Seventh World 聖なる天使の章
【天使の城編①】
「『大天使の矛』!」
『三大天使』の1人サンタクロス・ハミュエルの神器『大天使の矛』が『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員を攻撃する。
ビビッ
シュッ!
「ぐぬっ!」
しかし、大地をも斬り裂くその攻撃は当たらない。『寄生虫』の能力を取り込む特殊な手術を施された『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員達にとっては、サンタクロスの動きはあまりにも遅い。
そして
ビビッ―――――――
脳から発せられた電磁波が身体中を駆け巡る。
『超反応』と『超スピード』の能力を併せ持つ『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員達の動きが
――――――――――加速する
「『ライトセイバー』!」
ズバッ!
「ぐおっ!」
サンタクロスの左足が高熱の『ライトセイバー』により焼き切られる。
ブシャッ!
バサッ!
片足を失ったサンタクロスが、ドサリとその場に倒れ込むと、更に二人の『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員が『超スピード』で駆け付けて『ライトセイバー』を振り上げる。
「バカな!『三大天使』であるこの俺が、人間の動きに付いて行けないなど……」
アリエナイ…………
ブシャッ!
ドビュッ!
それがサンタクロス・ハミュエルの最後の言葉。
『天使の一族』の頂点に立つ『三大天使』の一角が崩れ落ちる。
まさか!
『天使の城』の前門付近で他の天使達と共に防衛戦を続けていたアクア・メガエルは、サンタクロスの生命が尽きた事を感じ取った。
(信じられません。あのサンタクロスが人間に殺られるなんて。)
「ちょっと確認して参ります。少しの間、持ち堪えなさい!」
バサッ!
アクアは他の天使達にそう命令すると、二枚の大きな羽を広げて上空へ飛び立った。聖都ホワイトキャッスルの上空を飛行するアクア。
空から見る聖都の街は、まさに異常な光景。
『寄生虫』に感染した暴徒の黒い群衆が、『天使の城』に群がるように集まっている。
いや、それだけでは無い。
聖都ホワイトキャッスルの外側。四方を囲む他の都市からも続々と人が押し寄せて来るではないか。
「そんな……、これだけの人間を相手に、私達はどうすれば良いのか。」
『白の世界(ホワイトワールド)』は、いつの間にか『寄生虫』に汚染され尽くしている。
バサッ!
「!?」
そこで、上空を飛ぶアクアは前方を飛ぶ1人の人影を見つける。
バサッ!
アクアはその女性を知っている。五年前に姿を消した『四大天使』の1人。
リザ・チェスター
リザも、ほぼ同時にアクア・メガエルを見つけると、アクアの方へと向かって来る。
夜の聖都ホワイトキャッスルの上空で、二人の天使が交錯する。
「リザ、あなた生きていたのですか。」
「久し振りね、アクア。しかし今の私は『天使の一族』の敵。再開を喜んでいる暇は無いわ。」
「!?」
「計画より早いですが貴女には死んで貰います!」
「!!まさか、貴女は………。」
―――――――『天帝の加護』の戦士
「くっ!」
アクアは素早く『大天使の弓』を構えると
シュババババッ!
無数の弓矢を解き放つ。
対するリザは左手を前方に構えて叫ぶ。
「『大天使の盾』!」
バシュッ!
バシュッ!
バシュッ!
「!!」
天界で造られた2つの神器が、『白の世界(ホワイトワールド)』で激突する。
「ダメよアクア。天界の武器の力は同等。私には通じないわ。」
そして
「!!」
リザの右手から白と黒の光の塊が放出される。
「光と闇の波動!」
ビカッ!
