Seventh World 正義の旗手の章
【世界の真実と月影編①】
日本国総理大臣公邸
白銀の要塞(シルバードーム)の前で繰り広げられる日米の戦闘。
通称『アメンボ』と呼ばれる量産型殺人兵器に苦戦を強いられていたアルフ・ジャスティスは、光の剣『ライトセイバー』を振り下ろした。
ビキビキビキッ――――
ドッカーッン!!
(ようやく二体目か……)
米軍特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員アルフ・ジャスティス。
彼は脳に施された特殊な手術により、2つの能力を身につけた。
超反応と超スピード――――
次々と撃ち込まれる『アメンボ』のレーザービームを紙一重で躱(かわ)し、何やら物凄い気迫で迫って来る日本人戦士 日賀 タケル(ひが たける)と戦いながら、今のところ全くの無傷。
アルフは並み居る猛者が揃う『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員達の中でもトップクラスの戦闘能力を誇る。
『寄生虫』の感染の脅威に怯えるアメリカ国民にとって、『フォーミュラ・ジャスティス』は特別な存在。
そのエースであるアルフは、アメリカ合衆国の正義の象徴。
合衆国民は、彼の事を讃えてこう呼んでいる。
―――――――正義の旗手
「これで、どうだぁあぁぁ!」
アルフの『ライトセイバー』がビュンと風を切り数メートル先の『アメンボ』を串刺しにする。
バチバチバチバチッ――――
ドッカーッン!!!
(三体目!!)
しかし日本人戦士 日賀 タケル(ひが タケル)はその隙を見逃さなかった。
伸縮自在の光の剣『ライトセイバー』の剣先が延びきった状態では、タケルの攻撃を躱す事は出来ない。
「貰ったー!!」
タケルは普通の人間にしては妙に鋭い動きをする。
多くの修羅場を潜って来たのか。はたまた日頃の訓練の賜物なのか。
(その両方か………)
タケルの持つ光の剣『ライトサーベル』がアルフの身体に触れる寸前に、アルフは超反応でタケルの攻撃を躱(かわ)し、後ろへ逃れる。
しかし『アメンボ』を仕留める為に延びきった『ライトセイバー』を縮める暇は無かった。
タケルの『ライトサーベル』がアルフの『ライトセイバー』の柄を
―――――真っ二つに叩き斬る
(しまった―――!)
カランコロンと地に落ちる『ライトセイバー』の柄を蹴り飛ばしたタケルが叫ぶ。
「これで終わりだ!」
日賀 タケル(ひが たける)の後方にいる残り七体の『アメンボ』のビーム砲から
ビカッ―――――
レーザービームが一斉に発射される。
【世界の真実と月影編②】
―――――おかしい
相手(アルフ・ジャスティス)は唯一の武器と思われる『ライトセイバー』を失い、自分(タケル)の後ろには七体もの味方(アメンボ)が居る。
この圧倒的優位な情勢で
日賀 タケル(ひが たける)の第六感は、タケルの危機をビンビンと知らせていた。
ここに居ては―――――
―――――――――殺される
タケルは咄嗟(とっさ)に身体を反転させ真横に飛び跳ねる。
ビュン―――――
「ぐわっ!」
『アメンボ』から放たれたレーザービームの一本がタケルの左肩を撃ち抜いた。
味方であるはずの量産型殺人兵器『アメンボ』が、何故かその標的をアルフからタケルに切り替えたのだ。
「隊長、敵の機械兵器のハッキングに成功しました。」
『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員マーク・ブライアンが隊長のカーズに報告をする。
「これから、敵の日本人戦士の排除、及び白銀の要塞(シルバードーム)への攻撃を開始します。」
ビュン―――――
ビュン―――――
「うぉ!ちょっと待て!何がどうなってる!?」
タケルは慌てて一直線に逃げ出した。
左肩から吹き出す大量の血になど構っている暇は無い。
圧倒的優位な形勢が、一転して最大のピンチに早変わりしたのだ。
「マークの奴か……、相変わらずえげつない事をする。」
アルフ・ジャスティスは遠くでパソコンを操作するマークの方を見て呟く。
『フォーミュラ・ジャスティス』最強の世代の一人マーク・ブライアンの能力は、超視力と超頭脳。
