Seventh World 聖なる天使の章

【聖都決戦後編①】

最初の『天帝の加護』の戦士。

ジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世

彼が産まれたのは、Seventh World (7つの世界)では無い。

それは、遥か遠い『異世界』




ギギ――


ギギィ――


全身血まみれになったジェイスは、ぐるりと周囲を見回した。


「エグゾーダス(灼熱地獄)!!」

ボボボボボボッ!!


ジェイスの放った灼熱の炎が、周りを徘徊していた『化け物達』を包み込む。


ギギ――


ギギィ――


(ちっ!これでも死なないのか……。)


炎に焼かれながらも、その動きを止めない『化け物達』。

(………む!?)

ふと、ジェイスが自分の左腕を見ると

ギシューッ!!

一体の『化け物』がジェイスの左腕に噛み付ついていた。

「こ奴ッ!いつの間に!!」

スパッ!!

「痛っ!」

ジェイスは自分の左腕を斬り落とす。

そのまま放置していたら、それはジェイスの死を意味する。

『化け物』は人間に取り付いて、その全てを食べ尽くすのだから。


「そろそろ魔力が尽きて来たな……。」

ジェイスを取り囲む『化け物』は三体。

流石に三体の『化け物』を相手にするのは無理がある。今のジェイスであれば一体の『化け物』を殺せるかどうかだろう。

(まぁ、ここまで生きて来られたのも奇跡。この世界は『化け物』が現れた時点で既に終わっていたのだ。)

ジェイスは自分にそう言い聞かせる。

ギギ――

ギギィ――


そして

ギャガガジャーッ!!

三体の『化け物』が、一斉にジェイスに襲い掛かった。


ビカッ!

「!!」



そして――


――ジェイスは光に包まれた。




………

………………


「………………。」


どのくらいの時間が経ったのだろう。


目を開けると、見たことの無い景色が飛び込んで来た。


(ここは…………どこだ?)


とても穏やかな空気が流れる世界。

そして

「………!」

起き上がろうとしたジェイスは、自分の左腕が元通りに戻っている事に気が付く。

(これは、どう言う事だ?俺は夢でも見ているのか。それとも、ここは死後の世界なのか。)



「そうですね………。」

「!!」

ジェイスのすぐ横から声が聞こえて来た。

驚いたジェイスが、声の方へと振り向くと、そこには、この世の者とは思えない美しい女性が座っていた。

そして、その女性はジェイスに優しく語り掛ける。

「ここは『高天原(タガマガハラ)』の世界』」


ジェイス――


貴方の力を貸して欲しい。


――この私、アマテラスの為に






【聖都決戦後編②】

「エグゾーダス(灼熱地獄)!!」

ボボボボボボッ!!

ジェイスが魔法を詠唱すると、灼熱の業火が天使達に襲い掛かる。

「ぐわっ!」

「きゃあぁぁ!!」


8人の『天使の一族』の戦士のうち2人の戦士が灼熱の炎に包まれた。

「怯むな!一斉に攻撃しろ!」

「光の波動!!」

ビカッ!!

四方から一斉に放たれた『天使達』の『光の波動』がジェイスの身体に次々と撃ち込まれる。

バチバチバチッ!

「良し!」

「やったか!?」




しかし

ジェイスの身体を包み込んだ『光の波動』は

バチバチバチッ!

バッシャーンッ!!

「!!」

ジェイスの力により弾き飛ばされる。

「な!」

「バカな!!」

「私達の技が効かない!?」

ジェイスは天使達に向かって言う。

「ふん、天使の力とはこの程度か。とんだ興覚めだな。」

そしてジェイスは、自身の魔力を全身にみなぎらせる。

ゴゴゴゴゴゴォ!

「な!なんと言う魔力!」

「不味い!逃げるぞ!」

「あれを喰らったら一溜りも無いわ!」


逃げ惑う天使達を見てジェイスは言う。

「逃げるのは懸命だが………。」


――もう、遅い



膨大は魔力を、その両腕に乗せて発射するジェイスの魔法。

「エグゾーダス(灼熱地獄)!!」


ボボボボボボッ!!


これが『天帝の加護』の保持者の中でも、最強の魔法使い、ジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世の魔法。

燃え盛る地獄の業火が、天使達に向けて放たれる。

「!!」

「ダメっ!逃げ切れません!」

「きゃあぁぁ!!」

バシュッ!!


ドッガーッン!!