天使の力と悪魔の力を併せ持つリザの『聖なる魔法』がアクア・メガエルの身体を捉えた。
「アクアは『天界の武器』に頼り過ぎなのよ。やはり貴女は私の敵ではないわ。」
「が……が……が……」
「安らかに眠りなさいアクア。貴女ならきっと天国へ行ける。どの道この世界(白の世界)は崩壊するのだから、同じ事よ。」
シュウ―――――
アクア・メガエルの身体が、白と黒の光に包まれながら消失して行く。
「ふぅ……」
消滅したアクアを見届けるとリザ・チェスターは『天使の城』へと急ぐ。
宿敵シルフレア・サーシャスを目指して。
【天使の城編②】
『白の世界(ホワイトワールド)』を支配する『天使の一族』が住まう城
ここは
―――――――『天使の城』
燃え盛る『天使の城』の最上階にある部屋に閉じ込められている少女。
――――――夢野 可憐(ゆめの かれん)
パチパチと音を立てて火の手が壁や床を燃やして行く。
可憐は窓から外を眺めていた。
迫り来る大群衆。
『寄生虫』に感染し『摩耶(まや)の術』で操られた人々。
それは『ユグドラシル』の世界で見たのと同じ光景。
可憐が助けられなかった人々。
可憐はその罪を償う為に自らの喉をナイフで切り裂いた。
可憐の『聖なる加護』の能力。
『寄生虫』を消滅させる力はもう使えない。
なぜなら可憐は言葉を失ったのだから。
しかし
それは間違いであった。
『ユグドラシル』の世界は救えなかったが、まだ可憐の力を必要としている人々がこんなに居るではないか。
(ああ……)
私は何て事をしてしまったのだろう。
どうして自分の喉を塞ぐような行為をしたのか。
私は助けなければならない。
目の前に迫り来る人々を。
『寄生虫』の魔の手から救わなければ。
ボワッ!
パチパチ
その間にも、どんどんと火の手が広がり、可憐の居る部屋は炎に包まれて行く。
逃げる事は出来ない。
鍵の掛かった部屋のドアは内部から開ける事は出来ない。
(誰か………)
(誰か私を助けて………)
(私をこの部屋から出して下さい。)
「助けて!!」
声が
失われたはずの可憐の声が
可憐の口から発せられる。
日本を去る前に月影総理が言っていた言葉を思い出す。
「喉の手術は成功している。声が出ないのは可憐。お前の気持ちの問題だ。もう一度聞かせてくれ。」
夢野 可憐(ゆめの かれん)
お前の―――――――
―――――――『天使の歌声』を
モワーン
すると、可憐のいる部屋の一角の空間がぼんやりと歪むのが見えた。
(なに?)
可憐はその空間に手を伸ばす。
にょき
「きゃっ!」
空間から現れたのは男の手。
そして、そのすぐ後から小さな妖精が姿を現した。
「ステラ!?」
「可憐!!やっと会えた!!」
もう一人、初めて見る男の子。歳は可憐と同じくらいだろうか。
その男が可憐に言う。
「早く逃げるんだ!このままでは、この城は持たない。もうすぐこの城は崩壊する!」
可憐は理解する。
ステラとこの男の子は、私を助ける為に『白の世界(ホワイトワールド)』に来てくれた事を。
「ありがとう。」
可憐は銀河 昴(ぎんが すばる)の胸に頭をつけて感謝の言葉を述べる。
「え、いや、そんな大した事は。」
顔を真っ赤にして照れる昴。
世界は違えど、夢野 可憐(ゆめの かれん)は、世界中の男性の憧れでありトップアイドル。平凡な学生である昴にとっては、刺激が強すぎる。
「可憐!行きましょう!もうこの世界に用は無いわ!私の能力『異世界への扉』で異空間へ脱出しましょう!」
「ステラ……、あなた、いつの間にそんな能力を。」
驚く可憐にステラは手短かに説明をする。
「そう……、ステラも大変だったのね。でも」
「……でも?」
「逃げる訳には行かないわ。私はこの世界の人々を救わなければならないの。」
私の『聖なる加護』の能力
―――――――『天使の歌声』で