Seventh World エレナ・エリュテイア
ここは
Seventh World (7つの世界)の中で、最も美しい世界『へスぺリアス』
虹色に光り輝くその世界には、9つの大国が存在している。
「エレナよ……。よく聞くがよい。」
男の名はシヴァース・エリュテイア。
9つの大国の中でも最も力のあるエリュテイア王国の現国王であり、偉大な魔法使いとして国民からの信頼は厚い。
「はい、お父様。」
応えるのはエレナ・エリュテイア。
13歳になったばかりの美しい少女である。
「エレナ……。お前の左手の紋章は只の紋章ではない。」
突然の父の話に首を傾げるエレナ。
エレナには物心が付いた時から、左手の甲に『五芒星』の紋章があった。エレナが魔法を発動する時に、とても綺麗な光を放つ紋章。
七色に輝く美しい光を称えて、世界の人々はエレナの事を『オーロラの姫君』と呼んでいる。
「お父様。今更どうしたのですか?この紋章は私の魔力の源。只の紋章のはずが有りませんわ。」
不思議そうな顔で父に答えるエレナ。
「違うのだよエレナ。」
「………?」
「その紋章は、魔力の源なんかでは無いのだ。」
シヴァースは真っ直ぐにエレナの瞳を見る。
「魔力の源では無いとは、どう言う意味でしょう?」
そして、エレナの質問に対し、ゆっくりと口を開く。
「その『五芒星』の紋章は……、お前の魔力を封印する為に、父である このシヴァースが刻んだのだ。」
「……?」
エレナは父の言葉の意味が分からなかった。
なぜならエレナは、この『へスぺリアス』の世界で最強と呼ばれる魔法の使い手。若干13歳にして、エレナの魔法の威力を越える者は居ない。
自然界に存在する大聖霊達を自在に操る者など、エレナ以外に存在しないのだ。
少しの沈黙の後にエレナは父に訪ねる。
「封印……とは、何の事でしょう?エレナは魔法を自在に発動出来ます。魔力を封印なんて有り得ません。」
そう言い切るエレナに、シヴァースは言う。
「お前が幼少の頃、隣国ワルキューレ王国と揉めた事があってな……。」
エレナ・エリュテイア4歳
「シヴァース王、この責任をどうするつもりか!我が国の王子が貴国に滞在中に大怪我を負ったのだ。」
隣国ワルキューレ王国と共同で新魔法の開発をしていた施設にて起きた事故。
王子の視察に良い所を見せようとワルキューレ王国の研究者が無理な魔法を発動した。
それにより施設は大爆発を起こし王子は大怪我を負ってしまう。
その責任を施設を管理していたエリュテイア王国に押し付けようとの腹積もりだろう。
ワルキューレ王国の使者は30人を越え、エリュテイア王国に大金を要求して来た。
「賠償金なら既に支払ったはずだ。それに、今回の事件はそなた達の研究者によるもの。これ以上何を要求するのだ。」
エリュテイア王国の大臣ゴルバーは毅然とした態度でワルキューレ王国の使者の要求を断る。
そこで事件は起きた。
今にして思えば、この時既に『寄生虫』による感染が広まっていたのかもしれない。
ワルキューレ王国の使者の一人サナスが気でも違ったのか、同盟関係にあるエリュテイア王国の王室の中で魔法を発動したのだ。
「我が国の王子が重症を負ったのだぞ!ならば、エリュテイア王国の王女にも重症を負って貰う!」
ボワッ!
これにはエリュテイア王国の者だけでなく、ワルキューレ王国の使者達も驚いた。
「おい!サナス!何をやっている!?」
しかし、止めるのが遅かった。
予想しない出来事にその場に居た全ての者達の反応が遅れる。
ボボボボボボッ!
「エレナ!!」
サナスの放った炎の魔法は、エリュテイア王国の幼い王女エレナに向かって飛んで行く。
(間に合わない!!)
ボワッ!!