夜の聖都ホワイトキャッスルの上空で、大爆発が巻き起こる。

モクモク


しかし――


――天使達は全員無傷。





「ほぉ、俺の魔法を魔法で撃ち落とすとは。」

ジェイスは地上から魔法を放った少女を見て感心する。

「そう言えば、まだお前が居たな。」


オーロラの姫君――


――エレナ・エリュテイア




「ジェイス!今こそ決着を付けましょう!」


エレナの左手の甲に浮かび上がる


『五芒星』の紋章が


――オーロラ色に光り輝く。






【聖都決戦後編③】

あの日、リザ・チェスターは全てを失った。

『四大天使』の一人として、自身の正義を貫く為にリザは決闘を挑んだ。


相手の天使の名は

――シルフレア・サーシャス


彼女は偉大な天使であった。

『天使の一族』の強さの秘密は、その身に宿す『聖なる力』による所が大きい。

古代の大天使セラフィエルの子孫である『天使の一族』には『聖なる力』が脈々と受け継がれている。

特に『四大天使』と言われる家系の天使は、セラフィエルの血が色濃く残っていた。その証拠に『天界の武器』を扱える事が出来るのは現代の『四大天使』のみ。

そこに驕(おご)りがあった。

『四大天使』の一人であるリザ・チェスターは、シルフレア・サーシャスと互角に戦えると思っていたのだ。


黙示録の輝き!」

ビカッ!

シルフレアの放った『光の波動』は、物凄い光のエネルギーを秘めていた。

「『大天使の盾』!」

リザは『天界の武器』で応戦する。

「!!」

ビカッ!!

(これは……どう言う事なの!)


『大天使の盾』の防御をすり抜けて、シルフレアの攻撃はリザに襲い掛かる。

「ふふ」

シルフレアは言う。

「天使としての格が違うのよリザ。」

「『天界の武器』である四つの『大天使の神器』では、私の『聖なる力』を押さえる事は出来ない。

『大天使セラフィエル様』の直系である私に勝てる天使など、この世に存在しないのです。」

「そ、ん、な!」

バシャーンッ!



こうしてリザ・チェスターは

シルフレアに敗れた。



『天使の一族』の証明である背中から生える大きな『天使の翼』。リザは、この戦いで『天使の翼』の片翼を失う。

「半人前の貴女には、それがお似合いだわ。リザ・チェスター。」

満身創痍のリザを見下ろして、シルフレアは、楽しそうに告げた。

元『四大天使』の情けで命だけは救われたリザ・チェスターは『白の世界(ホワイトワールド)』を去る事になった。

シルフレアは最後にこんな言葉を掛ける。

「もし、貴女が私に勝つ可能性があるとすれば悪魔の力を借りる事ね。悪魔の力を借りれば、その無くなった翼も元に戻るかもしれないわ。」



そして

五年の歳月が過ぎた。

「光と闇の波動!!」

リザ・チェスターの魔法がシルフレアを襲う!

それは、天使と悪魔の力を身に付けたリザの渾身の一撃。

シルフレアは、すっと左手を差し出して、楽しそうに笑う。

「ふふ、それが悪魔に魂を売ってまで得た力なのかしら?」

左手に集中された『聖なる光』は、巨大なエネルギーの塊となり『光の渦(うず)』を造り出す。

バチバチバチッ!

ドッガーンッ!!

「くぅっ!」

リザの放った『光と闇の波動』は、『光の渦(うず)』に跳ね返され大爆発を起こす。

その爆発の中から、『大天使の剣』を構えて現れるシルフレア・サーシャス。

「リザ、やはり貴女は半人前よ。私の強さを見極める事も出来ないなんて。所詮は『堕天使』ね。」


「くっ!」


「これで終わりです。『天使』では無い貴女を殺しても、私は罰せられないもの。」

シルフレアの『大天使の剣』が大きく振り上げられた。その剣は、巨大な『聖なる力』により真っ白く光り輝き、夜の聖都ホワイトキャッスルの街を昼間のように明るく照らす。


と、その時


「やめてー!!」


一人の少女が、リザとシルフレアの方へ走り込んで来るのが見えた。

「ちょっと!シシリーナ!!」

チェリー・ブロッサムは慌ててシシリーナの手を掴もうとするが、一瞬 手を伸ばすのが遅れた。


リザはシシリーナを見て叫ぶ。

「危ない!戻りなさい!!」


シルフレアはシシリーナを見て呟く。

「あら?人間の少女。『寄生虫』の感染者かしら?」


そして

「邪魔者は、先に殺しましょう。」


『大天使の剣』を――


――――シシリーナに振り下ろす