Seventh World 聖なる天使の章
【最後の大天使編①】
ザザ――――
(…………!?)
『聖なる加護』の能力『全能なる瞳』を持つ銀河 昴(ぎんが すばる)と
(何かしら?)
『天帝の加護』の能力『千里眼』を持つアリス・クリオネが
――――同時に異変を察知する
昴は『全能なる瞳』の能力で、数分先の未来を予知し、アリスは『千里眼』により、この世界の異常な空気の変化に反応したのだ。
「不味いわ。この感覚は………」
それまで、忠実に作戦の指揮を取っていたアリスの表情が一変する。それは、アリスの予想外の出来事であるから。
アリスは、この感覚を知っている。
忘れもしない。
幼いアリスの両親を、アリスの住んでいた村人を、アリスの人生の全てを無くした日と同じ感覚。
「リザ!ジェイス!チェリー!シリュウ!ユイファ!作戦変更です!!」
アリスは、五人の『天帝の加護』の戦士達に魔法で直接呼び掛ける。
銀河 昴(ぎんが すばる)は、自分の見た映像を理解出来ない。なぜなら、そんな者は今まで見た事の無いものだから。
(な、何なんだ、この映像は!?それに、もう1つの映像………!)
どうする昴!今、僕が出来る事は………
そして
昴は走り出す。
「昴!どこに行くの!!」
ステラは、急に走り出した昴の後を追う。
「僕は、可憐を助けに行く!ステラは麗さんを探してくれ!」
「え!どう言う事!?」
「僕の見た未来では、2つの重大事件が起きている!ステラは、とにかく麗さんを探してくれ!こっちは僕が引き受ける!」
「あ!ちょっと昴!」
(もう、何がなんだか分からないじゃないの。)
それでも
それでも、ステラは昴の事を信じて動き出す。
銀河 昴(ぎんが すばる)の能力『全能なる瞳』は『未来を予知』する事が出来る。
麗を探せと言う事は、神代 麗(かみしろ れい)の身に何かが起きていると言う事だろう。
4枚の妖精の羽を広げ、大空に舞い上がったピクシー・ステラは、全力で麗の居所を探る。
「麗!何処に居るの!」
ぐるりと周囲を見渡すステラ。
ガキィーンッ!!
バキィーンッ!!
すると、遠くから金属音が聞こえて来た。
(この音は………)
剣と剣が攻めぎ合う音!?
その音の方向。
遥か遠くに見えるのは
神代 麗(かみしろ れい)と
李 羽花(リー・ユイファ)!?
【最後の大天使編②】
4年前、ステラの産まれ育った『ユグドラシル』の世界は、魔族に襲撃されていた。
魔族の戦闘能力は『ユグドラシル』に住む十二種族の中でも最強。
村も町も国さえも、魔族に次々と攻め落とされ、人々は絶望の淵に沈んでいた。
そんな時、『異世界』から現れた二人の少女、神代 麗(かみしろ れい)と李 羽花(リー・ユイファ)の二人の少女が、『ユグドラシル』の世界を救ったのだ。
紛れもなく二人の少女は『ユグドラシルの英雄』であった。
神代 麗(かみしろ れい)
と
李 羽花(リー・ユイファ)
それなのに
(何で二人が戦う必要があるのよ!)
「『空間移動魔法』!」
ステラの『聖なる加護』の能力は『異世界への扉』。その能力により、ステラは遠くで戦っている二人の元に一瞬で辿り着く事が出来る。
そして
ステラが異空間を潜り抜けた先に見たものは
「!!」
麗は手に持った日本刀を振り上げた状態で動きを止める。
「そんな……ユイファ……。あなた……。」
目の前に立つ麗の身体の中央。
麗の身体に突き刺さるように現れた『アルテミスの槍』を掴んでユイファは言う。
「ごめんなさい麗さん。私の新しい『アルテミスの槍』は、私の意思により自在に造り出せるの。」
そして
ユイファは
『アルテミスの槍』を
―――――――真上に斬り上げる
ズバァッ!!
真っ赤な鮮血が、ユイファの目の前で噴水のように飛び散った。
その光景を見てピクシー・ステラは言葉を失う。
遅かった………。
神代 麗(かみしろ れい)は李 羽花(リー・ユイファ)に殺されてしまった。
その場から立ち去るユイファに、ステラは声を掛ける事も出来ない。
(…………。)
(いや………………違う。)
昴が見た光景は未来の映像。
それを変える事は出来ない。
それでも、昴がステラ(私)に麗を探せと言ったのには、きっと何か意味がある。
銀河 昴(ぎんが すばる)は、もっと先の未来を見たに違いない。
「麗!!」
ステラは麗の側に駆け寄った。身体の半分が引き裂かれ、とても生きているとは思えない。
すると
すっ………
「!?」
麗の遺体が、蜃気楼のように消えて行く。
(これは…………。)
麗は生きている!