敵基地潜入作戦や敵基地破壊作戦の際に重宝するマークの能力が最大限に発揮される。
マーク・ブライアンの前では、どんなに強固な近代兵器も無に等しい。
(これで勝負あったな。後は白銀の要塞(シルバードーム)の中に居る月影を捕獲して、夢野 可憐の居場所を聞き出せば作戦終了だ。)
アルフがほっとひと息ついた時、隊長のカーズ・ロベルトが次の命令を下す。
「攻撃を中止する!」
「今すぐ戦闘を停止しろ!」
これには『アメンボ』のハッキングに成功し、反撃態勢に入っていたマークも驚いた。
「隊長!何を言い出すんですか!我々の勝利は目前だと言うのに!」
遠くから俊足のスピードで駆け付けたアルフもカーズ隊長に声を張り上げて言う。
「隊長!気でも違ったんすか!?」
側にいたシルベスタはトレードマークの眼鏡をクイッと持ち上げてカーズ隊長に問う。
「………何か聞こえたのですか?新しい情報でも。」
するとカーズ・ロベルト隊長は、「ふむ」と頷いて隊員達に言う。
「もう少し詳しく話を聞く必要がある。」
どうやら我々は――――
――――見えない敵と戦っているようだ
米軍特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』隊長カーズ・ロベルト(34歳)。
『寄生虫』を寄せ付けない特殊な脳手術に成功した最初の一人であるカーズは、手術の副産物として特殊な能力を身につけた。
――――――超聴力
カーズは10km先に落ちた針の音すら聞き分ける。
戦闘が始まってから、カーズは白銀の要塞(シルバードーム)の内部の情報を探っていた。
そして、カーズの耳に入って来たのは、月影が沖田に話したこの世界の真相。
そうだ。『寄生虫』は奴等が仕掛けた侵略兵器。『寄生虫』に襲われた世界は自滅するのだ。
『寄生虫』は―――――
―――――――人為的に造られた兵器
【世界の真実と月影編③】
世界を恐怖と混乱に陥れた『寄生虫』。
アメリカ合衆国は『寄生虫』に対抗する為に新たな特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』を作り上げた。
『寄生虫』に感染した人間は見つけ次第殺す。
『寄生虫』の感染の拡大を防ぐ為には、その地域に住んでいる住民ごと抹殺する。
例えまだ感染していない住民がいたとしても、その死は人類を救う為の必要悪。
それがアメリカ合衆国の正義。
その前提として、『寄生虫』は他の伝染病と同じように、自然発生したウィルスのようなものだとの認識がある。
感染者を殺して行けば、いつかは『寄生虫』を全滅させる事が出来る。
それがアメリカ合衆国の導き出した答えであった。
しかし――――
『寄生虫』が人為的に造られた兵器であるとすれば、その前提が覆される。
白銀の要塞(シルバードーム)に足を踏み入れたカーズ達特殊部隊の隊員は、中にいた月影に言葉を掛ける。
「俺は米軍特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』の隊長カーズ・ロベルト。月影総理に聞きたい事がある。」
月影はゆっくりと立ち上がりカーズ達を歓迎する。
「モニターを通して見ていたよ。途中で攻撃を中止した意図を聞かせて貰おうか。」
カーズは答える。
「それは、月影総理。総理の話が聞こえたからだ。」
奴等とは何者だ―――――
そして
「夢野 可憐(ゆめの かれん)は何処に居る。」
「ほぉ……」
(どうやら、『フォーミュラ・ジャスティス』の隊長の能力は本物のようだな。なんとも恐ろしい集団だ。)
北条 月影(ほうじょう つきかげ)は、『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員達が備えている超能力を全て把握していた。
月影は自身の知り得た世界の真相を、カーズ達に伝える。
アルフにシルベスタ、他の隊員達も各々驚きの声を上げる。
問題は
夢野 可憐(ゆめのかれん)の行方。
『寄生虫』を消滅させる事の出来る奇跡の能力者。
月影は答える。
「可憐は……」
―――――――私が封印した
