふ。あなたの瞳、とても面白い色をしているわ。」

(いったい、この女性は何を言っているのか。瞳の色など どうでも良い。)

昴の思考を余所(よそ)に、女性は昴に話を続ける。

「あなた、私と同じ匂いがするもの。あなたは私と同類。あなたは私の後継者に相応しい。」

(後継者?何とも気味の悪い女性だ。)

「僕は君に構っている暇は無いんだ!ひかりを探さなければならない!」

昴が叫ぶと、その女性は楽しそうに言う。

「ひかり?あぁ、その娘ならここに居るわ。」

「え!?」

「ほら…」

そして、空に浮かぶ女性の後ろ。

そこには

「!!」

星空  ひかり(ほしそら  ひかり)の

生首が転がっていた

無残に切り落とされた星空  ひかり(ほしそら  ひかり)の首が、無造作に地面に投げ出されている。



「う……」

「う………」

「うわぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!」






「……!」

「………!!」

「昴くん!どうしたのにゃあ!?」

「はぁ」

「はぁ」

「はぁ……」

目の前には、昴を心配そうに見つめる猫のボムボムの顔があった。


「ボムボム…………、ここは……。」

「大丈夫かにゃあ?突然叫び出したにゃあ。」

ここは、管理塔の建物の中。

銀河  昴(ぎんが  すばる)は『全能なる瞳』の能力を教えて貰う為にボムボムに会いに来たのだ。

「夢……?あの妙に存在感の無い女性も、ひかりの死も……、夢だったのか?」

そんな独り言を言う昴に、ボムボムは納得した様子で言う。

「昴くんも見たのにゃあ。彼女の事を。」

「彼女……?ボムボムはあの女性を知っているのか?」

昴の問いにボムボムは答える。

「彼女はもうこの世には居ないにゃあ。」

「この世には居ない?」

「そうだにゃあ。彼女は『ユグドラシル』の世界に存在した霊族の戦士。」

「霊……?まさかお化けって事か?」

ボムボムは少し困った顔で昴に言う。

「う~ん。説明するのは難しいにゃあ。一つだけ言えるのは、昴くんが見たのは彼女の造り出した幻影。」

「…………幻……影?」

「そうにゃあ。彼女は『ユグドラシル』の世界に伝わる神話の時代の魔法使い。彼女の魔法は、あらゆる幻影を創り出し、見るものを夢の世界へ誘うにゃあ。」



その名も


幻影のミーシャ





銀河  昴(ぎんが  すばる)は、ボムボムの言う事を殆んど理解出来なかった。

(神話の時代の魔法使いが、僕に幻影を見せたって?そんなバカな。)


非現実的な話を素直に信じるほど昴はバカでは無い。

(ボムボムにからかわれたかな?)

そんな事を考えながら、昴は管理塔を後にする。

それにしても、妙にリアルな夢であった。

昴の脳裏には、まだ彼女の言葉がこびり付いている。

「あなた、私と同じ匂いがするもの。あなたは私と同類。あなたは私の後継者に相応しい。」


(幻影のミーシャ………)


それは、神話の時代に生きた霊族の天才魔法使い。

昴は、その名前を心の中でそっと呟く。