この近くに居るに違いない。
もう一度空中に飛び立ったステラは注意深く辺りを見回した。
(!!あれは……。)
「麗!!」
少し離れた所で横たわっている麗を発見したステラは、急いで麗の元に駆け寄った。
その身体の中央にはユイファの『アルテミスの槍』によって傷付けられた槍の穴が大きく開かれ大量の血が溢れ出ている。
それでも
麗は生きている。
「ス………テ……ラ。」
「麗!酷い傷!待って、今すぐ治療します!」
ステラは急いで治癒魔法を詠唱する。
「ユイファは……立ち去ったのね……。油断したわ……。『陽炎(かげろう)の術』が、もう少し遅ければ……確実に殺されて……いました。」
「しゃべらないで麗!その傷は十分に致命傷です!」
「私より、可憐……、可憐の命が危ないわ……。ユイファは……本気で……可憐を……殺すつもりです……。」
そして麗は可憐のいる『天使の城』の方へと目をやった。
(………な……に?)
「ステ……ラ………あれは……。」
麗は『天使の城』を見るようにステラに促す。
「しゃべらないでって言っているでしょう!」
麗を戒めるステラ。
と、その時
ゾクッ
(!!)
ステラの背筋に悪寒が走る。
そして、ステラはゆっくりと『天使の城』の方へと振り向いた。
ゴゴゴゴォ!
「何………何なの………」
ステラはゴクリと息を飲む。
麗とステラが目にしたものは………
【最後の大天使編③】
「シシリーナ!!」
リザ・チェスターの目の前で、シルフレアは『大天使の剣』を振り下ろした。
「きゃあぁぁぁ!!」
ズパッ!!
リザとシルフレア、2人の決闘を止めに入った幼い少女シシリーナの身体は真っ二つに裂け
ビシャッ!!
大量の血が飛び散った。
「ふふ、邪魔者は消えたわね。」
シルフレアは、シシリーナの命など まるで気にする様子も無く、リザ・チェスターの方へと向き直る。
「さぁ、リザ。次は貴女の番よ。」
シルフレアは楽しそうな笑みを浮かべる。
すると
ブシュッ!
ギャシャー!!
「!!」
それは、一瞬の出来事。
真っ二つに裂けたシシリーナの身体から、突然 現れた『化け物』が
ビシャッ!!
シルフレアの頭を
ジュッ!!
一瞬にして呑み込んだ。
見た事も無い異形の姿をした『化け物』は、そのままシルフレアの身体を侵食して行く。
ジュウ――――
ギギ――――
ギギィ――――
既に上半身を『化け物』に呑み込まれたシルフレアの右手から、『天界の神器』である『大天使の剣』が
カランッ!
カラン………
………
虚しく地表に落ちる音が響いた。
神話の時代から受け継がれた『大天使セラフィエル』の正統なる後継者
『白の世界(ホワイトワールド)』の頂点に立つ『最後の大天使』 シルフレア・サーシャスの肉体は
―――――――ここに消失する
ジュウ――――
ギギ――――
ギギィ――――
「まさか………」
目の前で茫然と事態を見守るリザ・チェスター。
(まさか、この『化け物』は………。)
するとシルフレアの身体を呑み込んだ『化け物』の身体が光り輝く。
ピカッ!!
(この光は………!!)
リザ・チェスターは、目の前の『化け物』から、シルフレア・サーシャスの面影を感じとる。
(これは……、シルフレアの『聖なる光』!?)
「リザッ!危ない!!」
慌てて駆け込んだチェリー・ブロッサムが、リザを庇うように被さるのと、ほぼ同時
光り輝く『化け物』の身体から
ビカビカビカッ!!
眩いばかりの『光の波動』が撃ち出される!
ビュンッ!!
ビシャッ!!
「うっ!!」
「チェリー!?」
そして、チェリー・ブロッサムは『光の波動』に撃ち抜かれ、その場に倒れ込んだ。
光り輝くその『化け物』を見て、アリス・クリオネはゆっくりと口を開く。
あれは――――――――
――――――――――『7つの大罪』