Seventh World 異世界戦記の章

【エピローグ①】

剣と魔法が支配する世界『ワールド』

『聖なる加護』の戦士達の活躍により『マゼラン帝国』と他の国々との戦争は終結する。

夢野  可憐(ゆめの  かれん)と『聖なる加護』の戦士達は、その後1ヶ月ほどの時間を掛けて大陸中を駆け巡り全ての『寄生虫』を消滅させた。

これにより『寄生虫』による崩壊を免れた世界は、『白の世界(ホワイトワールド)』に続き『ワールド』が二つ目となる。

しかし、『聖なる加護』の戦士達の中で、夢野  可憐(ゆめの  かれん)と神代  麗(かみしろ  れい)は、今後の戦いに大きな不安を抱える事となった。

帝都アンドロメダでの死闘を終えた二人は、『神々の聖戦(ゴッド・ジハード)』のメンバーである日賀  タケル(ひが  たける)から、衝撃的な事実を聞かされたのだ。


エミリー・エヴァリーナ


かつての仲間であり、最大の敵でもあったエミリーが『天帝の加護』の保持者となり、『聖なる加護』の二人の敵となった事への衝撃。

同じく敵となった李  羽花(リー・ユイファ)に続く衝撃的な事実に二人は強い憤りを感じる。

エミリーとユイファを魅了する『天帝アマテラス』とは、何者なのか……

そして、世界を崩壊させようとするアマテラスの真の目的は、何なのか。

その答えは次の世界で明らかになるはずだ。


それは

『天帝アマテラス』が住む世界。



『高天原(タガマガハラ)』と呼ばれる世界に行けば、全ての謎が明らかになる。

「可憐……。覚悟は出来ていますか。敵はエミリーとユイファ。簡単には行きませんよ。」

黒髪の良く似合う女性 神代  麗(かみしろ  れい)は、夢野  可憐(ゆめの  かれん)にそっと声を掛ける。

「麗……。私は戦闘は出来ません。エミリーちゃんもユイファも、私の友達です。もし彼女達が私の命を狙うなら、どのみち私は何も出来ないわ。」

可憐の返事に麗は少し微笑んだ。

(可憐らしい答えだわ……。しかし可憐は分かっていない。『パンドラの箱』が造り出した化け物『エルピス』を倒したのは可憐。魔族との戦闘でも可憐は多くの人々を救い私の命まで救ってくれた。可憐の力は私が一番知ってるいる。)

麗は言う。

「可憐……、世界がこんなになっても、あなたは変わらないのね。」

「え?」

可憐は不思議そうに麗の顔を見つめていた。






そして銀河  昴(ぎんが  すばる)は、ピクシー・ステラから重要な出来事を聞いていた。

悪魔との戦闘の最中、昴の映像がステラの脳裏に映し出されたと言う。おそらくそれは銀河  昴(ぎんが  すばる)の『聖なる加護』の力。


『全能なる瞳』の能力


(僕の能力は、未来や異世界の映像が見えるだけじゃない。)


昴は神童博士の言葉を思い出す。

『君の能力は未来予知では無い。おそらくそれ以上の能力。』

(それ以上の能力………。)


「すばる。どうしたの?考え事?」

星空  ひかり(ほしそら  ひかり)は可愛らしい顔で昴の顔を覗き込んだ。

昴は少し顔を赤らめて ひかりに言う。

「な!何でも無いよ。それより、遂に『天帝の加護』の戦士と決着を付ける事になる。ひかりは怖く無いのか?」

照れ隠しの昴の問いを、星空  ひかり(ほしそら  ひかり)は真に受けて表情を強ばらせる。

「怖く無い……と言ったら嘘になるけど。」

そして、ひかりは昴に告げる。

「私の産まれ育った『へスぺリアス』の世界。それはとても美しい平和な世界だったわ。

ボムボムの話が本当なら、私達は過去に遡って『アマテラス』を倒す事が出来る。『寄生虫』が蔓延する前に『アマテラス』を倒さなければならない。

私は何としても『へスぺリアス』の美しい世界を取り戻さなければならない。その為なら怖いなんて言って要られないわ。」

気丈に振る舞う ひかりを見て昴は思う。

(僕は世界の為ではない。おそらく僕は……、星空  ひかり(ほしそら  ひかり)の為に戦おうとしている。

ひかりを助ける為に、僕は強くならなければならない。

『全能なる瞳』の能力を、もっと知らなければ、この先の戦いを生き残る事は出来ないんだ。)


『天帝の加護』の能力者達を


倒す為に





【エピローグ②】

「アリスよ。『高天原(タガマガハラ)』で『聖なる加護』の戦士達を迎え討つとはどう言うつもりだ?万が一 アマテラス様に何かあったら、どう責任を取るつもりだ!」

ジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世は珍しく声を荒げて言う。

アリスは真正面からジェイスを見つめて言う。

「もう時間が無いのです。『7つの大罪』の脅威が目前に迫っています。その前に『聖なる加護』の戦士達と決着を付けなければなりません。

『天帝アマテラス様』のお膝元である この世界なら私達は負けません。『天帝の加護』の力が最大限に発揮されるこの世界で『聖なる加護』の戦士達を確実に仕留めるのです。」