可憐は奴等に狙われていた。
そして、可憐は彼女が産まれた世界。
『白の世界(ホワイトワールド)』の人間からも狙われていた。
可憐を失うくらいなら、永遠に眠っていた方が良いのだ。
もう誰の手も届かない。
永遠の眠りに付く事が可憐の幸せなのだから。
「!?」
「月影総理……いったい何を言っているのです!?」
静かに話を聞いていた月影の護衛、沖田 栄治が声を張り上げる。
「封印?夢野 可憐(ゆめの かれん)を封印したとはどういう事だ?世界には彼女の能力が必要なのだろう?」
カーズ隊長も月影の言葉の真意が理解出来ない。
月影は答える。
「可憐は私のものだ。世界の未来など」
―――――どうでも良い事だ。
「何を言っている!死にたくなければ、さっさと可憐の居場所を吐きやがれ!」
アルフ・ジャスティスがマークから受け取った2本目の『ライトセイバー』のスイッチをカチリと押すと光の剣がビュンと姿を現した。
「君達は何も分かっていない。なぜ私が君達を白銀の要塞(シルバードーム)の中に受け入れたと思っているのだ。」
「なんだと?」
月影の意味深な言葉にカーズが短く反応する。
「ここは私の庭だよ。ドームの中には事前に仕込まれた陰陽師の式札(しきふだ)が散りばめられている。」
そう言って月影は懐から一枚の式札を取り出した。
陰陽師の術士が異能の力を使う時に用いられる式札(しきふだ)。
「アルフ!奴を仕留めろ!」
カーズの命令が発せられるよりも早く月影は陰陽師の術式を完成させた。
白銀の要塞(シルバードーム)全体が光に包まれ、壁の中に仕込まれた式札(しきふだ)がドームの中に居る全ての人間に攻撃を加える。
古代術式――――
――――――――『破滅の風神』
月影が得意とする陰陽術『カマイタチの術』の最上位の術式。
白銀の要塞(シルバードーム)の内部に鋭利な『カマイタチ』の突風が吹き荒れる。
【世界の真実と月影編①】
日本国総理大臣公邸
白銀の要塞(シルバードーム)の前で繰り広げられる日米の戦闘。
通称『アメンボ』と呼ばれる量産型殺人兵器に苦戦を強いられていたアルフ・ジャスティスは、光の剣『ライトセイバー』を振り下ろした。
ビキビキビキッ――――
ドッカーッン!!
(ようやく二体目か……)
米軍特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員アルフ・ジャスティス。
彼は脳に施された特殊な手術により、2つの能力を身につけた。
超反応と超スピード――――
次々と撃ち込まれる『アメンボ』のレーザービームを紙一重で躱(かわ)し、何やら物凄い気迫で迫って来る日本人戦士 日賀 タケル(ひが たける)と戦いながら、今のところ全くの無傷。
アルフは並み居る猛者が揃う『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員達の中でもトップクラスの戦闘能力を誇る。
『寄生虫』の感染の脅威に怯えるアメリカ国民にとって、『フォーミュラ・ジャスティス』は特別な存在。
そのエースであるアルフは、アメリカ合衆国の正義の象徴。
合衆国民は、彼の事を讃えてこう呼んでいる。
―――――――正義の旗手
「これで、どうだぁあぁぁ!」
アルフの『ライトセイバー』がビュンと風を切り数メートル先の『アメンボ』を串刺しにする。
バチバチバチバチッ――――
ドッカーッン!!!
(三体目!!)
しかし日本人戦士 日賀 タケル(ひが タケル)はその隙を見逃さなかった。
伸縮自在の光の剣『ライトセイバー』の剣先が延びきった状態では、タケルの攻撃を躱す事は出来ない。
「貰ったー!!」
タケルは普通の人間にしては妙に鋭い動きをする。
多くの修羅場を潜って来たのか。はたまた日頃の訓練の賜物なのか。
(その両方か………)
タケルの持つ光の剣『ライトサーベル』がアルフの身体に触れる寸前に、アルフは超反応でタケルの攻撃を躱(かわ)し、後ろへ逃れる。
しかし『アメンボ』を仕留める為に延びきった『ライトセイバー』を縮める暇は無かった。
タケルの『ライトサーベル』がアルフの『ライトセイバー』の柄を
―――――真っ二つに叩き斬る
(しまった―――!)