「姫様!!」
わずか4歳のエレナが、サナスの放った炎に包まれる。
シヴァース国王は、すぐに炎の魔法を打ち消す為の魔法を発動する。
「ノアース!」
それは、炎とは正反対にある水属性の魔法。
一刻を争う事態に最大級の魔法を放つシヴァース。
ボボボッ!
ドバッ!
「!!」
ビカッ!
その時
サナスの放った炎の魔法と、シヴァースの放った水の魔法が同時に消失する。
しかし、それは決して二つの魔法が相殺された訳では無い。
シヴァース国王と、その場に居た全ての者が見たのは、エレナの背後に浮かび上がる異質な存在。
(な……なんだ、あの者は………)
ゴゴゴゴォ
見たところその者は、人間とさほど大きさは変わらない。しかし圧倒的な存在感が、その男が只者では無い事を物語る。
何より異質なのは、男の額にある3つ目の瞳。
その瞳を見ただけで、身体を動かす事が出来ない。
(これは………恐怖…………。)
『へスぺリアス』の世界でも大魔導師として知られるシヴァース国王が、恐怖を感じる程の存在。
「ぐっ……」
「ぐぉおおぉぉ!」
「サナス!?」
そして次の瞬間、ワルキューレ王国の魔導師サナスは、苦しみに悶えて息絶える事となる。
翌日
「あれは何だったのか……。」
エリュテイア王国の国王シヴァースは、王国に使える四人の従者と昨日の出来事について話し合っていた。
「おそらく、あれはエレナ様の魔法。召喚魔法です。」
従者の一人が発言する。
「召喚魔法?信じられん。エレナはまだ子供だぞ。」
「間違い有りません。身の危険を感じたエレナ様が無意識のうちに召喚したのでしょう。あのような精霊は私も見た事は有りませんが。」
五人の魔導師の話し合いにより、エレナの魔法は封印される事となる。
エレナが大きくなるまで『五芒星』による封印がエレナの魔力を封印する。
数年後
時は経ち、シヴァース・エリュテイアは13歳になったエレナに言う。
「エレナ……。魔力を封印されたお前が、ここまで強力な魔法使いになるとは、父であるこのシヴァースも想像していなかった。」
「お父様……。」
「この私の封印術では、お前の魔力を抑えきれなかったらしいな。」
だからこそ―――――
―――――――――恐ろしいのだ
「お前が17歳の成人を迎えた時、私の施した『五芒星』の封印は解かれるであろう。」
「17歳……」
「エレナ、決して魔力に溺れるでは無い。あの三つ目の者は精霊なんかでは無い。あの者を制御出来なければ、おそらくお前に待ち受けるのは………破滅だ。」
「破滅…………。」
「そうだ。よく覚えておくのだ。『五芒星』の封印が解けても、あの者だけは召喚してはならない。それがお前の為だ。」
更に四年の歳月が流れる。
「ひかり、深刻な顔をしてどうしたんだ?」
銀河 昴(ぎんが すばる)は隣で黙り混む星空 ひかりに声を掛ける。
「ううん、すばる……何でも無いわ。ただ……」
「ただ?」
「いよいよ『天帝の加護』の戦士達、そして『アマテラス』との決戦ね。」
そして、ひかりは昴の鼻にちょこんと人差し指をあてて言う。
「死なないでね、すばる。必ず生きて戻って来ましょう。」
「ひかり………。」
ボムボム達『神々の聖戦(ゴッドジハード)』の戦士達の活躍により、敵の本拠地である『高天原(タガマガハラ)』の世界への入り口が見つかった。
どれほど探しても見つからなかった『高天原(タガマガハラ)』が見つかったのは敵の罠かもしれない。
しかし、ひかり達『聖なる加護』の戦士達は、『高天原(タガマガハラ)』へ行くより道は無い。
『天帝アマテラス』を倒し、天界に封印されている神々を救出し、Seventh World(7つの世界)を救うには、他に方法が無いのだ。
星空 ひかりは言う。
「すばる、もうすぐ私の誕生日なの。生きて戻れたら誕生日をお祝いしてね。」
「お?そうなのか?盛大に祝おうぜ!」
もうすぐ、ひかりは―――――
―――――――17歳の誕生日を迎える