「しかし!」

すると二人の会話を遮るように、美しい声が響き渡る。

「ジェイス……」

「!!」

「ジェイス、良いのです。それは私がアリスに提案をしたのですから。」

「アマテラス様!それは本当ですか!?」

驚くジェイスにアマテラスは言う。

「それに私も見てみたいのです。『聖なる加護』の戦士達を……。彼等の正義と私達の正義。果たしてどちらが正しいのか。『7つの大罪』に対抗する為の答えは何なのか、それを私は知りたいのです。」

アマテラスの言葉にジェイスは即答する。

「何をおっしゃいますアマテラス様。正義はアマテラス様にあるのは明白です。私の故郷は『7つの大罪』に滅ぼされました。『7つの大罪』から人々を救えるのはアマテラス様のみ!」

そして、ジェイスは言う。

「良いでしょう。『聖なる加護』の戦士達は、このジェイスが倒して見せます。アマテラス様には指一本触れさせません。」

「そう上手く行くかしら?」

口を挟むのはリザ・チェスター。

「なんだと?どう言う意味だ?」

ジェイスがリザを睨み付ける。

「『聖なる加護』の戦士を甘く見ない事ね。特に……」


夢野  可憐(ゆめの  かれん)


「彼女はシルフレア・サーシャスの双子の妹。彼女は正真正銘の大天使なのよ。おそらく夢野  可憐の実力は…」


古代の四大天使と同じく


神にも匹敵する



「ふふふ」

そう笑うのはチェリー・ブロッサム。

「それは嬉しい事だわ。もしその話が本当なら、可憐はあたしを殺せるかもしれない。あたしの『不老不死』の能力を打ち破って貰えるなら大歓迎よ。」

「チェリー!」

アリスはチェリーを睨み付ける。

「天帝アマテラス様の前で『天帝の加護』の能力を侮辱する事は許しません!」

するとチェリー・ブロッサムはニコリと微笑んで答える。

「まぁ、アリスったら、ほんの冗談よ。あたしの願いは『永遠の若さ』。あたしはこの能力で『永遠の若さ』を手に入れたわ。例えそれが『化け物』のような『死ねない身体』だとしてもアマテラス様には感謝しているわ。」

「もういいだろう。」

それまで沈黙していたシリュウ・トキサダが、二人の会話の間に割って入った。

「仲間同士で口論しても仕方ない。俺達の当面の敵は『聖なる加護』の戦士達。全力で奴等を倒せば良いだけの事。」

「そうね……。」

そして李  羽花(リー・ユイファ)がシリュウの後に続いて言う。

「可憐だけじゃない。他の『聖なる加護』の戦士達も強敵です。油断していたら足元を掬われるわ。今は私達が協力して『聖なる加護』の戦士達を迎え討ちましょう。」


決戦は間近です







【エピローグ③】

『聖なる加護』最後の戦士シャルロット・ガードナーは、そっと一冊の『魔導書』を拾いあげた。


―『 悪魔禁書 』



『悪魔禁書』の封印を解いたカール・シュナイゲートは死亡し、その『魔導書』は所有者を失った。

シャルロットは『聖なる加護』の戦士として、この世界『ワールド』を離れなければならない。

この世界を離れる前に、シャルロットはとある町を訪れる。

そこは『マゼラン帝国』の南東にある国『アルゼリア王国』の小さな田舎町。のどかなその町には、二人の旧友が静かに平和に暮らしていた。

シャルロットを見た旧友の一人マリー・ステイシアは、嬉しそうに声をあげる。

「まぁ、シャルロット。突然どうしたのですか?さぁ、ゆっくりして行ってちょうだい。」

久し振りの再会に、嬉しさを隠せないマリーは、そそくさとお茶を入れる。

「大変だったようだが、落ち着いたのか?」

男性の名前はサラ・イースター。

本人はサラと言う名前は女性っぽくて好きでは無いらしいのでイースと呼ばれるのを好んでいる。

シャルロットは、二人に先の戦争の事情を説明した後に、一冊の『魔導書』をマリーに手渡した。

「シャルロット……これは?」

シャルロットは言う。

「私はしばらくこの世界を離れます。その間、この世界に何かあったら、この世界を守って下さい。この本は、きっと役に立つはずです。」

「でも……。」

「マリー。あなたなら『悪魔禁書』を正しく使う事が出来るわ。私が戻るまで、この世界を頼みましたよ。」

「シャルロット……、あなた、何処に行くつもりなの?」

マリーの質問にシャルロットは答える事が出来なかった。もし、真実を話せばマリーとサラは一緒に戦おうとするだろう。

平和な暮らしを投げうってでも、命を掛けた戦いを選択する。二人はそう言う人間だ。

「大丈夫よマリー。私は必ず戻ります。」

「でも!」

心配そうな顔をするマリー・ステイシアに、シャルロットは毅然とした態度で言う。

「マリー。忘れたのですか?」


私は


『マゼラン帝国近衛騎士団』


シャルロット・ガードナー



「この世界最強の騎士である私の何を心配するのです?」


シャルロットは、それだけ言うと 旧友の家を後にした。

今度の戦いは、生きて帰る事が出来ないかもしれない。それでもシャルロットは前に進むしか方法が無いのだ。

この世界『ワールド』の未来と、全てのSeventh World (7つの世界)を救う為に。


(マリー、どうかお幸せに………。)


シャルロットは、そっと心の中で呟いた。














異世界戦記の章                              完







シャルロット・ガードナー

イラスト提供 pepeami様