カランコロンと地に落ちる『ライトセイバー』の柄を蹴り飛ばしたタケルが叫ぶ。
「これで終わりだ!」
日賀 タケル(ひが たける)の後方にいる残り七体の『アメンボ』のビーム砲から
ビカッ―――――
レーザービームが一斉に発射される。
【世界の真実と月影編②】
―――――おかしい
相手(アルフ・ジャスティス)は唯一の武器と思われる『ライトセイバー』を失い、自分(タケル)の後ろには七体もの味方(アメンボ)が居る。
この圧倒的優位な情勢で
日賀 タケル(ひが たける)の第六感は、タケルの危機をビンビンと知らせていた。
ここに居ては―――――
―――――――――殺される
タケルは咄嗟(とっさ)に身体を反転させ真横に飛び跳ねる。
ビュン―――――
「ぐわっ!」
『アメンボ』から放たれたレーザービームの一本がタケルの左肩を撃ち抜いた。
味方であるはずの量産型殺人兵器『アメンボ』が、何故かその標的をアルフからタケルに切り替えたのだ。
「隊長、敵の機械兵器のハッキングに成功しました。」
『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員マーク・ブライアンが隊長のカーズに報告をする。
「これから、敵の日本人戦士の排除、及び白銀の要塞(シルバードーム)への攻撃を開始します。」
ビュン―――――
ビュン―――――
「うぉ!ちょっと待て!何がどうなってる!?」
タケルは慌てて一直線に逃げ出した。
左肩から吹き出す大量の血になど構っている暇は無い。
圧倒的優位な形勢が、一転して最大のピンチに早変わりしたのだ。
「マークの奴か……、相変わらずえげつない事をする。」
アルフ・ジャスティスは遠くでパソコンを操作するマークの方を見て呟く。
『フォーミュラ・ジャスティス』最強の世代の一人マーク・ブライアンの能力は、超視力と超頭脳。
敵基地潜入作戦や敵基地破壊作戦の際に重宝するマークの能力が最大限に発揮される。
マーク・ブライアンの前では、どんなに強固な近代兵器も無に等しい。
(これで勝負あったな。後は白銀の要塞(シルバードーム)の中に居る月影を捕獲して、夢野 可憐の居場所を聞き出せば作戦終了だ。)
アルフがほっとひと息ついた時、隊長のカーズ・ロベルトが次の命令を下す。
「攻撃を中止する!」
「今すぐ戦闘を停止しろ!」
これには『アメンボ』のハッキングに成功し、反撃態勢に入っていたマークも驚いた。
「隊長!何を言い出すんですか!我々の勝利は目前だと言うのに!」
遠くから俊足のスピードで駆け付けたアルフもカーズ隊長に声を張り上げて言う。
「隊長!気でも違ったんすか!?」
側にいたシルベスタはトレードマークの眼鏡をクイッと持ち上げてカーズ隊長に問う。
「………何か聞こえたのですか?新しい情報でも。」
するとカーズ・ロベルト隊長は、「ふむ」と頷いて隊員達に言う。
「もう少し詳しく話を聞く必要がある。」
どうやら我々は――――
――――見えない敵と戦っているようだ
米軍特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』隊長カーズ・ロベルト(34歳)。
『寄生虫』を寄せ付けない特殊な脳手術に成功した最初の一人であるカーズは、手術の副産物として特殊な能力を身につけた。
――――――超聴力
カーズは10km先に落ちた針の音すら聞き分ける。
戦闘が始まってから、カーズは白銀の要塞(シルバードーム)の内部の情報を探っていた。
そして、カーズの耳に入って来たのは、月影が沖田に話したこの世界の真相。
そうだ。『寄生虫』は奴等が仕掛けた侵略兵器。『寄生虫』に襲われた世界は自滅するのだ。
『寄生虫』は―――――
―――――――人為的に造られた兵器
【世界の真実と月影編③】
世界を恐怖と混乱に陥れた『寄生虫』。
アメリカ合衆国は『寄生虫』に対抗する為に新たな特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』を作り上げた。
『寄生虫』に感染した人間は見つけ次第殺す。
『寄生虫』の感染の拡大を防ぐ為には、その地域に住んでいる住民ごと抹殺する。
例えまだ感染していない住民がいたとしても、その死は人類を救う為の必要悪。
それがアメリカ合衆国の正義。
その前提として、『寄生虫』は他の伝染病と同じように、自然発生したウィルスのようなものだとの認識がある。
感染者を殺して行けば、いつかは『寄生虫』を全滅させる事が出来る。
それがアメリカ合衆国の導き出した答えであった。
しかし――――
『寄生虫』が人為的に造られた兵器であるとすれば、その前提が覆される。
白銀の要塞(シルバードーム)に足を踏み入れたカーズ達特殊部隊の隊員は、中にいた月影に言葉を掛ける。
「俺は米軍特殊部隊『フォーミュラ・ジャスティス』の隊長カーズ・ロベルト。月影総理に聞きたい事がある。」
月影はゆっくりと立ち上がりカーズ達を歓迎する。
「モニターを通して見ていたよ。途中で攻撃を中止した意図を聞かせて貰おうか。」
カーズは答える。
「それは、月影総理。総理の話が聞こえたからだ。」
奴等とは何者だ―――――
そして
「夢野 可憐(ゆめの かれん)は何処に居る。」
「ほぉ……」
(どうやら、『フォーミュラ・ジャスティス』の隊長の能力は本物のようだな。なんとも恐ろしい集団だ。)
北条 月影(ほうじょう つきかげ)は、『フォーミュラ・ジャスティス』の隊員達が備えている超能力を全て把握していた。
月影は自身の知り得た世界の真相を、カーズ達に伝える。
アルフにシルベスタ、他の隊員達も各々驚きの声を上げる。
問題は
夢野 可憐(ゆめのかれん)の行方。
『寄生虫』を消滅させる事の出来る奇跡の能力者。
月影は答える。
「可憐は……」
―――――――私が封印した
可憐は奴等に狙われていた。
そして、可憐は彼女が産まれた世界。
『白の世界(ホワイトワールド)』の人間からも狙われていた。
可憐を失うくらいなら、永遠に眠っていた方が良いのだ。
もう誰の手も届かない。
永遠の眠りに付く事が可憐の幸せなのだから。
「!?」
「月影総理……いったい何を言っているのです!?」
静かに話を聞いていた月影の護衛、沖田 栄治が声を張り上げる。
「封印?夢野 可憐(ゆめの かれん)を封印したとはどういう事だ?世界には彼女の能力が必要なのだろう?」
カーズ隊長も月影の言葉の真意が理解出来ない。
月影は答える。
「可憐は私のものだ。世界の未来など」
―――――どうでも良い事だ。
「何を言っている!死にたくなければ、さっさと可憐の居場所を吐きやがれ!」
アルフ・ジャスティスがマークから受け取った2本目の『ライトセイバー』のスイッチをカチリと押すと光の剣がビュンと姿を現した。
「君達は何も分かっていない。なぜ私が君達を白銀の要塞(シルバードーム)の中に受け入れたと思っているのだ。」
「なんだと?」
月影の意味深な言葉にカーズが短く反応する。
「ここは私の庭だよ。ドームの中には事前に仕込まれた陰陽師の式札(しきふだ)が散りばめられている。」
そう言って月影は懐から一枚の式札を取り出した。
陰陽師の術士が異能の力を使う時に用いられる式札(しきふだ)。
「アルフ!奴を仕留めろ!」
カーズの命令が発せられるよりも早く月影は陰陽師の術式を完成させた。
白銀の要塞(シルバードーム)全体が光に包まれ、壁の中に仕込まれた式札(しきふだ)がドームの中に居る全ての人間に攻撃を加える。
古代術式――――
――――――――『破滅の風神』
月影が得意とする陰陽術『カマイタチの術』の最上位の術式。
白銀の要塞(シルバードーム)の内部に鋭利な『カマイタチ』の突風が吹き荒れる。